トーチゴーレムが禁止カードになった理由
・前書き
・トーチリンク展開 むしろなぜ今まで生きていたのか
・無限泡影γを自動でケアできる理不尽さ
・ダーク・オカルティズム等 サーチ手段も増えていた
・FWDのエラッタ復帰との関係性について
・まとめ
【前書き】
「トーチ・ゴーレム」というモンスターが存在します。
トーチ・ゴーレム
特殊召喚・効果モンスター
星8/闇属性/悪魔族
攻撃力3000/守備力300
このカードは通常召喚できない。自分フィールドに「トーチトークン」(悪魔族・闇・星1・攻/守0)2体を攻撃表示で特殊召喚する事によって相手フィールドに特殊召喚できる。
このカードを特殊召喚するターン、自分は通常召喚できない。
言わずと知れた1人リンク爆稼ぎアドモンスターであり、恐らくは現カードプールにおける最強筆頭候補のパワーカードと言って差し支えない存在です。エクストラデッキに固定枠を要求するとはいえ単一のカードとしては異常なパワーを持っており、これまで多くのゲームを1枚で雑に壊してきました。
実際のところ、「トーチ・ゴーレム」のカードパワーは並の禁止カードを凌駕しているとの声も多く、それを裏付けるように2021年1月(※)の制限改訂をもってとうとう禁止カード行きを宣告された格好です。
(※ちなみに、海外では2年前の時点でとっくに禁止行きになっていました)
この記事では、そんな「トーチ・ゴーレム」がなぜ禁止カード指定を受けるに至ったのかについて解説いたします。
トーチリンク展開 むしろなぜ今まで生きていたのか
これに関しては複数の理由が存在しますが、もちろん中核的な要因となったのは悪名高いトーチリンク展開です。
①:トーチトークン2体を特殊召喚しつつ「トーチ・ゴーレム」をEXモンスターゾーンの正面に特殊召喚する。
②:トーチトークンAを「リンクリボー」に、トーチトークンBを「リンク・スパイダー」にそれぞれ変換する。(※別パターンでも可)
③:「リンクリボー」「リンク・スパイダー」を素材に「アカシック・マジシャン」をリンク召喚(※)し、効果で「トーチ・ゴーレム」を手札に戻す。(※位置は「トーチ・ゴーレム」の正面)
④:回収した「トーチ・ゴーレム」を再び特殊召喚し、トーチトークン2体を素材に「セキュリティ・ドラゴン」をリンク召喚する。(※「アカシック・マジシャン」の宣言効果を使ってもいい)
⑤:「セキュリティ・ドラゴン」の効果で「トーチ・ゴーレム」を手札に戻す。
⑥:もう一度「トーチ・ゴーレム」を特殊召喚する。
⑦:その後は好きに展開。
果たしてこのコンボを知らない現役プレイヤーが存在するのかというレベルの話ですが、上記の動きにより「トーチ・ゴーレム」1枚で簡単に6リンクまで繋がってしまいます。一応のデメリットとして通常召喚不可の制約もかかりますが、これも「鎖龍蛇-スカルデット」などと併用するだけで実質帳消しにできるなど、展開カードとしては明らかにリスクとリターンが釣り合っていません。
また、「ファイアウォール・ドラゴン」が現役を務めていた頃は更に追加でリンク数を稼ぐことができた(※)ため、恐ろしいことに上記コンボですらフルパワーではなかったほどです。つまりカードプール次第でまだ強くなる余地があるということで、裏を返せば「トーチ・ゴーレム」の存在が新規のリンクモンスターのカードデザインを阻害している側面すらありました。
(※詳しくは後述しますが、この点についても今回の規制とは無関係ではないと考えられます)
そのため、「トーチ・ゴーレム」に関してはこれが禁止カードになったことを議論する以前に、むしろなぜ今まで生き残っていたのかを疑問に思うべきカードだったと言えるでしょう。
無限泡影γを自動でケアできる理不尽さ
加えて、展開の過程で自然と相手フィールドを埋めることが可能だった点も「トーチ・ゴーレム」の有用性を強烈に後押ししていました。
無限泡影(むげんほうよう)
通常罠
自分フィールドにカードが存在しない場合、このカードの発動は手札からもできる。
①:相手フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターの効果をターン終了時まで無効にする。
セットされていたこのカードを発動した場合、さらにこのターン、このカードと同じ縦列の他の魔法・罠カードの効果は無効化される。
