勇者環境の回答【ラヴァ玉エルドリッチ】デッキ解説【ダイヤ1】

2022年8月8日

【前書き】

 勇者環境の到来により、マスターデュエルに波乱の日々が訪れています。

 OCGとは異なりシングル戦ルールである関係上、先攻後攻の有利不利の差は決して無視できないほどに大きく、コイントスの結果がそのまま勝負の結果となってしまうことも多々あります。そしてその傾向の深刻化を招いたのが【勇者】ギミックの存在、ひいてはそれを絡めた【勇者GS】などの各種アーキタイプの参入であり、やや極端とも言えるゲームバランスが成立しつつあることは否めません。

 ただ、逆に偏った環境だからこそ取れる戦法というものもあり、実際普段は勝ったり負けたりでダイヤ1到達までは1週間ほどかかることも多いのですが、今回はデッキが環境的に上手く噛み合っていたためか思った以上に勝率が安定しており、開始2日目(※)でランクマを終わらせることができました。

(※新イベントのデュエリストカップ発表でモチベーションが再燃したという事情もありますが……)

 この記事では、個人的にランクマで使用していた【ラヴァ玉エルドリッチ】について解説いたします。

 

【ラヴァ玉エルド】デッキレシピ

 まずはデッキレシピについてです。

 

 

サンプルデッキレシピ
モンスターカード(15枚)
×3枚 黄金卿エルドリッチ
原始生命態ニビル
天獄の王
溶岩魔神ラヴァ・ゴーレム
ラーの翼神竜-球体形
×2枚  
×1枚  
魔法カード(7枚)
×3枚 強欲で金満な壺
×2枚 呪われしエルドランド
×1枚 黒き覚醒のエルドリクシル
白き宿命のエルドリクシル
罠カード(18枚)
×3枚 紅き血染めのエルドリクシル
黄金郷のワッケーロ
御前試合
スキルドレイン
×2枚 サモンリミッター
×1枚 虚無空間
王宮の勅命
黄金郷のガーディアン
黄金郷のコンキスタドール
エクストラデッキ(15枚)
×3枚    
×2枚 ヴァンパイア・サッカー
×1枚 始祖の守護者ティラス
迅雷の騎士ガイアドラグーン
超弩級砲塔列車グスタフ・マックス
トロイメア・ケルベロス
トロイメア・フェニックス
トロイメア・ユニコーン
No.XX インフィニティ・ダークホープ
No.77 ザ・セブン・シンズ
No.81 超弩級砲塔列車スペリオル・ドーラ
天霆號アーゼウス
ハイパースター
LANフォリンクス
リンク・スパイダー

 

 【エルドリッチ】自体の解説はここでは省きますが、メインギミックに関しては特に変わったところはありません。デッキの回し方などの基礎知識については他のサイトや動画などの解説も多く存在しますので、そちらをご覧いただければと思います。

 なお、エクストラに関してはありあわせのカードで組んだため非常に適当です。少しでも勝率を上げるのであればもう少し真面目にカードを用意(※)するべきですが、先述の通りデュエリストカップが近いということで資産を温存したかったため今回は妥協という形になりました。

(※セイクリッド・プレアデス」すら入っていないのは流石にどうかしているため、今からエルドを組む場合は絶対に作った方がいいです)

 もちろん、そうは言ってもSRの「照耀の光霊使いライナ」くらいはケチらず入れておいてもいいのではないかと終わった後に気付きましたが、後から変えるのもどうなのか、ということで一応当時のリストを載せています。

 

ラーの翼神竜-球体形&溶岩魔神ラヴァ・ゴーレム

 次はメインコンセプトとも言える「ラーの翼神竜-球体形」「溶岩魔神ラヴァ・ゴーレム」の2枚についてです。

 先に結論を述べてしまうと、冒頭でも触れたように【勇者】関連アーキタイプを強く意識しての採用となっています。

 というのも、【勇者GS】を筆頭とする各種展開系デッキは展開が通ってしまうと非常に強固な制圧盤面を敷いてくる反面、展開の過程でデッキリソースの大半を枯らしつくしてしまう欠点があります。

 もっとも、その圧倒的な盤面の強さゆえに通常はそれが問題となるようなシチュエーションは少ないのですが、「ラーの翼神竜-球体形」の前には話は別であり、一度盤面を処理してしまえば相手は攻め手の大半を喪失してしまいます。よって返しの「捕食植物ヴェルテ・アナコンダ」を「黄金郷のコンキスタドール」で弾いて勝ちという具合に永続罠に頼るまでもなくゲームが片付いてしまうことすらあるなど、むしろ後手の方が勝てる(※)という奇妙な逆転現象がしばしば発生するのです。

(※もちろん先手の方が流石に勝ちやすいです。念のためですが……)

