制限改訂2012/9 パワーカード大量規制 インフレ抑制改訂の鑑

2019年10月25日

【前書き】

 【第8期の歴史4 【海皇水精鱗】最初期時代 エラッタ前ブリューナクが使えた頃】の続きになります。ご注意ください。

 ストラクチャーデッキから【海皇】が、その直後のレギュラーパックから【水精鱗】がそれぞれ現れ、やがては【海皇水精鱗】として環境に姿を見せるようになりました。2012年当時としては破格のデッキパワーを備えていた新進気鋭のアーキタイプであり、次第に環境屈指のパワーデッキとしての地位を築き上げていっています。

 2012年下半期の王者の参戦によってメタゲームが少なからず変動を迎える中、続く9月に第8期初回となる制限改訂が行われることになります。

 

制限改訂 2012年9月1日

 2012年9月1日、遊戯王OCGにおいて32回目となる制限改訂が行われました。

 禁止カードに指定されたカードは以下の56枚です。

氷結界の龍 ブリューナク(エラッタ前) 制限
未来融合-フューチャー・フュージョン(エラッタ前) 制限
イレカエル
ヴィクトリー・ドラゴン
混沌帝龍 -終焉の使者-(エラッタ前)
キラー・スネーク(エラッタ前)
グローアップ・バルブ
黒き森のウィッチ(エラッタ前)
ゴヨウ・ガーディアン(エラッタ前)
混沌の黒魔術師(エラッタ前)
サイバーポッド
サウザンド・アイズ・サクリファイス
処刑人-マキュラ
聖なる魔術師
ダーク・ダイブ・ボンバー(エラッタ前)
D-HERO ディスクガイ(エラッタ前)
デビル・フランケン
同族感染ウィルス
氷結界の龍 トリシューラ
ファイバーポッド
フィッシュボーグ-ガンナー
魔導サイエンティスト
メンタルマスター
八汰烏
レスキューキャット(エラッタ前)
悪夢の蜃気楼
いたずら好きな双子悪魔
王家の神殿(エラッタ前)
押収
苦渋の選択
強引な番兵
強奪
強欲な壺
心変わり
サンダー・ボルト
次元融合
生還の宝札
洗脳-ブレインコントロール(エラッタ前)
大寒波
蝶の短剣-エルマ
天使の施し
ハーピィの羽根帚
早すぎた埋葬
ハリケーン
マスドライバー
突然変異
遺言状
王宮の弾圧
王宮の勅命(エラッタ前)
現世と冥界の逆転(エラッタ前)
死のデッキ破壊ウイルス(エラッタ前)
第六感
ダスト・シュート
刻の封印
破壊輪(エラッタ前)
ラストバトル!

 

 制限カードに指定されたカードは以下の61枚です。

イビリチュア・ガストクラーケ 無制限
甲虫装機 ダンセル 無制限
甲虫装機 ホーネット 無制限
カオス・ソーサラー 無制限
スポーア 禁止
発条空母ゼンマイティ 無制限
月読命 禁止
レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン 無制限
血の代償
E・HERO エアーマン
オネスト
カオス・ソルジャー -開闢の使者-
剣闘獣ベストロウリィ
クリッター(エラッタ前)
真六武衆-シエン
ゾンビキャリア
ダーク・アームド・ドラゴン
ダンディライオン
TG ストライカー
TG ハイパー・ライブラリアン
深淵の暗殺者
N・グラン・モール
ネクロフェイス
封印されしエクゾディア
封印されし者の左足
封印されし者の左腕
封印されし者の右足
封印されし者の右腕
フォーミュラ・シンクロン
BF-疾風のゲイル
冥府の使者ゴーズ
馬頭鬼
メタモルポット
ローンファイア・ブロッサム
異次元からの埋葬
インフェルニティガン
大嵐
おろかな埋葬
黒い旋風
原初の種
高等儀式術
死者蘇生
スケープ・ゴート
精神操作
増援
月の書
手札抹殺
貪欲な壺
光の援軍
ブラック・ホール
モンスターゲート
闇の誘惑
リミッター解除
六武の門
ワン・フォー・ワン
異次元からの帰還
神の宣告
停戦協定
転生の予言
光の護封壁
マジカル・エクスプロージョン

 

