心変わりと死者への手向けが同格扱いだった頃
【前書き】
【第1期の歴史13 遊戯王のインフレは1999年から始まっていた】の続きとなります。ご注意ください。
下級アタッカー、ドローソースと二方面において同時にインフレが起こったことにより、遊戯王OCGは適切なゲームバランスを喪失していく形となりました。
とはいえ、一部分が揺らいだだけであり、屋台骨はいまだ健在であったのは事実です。少なくとも初期のゲーム性の薄さと比べれば遥かに自由度は増してきており、カードゲームとして成長していることは間違いありませんでした。
【当時の環境 1999年9月23日】
1999年9月23日、「Vol.5」が販売され、新たに50種類のカードが誕生しました。遊戯王OCG全体のカードプールは473種類となり、一端のカードゲームを名乗るに相応しい貫禄を持ち始めています。
全体的に新しい分類の効果を与えられたモンスターを多く輩出したパックで、当時としては貴重なアドバンテージ獲得能力を持った「仮面魔道士」など、ユニークかつ優秀なカードが現れています。
しかし、この時に起きた最大の出来事は、2種類の強力な除去カードが誕生したことです。
最強のコントロール奪取カード 心変わり
1枚目は「心変わり」という魔法カードでした。
ターン終了時まで相手モンスター1体のコントロールを得ることができ、自分のカードのように使用できる。
1ターンに限り、相手モンスター1体のコントロールを奪う効果を持っています。言葉にしてしまえばそれだけですが、このカードは額面以上に強大なカードパワーを秘めていました。
一例として、「心変わり」で相手モンスターを奪った後、そのターン中に「デーモンの召喚」などの生け贄にしてしまうことで、本来そこで生じる筈のディスアドバンテージを相手になすりつけることができます。
相手モンスターの除去と自分の上級モンスターの展開サポートを1枚で行えるため、単純に除去する以上の見返りが得られる強力なコンボとなっていました。
また、当時猛威を振るっていたリバースモンスターに有効だったことも追い風です。
このカードは表示形式を問わずコントロール奪取が可能だったため、相手にリバース効果を使わせないどころか、逆に自分がそのリバース効果を横取りすることすら可能でした。
自分が決めると爽快な気分になるプレイでしたが、もちろん相手に決められると全く逆のことが起こります。自信満々にセットした「聖なる魔術師」をこのカードで奪われ、サルベージ効果を相手に横取りされた挙句、「デーモンの召喚」の生け贄にされてしまうなど、泣きっ面に蜂どころではないシチュエーションに遭遇することもありました。
更に、発動ターン中にゲームを決めてしまえるのであれば返却の必要もないことから、単純に最後の押し込みとして使われるケースも少なくありませんでした。
壁として出したモンスターが相手の打点に変換されてしまうため、ライフ計算が一気に狂ってしまいます。これにより、ゲーム中盤にライフを減らしすぎることは大きなリスクを抱えることとなり、除去を撃つタイミングを計るのが更に難しくなっていきました。
貴重な確定除去 死者への手向け
さて、もう1枚の除去は「死者への手向け」という魔法カードです。
自分の手札を1枚捨てる。フィールド上のモンスターを1体破壊する。
手札コストはかかりますが、任意のモンスター1体を除去することができます。極めてシンプルに強いデザインのカードであり、当時の除去枠の常連として名を連ねました。
「地割れ」と違い裏側表示のモンスターも除去できるため、このカードも「心変わり」と同様にリバースモンスター対策に用いられていくことになります。
しかし、やはり手札コストの存在から乱用できるカードではなく、その取り扱いには他の除去と比較してより一層の慎重さが求められました。
これは「死者への手向け」だけでなく「心変わり」にも当てはまることですが、裏側表示のモンスターに触れられるというメリットは、裏目を踏みやすいというデメリットの裏返しでもあります。
例えば、自分が「デーモンの召喚」をコントロールしている時に、リバースモンスターを警戒して除去を当てた先が「岩石の巨兵」だった場合はどうなるでしょうか? こちらは除去の無駄撃ちとなり、相手は本命を通しやすくなると二重の意味で損をしてしまいます。
しかし逆に、裏目を警戒して除去を温存した結果、みすみすリバース効果の発動を許してしまうという状況に陥るケースもあります。おおむね正解のない択であり、状況によってベターな選択を取るしかありません。
とはいえ、これはモンスターを伏せる側にも同じことが言えるため、リバースモンスターをセットすることには一定のリスクがついて回るようになりました。
このように、リバースモンスター、特に「聖なる魔術師」に睨みを利かせられるカードが複数誕生したことから、当時横行していたドローの連鎖ゲームに若干の歯止めがかかる形となりました。
安易に「聖なる魔術師」をセットする行為は最善のプレイングとは呼べなくなり、逆に、本来アタッカーである筈の「ヂェミナイ・エルフ」を裏側守備表示でセットするなど、一見ちぐはぐなプレイが次第に取り入れられていきます。
駆け引きの復活であり、ある意味でカードゲームとしての新たな境地の開拓でもありました。
【まとめ】
さて、1999年9月23日当時に起きた出来事は以上の通りです。
新たなカードの誕生によって従来の戦法が通用しにくくなり、それらに適応するための最適なプレイングが模索されていく形となりました。
また、上では触れませんでしたが、このパックには「三魔神」と呼ばれるシリーズカードも収録されていました。通常召喚可能な最上級モンスターの中では史上初の効果モンスターであり、エラッタ前は一度だけ戦闘ダメージを0にする共通効果を持っていました。
実用性があるとは言い難いカードでしたが、私はこの内の「雷魔神-サンガ」が地味に好きだった思い出が残っています。
ここまで目を通していただき、ありがとうございます。
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