 そして合計6枚投入できるということは約65%の見込みで初手に引き込めるということで、3回に2回は後手勝利が狙えるということを意味します。これは勇者環境においては絶大な優位性であり、本来は強敵となる【勇者】に対してむしろ当たれば当たるほどボーナスゲームになるという精神的なゆとりを持つことさえできるわけです。

 ただし例外として、「竜星の九支」「虹光の宣告者」らを含めた多段展開をされてしまうと1枚では処理しきれないケースもありますが、当然ながら残りの手札は5枚あるため、よほどハンドの噛み合いが悪くなければ大抵返しきれるのではないでしょうか。

 

原始生命態ニビル

 賛否両論あるカードですが、個人的には賛成寄りのカードということで最大枚数投入しています。

 既に多くの場所で言われているように、現在は【勇者】ギミックによって容易に止められてしまう弱点から評価を落としているカードであり、実際に「聖殿の水遣い」が初手から飛び出してきて出番が終了することも多々あります。しかし、「増殖するG」などと比べれば多少は通りやすく、また通った際のリターンも大きいため総合的にはメリットが多いと判断しました。

 また、仮に「流離のグリフォンライダー」に止められてしまった場合であっても、裏を返せば相手の妨害を1枚剥がしていることに変わりはないため、永続罠とセットで盤面を返せるケースがあるというのも見逃せません。流石に最大展開をされてしまった際にはどうにもならないことが多いですが、それは他の大半の誘発に対しても言えることであり、むしろ1枚でクリティカルヒットの可能性があるというだけでも「原始生命態ニビル」は十分に恵まれたカードなのではないでしょうか。

 加えて「溶岩魔神ラヴァ・ゴーレム」「ラーの翼神竜-球体形」らと違い先攻で握っても腐ることがなく、そのまま妨害として使える点も優秀です。上述の通り単体では対処されやすいとはいえ罠の補助があれば話は別であり、しかるべきタイミングで投げればゲームの流れを決定付けるだけの威力を発揮してくれます。

 代表的なのが「騎竜ドラコバック」を相手にしたケースであり、永続罠をバウンスされた後に「原始生命態ニビル」で展開を止め、返しのターンで再び蓋をするという動きを取ることができます。これは永続2枚もしくは永続とそれを守る札を構えているのと同等の働きであり、言ってしまえば「スキルドレイン」にも「黄金郷のコンキスタドール」にも、そして上手くいけば「ラーの翼神竜-球体形」にもなれるワイルドカードとして見ることができるのです。

 このように、「原始生命態ニビル」は欠点がありつつもそれ以上に利点の多いカードであり、少なくとも【エルドリッチ】というデッキにとっては現環境でも案外悪くないカードであることが分かります。

 その他、細かいところでは「原始生命態ニビル」にチェーンして「紅き血染めのエルドリクシル」などを発動(※)することでリリース効果のみを使用して「原始生命態ニビル」本体は手札にキープする小技などもあるため、覚えておくとたまに役に立つかもしれません。

(※ただし、先に「紅き血染めのエルドリクシル」の方を発動してしまうと「原始生命態ニビル」を使えなくなるため注意が必要です)

 

不採用のカードについて

 次は不採用としたカードについて言及していきます。

 

【勇者】ギミック

 まずは【勇者】ギミックです。

 誤解のないように述べておくと、【勇者】ギミックが【エルドリッチ】と相性に優れていること自体は間違いありません。先手はもちろん後手においても高いパワーを発揮できる稀有なギミックであり、混ぜ物をするのであれば依然有力候補の一角ではあります。

 しかし、これを搭載するために7枠ものスペースを空けるとなると永続罠のスロットを減らすしかなく、それは流石に本末転倒ではないかということで今回は不採用としています。実際、勇者の代わりに永続の2枚目を引いたとしても盤面の強度にそこまで差は出ない(※)一方、逆に勇者だけを引いてしまうと全く嬉しくないため、そうした裏目の存在も考慮すると中々採用には踏み切れません。

(※むしろ永続を2枚構える方が強いシチュエーションも多いです)

 ただ、そうは言っても天下の【勇者】のパワーはやはり魅力的であり、何とか使えないものかとメインギミックを削ったりなど試行錯誤はしましたが、どうしても上手い配分を見つけることができませんでした。

 というより【勇者】を強く使いたいというだけならば他にもっと良いデッキがあるような気はするため、いっそ素直に【エルドリッチ】以外のデッキを土台にしてしまった方が良いかもしれません。

 

永久に輝けし黄金郷

 優秀なカードであることは確かですが、初手に1人で来てしまった時があまりにも弱すぎます。

 従来であれば単体で引いても序盤をやり過ごせばそこまで負担になることもなかったのですが、現環境のゲームスピードにはついていけません。これがデッキに残っていて助かった、というゲームよりも手札のこれが別のカードなら勝てていたというゲームの方が多く、最終的にはデッキから抜けていきました。

 