 準制限カードに指定されたカードは以下の28枚です。

神秘の代行者 アース 制限
Tour Guide From the Underworld 無制限
デブリ・ドラゴン 制限
BF-月影のカルート 制限
レスキューラビット 無制限
E-エマージェンシーコール 無制限
強欲で謙虚な壺 無制限
召集の聖刻印 無制限
ヒーローアライブ 無制限
名推理 制限
聖なるバリア -ミラーフォース- 制限
カードガンナー
召喚僧サモンプリースト
大天使クリスティア
D-HERO ディアボリックガイ
トラゴエディア
氷結界の虎王ドゥローレン
ライトロード・サモナー ルミナス
Reborn Tengu
王家の生け贄
紫炎の狼煙
連鎖爆撃
魔法石の採掘
おジャマトリオ
神の警告
激流葬
奈落の落とし穴
マインドクラッシュ

 

 無制限カードに緩和されたカードは以下の7枚です。

ネクロ・ガードナー
マシュマロン
緊急テレポート
デステニー・ドロー
光の護封剣
レベル制限B地区
魔法の筒

 

 以上が当時コナミから下された裁断となります。変動29枚、うち規制強化が15枚、規制緩和が14枚となっており、一見すると規制強化と緩和が釣り合ったバランス改訂のようにも見えます。

 しかし、内部的には当時猛威を振るっていたパワーカードを丁寧に潰す改訂に仕上がっており、全体としては強烈なインフレ抑制の意図が見える「治療改訂」だったのではないでしょうか。

 

【甲虫装機】への規制

 2012年環境において最強のトップデッキとして権勢を誇った【甲虫装機】に対して厳しい規制が入っています。

 デッキコンセプトの中核をなす「甲虫装機 ダンセル」「甲虫装機 ホーネット」の2枚が同時に制限カード指定を受け、デッキパワーを大幅に落とすことになりました。単純にコンボの成功率が下がったことはもちろん、これまでのように甲虫装機 ダンセル」からリクルートした「甲虫装機 センチピード」で2枚目の「甲虫装機 ダンセル」をサーチするといった動きも不可能になったため、ダンセル展開そのものの威力も大きく損なわれてしまった格好です。

 これにより、【甲虫装機】は従来の圧倒的なアドバンテージ生成能力を土台にした強さを維持することができなくなり、間もなく環境トップからの撤退を余儀なくされました。

 とはいえ、これによってメタゲームから姿を消したわけではなく、9月以降も引き続き環境デッキの一角として好成績を残しています。多少威力が落ちたと言っても相変わらずコンボが揃った時の爆発力は健在であり、瞬間的なワンキル能力は依然として当時最強クラスのデッキではあったからです。

 また、「孵化」や「甲虫装機の魔剣 ゼクトキャリバー」といった代替カードを取り入れることでも生存を図っており、キーカードを失ったダメージを上手く切り抜ける対応がなされていました。

 しかし、やはりこの改訂で【甲虫装機】が非常に手痛い被害を被ったことに変わりはなく、この先の環境では徐々に勢力縮小の道を辿ることになります。

 

【HEROビート】への規制

 当時の環境では【甲虫装機】に次いで実績を残していた【HEROビート】への規制として、「E-エマージェンシーコール」「ヒーローアライブ」の2枚が準制限カード指定を受けました。

 「E-エマージェンシーコール」はシンプルゆえに癖がない非常に優秀なサーチカードであり、当時の【HEROビート】界隈では3積み確定クラスと言われていたカードです。性質上、1枚削られただけで致命傷になるタイプのカードではありませんが、それだけに規制のダメージを軽減することは不可能に近く、順当にデッキパワーを落とす結果に繋がっています。

 一方、「ヒーローアライブ」は【アライブHERO】以外の型では基本的に使われなかったカードですが、逆に言えば【アライブHERO】ではコンセプトの柱をなす重要なキーカードだったということでもあり、やはりこちらも被害としては無視できないものでした。

 もっとも、【HEROビート】のデッキコンセプトそのものに傷がついたわけではなかったため、総合的には多少の事故率の悪化といった潜在的なダメージを受けるのみにとどまっていました。なおかつ、そのダメージすら「カードカー・D」などの後詰めカードの発見によって間もなく解消に向かうなど、上記の【甲虫装機】と比較すると非常に軽い被害で済んだ印象はあります。

 しかしながら、元々この時期の【HEROビート】は【甲虫装機】のメタデッキとして流行している側面が強かったため、これの衰退を受けて【HEROビート】を使う理由が薄くなったことも事実です。

