【除外デッキ】の概念が生まれた瞬間 マクロコスモスと次元の裂け目

2018年8月17日

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【前書き】

 【第4期の歴史26 遊戯王の歴史 2005年の総括】の続きになります。ご注意ください。

 変遷の2005年が終わりを告げ、遊戯王OCGは7度目の新年を迎えることとなりました。前年、前々年と比較して非常に整ったバランスの環境が構築されており、カードゲームとして成熟期を迎えつつあったことが窺えます。

 後期は【MCV】を筆頭にマッチキルデッキの脅威が見え隠れしましたが、複数の要因から支配的な地位には至らず、暗黒期と言えるほどの領域には陥っていません。以前からは考えられない免疫力の高さであり、それは遊戯王OCGがコンテンツとして体力をつけ始めていたことの表れだったのではないでしょうか。

 上向きの風が吹く第4期終盤にて、遂に最終弾となるレギュラーパック販売が行われます。

 

全体除外カード3種の神器 墓地利用デッキ天下の終わり

 2006年2月16日、レギュラーパック「ENEMY OF JUSTICE」が販売されました。新たに60種類のカードが誕生し、遊戯王OCG全体のカードプールは2376種類に増加しています。

 現在でもよく知られる有名カードをいくつも輩出したパックであり、特に「E-エマージェンシーコール」は【HERO】における必須カードとして今なお活躍しているほどです。他にも、【鳥獣族】最高峰のサポートカード「ゴッドバードアタック」など、ここで生まれた環境クラスのパワーカードは少なくありません。

 変わったところでは、第9期に【マジエク帝】の1キルパーツとして拾い上げられた「ライフチェンジャー」の存在も特筆すべき点に数えられます。この時期を含め以後10年間は全く注目されておらず、これが突然禁止カード行きになるとは誰にも想像できなかったのではないでしょうか。

 

「墓地へ送られるカードは墓地へは行かず除外される」概念

 しかしながら、このパックに収録されていた中で、当時最も注目を集めていたのは上記のカードではありません。

 それは「次元の裂け目」「マクロコスモス」「閃光の追放者」の3枚でした。

墓地へ送られるモンスターは墓地へは行かずゲームから除外される。

自分の手札またはデッキから「原始太陽ヘリオス」1体を特殊召喚する事ができる。また、このカードがフィールド上に存在する限り、墓地へ送られるカードは墓地へは行かずゲームから除外される。

このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、墓地へ送られるカードは墓地へは行かずゲームから除外される。

 いずれも「墓地を除外に置換する」ような効果を持っており、遊戯王OCGの重要な要素の一つを書き換えてしまうルール介入型カードです。他の2枚と違い「次元の裂け目」はモンスターしか除外できませんが、逆にこの性質を利用することもできるため、相互互換の関係にあると言えます。

 とはいえ、これ単体では特に勝利に繋がる働きをするわけでもなく、一見すると何の役に立つか分からないカードにも見えます。しかし実際のところ、これらが環境に参入したことによる影響は極めて多大であり、それこそ天変地異とも言える変革をもたらしていたほどです。

 (ただし、実は永続除外カードはこれらが初出ではなく、第2期初頭に「光の追放者」が現れていました)

 細かい部分まで突き詰めればキリがありませんが、これによって大きく分けて2つの出来事が起こっています。

 1つ目は単純に、墓地を利用するデッキ全般が「カード1枚で壊滅する危険性」を孕むようになったことが挙げられます。

 これまで遊戯王OCGにおける「墓地」は触れることが難しい領域とされており、これに刺さるメタカードはごく一部に限られていました。やや性質が異なりますが、「霊滅術師 カイクウ」が高い評価を受けていたことにはこうした要因も含まれています。

 逆説的に、墓地に強く依存したデッキを使うリスクも大きなものではなく、それは【黄泉帝】や【リクルーターカオス】の当時の流行度から見ても明らかなことです。

 翻って上記3枚に目を向ければ、墓地に対して非常にクリティカルな効果を発揮するカードであることが分かります。墓地そのものを除外に置換するという抜け道の少ないメタ効果を備えているため、これがフィールドに残っている間は墓地利用関連の行動の大半を封殺することが可能です。

 もちろん、除去できたとしても除外されたカードは戻ってきません。よって墓地利用デッキ側が被害を抑えるには「効力を発揮される前にすみやかに除去する」しかなく、対処法が非常に限られます。

 当然のことながら、このカード群の参入によって最も大きなダメージを受けたのは【黄泉帝】でした。

 デッキの核である「黄泉ガエル」の自己再生能力は墓地依存の効果であり、全体除外下では当然効力を発揮できません。【黄泉帝】は魔法・罠除去の面で「氷帝メビウス」に強く依存しているため、そもそも初動を潰されてしまうと身動きがほとんど取れなくなってしまうのです。

