リバースモンスターの誕生 遊戯王最初の効果モンスター
・前書き
・新たな分類 効果モンスターの誕生
・当時の環境 1999年5月27日 前編
・バウンス効果持ちリバースモンスター ハネハネ
・アドを取れるリバースモンスター スケルエンジェル
・光の護封剣 更なる評価の浮上
・後編に続く
【前書き】
【第1期の歴史5 OCG最初のコンセプトデッキ 【装備ビート】の誕生】の続きとなります。ご注意ください。
カードゲームとして確実に進歩を重ねる遊戯王OCG。初期に比べてルールは適正に整備され、カードプールの拡大によって原始的なコンセプトデッキも誕生しました。
しかし、それから僅か二日後、当時の常識を覆す出来事が起こります。
効果モンスターの誕生です。
【新たな分類 効果モンスターの誕生】
効果モンスターとは、その名の通り何らかの効果を持ったモンスターを指します。
実質、モンスターカードに魔法・罠カードが内蔵されているようなもので、双方の良いとこ取りとも言えるカードです。
しかし、モンスターカードとしては攻撃力・守備力などのステータスに恵まれず、魔法・罠カードとしては使いたいタイミングで使えないなど、いくつかの欠点を抱えていました。
それでも強力かつ画期的なカードであることに変わりはなく、目新しさも手伝って当時の多くのプレイヤーに注目される形となりました。
この時に誕生したのは効果モンスターの中でも「リバースモンスター」と呼ばれるカード群です。裏側表示から表側表示になった時に誘発する効果を持ちます。
一例として、リバースモンスターの1体である「人喰い虫」のテキストを挙げます。
人喰い虫の表示が表になった時、フィールド上のモンスター1体を破壊する。
フレーバー・テキストの代わりに魔法・罠カードのような効果が記されています。単純な攻撃力・守備力では測れない強さを持ち、モンスターカードの評価基準に新たな指標が生まれた瞬間となっていました。
更に性質上、表側表示になるまでは正体不明となるカードでもあります。これにより、当時のプレイヤー達の間にセットモンスターに対する警戒心が生まれました。
しかし、当時現役だった壁モンスターもまた裏側表示でセットされることがほとんどです。そのため、セットモンスターとのやり取りに「択」の概念が生まれていくことになります。
例えば、自分フィールドに下級モンスターが2体存在し、相手フィールドにセットモンスター1体が存在するというシチュエーションに遭遇したと仮定します。
この時、自分のライフポイントが残り100で、手札に「青眼の白龍」と「カース・オブ・ドラゴン」を1枚ずつ握っているとしたら、どのように動くのが最善でしょうか?
「青眼の白龍」を召喚した場合、セットモンスターが「人喰い虫」だった場合に裏目となります。3:1交換を強要される上にフィールドはがら空きとなり、返しのダイレクトアタックによって速やかに敗北を迎えることになるでしょう。
しかし、下級モンスターでセットモンスターを攻撃していれば、「人喰い虫」の除去効果を下級モンスターに無駄撃ちさせることができ、更にメインフェイズ2で「カース・オブ・ドラゴン」を召喚して盤面を固めることができます。
よって、セットモンスターが「人喰い虫」である場合は下級モンスターによる攻撃が正答となります。
では、セットモンスターが「ホーリー・エルフ」だった場合はどうでしょうか?
下級モンスターで殴ってしまった場合、守備力2000は越えられず、反射ダメージによって即死します。言うまでもなく最悪の裏目であり、何とも言えない不完全燃焼感に襲われることとなるでしょう。
しかし、「青眼の白龍」を召喚していれば、壁モンスターを粉砕した上で盤面に3000打点を残すことができます。一転して有利な状況に持ち込めるため、場合によってはそのままゲームを決めてしまうことすらできるかもしれません。
つまり、セットモンスターが「ホーリー・エルフ」である場合は「青眼の白龍」の召喚が正答となります。
このように、まさに究極の選択とも言える読み合いを生み出したのがリバースモンスターであり、これらのカード群の誕生は当時の環境に多大な影響を与えました。
【当時の環境 1999年5月27日 前編】
1999年5月27日、「Vol.3」が販売され、新たに45種類のカードが誕生しました。遊戯王OCG全体のカードプールは257種類となり、1000種類到達まで4分の1を踏破する形となりました。
さて、この時に起きた中心的な出来事は、もちろん上述した通り効果モンスターの誕生です。
全5種類のリバースモンスターが誕生し、その内の3種類は実戦級と言って差し支えない強力な効果を持っていました。ここには上記で触れた「人喰い虫」も含まれるため、それを除いて解説いたします。
バウンス効果持ちリバースモンスター ハネハネ
1体目は「ハネハネ」というカードです。
ハネハネの表示が表になった時、フィールド上のモンスター1体を持ち主の手札に戻す。
リバース時にフィールドのモンスター1体をバウンスする効果を持ちます。「人喰い虫」と違って完全な除去とはならないため、それと比較してややカードパワーでは劣っていました。
しかし、それでも当時は貴重な盤面解決能力を持ったモンスターであり、上級モンスターや装備カードをつけたモンスターに対する有効なカウンターとして機能しました。
【装備ビート(属性軸)】に対して強く出られるということもあり、「人喰い虫」と両方採用されるケースが大半となっていました。
アドを取れるリバースモンスター スケルエンジェル
2体目は「スケルエンジェル」というカードです。
スケルエンジェルの表示が表になった時、自分のデッキからカードを1枚ひく。
リバース時にデッキから1枚ドローする効果を持っています。上記の2種と違い盤面に触れられない弱さがありましたが、一度限りの壁になりつつデッキを掘り進められるカードとして、しばしばデッキの潤滑油扱いで投入されていました。
ただし、一定のテンポ・アドバンテージの損失があるため、無条件でデッキに入るカードではありませんでした。
光の護封剣 更なる評価の浮上
また、リバースモンスターの誕生により、「光の護封剣」が二重の意味で更なる強化を受けた時期でもあります。
自分がリバースモンスターを用いる場合、セットしたモンスターを攻撃から守り、自分のターンで反転召喚することで、リバース効果を使用しつつ生け贄要因として残せます。
アドバンテージ面で非常に「美味しい」使い方であり、リソースを無駄なく活用することで優位に立つことができます。「スケルエンジェル」で1枚ドローした後、それを生贄に「カース・オブ・ドラゴン」を召喚する動きは、ディスアドバンテージを相殺できるため非常に強い動きでした。
逆に相手のリバースモンスターに対しては、発動時に相手のセットモンスターを表側表示にする効果が有効に働きます。
正体不明のセットモンスターを強制的に表側表示にできるため、上記の読み合いの面でかなり優位に立てるほか、リバース効果を無駄撃ちさせる使い方もできます。
特に、「人喰い虫」「ハネハネ」の効果は強制的に発動するものだったため、上手く暴発させてやれば逆に相手モンスターを自滅させることすら可能でした。
【後編に続く】
このように、リバースモンスターの誕生は環境に大きな変化を及ぼしました。
しかし、この時、たった1枚で環境を揺るがす凶悪なカードが誕生したという事実を、無視する訳にはいかないでしょう。
「強欲な壺」という魔法カードです。
後編に続きます。
ここまで目を通していただき、ありがとうございます。
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