ヴェルズ・オピオン地味つよ時代 【ヴェルズラギア】環境入り

2019年7月29日

【前書き】

 【第7期の歴史27 遊戯王の歴史 2011年の総括】の続きになります。ご注意ください。

 2011年が終わりを告げ、遊戯王OCGは13度目の新年を迎えることとなりました。2010年と同様にデザイナーズデッキの躍進が著しい時代でしたが、ゲームバランスに関しては比較的良調整がなされており、また新たに実装されたエクシーズ召喚システムも「強すぎず弱すぎず」の理想的なバランスに仕上がっていたと言えるでしょう。

 一方で、【甲虫装機】や【ゼンマイハンデス】のような従来の常識を無視した凶悪なデッキも頭角を現すなど、一部に危険な兆候が見られた1年でもありました。

 第7期も残すところ僅かとなる2012年初頭の折、1月下旬にデュエルターミナルから強力なルーキーが姿を見せることになります。

 

ヴェルズ・オピオン誕生 【ヴェルズ】不動のエース

 2012年1月24日、デュエルターミナル「-破滅の邪龍 ウロボロス!!-」の稼働が開始されました。新たに40種類のカードが誕生し、遊戯王OCG全体のカードプールは5236種類に増加しています。

 DTシリーズ新規弾(※)としては最後にあたるタイトルであり、また新規枠そのものも従来のDTシリーズと比べて10枠多く取られていました。

(※これ以降のクロニクルシリーズは過去DTシリーズの再録弾です)

 もちろん、内容に関しても他のDTシリーズと遜色なく、ブリキンギョ」や「ヴェルズ・サンダーバード」、「セイクリッド・トレミスM7」などの優良モンスターのほか、イビリチュア・ジールギガス」を筆頭とする各種カテゴリ専用サポートの充実ぶりも目を引きます。

 とはいえ、当弾の中で最大の有望株を挙げるのであれば、まず間違いなく「ヴェルズ・オピオン」が持ち上がるのではないでしょうか。

「ヴェルズ」と名のついたレベル4モンスター×2
エクシーズ素材を持っているこのカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、お互いにレベル5以上のモンスターを特殊召喚できない。
また、1ターンに1度、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除いて発動できる。デッキから「侵略の」と名のついた魔法・罠カード1枚を手札に加える。

 言わずと知れた【ヴェルズ】不動のエースであり、素材縛りのあるエクシーズモンスターの中でも屈指の強カードに数えられます。なんとレベル5以上のモンスターの特殊召喚を永続的に封じるというシンプルに凶悪な制圧効果を内蔵しており、刺さる相手にはとことん刺さる強烈なメタモンスターと言えるでしょう。

 加えて、エクシーズ素材を1つ取り除くことで「侵略の」魔法・罠カードをサーチする効果も備えており、【ヴェルズ】の潤滑油としてはもちろん、単純に手札を増やせるアドモンスターとしても非常に優秀です。このサーチ先に「侵略の汎発感染」という使い勝手の良い耐性付与カードが存在することも「ヴェルズ・オピオン」の有用性を高め、まさに【ヴェルズ】の核と言うべき重要なモンスターに他なりません。

 専用サポートとはいえ第7期当時のランク4としては飛び抜けたカタログスペックであり、前年に名を馳せた「インヴェルズ・ローチ」と比較すればそのカードパワー格差は歴然です。もちろん、素材縛りがある以上は単純な上位互換ではありませんが、それを考慮しても分かりやすくオーバーパワーなデザインが成されています。

 実際、将来的には制限カードを経験しているほどであり、ある意味「ヴェルズ・オピオン」の印刷が許されたという事実そのものが、当時のエクシーズモンスターの平均カードパワーが徐々に上昇傾向にあったことを裏付けているのではないでしょうか。

 

【次元ラギア】との複合 【ヴェルズラギア】成立へ

 そんな「ヴェルズ・オピオン」の活躍の機会は、当時の主流デッキの一角であった【次元ラギア】において訪れています。

 「ヴェルズ・オピオン」はカタログスペックそのものは非常に強烈である反面、【ヴェルズ】2体という重い素材縛りが設けられたモンスターでもあります。そのため、【代償ガジェット】などの既存の4軸デッキではまず採用することができず、当初は「インヴェルズ・ローチ」を超えるカードではないと言われていました。

 しかし、「レスキューラビット」を擁する【次元ラギア】においては話は別であり、ジェネティック・ワーウルフ」を「ヴェルズ・ヘリオロープ」に差し替えるだけで容易に運用が可能となります。

 つまり、実質的にはほぼノーリスクで「ヴェルズ・オピオン」を使用できたと言っても過言ではなく、これにより【次元ラギア】は「エヴォルカイザー・ラギア」と「ヴェルズ・オピオン」という2種の制圧モンスターを自在に使い分けられる柔軟性を手にすることになったのです。

 

