【ドグマブレード】全盛期 成功率8割超えの先攻1キルデッキ

2019年1月17日

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【前書き】

 【第5期の歴史32 ダーク・アームド・ドラゴン無制限時代 トップデッキ【ダムドビート】の台頭】の続きになります。ご注意ください。

 第5期最強クラスの大型モンスター「ダーク・アームド・ドラゴン」が誕生し、これ以降は【ダムドビート】の中核カードとしてメタ上位に台頭することになりました。当初は召喚条件が厳しいと思われていたために評価が低かったカードですが、その強さが判明してからは一瞬で環境を塗り替えています。

 しかし、そうした真っ当なメタの動きが起こる裏側で、とある恐るべき事態が進行していたことにも触れておかなければなりません。

 

極悪にして芸術 【ドグマブレード】の成立

 事態のきっかけになったのは、直前に現れていた「サイバー・ヴァリー」「アームズ・ホール」の存在でした。

次の効果から1つを選択して発動する事ができる。
●このカードが相手モンスターの攻撃対象になった時、このカードをゲームから除外する事で自分はデッキからカードを1枚ドローし、そのバトルフェイズを終了する。
●このカードと自分フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択しゲームから除外する。自分のデッキからカードを2枚ドローする。
●このカードと自分の手札1枚を選択してゲームから除外する。自分の墓地のカード1枚をデッキの一番上に置く。

自分のデッキの一番上のカード1枚を墓地へ送り発動する。自分のデッキまたは墓地から装備魔法カード1枚を手札に加える。このカードを発動する場合、このターン自分はモンスターを通常召喚することはできない。

 2枚ともトリッキーな効果を持ったカードであり、逆に言えば汎用性に優れているというわけではありません。そのため、少なくともトーナメントレベルではそれほど意識されていなかったカードですが、2007年末頃において突如先攻1キルデッキのキーカードとして名を馳せることになります。

 【ドグマブレード】の成立です。

 

【ドグマブレード】はなぜ美しいと言われるのか

 【ドグマブレード】は「マジカル・エクスプロージョン」をエンドカードに据えた先攻1キルデッキの一種であり、遊戯王OCGの中でも最も芸術的なデッキの一つとして知られます。

 なぜそのように言われるかについては諸説ありますが、大まかには以下の3点に理由が集約されるのではないでしょうか。

 

①:一見すると全く関連性のないカードがそれぞれピースのように噛み合っていること

 

②:デッキ全体の動きがパズルさながらのチェイン・コンボから成っていること

 

③:そもそも、このデッキが生み出されたこと

 

 とりわけ③に関してはある意味奇跡的であり、これほど複雑かつ規則性の無いデッキがゼロから生み出されたというのは信じがたい話です。実際、何かが違えば【ドグマブレード】自体が生まれなかった可能性も決して低いとは言えません。

 この【ドグマブレード】がどのような経緯を辿って成立したのかは今となっては不明ですが、一応の仮説としては下記のようなシミュレートが成り立つのではないでしょうか。

(ちなみに、初期型の【ドグマブレード】は「D・D・R」や「光帝クライス」の参入以前に考案されているため、早ければ11月中、遅くとも12月上旬には既にデッキのひな形が完成していたと考えるべきでしょう)

アームズホールと早埋の発見

 【ドグマブレード】成立の最初の一歩目は、恐らくは「アームズ・ホール」と「早すぎた埋葬」のコンボから始まったものと思われます。

 これはコンボと称するほど大げさなものではありませんが、サーチとサルベージの双方に対応する「アームズ・ホール」の性質上、特定のカードを使い回す運用法が理に適ったものであることは間違いありません。元々「早すぎた埋葬」自体がパワーカードとして知られていたこともあり、この2枚を組み合わせるという発想は比較的簡単に思い浮かぶことです。

 しかし、「アームズ・ホール」には召喚権を潰してしまう手痛いデメリットが存在するため、普通のデッキに投入しても事故要員にしかなりません。よって、召喚権が余りやすい「特殊召喚主体のデッキ」に採用するのがベターな結論となります。

【推理ゲート】ギミックの発見

 この時点では複数の候補が浮上しますが、その中の一つとして【推理ゲート】が持ち上がるのはそれほど不自然なことではないでしょう。

 【推理ゲート】はその構造上、大型モンスターを多用する傾向にあるデッキです。つまり、蘇生カードである「早すぎた埋葬」を効果的に活用しやすく、また召喚権を潰してしまう「アームズ・ホール」のデメリットもそれほど気にはなりません。

 とはいえ、流石に大型モンスターだけでは頻繁に事故を起こしてしまうため、ある程度は下級モンスターも取り入れる必要があります。これは【推理ゲート】側でも認識されていた問題だったため、この辺りも事の推移としては納得のいく話です。

