森の番人グリーンバブーン全盛期 エラッタ前のあの頃
・前書き
・【獣族】超強化 旧裁定バブーンの反則的な強さ
・専用デッキ【バブーン】の成立 獣の脳筋ビート
・天敵は除外系カード 【閃光ガジェット】が苦しかった時代
・スキルドレインの発見 そして【スキドレバブーン】へ
・弱点は事故率の高さ バブーンを引けなければ自滅?
・当時の環境 2006年3月20日
・まとめ
【前書き】
【第4期の歴史28 制限改訂2006/3/1 第4期最後の制限改訂 【マッチキル】の解体】の続きとなります。ご注意ください。
第4期最後の制限改訂で環境が整えられ、遊戯王OCGはカードゲームとしての健全さを取り戻しました。第4期も残すところあと僅かとなり、次期に向けて新たな風が吹いています。
以降はカードプールの大きな更新もなく、メタゲームの変動も穏やかな状況です。この流れを保ったまま第5期に突入するかに思えた遊戯王OCGでしたが、続く3月下旬に突如として大型新人が現れました。
【獣族】超強化 旧裁定バブーンの反則的な強さ
2006年3月20日、Vジャンプの定期購読特典から新規カードが2枚現れ、遊戯王OCG全体のカードプールは2385種類に増加しています。
片方は限定カードの例に漏れず観賞用の性能でしたが、もう片方は前書きにある通り、当時のメタゲームに多大な影響を及ぼすほどの強さを誇っていました。
「森の番人グリーン・バブーン(エラッタ前)」の誕生です。
自分フィールド上に存在する獣族モンスターが破壊され墓地へ送られた時、1000ライフポイントを払う事で手札または墓地からこのカードを特殊召喚する事ができる。
自分フィールドの獣族モンスターが破壊され墓地へ送られた時、なんと1000LPをコストに手札・墓地から特殊召喚できる効果を持っています。現在では裁定変更(※)によって条件が厳しくなっていますが、この頃はどんな方法で破壊されても条件を満たすことができました。
(※詳しくは下記記事の一項目で言及しています)
効果の発動条件が非常に緩く、またコストもカード・アドバンテージを失わないなど、最上級モンスターとしては驚異的な軽さです。攻撃力も2600と十分すぎる打点であり、特に当時は「帝ライン」を超えていることからアタッカーとして高い信頼性を備えていました。
さらに、これ自身が獣族であるため、同名カードが揃えば実質不死身のモンスターにもなります。また旧裁定では同一チェーン上で複数体の「森の番人グリーン・バブーン(エラッタ前)」を同時に特殊召喚することもできたため、状況によってはこれが一瞬で3体並ぶことすらあったほどです。
おまけに当時は「おろかな埋葬」が無制限カードであり、これを墓地に落とすのも極めて容易なことでした。
よってデッキのメインアタッカーとして機能させることはもちろん、上記の自己再生ループを狙って成立させるのも見た目ほど難しいことではありません。流石にバブーン3連打を安定して決めることは困難でしたが、そもそもそこまでしなくともゲームに勝つには十分です。
いずれにしても、カードパワー設定という意味では当時の水準を明らかに超えた反則的な強さを誇っており、間もなく専用デッキの開発が進んでいくことになります。
専用デッキ【バブーン】の成立 獣の脳筋ビート
【バブーン】はデッキ名の通り、「森の番人グリーン・バブーン(エラッタ前)」をメインアタッカーに据えたハイビートデッキです。一言で言えば「獣族ビートにバブーンを投入したデッキ」であり、大まかなカード選択はそちらに準じます。
モンスターカード(18枚) | |
---|---|
×3枚 | 暗黒の狂犬 |
巨大ネズミ | |
素早いモモンガ | |
怒れる類人猿 | |
森の番人グリーン・バブーン(エラッタ前) | |
×2枚 | 王虎ワンフー |
×1枚 | 魔導戦士 ブレイカー |
魔法カード(16枚) | |
×3枚 | おろかな埋葬 |
地砕き | |
×2枚 | エネミーコントローラー |
×1枚 | 押収 |
大嵐 | |
強奪 | |
サイクロン | |
月の書 | |