というより、個人的にはこれが「トーチ・ゴーレム」最大の強みだったとすら考えていますが、このカードを使うだけで先攻1ターン目だろうとお構いなしにモンスターを押し付けることができてしまいます。よって「無限泡影」「PSYフレームギア・γ」などの「フィールドが空いていること」を発動条件とするカードを自動的に無力化できた(※)ため、展開カードでありながら何故か疑似的な誘発メタとしても機能していたわけです。
(※しかも割り込むタイミングすらないため、手札に握られた時点でどうしようもありません)
実際に【未界域】では先攻時のゲームで「マジックテンペスター」を通すための重要なケアカードとしての役割も兼ねており、下記項目で触れている「ダーク・オカルティズム」などと合わせてしばしば対話のやり取りを否定してきました。単純にトーチ展開自体の貫通力はもちろん、何より最終盤面付近まで誘発を温存するという基本的なプレイングを実質的に封殺することができ、結果的にデッキ全体の誘発貫通能力を高めることができたからです。
その他、カジュアルレベルでは押し付け能力を活かしてバーンカードの使用条件を満たす(※)ために使われることもあり、総じて全方位に危険性を主張しているカードだったのではないでしょうか。
(※これも有名な話ですが、「トーチ・ゴーレム」1枚初動の先攻ワンキルコンボも開発されています)
ダーク・オカルティズム等 サーチ手段も増えていた
残念ながら理由はまだあります。
「ダーク・オカルティズム」を筆頭に、「トーチ・ゴーレム」のサーチ手段が増加し続けていた背景も無視できません。
ダーク・オカルティズム
通常魔法
このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:手札を1枚捨てて発動できる。自分のデッキ・墓地から「ウィジャ盤」1枚または悪魔族・レベル8モンスター1体を選んで手札に加える。
②:墓地のこのカードを除外して発動できる。自分の手札・墓地の「ウィジャ盤」及び「死のメッセージ」カードの中から、任意の数だけ選び(同名カードは1枚まで)、好きな順番でデッキの一番下に戻す。その後、戻した数だけ自分はデッキからドローする。この効果はこのカードが墓地へ送られたターンには発動できない。
具体的には、つい最近出たばかりの「混沌領域」に加え、あまり見かけないカードながら「魔導契約の扉」などの確定サーチ手段が存在するため、制限カードでありながら最大10枚体制にまで枚数を水増しすることができました。
いずれも手札が減るサーチという線の細い手段ではあるものの、それでも制限カードを引き込む手段がこれだけあるというのはやはり問題であり、この点も今回の規制に大きく関係していたと言えるでしょう。
また、「ダーク・オカルティズム」に関して言えば「溶岩魔神ラヴァ・ゴーレム」などのメタカードとサーチ先を共有できる点も侮れない強みとなっており、結果的にトーチ出張ギミックそのものの使い勝手を向上させていた側面もあります。
「混沌領域」についても似たような状況であり、今後も同じような形で問題を引き起こすことが目に見えていた以上、流石にどうしようもなくなって禁止行きに踏み切ったようなところもあったのかもしれません。
FWDのエラッタ復帰との関係性について
前置きが非常に長くなりましたが、ようやく本題に入ることができます。
既に各所で言われている通り、それでもあえて1つの理由を挙げるとすれば、同改訂で発表された「ファイアウォール・ドラゴン」のエラッタ復帰こそが「トーチ・ゴーレム」禁止行きの決定打となったのではないでしょうか。
ファイアウォール・ドラゴン(エラッタ版テキスト)
リンク・効果モンスター
リンク4/光属性/サイバース族
攻撃力2500
【リンクマーカー:上/左/右/下】
モンスター2体以上
このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:このカードがフィールドに表側表示で存在する限り1度だけ、このカードの相互リンク先のモンスターの数まで、自分または相手の、フィールド・墓地のモンスターを対象として発動できる。そのモンスターを持ち主の手札に戻す。この効果は相手ターンでも発動できる。
②:このカードのリンク先のモンスターが、戦闘で破壊された場合、または墓地へ送られた場合に発動できる。手札からサイバース族モンスター1体を特殊召喚する。
