【聖刻リチュア】全盛期到来 ガストクラーケが3枚積めた時代

2019年7月31日

【前書き】

 【第7期の歴史29 【聖刻】がトップデッキだった頃 トフェニ環境の到来】の続きになります。特に、この記事では前後編の後編の話題を取り扱っています。ご注意ください。

 

【リチュア】環境入り(微嘘) 【儀式召喚】の復権?

 レギュラーパック「GALACTIC OVERLORD」からの新勢力【聖刻】の誕生を最も強い追い風として受けたのは、当時の【儀式召喚】の筆頭であった【リチュア】と呼ばれるカテゴリでした。

「リチュア」と名のついた儀式モンスターの降臨に必要。手札・自分フィールド上から、儀式召喚するモンスターと同じレベルになるようにモンスターをリリースしなければならない。
また、墓地に存在するこのカードをデッキに戻す事で、自分の墓地に存在する「リチュア」と名のついた儀式モンスター1体を選択して手札に戻す。

 上記は【リチュア】の中核を担う儀式魔法カード、「リチュアの儀水鏡」の当時のテキストです。【リチュア】儀式モンスター専用の儀式魔法であり、儀式魔法としての基本テキストに加え、墓地の自身をデッキに戻すことで【リチュア】儀式モンスターをサルベージするという固有効果を持っています。

 いわゆる「儀式召喚のディスアドバンテージを取り返せる儀式魔法」の開祖であり、第6期終盤~第7期初頭にかけて行われた【儀式召喚】救済活動の成果の1つと言えるカードです。さらに、特定のカテゴリを指定する儀式魔法としてはOCG史上初となるカードでもあるなど、【儀式召喚】界隈においては極めて革新的な存在でした。

 なおかつ、【リチュア】というカテゴリ自体が比較的開発側から優遇されていた(※)ということもあり、まさに第7期における【儀式召喚】の旗頭を務めていたと言っても過言ではないデッキでしょう。

(※実際、直前のDTからも「イビリチュア・ジールギガス」などの新規サポートを獲得していました)

 とはいえ、こうした高評価も結局は【儀式召喚】の中での話に過ぎず、そこから一歩外に出ればファンデッキの域を出ないカテゴリであったことは否めません。これは【リチュア】が固有に抱える問題というより、そもそも【儀式召喚】というメカニズムそのものがOCGのゲームシステムと噛み合っていない面があったため、真っ当なアプローチに頼っている限りは否が応にもパワー不足がついて回ることは避けられなかったからです。

 

「儀式デッキは悪いことしかしない」という風潮

 前置きが長くなりましたが、つまり当時の【リチュア】が真っ当でないデッキに仕上がってしまったことにも一定の道理があったと言えます。

「リチュア」と名のついた儀式魔法カードにより降臨。
このカードが儀式召喚に成功した時、相手の手札をランダムに2枚まで確認し、その中から1枚を選択して持ち主のデッキに戻す。

 上記は【リチュア】儀式モンスターの1体、「イビリチュア・ガストクラーケ」の当時のテキストです。儀式召喚時に限定的なピーピングハンデスを行う効果を持っており、リチュアの儀水鏡」と合わせることで儀式召喚のアド損を完全に帳消しとすることができます。

 もちろん、ハンデス効果そのものも非常に強力であることは言うまでもなく、ピーピングによる情報アドバンテージも含め、多くの場合事実上の1:1交換以上の取引が可能です。儀式召喚のオマケと考えれば極めて強力なメリット効果であり、当時としては数少ない「儀式召喚することが損にならない」破格の儀式モンスターであったと言えるでしょう。

 とはいえ、流石に当時の【リチュア】が「イビリチュア・ガストクラーケ」一辺倒のデッキだったわけではなく、「A・ジェネクス・バードマン」「深海のディーヴァ」などを絡めた各種シンクロギミックや、「水霊術-「葵」」による角度を変えたハンデスギミックなど、多面的なコンセプトを元に構成されていました。また、除去要員兼アタッカーの「イビリチュア・ソウルオーガ」も優秀なサポートとして活躍しており、ハンデスを軸としつつも健全なビートダウン志向の強いデッキであったことは間違いありません。

 そこに現れたのが【聖刻】というリリースを軸に動くテーマであり、その【儀式召喚】との相性の良さから【リチュア】の相方として注目を受けたというのが大まかな経緯だったのですが、残念ながらその成果が健全な方向で実を結ぶことはありませんでした。

 なぜなら、従来のように各種サポートを駆使して堅実にビートダウンを行うより、とにかく「イビリチュア・ガストクラーケ」を連打して事故勝ちを狙う方が勝率が高いという結論が出てしまったからです。これは【聖刻】と【6軸リチュア】のコンセプトがシナジーしていたことも理由の一端ですが、何より純粋なデッキパワーだけでは戦っていけない【儀式召喚】の脆さが生み出した悲劇であり、下手にトーナメント級の強さに手が届いてしまったがゆえの不幸であったとも言えます。