サイバー・ヴァリーの発見

 「サイバー・ヴァリー」が【ドグマブレード】の一員に加わったのは、恐らくはこのタイミングだったのではないでしょうか。

 普通に出すだけでもバトルフェイズをやり過ごしつつ1ドローできるカードであり、カジュアルデッキの潤滑油としては十分な働きが期待できます。なおかつ、【推理ゲート】から現れた場合も墓地の好きなカードをデッキトップに戻せるため、従来の【推理ゲート】では達成困難だったロマンコンボも比較的容易に実現できるようになりました。

 また、効果の性質上「混沌の黒魔術師(エラッタ前)」「次元融合」などの除外ギミックと好相性である点も見逃せません。

 これらは元々【推理ゲート】ではお馴染みの顔触れであり、それらと自然にシナジーを形成できるのは非常に大きなメリットです。例えば、手札で腐った「混沌の黒魔術師(エラッタ前)」を除外しつつ、【推理ゲート】で墓地に落ちた「次元融合」をデッキトップに固定すれば、次のターンには疑似ループによって爆発的なアドバンテージを獲得することができるでしょう。

【エアブレード】ギミックの発見

 「アームズ・ホール」と「早すぎた埋葬」、さらに「サイバー・ヴァリー」搭載型【推理ゲート】を取り込んだ【ドグマブレード】が次に目を付けたのは、恐らく【エアブレード】だったと考えるのが最も自然な流れです。

 2006年9月2007年3月環境におけるトップメタの筆頭であり、かつては「E・HERO エアーマン」の専用デッキとして猛威を振るった実績を持ちます。

 とはいえ、規制の関係で往年の【エアブレード】は姿を消して久しく、この時期はその後継である【デステニーブレード】として細々と生存している状況でした。構成としては【デステニービート】との複合型に仕上がっており、分類上は「D-HERO Bloo-D」などをフィニッシャーに据えたビートダウンデッキの一種です。

(その他、ワンキルに特化したタイプもありましたが、デッキ名が色々と問題なため、ここでは【ミラブレ】とぼかします)

 いずれにしても、【推理ゲート】からの派生という意味ではこの辺りが最終形態にあたるはずであり、ビートダウンデッキとしては成長限界を迎えた格好だったことは間違いないでしょう。

マジエクの発見

 【ドグマブレード】完成への道のりは、この辺りから迷宮入りの様相を呈しています。

 【ドグマブレード】が「マジカル・エクスプロージョン」に視線を向けたのは、理屈の上ではこのタイミングになるのではないでしょうか。

自分の手札が0枚の時に発動する事ができる。自分の墓地に存在する魔法カードの枚数×200ポイントダメージを相手ライフに与える。

 元々「マジカル・エクスプロージョン」は【推理ゲート】のオプションの一つとして以前から注目されており、パーツとしては目新しいカードだったわけではありません。もっとも、その上で「特化するほど強くはない」という結論が出ていたカードでもあったのですが、丁度「サイバー・ヴァリー」という心強い相棒を得ていたこともあり、使用感を試してみるというのはそれなりに頷ける経緯です。

 しかし、だからと言って「ビートダウン戦法を完全に切り捨ててコンボデッキにシフトする」という極論に至るかというと、「どうしてそうなった」と言わざるを得ません。一応、発想としては上記の【ミラブレ】の親戚とも言えますが、こちらはアーキタイプ自体が根幹から入れ替わっており、はっきり言って新しいデッキを一から組み直すような話です。

 というより、マジカル・エクスプロージョン」に特化するのであれば【エアブレード】を下敷きにする必要がそもそもなくなるため、【ドグマブレード】の中核をなす【ブレード】系ギミックは真っ先にデッキから抜けていきます。無理に残そうとすると今度は「マジカル・エクスプロージョン」が不要になり、やはり両方を残すという結論が出るのはいくらなんでも不自然すぎる流れです。

ドグマガイの発見

 よって、【ドグマブレード】の考案者の脳内には「D-HERO ドグマガイ」というピースが最初から存在していたであろうことが推理できます。

このカードは通常召喚できない。自分フィールド上に存在する「D-HERO」と名のついたモンスターを含むモンスター3体を生け贄に捧げた場合のみ特殊召喚する事ができる。この特殊召喚に成功した場合、次の相手ターンのスタンバイフェイズ時に相手ライフを半分にする。

 【D-HERO】を代表するエースモンスターの1体であり、カードゲーム的にはロマンカードの位置付けにあると見なされていたモンスターです。実際、当時の基準でも重さに見合った性能を持っていたとは言い難く、「特に相性のいいデッキでは声がかかるケースもなくはない」という扱いに甘んじていたことは否めません。

 しかし、これを「マジカル・エクスプロージョン」と【エアブレード】を繋ぐパーツとして見た場合、D-HERO ドグマガイ」は一転して最高のカードへと姿を変えます。

 

序盤:「トレード・イン」「デステニー・ドロー」の両方に対応し、なおかつ「E・HERO エアーマン」でサーチ可能なカード

 