 そのため、時間経過によってメタが推移するにつれて環境への不適合が目立ち始め、前期ほどの勢いを維持することは難しくなっていきました。

 

【代償マシンガジェ】への規制

 【代償マシンガジェ】に対する規制として、「血の代償」が制限カードになっています。

 純粋にコンボパーツとして強力であることはもちろんですが、【ガジェット】においては「通れば勝ち」と言っても過言ではないカードであり、盤面の有利不利を無視してゲームを終わらせるワンキルカードとして猛威を振るっていました。このような不健全な状況を許容すべきでないことは火を見るより明らかであり、このタイミングでの規制強化は極めて妥当な流れです。

 しかし、「ギアギガント X」や「ブリキンギョ」といった優秀なカードを得たことで【ガジェット】そのものが十分に強化されていた背景もあるため、「血の代償」を失ったダメージは単刀直入に言って掠り傷に過ぎなかった面はあります。

 実際に9月以降の環境では開始早々からトップメタの一角にまで駆け上がっており、2012年下半期環境を形成する上で大きな要素を担っていた勢力です。

 

【聖刻】への規制

 2012年上半期環境に「トフェニケア」を浸透させた【聖刻】に対する規制として、「レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン」が制限カードに、「召集の聖刻印」が準制限カードに、それぞれ規制強化されています。

 環境末期においてはメタが定まったことでやや逆風のポジションに追いやられていたアーキタイプですが、それでも「レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン」と「超弩級砲塔列車グスタフ・マックス」を絡めた高いワンキル能力は脅威的の一言であり、当時の環境に対して全面的にこの対策を強要させるという圧力をかけていました。

 なおかつ、「聖刻龍王-アトゥムス」のリクルートに対応していることも問題を深刻化させており、結果的に「レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン」の危険性が急激に高まっていたことは間違いありません。元々「レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン」自体がパワーカードと言って差し支えない強さを持っていたことも重なり、これ以降は約6年半に渡って制限カードのポジションにとどまり続ける(※)ことになります。

(※最終的には2019年4月改訂で禁止カード行きとなりました)

 また、この時の「レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン」の規制は下記で触れる【カオスドラゴン】に対する圧力も兼ねており、事実上は【ドラゴン族】全体の将来的な影響を見据えた決定だったことが窺えます。

 一方で、これによって【ドラグニティ】などの【ドラゴン族】絡みのデッキも巻き添えを食らうなど、中堅~カジュアル環境に対しても大きな影響を及ぼすことになりました。

 

【カオスドラゴン】への規制

 上記に関連して、同じくワンショット系デッキとして実績を残した【カオスドラゴン】への規制も行われています。

 当デッキにおける最強の墓地肥やしカードであった「未来融合-フューチャー・フュージョン(エラッタ前)」が禁止カード行きとなったほか、エースアタッカーとして活躍していた「カオス・ソーサラー」も制限カードに逆戻りしています。いずれも【カオスドラゴン】では重要なポジションにあったカードであり、これらを同時に規制されたダメージはかなり深刻なものであったと言うほかありません。

 この対策として、以降の【カオスドラゴン】では「忍者マスター HANZO」「成金忍者」「忍法 超変化の術」を軸にした【忍者】ギミックを取り込んで【忍者カオスドラゴン】に派生する、あるいは1ヶ月後に現れる「魔界発現世行きデスガイド」に頼った構成にシフトするなど、様々な改善案が試されていくことになります。

 しかし、やはり根本的な部分でデッキコンセプトに傷がついてしまったことは否定できず、時間経過とともに勢力が縮小に向かうのは避けられないことでした。

 

ハンデス関連カードへの規制

 凶悪なハンデスデッキとして猛威を振るった【ゼンマイハンデス】に対する規制として、「発条空母ゼンマイティ」が一気に制限カード指定を下されています。

 総合的にはトーナメント向けではないと言われることも少なくなかったデッキですが、そもそも3~5枚ハンデスを安定して決めてくるデッキが凶悪でないはずがなく、【ゼンマイハンデス】の存在がゲームバランスの崩壊を招いていることは明らかでした。規制しない理由がないどころか、むしろ規制のタイミングが遅すぎた面もあり、規制そのものに関しては文句の付けようがない話であったと言えます。