【聖刻】メタの筆頭 2012年環境の【メタビート】

 こうした経緯によって成立したのが【ヴェルズラギア】と呼ばれるアーキタイプであり、これ以降【次元ラギア】は急速に【ヴェルズラギア】へと派生が進んでいくことになります。丁度この頃から【カオスドラゴン】や【聖刻】といった高レベルモンスター主体のデッキが流行し始めたこともあり、次第に2012年環境を代表する【メタビート】としての地位を築き上げていった形です。

 もちろん、【ラヴァル】などのシンクロデッキに対しても従来通り、というよりそれ以上に有利を取れるようになったため、メタゲームにおける立ち位置もより一層優位なものへと変わっていました。先述の通り、「ヴェルズ・オピオン」はこれが刺さる相手を1枚で詰ませるだけの制圧力を秘めており、そうしたマッチアップにおいては「ヴェルズ・オピオン」を通すことが勝ちに直結するという絶対的な相性差が成立していたからです。

 いわゆる「オピオンゲー」の概念の走りであり、「特定のメタモンスターが特定のデッキタイプを完封する」という価値観が明確に可視化したのも「ヴェルズ・オピオン」の存在がきっかけだったと言えるでしょう。

 

【甲虫装機】が苦しすぎた時代 オピオンゲーならず

 とはいえ、そんな「ヴェルズ・オピオン」も当時において順風満帆の状況にあったわけではありません。

 理由は非常にシンプルで、この時期の環境では【甲虫装機】という最悪の仮想敵が猛威を振るっていたからです。

 【甲虫装機】はデッキコンセプトの都合上、レベル5以上のモンスターを特殊召喚する機会はほぼ皆無です。よって「ヴェルズ・オピオン」のメタ能力が効力を発揮することもなく、このマッチアップにおいては「ジェムナイト・パール」の下位互換カードに成り下がることは避けられません。

 もちろん、これは【甲虫装機】相手に「ヴェルズ・オピオン」を使わなければ済むだけの話なのですが、実際のゲームにおいてはこの欠点が思いのほか足を引っ張ることになります。

 具体的には、環境で【甲虫装機】が幅を利かせている以上、相手のデッキが分からない内は「オピオンを立てるという選択肢」をそもそも取ることができないため、仮にマッチ1戦目の先攻1ターン目に「レスキューラビット」を握った場合、基本的には「エヴォルカイザー・ラギア」を立てざるを得ません。しかし、これは相手が【聖刻】であった場合は当然裏目であり、「オピオンを立てていれば勝っていたが、ラギアを出したせいで負けた」というシチュエーションにぶつかる危険を冒すことになります。

 かと言って、相手が【甲虫装機】でないと分かるまで「レスキューラビット」を温存するというのは折角の「先攻ラギア」を捨てることになり、それはそれで明らかに悪手です。

 つまり、当時の環境においては「オピオンゲー」が狙える可能性が高いにもかかわらず「ヴェルズ・オピオン」を安易に出すわけにもいかなかったということであり、「ヴェルズ・オピオン」にとっては「活躍できそうで案外そうでもない」という奇妙なゲームバランスが成立していました。現実的にはエクストラの肥やしになってしまうケースも多く、「ラギアは3回以上出したがオピオンは1回も出なかった」という大会レポートを見かける機会も少なくなかった印象はあります。

 とはいえ、こうした逆風に見舞われながらも「ヴェルズ・オピオン」の存在が2012年環境の流れを左右していたことは確かです。

 【聖刻】を筆頭に、高レベルモンスター主体のデッキにとっては非常に恐るべき仮想敵であり、専用の対策として「エレクトリック・ワーム」が用意される程度には強く警戒されていました。

 実際、少なくとも「オピオンゲー」という言葉が生まれてしまう程度には脅威を振り撒いていたことは間違いなく、やはりヴェルズ・オピオン」の高いポテンシャルはその参入直後から大いに発揮されていたと考えるべきでしょう。

 

【まとめ】

 「ヴェルズ・オピオン」についての話は以上です。

 第7期出身のランク4エクシーズとしては凄まじく盛られたカタログスペックであり、間もなく【次元ラギア】を【ヴェルズラギア】に派生させてしまうほどの影響力を持っていました。一方で、【甲虫装機】の存在がネックとなったために思うような活躍は望めない状況に置かれていましたが、それでも2012年という時代を象徴するカードの1枚として数えることに不足はありません。

 もちろん、【ヴェルズラギア】だけではなく【ヴェルズ】のエースとしての活躍も顕著であり、メタモンスターの中でも長年に渡って環境に影響を与え続けた存在です。2012年12月以降の純【ヴェルズ】時代はもちろん、「征竜魔導」環境における奮闘も決して侮れず、メタが刺さらない【魔導】相手にも「闇のデッキ破壊ウイルス」の媒体として頑張っていました。

 現在では環境の変化に伴い以前ほどの活躍は望めなくなっていますが、やはり不意に遭遇すると恐ろしいカードではあり、メタモンスターとしての強さはまだまだ衰えていないのではないでしょうか。

 ここまで目を通していただき、ありがとうございます。