2012年の【カオスドラゴン】 レダメ3積み時代のリッチ感

2019年7月22日

【前書き】

 【第7期の歴史25 【忍者】デッキが環境上位だった頃 【ラギア】系の筆頭】の続きになります。ご注意ください。

 【甲虫装機】【ゼンマイハンデス】の2大巨頭に加えて【忍者ラギア】が新たに環境入りを果たし、これ以降のメタゲームは大きく姿を変えていくことになりました。これまで環境トップをほぼ独占していた【TG代行天使】ですら1強の権威を維持できなくなるなど、群雄割拠ではありながらも事実上のインフレ環境が到来してしまった格好です。

 第7期最終盤に向けて環境が高速化の一途を辿る中、続く12月に新規ストラクから更なる新勢力が参入を決めることになります。

 

ライトパルサー・ドラゴン誕生 当初は低評価

 2011年12月10日、ストラクチャーデッキ「-ドラゴニック・レギオン-」が販売されました。新たに5種類のカードが誕生し、遊戯王OCG全体のカードプールは5168種類に増加しています。

 前書きの通り、環境レベルで影響をもたらした強ストラクの一角であり、再録カードを含め豪華な内容に仕上がっていたタイトルです。もちろん、新規枠についても有名どころで固められており、とりわけ【ドラゴン族】屈指の強力サポート「エクリプス・ワイバーン」の存在は一際目を引きます。

 とはいえ、やはり当時において最も注目を受けていたのは看板モンスターである「ライトパルサー・ドラゴン」だったのではないでしょうか。

このカードは自分の墓地の光属性と闇属性のモンスターを1体ずつゲームから除外し、手札から特殊召喚できる。
また、手札の光属性と闇属性のモンスターを1体ずつ墓地へ送り、このカードを自分の墓地から特殊召喚できる。
このカードがフィールド上から墓地へ送られた時、自分の墓地のドラゴン族・闇属性・レベル5以上のモンスター1体を選択して特殊召喚できる。

 墓地の光属性・闇属性を除外して手札から特殊召喚できるという、【カオス】と同様の召喚条件を持つ上級モンスターです。なおかつ、特殊召喚モンスターではないため蘇生制限に引っかかることはなく、また普通にアドバンス召喚することもできる小回りの利きやすさ(※)が大きな魅力となっています。

(※現在ではあまりピンと来ないメリットですが、【聖刻】出張型の【カオスドラゴン】では非常に重要な強みと認識されていました)

 加えて、手札から光属性・闇属性を墓地へ送って自己蘇生する効果も備えているなど、取り回しに関しては全面的に【カオス】を上回っているモンスターです。

 中でも、このカード最大の特徴と言える「自身が墓地へ送られた時にドラゴン族・闇属性・レベル5以上のモンスターを蘇生する」効果は非常に優秀であり、これこそが【カオスドラゴン】というアーキタイプを成立させたと言っても過言ではないでしょう。

 単純に考えても墓地送り系の除去に対しては間接的な耐性を持っているため、「奈落の落とし穴」などの一部の除外除去、また「神の警告」などのカウンター以外ではアド損をしにくい強みがあります。一応、時の任意効果ゆえにタイミングを逃しやすい弱点はありますが、それを踏まえても十分に実用的な蘇生効果です。

 さらに、当時のカードプールではレッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン」という最高のパートナーが無制限カードだったこともあり、多くの局面において疑似的な不死モンスターのように振る舞うこともできました。具体的には、「ライトパルサー・ドラゴン」で蘇生した「レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン」で「ライトパルサー・ドラゴン」を蘇生するという疑似的なループ構造が成立するため、見た目のスペック以上に粘り強くアドバンテージを取りにいけるモンスターとして高評価を受けるに至っています。

 もっとも、そんな「ライトパルサー・ドラゴン」も当初から高く評価されていたわけではありません。

 むしろ参入直後の時点では扱いづらいカードであると思われており、上記のような高評価とは無縁のポジションに置かれていました。それどころか、場合によってはデッキに採用されないことすらあったほどで、率直に言って環境レベルのカードパワーを持っているとは考えられていなかったのです。

 

幻の無限ループとエラッタ騒動 「場合」から「時」に

 こうした不当とも言える「ライトパルサー・ドラゴン」への低評価がついたことには、初出のテキストミスに伴うエラッタ騒動が深く関係しています。

 というのも、「ライトパルサー・ドラゴン」は情報判明時点では蘇生効果が「場合の任意効果」であり、チェーン2以降の除去はもちろん、コストで墓地へ送られた場合であっても蘇生効果が発動できるテキストだったからです。分かりやすく言えば「クリッター(エラッタ前)」とほぼ同じ条件であり、上級モンスターでありながら各種コストに使用することで展開の起点となれる脅威のアドモンスターと目されていました。