 一方で、規制先に関してはやや物議を醸しており、具体的には「止めるべきは「ゼンマイハンター」の方である」という意見も少なからず見受けられたことは確かです。

 とはいえ、第7期当時としては「発条空母ゼンマイティ」自体がパワーカードの部類だったこともあり、あながち的を外した改訂だったわけではありません。実際、この直後に「ゼンマイシャーク」が来日したことで【ゼンマイ】が環境上位に浮上を果たしているため、結果的には「発条空母ゼンマイティ」の方を止めたことは英断だったのではないでしょうか。

 他方では、同じくハンデスデッキであった【聖刻リチュア】にも対処の手が入っています。

 デッキコンセプトの中核をなす「イビリチュア・ガストクラーケ」が制限カードとなったため、先攻1ターン目から連続ハンデスを狙うことが非常に困難になりました。また、優秀な儀式サポートである儀式の準備」が腐りやすくなったことも苦しく、実質的にはほぼ解体宣言を下されてしまった格好です。

 

【ラギア】系への規制

 当時の【メタビート】の筆頭であった【ヴェルズラギア】への規制として、キーカードである「レスキューラビット」が準制限カード指定を受けています。

 【メタビート】の名を冠していることからも分かる通り、どちらかと言うと主流デッキを抑える役割を担っていたデッキですが、そもそも「レスキューラビット」のカードパワーが当時の水準以上の領域にあったことも間違いありません。1ヶ月後に「魔界発現世行きデスガイド」の来日が控えていたという事情もあり、このタイミングでの規制はやむを得ない措置だったという印象はあります。

 ちなみに、その「魔界発現世行きデスガイド」も同改訂で準制限カード行きとなっていたため、「輪廻天狗」と同様に既に規制された状態で国内環境に参入を果たすことになります。しかし、その上で10月以降のメタゲームに多大な影響を及ぼすなど、海外環境での活躍に恥じない実績を残したカードです。

 

一部のパワーカードへの規制

 「氷結界の龍 ブリューナク(エラッタ前)」が禁止カード行きを宣告されています。

 シンクロ時代初期に誕生して以来、年単位に渡って6シンクロの筆頭として名を馳せていたパワーカードでしたが、2世代先のこの瞬間をもって遂に現役引退を余儀なくされました。純粋にカードパワーが高すぎたことや、ループ系コンボに悪用されるケースが多かったことが一番の規制理由に当たりますが、直前に現れていた【海皇水精鱗】の存在もこの決定に少なからず関係していたと言えるでしょう。

 その後はエラッタによって弱体化修正が入るまでは一度として現役復帰を果たしておらず、事実上はOCGにおける永久禁止カードの1枚と言って差し支えない存在です。

 他方では、「氷結界の龍 ブリューナク(エラッタ前)」には劣りますが、強力な汎用ドローソースとして広く使われていた「強欲で謙虚な壺」に対して規制が入ったことも見逃せません。

 しかし、準制限カードになったところで有用性が衰えたわけではなく、規制後の環境でも引き続き汎用ドローソースとして使われていました。

 

過去のパワーカードの規制緩和

 その他、「月読命」を筆頭に、過去に名を馳せたパワーカードに対する規制緩和も見られます。

 「月読命」は第4期の【変異カオス】時代に「月読命ライン」を築いたカードとして有名ですが、それ以外にも「闇の仮面」などのリバース効果の再利用に使われることも多く、【Vドラコントロール】の現役時代には「刻の封印」を絡めたドローロックコンボに悪用されたこともありました。そのため、遊戯王前半期においては現役復帰はないものと思われていましたが、流石にゲームバランスのインフレによって相対的にカードパワーも落ち着いており、結果として遂に現役復帰を遂げたという流れです。

 実際のところ、この頃には「交響魔人マエストローク」などの「月読命」の類似カードも現れていたため、「月読命」の規制緩和も遅いか早いかの話だった印象はあります。

 他方では、「スポーア」や「デブリ・ドラゴン」、「神秘の代行者 アース」といった各種チューナーの規制緩和も目を引きます。

 特に「スポーア」は前回の2012年3月改訂で禁止カード行きとなったばかりであり、これが早々に復帰したことはそれなりに話題になりました。

 しかし、元々【植物シンクロ】ギミックとセットで運用する前提のカードでもあったため、単体では特に目立った成績は残しておらず、それを裏付けるように次回改訂では無制限カードに釈放されるという経緯を辿っています。

 

【後編に続く】

 こうしたカードプールの大規模な変動により、9月以降のメタゲームも大きく方向転換を迎えることになります。

 後編に続きます。

 ここまで目を通していただき、ありがとうございます。