中盤:【推理ゲート】ギミックを阻害せずに「神剣-フェニックスブレード」の除外コストになれるカード

 

終盤:「次元融合」ループにおける盤面調整の役割と「マジカル・エクスプロージョン」の代替役を同時にこなせるカード

 

 以上のように、【ドグマブレード】における「D-HERO ドグマガイ」は潤滑油にもエンドカードにもなるジョーカーそのものと言ってよく、また上記全ての条件を同時に満たすカードも「D-HERO ドグマガイ」が唯一です。つまり【ドグマブレード】を完成させることは「D-HERO ドグマガイ」にしか成し得ない役割だったということであり、スタート地点である「アームズ・ホール」からここまで辿り着いたことは非常に驚くべき話でしょう。

 一応、最初から【ドグマブレード】という完成形を知っていれば当記事のような逆算も成り立ちますが、広大なカードプールからノーヒントでこれらのパーツを探し出し、その上で実戦級の先攻1キルデッキとして昇華させるというのはやはり並大抵のことではありません。

 というより、例えば今この瞬間に「全く新しいコンボデッキをゼロから考案してほしい」と言われたとしても、「まず何から手を付ければいいか分からない」という状況に陥るのが常人の反応なのではないでしょうか。

 

意外と脆い【ドグマブレード】 実は逆風の環境

 このように、【ドグマブレード】が芸術性と実用性を兼ね備えた完成度の高い先攻1キルデッキであることは疑いようもない事実です。その構造の複雑さからプレイング難易度も相応に高いデッキですが、十分なスキルがあれば成功率8割超えを達成できるとも言われます。

 しかし、その一方でトーナメントシーンでの活躍は意外にも多くはなく、使用率そのものは中堅クラスに届くかどうかという領域に過ぎなかったことも事実ではありました。

 なぜなら、除外ギミックを多用しつつも要所要所で墓地に触れる【ドグマブレード】というデッキは、構造的に「D.D.クロウ」を筆頭とする各種妨害札に極めて弱いという致命的な問題を抱えていたからです。

 【ドグマブレード】は無駄のないデッキと言われる一方で、きっちりと噛み合っているがゆえの「余白のなさ」も抱えています。基本的には初手6枚を全て無駄なく使い切るつもりで回すのが【ドグマブレード】のプレイングであり、ケアルートを通りつつデッキを動かすのは現実的ではありません。

 もちろん、手札によっては「D.D.クロウ」による妨害を乗り越えてワンキルに持っていける場合もありますが、大抵は一度崩れたらそこで終わりです。

 間の悪いことに、当時は「D.D.クロウ」をメインから投入する【ダムドビート】がトップデッキとして流行しており、【ドグマブレード】にとっては向かい風の環境が成立していました。それでなくともサイド戦からは確実に3積みされることが予想される以上、手札事故やプレイングミス(※)を考慮すれば【ドグマブレード】でマッチを取るのはかなり難しい話になります。

(※チェイン・コンボデッキである【ドグマブレード】では一定数の択ミスはやむを得ないリスクです)

 当然のことながら、先攻を取られた場合はより一層悪い状況に置かれます。汎用カード枠でも「神の宣告」や「サイクロン」、また盤面によっては「奈落の落とし穴」も刺さるほか、「ライオウ」「フォッシル・ダイナ パキケファロ」「閃光の追放者」などのメタモンスターを置かれたらその時点でほぼ勝ち目がありません。

 つまり、【パキケガジェット】に始まる【メタビート】に遭遇した場合も苦しいマッチを強いられます。というより、心構えとしてはマッチ勝率2割以下と思っておいた方が精神衛生上いいでしょう。

 なおかつ、上述の通り【ドグマブレード】には構造上の遊びがほとんど存在しないため、こうした仮想敵に後手番から対応するのは事実上不可能な話となります。一応、2戦目以降はアグレッシブ・サイドボーディング戦略として【エアブレード】へのサイドスイッチが比較的有力視されていましたが、それでも十分な効力を発揮していたとまでは言えません。

 よってメタの流れがゲームの大きな比重を占めるトーナメントシーンにおいては、やはり思うような活躍は望めないデッキだったのではないでしょうか。

 

【まとめ】

 【ドグマブレード】についての話は以上です。

 先攻1キルデッキの例に漏れず、風評そのものは最悪の部類のデッキでしたが、構造に目を向ければその成立過程に至るまでが美しい仕上がりであることが分かります。もっとも、良くも悪くも繊細なデッキであることは否めず、メタゲームという激しい生存競争には適応できなかったデッキでもありました。

 ちなみに、よく言われる話ですが、【ドグマブレード】は高額カードをふんだんに含む札束デッキとしても有名です。

 参考までに、この時期に「アームズ・ホール」を3枚揃えるだけでも福沢諭吉が2人は必要だったと言えば、何となくデッキの総額にも想像が及ぶのではないでしょうか。

 ここまで目を通していただき、ありがとうございます。

 

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