 何より、キャノン・ソルジャー」などの射出カードによって無限ループを組めてしまう致命的な問題があり、結果として遠からず禁止・制限リスト入りを果たすことがほぼ確実視されていたという背景が存在します。逆に言えば、それだけに凶悪コンボパーツとしての期待も大きかったということであり、コンボ・ビートダウン問わず「ライトパルサー・ドラゴン」を軸にした新デッキの開発が盛んに行われていました。

 しかし、蓋を開けてみれば早々にエラッタが入って「時の任意効果」に修正され、それまでの議論の全てが徒労に終わるといううオチがついてしまっています。これにより、無限ループどころか展開サポートとしての運用法もできなくなってしまったため、その大きすぎる弱体化から「ライパルは産廃になった」というレッテルが張られてしまったというのが大まかな事の経緯です。

 実際には、エラッタ後であっても普通に優秀だったために環境でも活躍していくことになるのですが、この騒動が尾を引いたせいかしばらくは不遇な扱いを受けることも少なくなかったカードでした。

 

【カオスドラゴン】の成立 【カオス】の再来

 ともあれ、こうした騒動に見舞われながらも「ライトパルサー・ドラゴン」が優秀だったことに変わりはなく、次第にその強さが明らかになるにつれ、やがては【カオス】の再来【カオスドラゴン】として環境入りを果たすことになります。

 【カオスドラゴン】のコンセプトは非常に多岐に渡り、派生構築も豊富なアーキタイプであるため、その特徴を一言で説明し切ることはできません。共通するのは【カオス】系のモンスターをメインアタッカーに据え、なおかつ墓地肥やし戦術に特化した構成が取られていること程度であり、使用者によって採用カードが大きく異なるという性質がありました。

 具体的には、「カードガンナー」「ライトロード・マジシャン ライラ」「ライトロード・ハンター ライコウ(エラッタ前)」などを軸に【カオス】で固めた純正の【カオスドラゴン】や、「聖刻龍-トフェニドラゴン」「D-HERO ディアボリックガイ」などを積んでランク6エクシーズに特化した型、あるいは【ライトロード】に軸を寄せることで墓地肥やしの速度を上げた【カオドラライロ】など、様々な派生構築が成立しています。

 このうち、最終的に主流型として定着したのがランク6軸の【カオスドラゴン】です。

 理由としては、第7期終盤から第8期初頭にかけてのゲームスピードの高速化に伴い、デッキ構成の段階から速度を追求せざるを得なかったことが大きな要因として挙げられます。特に【甲虫装機】を相手取る上では「フィールドにカードを置かない戦い方」が求められるため、手札と墓地を溜め込んでから瞬間的にワンキルを狙う6軸のコンセプトが環境的に噛み合っていたという事情があります。

 とはいえ、6軸以外の【カオスドラゴン】が衰退してしまったわけではなく、全体の割合では及ばないながらも常に一定数の勢力をキープしていました。

 実際、純粋なデッキパワーに関してはどの型も他と遜色ない強さを備えており、いい意味で型が定まらなかった多様性のあるアーキタイプだったと言えるでしょう。

 

エラッタ前の未来融合が使えた時代 禁止カード化の元凶

 そんな【カオスドラゴン】ですが、2012年の当時においてはいくつかの際立った「壊れ性能」を備えていたことでも知られます。現在では禁止カードである「レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン」を贅沢に3積みできたことはその筆頭ですが、最大の強みは「未来融合-フューチャー・フュージョン(エラッタ前)」を使用できたことにあったのではないでしょうか。

 現在ではエラッタによって消滅しているカードですが、当時は制限カードながらも現役を務めており、【HEROビート】などを中心に採用実績を残していました。つまり、それなりに健全な使い方をされていた墓地肥やしカードだったのですが、【カオスドラゴン】の成立により一転して凶悪カードの仲間入りを果たしています。

 一度発動できればおろかな埋葬」5枚分の働きによって墓地コストに困る心配がほぼなくなるのはもちろん、ここに「エクリプス・ワイバーン」を巻き込めば「レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン」を2~3枚サーチすることも難しくなく、文字通りの意味で「通れば勝ち」のカードとして恐れられていました。

 また、カードパワー的には侮られやすい「F・G・D」も着地できれば流石に凶悪であり、2ターン以内の対応を相手に強いるという意味では十分に脅威として機能します。事実上、苦渋の選択」にオマケで5000打点がついてきたような化け物カードであり、これを使用できることが【カオスドラゴン】を組む理由になっていたと言っても過言ではないでしょう。