 ちなみに、これと似たような経緯を辿った儀式デッキとしては、第5期の【デミスドーザー】が代表例に挙げられます。

 真っ向勝負では【ガジェット】や【ライダー】系に勝つことができず、結果としてワンキルという抜け道に頼らざるを得なかった経緯があり、やはりこれも【儀式召喚】の弱さが生み出した事例の1つです。

 「儀式デッキは悪いことしかしない」と言われることも少なくない【儀式召喚】界隈ですが、正確には「悪いことをしないと勝てない(※)」であり、過去の【儀式召喚】がいかに貧困問題を抱えていたかが窺えるエピソードであると言えるでしょう。

(※一応、例外的に【神光の宣告者】が比較的真っ当な形で環境入りを果たしています)

 

【聖刻リチュア】成立 ハンデスデッキ第2の刺客

 ともあれ、このような経緯によって【聖刻リチュア】は遊戯王OCGでも屈指のソリティア性を内包した地雷デッキとして完成に至ることになりました。これ以降は「イビリチュア・ガストクラーケ」以外の儀式モンスターはほぼ採用されなくなり、【リチュア】というよりは【ガストクラーケ】とでも言うべきデッキに成り果てています。

 「イビリチュア・ガストクラーケ」による連続ハンデスの起点となるのは、ランク6エクシーズの1体である「セイクリッド・トレミスM7」の存在です。

レベル6モンスター×2
このカードは自分フィールド上の「セイクリッド・トレミスM7」以外の「セイクリッド」と名のついたエクシーズモンスターの上にこのカードを重ねてエクシーズ召喚する事もできる。この方法で特殊召喚したターン、このカードの効果を発動できない。
1ターンに1度、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除き、自分または相手のフィールド上・墓地に存在するモンスター1体を選択して発動できる。選択したモンスター1体を持ち主の手札に戻す。

 「イビリチュア・ガストクラーケ」の儀式召喚に【聖刻】を使用することで即座にエクシーズ召喚が可能であり、なおかつサルベージ効果によって【聖刻】や「シャドウ・リチュア」を即座に回収できるため、連続ハンデスのサポートとしては最高の仕事をこなします。というより、このカードが無ければそもそも【聖刻リチュア】が生まれることすらなかったと言っても過言ではなく、ある意味【リチュア】不良化の元凶となったモンスターです。

 具体的な【聖刻リチュア】の回し方についてですが、基本的には【聖刻】もしくは「シャドウ・リチュア」のうち足りない方をサルベージするだけで良いため、ソリティア系デッキの中では比較的回しやすい部類に入ります。儀式の準備」が絡む場合など、若干セオリーから外れるパターンもあるにはありますが、【ドグマブレード】のように不確定ドローを計算に入れずに済むだけでも相当良心的な難易度でしょう。

 

【ゼンマイハンデス】の下位互換デッキと言われた時代

 とはいえ、そんな【聖刻リチュア】も当初から地雷デッキとしての活躍を期待されていたわけではありません。

 なぜなら、同環境には【ゼンマイハンデス】という強大な商売敵が存在しており、なおかつ純粋なハンデスデッキとしての完成度は【ゼンマイハンデス】が遥か上の領域にあったからです。

 安定して3~5枚のハンデスを決めてくる【ゼンマイハンデス】に比べ、【聖刻リチュア】は構造的に1~2枚のハンデスが限界であり、3ハンデス以上を決めることは非常に困難と言わざるを得ません。先攻全ハンデスに至っては数十回に一度決まるかどうかといったレベルの話でしかなく、ハンデスデッキとしては根本的に瞬発力が足りていないことは明らかでした。

 もちろん、「セイクリッド・トレミスM7」や「迅雷の騎士ガイアドラグーン」などの高ランクエクシーズによるビートダウンや、【聖刻】側のギミックを取り入れることによる別軸の勝ち手段の確保など、【聖刻リチュア】にも少なからず固有の強みがあったことは確かです。

 しかし、やはりメインコンセプトとなる先攻ハンデス性能で劣っている以上は苦し紛れの利点に過ぎず、結果として当初は【ゼンマイハンデス】の下位互換デッキとしか思われていなかったという背景があります。

 

「ハンデスした上でトレミスを残せる」という強み

 こうした話を聞くだけでは一見【ゼンマイハンデス】を差し置いて【聖刻リチュア】を使う利点は全くないようにも思えますが、実際にはそうではなかったというのは後世の実績(※)が示す通りです。

(※とはいえ、やはり全体の割合では【ゼンマイハンデス】の使用率が高かったことも事実ですが……)

 理由は主に2つあり、なおかつその2つの強みを同時に有していたことが【聖刻リチュア】の躍進を形作っていたと言えます。

 1つ目の強みは、1~2枚のハンデスを決めた上で「セイクリッド・トレミスM7」を盤面に残すことができたこと、つまり次ターン以降もハンデスからの6軸ビートを予約することができたという事実にありました。