天使の施し | |
貪欲な壺 | |
早すぎた埋葬 | |
罠カード(6枚) | |
×3枚 | スキルドレイン |
×2枚 | |
×1枚 | 激流葬 |
聖なるバリア -ミラーフォース- | |
リビングデッドの呼び声 | |
エクストラデッキ(0枚) | |
×3枚 | |
×2枚 | |
×1枚 |
しかし、内部的には大きく構造が異なっており、デッキパワーの高さは通常の【獣族】の比ではありません。単純に「森の番人グリーン・バブーン(エラッタ前)」が強いということもありますが、それ以上に「デッキ内の全ての獣族モンスターが破壊耐性を内蔵しているに等しい」事実が大きなプレッシャーとして作用するからです。
「森の番人グリーン・バブーン(エラッタ前)」が墓地に落ちている場合はもちろん、これが見えていない場合であっても存在を警戒しなければならないため、対戦相手にとっては非常に厳しい圧力となります。除去カードを使用すればカード・アドバンテージを失い、戦闘破壊でも等価交換にしかなりません。
それどころか最上級モンスターの展開を許してしまっている以上、ボート・アドバンテージ面ではどう足掻いても損を押し付けられている形です。しかも一度で終わる話ではなく、後続の獣族モンスターが現れれば再びこの状況に逆戻りします。
最悪なのは「森の番人グリーン・バブーン(エラッタ前)」が2体揃ってしまうことで、こうなればもはや真正面からは太刀打ちできなくなるでしょう。
このように、【バブーン】の強みは「森の番人グリーン・バブーン(エラッタ前)」の「存在アドバンテージ」に他ならず、いかにこれを効果的に活かすかにかかっていることが分かります。具体的には、除去カードによる対処を相手に強いることができるモンスター、つまり「戦闘破壊に耐性があるモンスター」を中心にピックアップするのが最適です。
例としては、単純に打点が高い「怒れる類人猿」「暗黒の狂犬」、リクルーターの「巨大ネズミ」「素早いモモンガ」などが挙げられます。これらは戦闘破壊によってディスアドバンテージを負いにくく、対戦相手にリソースの消耗を押し付けられる強みがありました。
天敵は除外系カード 【閃光ガジェット】が苦しかった時代
ただし、デッキの性質として墓地に強く依存している関係上、例によって除外効果持ちのカードが刺さってしまうのは事実です。
特に【バブーン】はモンスター1体1体の性能に難があるため、「森の番人グリーン・バブーン(エラッタ前)」に対処されると総崩れになってしまうことも珍しくありません。
こうした理由から、【閃光ガジェット】や【次元帝】にはデッキ単位で相性差を付けられてしまいます。「カオス・ソーサラー」を擁する【ダークカオス】【サイカリバー】も比較的苦手な相手です。
つまり、当時の主な環境デッキ相手に何らかの形で弱点を晒しており、これを無視してメタゲームを生き抜くことはできません。
スキルドレインの発見 そして【スキドレバブーン】へ
この対抗策として浮上したのが「スキルドレイン」でした。
1000ライフポイントを払う。このカードがフィールド上に存在する限り、フィールド上に表側表示で存在する効果モンスターは全て効果が無効化される。
非常に画期的な発見で、これによって以降の環境ではトップメタの一角に数えられるまでに成長を遂げています。当時は【ガジェット】を筆頭に「モンスター効果重視のデッキ」が流行する一方、墓地発動が大半となる【バブーン】はこの影響をほとんど受けなかったからです。
また、この時期は魔法・罠除去手段を「氷帝メビウス」「賢者ケイローン」に頼ったデッキも少なくなく、間接的に除去耐性を持っているメタカードだったという強みもありました。
この型は俗に【スキドレバブーン】とも呼ばれ、【バブーン】における主流型として定着していくことになります。これ以外にも「王宮のお触れ」を搭載した【お触れバブーン】などが考案されていましたが、少なくとも成績面に限れば【スキドレバブーン】が最も優秀な結果を残していたのではないでしょうか。
弱点は事故率の高さ バブーンを引けなければ自滅?