 同様に、コンセプト上リクルーターを多用する【リクルーターカオス】も少なくない被害を被っています。

 特に「閃光の追放者」は攻撃力1600の準アタッカーでもあったため、それ自体がリクルーターキラーとして作用していたことも強い逆風に繋がっていました。

 こうした「除外時代」の流れに上手く乗ったのが【ガジェット】であり、以降は【閃光ガジェット】として明確に型の派生が進んでいます。上述の理由により【黄泉帝】【リクルーターカオス】に強く、またその打点から【ガジェット】同士のミラーマッチでも最低限の働きが期待できたからです。

 将来的に【バブーン】や【未来オーバー】が台頭し始めてからはこの流れは決定的なものとなり、後期はほぼ全ての【ガジェット】の型が【閃光ガジェット】へと変遷することになりました。実際に当時の選考会でも【閃光ガジェット】は最大勢力となり、日本代表プレイヤー4名中3名がこれを使用しています。

 

除外利用戦法の確立 【次元ビート】の成立

 ただし、この「除外時代」の波に乗ったデッキは【ガジェット】だけではありません。全体除外をメタカード、つまり妨害に使うだけでなく、むしろ強みとして活用するデッキの開発が進んでいくことになります。

 【次元ビート】の成立です。

 これこそが2つ目の出来事であり、以降の時代では1つのアーキタイプとして広く浸透していきました。非常に種類が豊富、かつ時代に応じて姿を変えるデッキであるため、決まった構築などは基本的に存在しません。

 この時代においては【次元帝】として環境に浮上しています。

 【次元帝】はその名の通り、全体除外カードによって相手の妨害を行うとともに、除外ギミックを利用して帝モンスターの展開に繋げるデッキです。全体除外下では「異次元の生還者」「異次元の偵察機」が不死身となることに着目し、帝モンスターの生け贄要因として活用することを狙います。

 要は【黄泉帝】の「黄泉ガエル」を除外ギミックに置き換えたようなデッキであり、広義では【帝コントロール】に属しているアーキタイプです。2週間後の制限改訂で【黄泉帝】が弱体化した後に開発が進んでおり、事実上はその後継デッキでもありました。

 【黄泉帝】を上回る点としましては、やはり何と言っても全体除外によるメタ性能の高さが挙げられます。こちらの展開がそのまま相手への妨害として作用するため、マッチアップによっては「戦わずして勝ってしまう」ケースも少なくありません。

 単体では役に立たない「黄泉ガエル」と異なり、「異次元の生還者」が優秀なアタッカーを兼ねることも大きな強みです。この時期は下級モンスターの平均打点も減少傾向にあったため、戦闘破壊にも耐性がある「ヴァンパイア・ロード」のような感覚で運用することができます。

 ただし、複雑なギミックを搭載している関係上、デッキの事故率は【黄泉帝】以上に悪化していることは確かです。

 「黄泉ガエル」さえ墓地に落とせばよかった【黄泉帝】と違い、全体除外カードと帰還モンスターの両方を同時に揃えなければならない不安定さは決して看過できません。もちろん、除外カードを割られてしまえばギミックが崩壊してしまうため、これを守る手段もどのような形にせよ必須です。

 こうした安定感の無さはトーナメントシーンにおいては苦しい欠点であり、メタデッキとしての活躍は【閃光ガジェット】に譲る形に収まっています。総合的なデッキパワーも【黄泉帝】ほど高いわけではなく、結局2006年後期を待たずに自然衰退するという結末を迎えました。

 とはいえ、環境によっては時折浮上することもあり、愛好家の間では細く長く開発が行われていたデッキでもあったのではないでしょうか。

 

【まとめ】

 レギュラーパック「ENEMY OF JUSTICE」の販売によって起こった出来事は以上です。

 全体除外カードという新たな分類のメタカードにより、当時の2大墓地利用デッキであった【黄泉帝】【リクルーターカオス】らが相対的に大きなダメージを負いました。それどころか、今後現れる全ての墓地利用デッキがこれに注意を払わなければならなくなったなど、極めて重大な変革へと繋がっています。

 とはいえ、どちらのデッキも元々の地力が高く、これによって壊滅的な被害を被っていたわけではありません。そもそも「閃光の追放者」はともかく、残りの2枚はメインデッキから積まれるようなカードでもないため、基本的にはサイド戦以降の話だったことは事実です。

 つまるところ、それは遊戯王OCGというゲームが「1枚のカードで揺れ動くほどシンプルなものではなくなっていた」ということだったのかもしれません。

 ここまで目を通していただき、ありがとうございます。

 

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