 具体的な例を挙げると、例えば「セイクリッド・トレミスM7」を2体並べての2ハンデスを決めた場合、そのターン中に限れば2~3枚のアド差が開くに過ぎません。しかし、次のターンには2枚分のサルベージに加えて追い打ちのハンデスと追加の「セイクリッド・トレミスM7」が立つため、ほぼ逆転不可能なアド差がついてしまうことになります。

 【ゼンマイハンデス】との大きな違いがこの部分であり、序盤の瞬間速度に全振りしているがゆえに後続が脆いという【ゼンマイハンデス】の欠点をある程度克服することに成功しています。

 とはいえ、そもそもハンデスというメカニズムの性質上、わざわざ2ターンに分けて手札破壊を行うより、先攻1ターン目だけで完遂してしまう方が明らかに動きとして強力です。上記で触れた【ゼンマイ】の弱点についても、そもそも先攻3~5ハンデスを決めてしまえるのであれば後続を用意する必要性はさほどなく、本来は弱点として取り上げるまでもありません。

 

「デッキバウンスが【甲虫装機】に比較的刺さる」という強み

 ところが、ここで絡んでくるのが当時の環境トップであった【甲虫装機】の存在です。

 【甲虫装機】は手札・墓地に「甲虫装機 ホーネット」らが存在する状態で「甲虫装機 ダンセル」「甲虫装機 センチピード」を通すことが勝利条件となるデッキです。つまり、先攻ハンデスによって「甲虫装機 ホーネット」「甲虫装機 グルフ」のいずれか(※)が墓地に落ちてしまった場合、甲虫装機 ダンセル」「甲虫装機 センチピード」はもちろん、それらにアクセスできる「強欲で謙虚な壺」「カードカー・D」辺りを撃ち漏らすと途端に雲行きが怪しくなってしまいます。

(※ちなみに、「サイクロン」などがある場合はグルホネに限らず、全ての【甲虫装機】がトリガーになってしまいます)

 これは5ハンデスを決めた場合は運が悪かったと割り切れる確率ですが、3ハンデスで止まってしまった場合では運のせいにはできない程度には大きな確率です。

 なおかつ、上述のように【ゼンマイハンデス】は基本的には継戦能力に難があるため、実質的にはハンデスの過程で場に残ったランク3エクシーズ1体だけを拠り所に後半のゲームに臨むことになります。平たく言えば半分負けの状況であり、コンボを決めたにもかかわらずゲームを落とすという最悪の敗因を一定数経験することは避けられないデッキだったのです。

 一方、【聖刻リチュア】はデッキバウンスのハンデスによって墓地アドバンテージを取らせずに済むため、こうした抜け道も確実に封じることができます。ハンデス枚数で劣るという欠点についても、特定のカードを揃えなければ動けない【甲虫装機】相手にはピーピングハンデスが比較的刺さるため、見た目ほどには不利ではないという優位点がありました。

 また、同じ理由で上記の「手札破壊の完遂までに2ターンかかる」という弱点も相対的には問題になりにくく、結果的に「セイクリッド・トレミスM7」を残せることが強みとして機能しやすかったという背景も存在します。

 何より、エフェクト・ヴェーラー」や「増殖するG」を食らった時のダメージが【ゼンマイハンデス】と比べて圧倒的に軽く済むため、当時の誘発環境を生き残る上では一定の優位性・合理性があったことは間違いありません。

 つまるところ、【聖刻リチュア】の躍進には当時のメタゲーム事情が密接に絡んでおり、純粋なハンデスデッキとしては【ゼンマイハンデス】ほど凶悪だったわけではないということが見えてきます。

 実際、現在では「イビリチュア・ガストクラーケ」も無制限カードに規制解除されているほどであり、永久禁止カードを輩出している【ゼンマイハンデス】とはそもそも役者が違う面があったことは否めません。

 逆に言えば、こうした地力の不利を抱えながらも同じ環境でしのぎを削っていたということでもあり、ある意味では【ゼンマイハンデス】以上に上手く時代の流れに乗っていたデッキです。単純なカタログスペック格差には負けない実績を残していた格好であり、この時代こそが【聖刻リチュア】最大の全盛期(※)であったと言えるのではないでしょうか。

(※というより、2012年9月の改訂で「イビリチュア・ガストクラーケ」が制限カード行きになってしまうため、この時代にしか居場所がなかったとも言えますが……)

 

【まとめ】

 【聖刻リチュア】についての話は以上です。

 【聖刻】との抜群なシナジー、そして「イビリチュア・ガストクラーケ」によるハンデスコンボから注目されるに至ったアーキタイプですが、複数の欠陥を抱えていたために当初は【ゼンマイハンデス】の下位互換デッキのような扱いを受けていました。

 しかし、当時の環境的な要因が絡んだ結果、下馬評を覆して一定の成績を残すことに成功しており、外見のスペックに反して侮れないポテンシャルを秘めているデッキだったと言えるでしょう。

 ここまで目を通していただき、ありがとうございます。