しかし、実はこの【バブーン】というアーキタイプには1つの大きな欠点がありました。
単刀直入に言えば「そこそこの頻度で事故を起こしてしまう」という問題です。
これまでの話にある通り、【バブーン】が良くも悪くも「森の番人グリーン・バブーン(エラッタ前)」に依存したデッキである以上、これを確保できないゲームでは苦しい戦いを強いられることは避けられません。初手の確率に限れば3~4割で遭遇する事象であり、その後のドローが振るわなければ自滅に近い形で敗北してしまいます。
一応、「スキルドレイン」によって相手の展開を遅らせ、相対的にドロー加速を行える強みはありますが、それでも厳しいウィークポイントであることに変わりはないでしょう。最悪の場合、バニラ化したはずのガジェット1体に殴り負ける悪夢のような展開も決してあり得ないことではありません。
とはいえ最初に結論を述べた通り、そうした弱点を踏まえても【バブーン】が強力なデッキであったことは確かです。実際に当時の選考会でも上位にまで勝ち残り、【バブーン】の持つ地力の高さを見せつけています。
その結果、直近の制限改訂では厳しい規制を受けることになりますが、それも裏返せば「森の番人グリーン・バブーン(エラッタ前)」の強さの証明でもあったのではないでしょうか。
【当時の環境 2006年3月20日】
新勢力【バブーン】の台頭を受け、相対的に【閃光ガジェット】【次元帝】などの除外ビートの評価が上がっています。
またカードレベルの話として、墓地に送らない除去である「奈落の落とし穴」の評価が急上昇した時期でもあります。元々「氷帝メビウス」「賢者ケイローン」からの被害を軽減できる除去として一定の注目を集めていましたが、これ以降は「常に警戒すべきカードの1枚」に名を連ねるようになった印象です。
もちろん、ガジェットなどのリクルーターライン未満のモンスターには触れられず、そうしたマッチアップでは腐りやすいカードであることには注意しなければなりません。とはいえ、そもそもガジェットに除去を当てること自体が骨折り損とされていたため、あまり気にされる欠点ではありませんでした。
その他、サイドデッキレベルの対策カードとしては、「因果切断」や「魂の解放」などが新たに持ち上がっています。
墓地メタとしては「霊滅術師 カイクウ」というライバルが存在しますが、【バブーン】相手には1800打点では戦闘ダメージを通せないシチュエーションも多く、汎用性を犠牲にしてでも確実な対処を優先した結果のカード選択です。
しかし、サイド要員であることを考慮しても限定的なカード選択であることは否めず、この採用の可否はプレイヤーの好みによるところもあったのではないでしょうか。
【まとめ】
「森の番人グリーン・バブーン(エラッタ前)」の誕生によって起こった出来事は以上です。
その高いカードパワーによって参入直後から注目を浴び、並居る強豪を押しのけて環境入りを果たしています。たった1枚のカードが新たなアーキタイプを生み出した格好であり、その影響力の大きさは非常に衝撃的なものだったのではないでしょうか。
補足となりますが、この「森の番人グリーン・バブーン(エラッタ前)」はVジャンプの定期購読特典(半年間)でしか手に入らないカードだったため、一時期はシングル価格10000円前後(※)にまで暴騰していたこともあります。そのため、これが3枚必須となる【バブーン】を組むには数万円の出費を覚悟しなければならず、予算の少ないプレイヤーには中々手が届かないブルジョワデッキという扱いを受けていました。
(※また、制限カード指定後も6000~7000円前後の価格をキープしていました)
そして、遊戯王OCGの第4期の歴史はここまでで以上となります。長時間記事にお付き合いいただき、誠にありがとうございました。
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