 というより、2012年9月の制限改訂で「未来融合-フューチャー・フュージョン(エラッタ前)」が禁止カード指定を受けたのは間違いなく【カオスドラゴン】が原因です。より正確には、【カオスドラゴン】での活躍が「未来融合-フューチャー・フュージョン(エラッタ前)」の凶悪さを知らしめる結果に繋がったとも言え、このまま放置すると将来的に大変なことになるという危機感からの禁止カード指定だったのではないでしょうか。

 

全盛期は2012年3月以降 トリシュが苦しかった頃

 このように、「レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン」や「未来融合-フューチャー・フュージョン(エラッタ前)」を武器にトーナメント入りを果たした【カオスドラゴン】ですが、その全盛期が2011年末の時点から始まったわけではありません。

 上述の通り、当初は「ライトパルサー・ドラゴン」の評価が不当に低かったこと、また【聖刻】や「迅雷の騎士ガイアドラグーン」などの相性の良いサポートが現れていなかったことも要因の一つと言えますが、最大の理由は天敵である「氷結界の龍 トリシューラ」が現役を務めていたことにあります。

 【カオスドラゴン】は一旦回り始めれば無類の強さを誇る反面、序盤から中盤にかけては墓地肥やしに注力しなければならないデッキです。なおかつ、外見の派手さの割に展開の線がかなり細いため、通常のデッキでは問題にならない程度の妨害であっても致命傷に繋がるケースは少なくありません。

 さらに、デッキスペースの関係で妨害カードに枠を割くことも難しく、結果としてゲーム序盤はほぼ無防備にターンを渡すことを余儀なくされるという問題を抱えていました。

 当時の【カオスドラゴン】で「冥府の使者ゴーズ」や「トラゴエディア」などが標準搭載されていたことにもこうした背景が存在したのですが、いずれにしてもこの時期の【カオスドラゴン】が変則的なドローゴー系デッキに該当していたことは否定できません。

 つまり、手札・フィールド・墓地のいずれに対する干渉もかなり苦手としていたということで、下準備の段階で妨害を挿まれてしまった場合、十分に態勢を整えられないまま見切り発車的に展開をスタートせざるを得なくなる(※)というわけです。

(※この場合、大抵は展開を捌かれてそのままゲームを落とすことになります)

 こうした【カオスドラゴン】の特徴を踏まえて考える場合、これらの弱点全てを同時に潰してくる「氷結界の龍 トリシューラ」は極めて脅威的な存在です。

 これは【カオスドラゴン】に限った話ではありませんが、ワンキルに向けて手札と墓地を溜め込んでいる段階において、その両方を攻めてくる「氷結界の龍 トリシューラ」の存在は非常に厳しい仮想敵となります。そのため、例えば当時の【甲虫装機】などでも「氷結界の龍 トリシューラ」への警戒は常に必須とされており、具体的には「甲虫装機 ホーネット」を墓地に落とすのはギリギリまで待つべきであるという定石も存在しました。

 一方、【カオスドラゴン】の場合はこうしたプレイングによるトリシュケアを行うことは非常に困難です。そもそも罠を用意できない以上はプレイング云々というレベルの話ではなく、精々「墓地肥やしも可能な限り一括で完遂する」という机上の空論的な対策(※)しか残りません。

(※一応、辛うじて「エフェクト・ヴェーラー」が対策になり得ないこともないですが、「氷結界の龍 トリシューラ」1体のためだけにこれを温存するというのもそれはそれで考え物です)

 実際のところ、どんなに調子良く展開の下準備が進んでいても「氷結界の龍 トリシューラ」1体のせいで全てがご破算になるということは珍しくなく、この時期に【カオスドラゴン】を使用する場合、これを出されないことを祈るゲームと化している面があったことは否めません。

 そのため、「氷結界の龍 トリシューラ」が禁止カードとなる2012年3月までは【カオスドラゴン】が環境レベルで形になることはなく、中堅デッキの一角として細々と使われていくという扱いに甘んじていました。

 

【まとめ】

 【カオスドラゴン】についての話は以上です。

 【代行天使】や【暗黒界】などと同じくストラクチャーデッキの販売によって成立したアーキタイプであり、特に2012年3月~2012年9月環境において名を馳せていくことになります。純粋なデッキパワーの高さもさることながら、未来融合-フューチャー・フュージョン(エラッタ前)」を筆頭とする一部の極悪カードをリーサルウェポンに据えているなど、ある意味では地雷系コンボデッキとしての側面も併せ持つ多芸さが魅力だったと言えるでしょう。

 ちなみに、この時に生まれた【カオスドラゴン】というアーキタイプは現在もひな形が残っており、主流には至らないものの時折思い出したように結果を出していることでも知られます。実際、デッキパワーそのものに関して言えばカードプールの増加を受けて強化を重ねているため、今後も何かの拍子に再浮上する可能性も決して少なくないデッキです。

 ここまで目を通していただき、ありがとうございます。