センサー万別

 なぜ入っていないのか、という疑問の声もあるかと思います。

 理由は至って単純で、そもそも持っていないからです。

 強いカードなのは理解していますし、余裕があればそのうち生成しようとは思っているのですが、どうにも作る気が起きず未所持の状態が続いています。よほど特殊な環境でもなければ広い相手に刺さる優秀な永続罠であり、もし持っているなら優先的に採用を検討できるカードでしょう。

 ただ、逆に言えば無くても何とかなる枠ではあるため、無理して作るほどのカードではないのかもしれません。

 

苦手対面【電脳堺】対策について

 デッキの解説に関しては以上ですが、最後に補足として【エルドリッチ】を握る上では避けては通れない【電脳堺】に対する心構えについても触れておきます。

 結論としては【電脳堺】が増えてきたら【エルドリッチ】を使うのは素直に諦めた方がいいという話なのですが、これだけで終わってしまうのも流石にどうかと思うため、もう少しだけ掘り下げて説明していきます。

 【電脳堺】と聞くと代名詞である「真竜皇V.F.D.」の脅威が頭に浮かびますが、【エルドリッチ】に限っては問題はそこではなく、メインギミックである「電脳堺門-朱雀」「電脳堺狐-仙々」らの存在です。

 置物を無限に割ってくる「電脳堺門-朱雀」は当然として、リソースを無限に断ち切ってくる「電脳堺狐-仙々」も定着を許せばそのゲームに勝ち目はありません。片方だけであっても【エルドリッチ】には厳しいカードですが、ギミックの関係上どちらか片方だけということはほぼなく、この両面の対処を同時に強いてくるというのが強烈です。

 つまり普通にデッキが回った場合は言うまでもなく、相手が事故を起こして「電脳堺門-朱雀」「電脳堺狐-仙々」などの本来弱い盤面で止まった場合ですら極めて苦しい状況に陥るため、実質的には先攻を取られた時点でほぼ詰みに追い込まれます。

 一方、こちらが先攻を取れた場合は流石に有利を取れると思いきや、実際にはかなり綱渡りなプレイを要求されます。もちろん永続罠が噛み合いさえすればイージーウィンが狙えるケースもありますが、大抵はそう上手く事は運びません。

 具体的には、最強カードのはずの「スキルドレイン」は【電脳堺】の共通効果に無力であり、天敵である「電脳堺門-朱雀」のサーチを許してしまいます。「御前試合」などに関しても風属性を先出しするといった形でケアされることが多く、やはり単体では少々心もとない制圧力しか発揮できません。

 とはいえ、【エルドリッチ】にも「黄金郷のコンキスタドール」という心強い味方はおり、これが無制限であった頃は案外上手い具合に何とかなることも多かったのですが、制限カードになってしまった今では相当に立ち回りを制限されてしまいます。安易に初動を止めるために使ってしまえば後が続かず、かと言って「電脳堺門-朱雀」に当てるために温存すれば「電脳堺狐-仙々」の方が出てきてしまうなど、正直【エルドリッチ】のメインギミックだけでは割とどうしようもありません。

 要するに結局は永続とセットで抑え込むしかないわけですが、しかしそもそもその永続が「電脳堺門-朱雀」に対処できないから苦労しているのだという具合に話が堂々巡りしてしまい、はっきり言ってデッキ単位で相性が悪すぎます。これを無理やり解決しようと思うと対【電脳堺】を意識したカードを積み増すくらいしかありませんが、流石にそこまでするくらいなら最初から別のデッキを使えばよく、やはり結論としては【エルドリッチ】自体を諦めてしまった方がいいという形になるわけです。

 まとめると、【エルドリッチ】にとって【電脳堺】は先後にかかわらず重い不利がついてしまう対面であり、電脳堺門-朱雀」というカードはタイムマシンで無かったことにしてほしいと思ってしまう程度には苦手とする相手です。実際のところ【勇者】が増えたから、というよりはその影響で【電脳堺】の数が減ったからこそ【エルドリッチ】を選択できたと言っても過言ではないほどで、今後の環境の推移によっては一気に立場が悪くなってしまうリスクを抱えていることは否めないデッキ(※)なのかもしれません。

(※【メタビート】に属する以上は当然とも言えますが……)

 

【まとめ】

 【ラヴァ玉エルドリッチ】についての解説は以上です。

 「騎竜ドラコバック」という最強お手軽バック剥がしカードがある今【エルドリッチ】を握るのは一見非効率にも思えますが、今期において後手でも安定して勝ち目があるという意味はそれほどまでに重く、トータルではプラスの勝率を出すことができました。

 とはいえ、上述の通り弱点もはっきりしている関係上デュエリストカップで使用するかどうかはまだ未定ですが、環境次第ではかなり良いポジションにつけるデッキではありますので、もしよければ参考にしていただければ幸いです。

 ここまで目を通していただき、ありがとうございます。

 

Posted by 遊史