ここでは「ファイアウォール・ドラゴン」についての言及は避けますが、エラッタ後のテキストであっても「トーチ・ゴーレム」の反復横跳びが1回増えてしまうため、もうその時点で救いようがありません。一応、特殊召喚効果がサイバース族に限定されたため汎用展開ギミックとしては使えなくなっています(※)が、それでもフリーチェーンのバウンスや制限のないサルベージ、あるいは「アカシック・マジシャン」のヒット率が2倍になるといった多くの恩恵を受けることができてしまうわけです。
(※つまり、デッキによっては全盛期とほぼ同じパワーを発揮してしまいます)
こんな調子ではいくらなんでもノータッチのまま「ファイアウォール・ドラゴン」を復帰させてしまえば色々と物議を醸すことは明白であり、そうした事態を防ぐ意味でも「トーチ・ゴーレム」の禁止行きを決めた可能性は少なくないでしょう。
逆に言えば、「ファイアウォール・ドラゴン」のエラッタが決まらなければ「トーチ・ゴーレム」の禁止行きが更に引き延ばされていたのかもしれないと思うと、多少複雑ながら正直胸を撫で下ろす思いではありますが……。
【まとめ】
「トーチ・ゴーレム」についての話は以上です。
誕生時点では【トーチ・テンペスト】や【ダークガイア】など一部のデッキでしか使い道がないマイナーカードという扱いでしたが、リンク召喚導入後は一転してOCG屈指のパワーカードに変貌を遂げています。その後は準制限、制限と順を追って規制強化の道を辿り、遠からず禁止行きになるとの噂もありましたが、実際にはそれから3年近くに渡って野放しにされる(※)という個性的な生涯を送ることになりました。
(※とはいえ常に使われていたというわけではないため、俯瞰視点においては比較的影響力が小さかったという背景もあるにはあります)
個人的な意見としては、この手のちゃぶ台返し系カードは採用率どうこう以前にあまり好きになれないため、できることなら二度と顔を見たくないというのが正直な気持ちではあります。
ここまで目を通していただき、ありがとうございます。
ディスカッション
コメント一覧
多重影分身のチートゴーレムも遂に禁止ですか
昔は生け贄素材精製出来てもそのターンに生け贄召喚出来ないから、青血の召喚やヘルテンペスト等で見るテクニカルなカードだったのに…。
10期中盤に久しぶりに復帰して、久しぶりにトーチを見たら反復横飛びからのトークン乱造してる姿を見て、トーチってこんな効果だったっけ?って概念崩壊したのと、明らかにルールの変化で壊れた機械の如くおかしな挙動取ってる姿に哀愁を感じました。
個人的にはトークンを素材に出来るようにしたのが全ての過ちなのかなと…。
出せれば巨神鳥雷鳥等何でも出来るトマホークとか、1枚でスパイダートロイメアアクセスコードまで出来るスケゴとかもいつかは禁止行きになるのかなって思います
コメントありがとうございます。
リンク召喚とトークン絡みのルール調整如何については中々難しい問題ですね……。個人的にはルール変更はそういうものとだけ考えるようにしていますが、それでもできる限りバランスを考えて欲しいという思いはあります。
トマホークは今はまだ許されていますが、将来的にはいずれ禁止行きになるであろうことが実質確定しているタイプのカードだと思っています。実際、海外では既に禁止行きになっていますし、これがトーチと同じ道を辿るのもそう遠い未来の話ではないのかもしれません。
トークンがアドになるリンク召喚がいかにおかしいかよくわかる事象。
え?ジャンド?
シンクロ召喚は遂行にチューナー必要だし…
(ならなぜレベステ死んだのかという話である)
コメントありがとうございます。
シンクロ召喚も現役時代は色々と物議を醸したものですが、今では「リンク召喚よりもバランスが取れている」と言われるようになっています。
同様に、これから何世代かしたらリンク召喚も「〇〇召喚よりもバランスが取れているので無罪」と言われるようになるかもしれません。(リンクよりも壊れている召喚法と言われても私の頭ではちょっと思いつきませんが……)
ゴウフウが許されなくてトーチが許されているのが理解できなかったのでようやくって感じの規制ですね
後攻デッキ好きとしては大量展開よりも泡影やγを無効化してくるのがとにかくキツかったので
コメントありがとうございます。
トーチは汎用性で言えばゴウフウほどの手軽さはないとはいえ、総合的なパワーではずば抜けた強さを持っていたように思います。せめてサーチできないならまだギリギリ制限でも許せなくはなかったのですが……。