エフェクト・ヴェーラー誕生 「ヴェーラー握ってない方が悪い」環境

2019年6月17日

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【前書き】

 【第6期の歴史35 【旋風BF】トップメタへ 【インフェルニティ】との2強環境】の続きになります。ご注意ください。

 2008年3月2010年3月のおよそ2年間続いた第6期が終了し、新たに第7期がスタートしました。ルール変更などの大規模な出来事はありませんでしたが、直前の制限改訂、またレギュラーパックの参入によってメタゲームに大きな変動が起こっていた時期です。

 まさしく新時代の幕開けとなった第7期初頭環境の折、続く4月に当時の環境を揺るがすカードプール更新が入ることになります。

 

エフェクト・ヴェーラー 手札誘発カードの代表格

 2010年4月17日、レギュラーパック「DUELIST REVOLUTION」が販売されました。新たに80種類のカードが誕生し、遊戯王OCG全体のカードプールは4306種類に増加しています。

 デザイナーズデッキ全盛期となる第7期初弾タイトルにふさわしく、全体的にカテゴリカードの収録枠が多く取られていたパックです。【スクラップ】や【エレキ】などの新カテゴリはもちろん、【アマゾネス】などの過去のカテゴリに対してもテコ入れが入っていました。

 とはいえ、やはり目を引くべきは「スクラップ・ドラゴン」や「神の警告」を筆頭とするパワーカードの存在であり、実際にこれらは参入早々に採用実績を残していっています。特に「神の警告」はその強さから長年に渡って規制を受け続けていたほどで、まさしく遊戯王OCGを代表するカウンター罠と言っても過言ではありません。

 しかし、そんな中でも一際注目を受けていたのは「エフェクト・ヴェーラー」だったのではないでしょうか。

このカードを手札から墓地へ送り、相手フィールド上に表側表示で存在する効果モンスター1体を選択して発動する。選択した相手モンスターの効果をエンドフェイズ時まで無効にする。この効果は相手のメインフェイズ時のみ発動する事ができる。

 遊戯王OCGにおける手札誘発カードの象徴的存在であり、「手札誘発」と言えばまず間違いなく名前が挙がると断言していいカードです。効果そのものは「相手フィールドのモンスター1体の効果を一時的に無効にする」と非常にシンプルですが、このカードの強さはそうした額面上のスペックだけで測り切れるものではありません。

 単純に手札からモンスター効果を止められるというメタ性能の高さはもちろんですが、何よりも魅力となるのはその奇襲性の高さであり、とにかく相手の初動を挫くカードとしては最高の能力を発揮します。手札という干渉しにくい場所(※)からの妨害である点も絶妙に強く、間接的な除去耐性を持った妨害カードと考えることも可能です。

(※ただし、当時は「ダスト・シュート」などが現役だったため、完全な安全領域というわけではありませんでした)

 さらに、当時のカードプールではフリーチェーンで効果を発動できるモンスターは多くはなかったため、相対的に「相手メインフェイズにしか撃てない」という弱点が問題になりにくい強みを持っていたことも見逃せません。

 言い換えれば、事実上手札から撃てる「禁じられた聖杯」に近い感覚で運用することができたということであり、そもそも汎用カードとして見ても普通に強いという圧倒的な利便性を誇っていたのです。

 加えて、いざとなればチューナーとしてシンクロ召喚のサポートをこなせることも「エフェクト・ヴェーラー」の有用性を地味ながら大きく高めています。同年7月に「フォーミュラ・シンクロン」が現れるとレベル1というステータスも有効に働くようになり、状況によっては疑似ドローソースとして活躍することも少なくありませんでした。

 中でも【ガエル帝】とのシナジーは抜群であり、【帝】モンスターを引けている場合は妨害札として、引けていない場合はドローソースとして使い分けられるなど、さながら「禁じられた聖杯」と「成金ゴブリン」が1枚になったカードのように機能していたほどです。

 総じて従来のOCGの常識を塗り替えるような新時代のカードと言ってよく、ある意味これが生まれたことが第7期環境の到来を物語っていた面もあります。D.D.クロウ」などと比較すれば一目瞭然ですが、本来は汎用性を犠牲にメタ性能を得ているはずの手札誘発カードとしては異様なほどに腐りにくく、まさに時代を先取りしすぎているカードだったと言っても過言ではないでしょう。

 

対トリシューラ最終兵器 トリシュ地獄の希望

 とはいえ、そんな「エフェクト・ヴェーラー」も当初から環境クラスのカードとして注目されていたわけではありません。これは「エフェクト・ヴェーラー」に限った話ではありませんが、こうした使い切りの効果無効化カードは単体ではディスアドバンテージとなるため、漠然と使うだけでは十分な強さを発揮することができないからです。

 つまり、この時期に「エフェクト・ヴェーラー」が流行したことには環境的な事情が密接に絡んでおり、具体的には「氷結界の龍 トリシューラ」対策として多用されていたことが深く関係しています。

 正確には、「氷結界の龍 トリシューラ」に繋がる各種展開カードへの妨害手段としての起用であり、有名なところでは「イレカエル」「インフェルニティ・デーモン」「デブリ・ドラゴン」「召喚僧サモンプリースト」などが仮想敵として挙げられます。特に「イレカエル」や「召喚僧サモンプリースト」に関しては「D.D.クロウ」では止めきれないケースも多かったため、広い範囲に丸く刺さるメタカードとして採用率を上げていき、やがては必須と言われるようになったというのが大まかな事の経緯です。

 これが俗に言う「ヴェーラー環境」の走りであり、対策できるものを対策しないのは怠慢であるという認識によって「ヴェーラー握ってない方が悪い」という価値観が次第に広まっていくことになります。遊戯王OCGの歴史上初となる「誘発環境」の到来であり、この概念の有無こそが第6期環境と第7期環境の差異(※)を最も分かりやすい形で示していたのではないでしょうか。

(※中でも【甲虫装機】が台頭する2011年末環境においては特にこの傾向が顕著でした)

 とはいえ、やはり2010年3月2010年9月環境においては【インフェルニティ】がメタの中心にあり、これを仮想敵に見据える場合には「D.D.クロウ」がより目的に合致していたことは確かです。

 また、流石に「奈落の落とし穴」などの優良除去を押しのけるほどカードパワーが高かったわけではなく、単純に汎用カード枠として採用するのはやや非効率だったという都合もあります。つまり、当時の「エフェクト・ヴェーラー」にはメタカードとしても汎用カードとしても「普通に強いが普通の域を出ない」という中途半端さがあり、カタログスペックの割には活躍の場に恵まれない状況に置かれていたことは否定できません。

 実際、時間経過でメタが固まるにつれて次第に「D.D.クロウ」に採用率を追い抜かれていっており、最終的にはサイドに下げられてしまうケースが多くなっています。カードパワーの高さが必ずしも採用率に直結するわけではないということの好例であり、逆に言えば当時の環境が「汎用性の高さよりもメタの的確さが優先される」程度には煮詰まっていた(※)ということでもあるでしょう。

(※そのため、実際にはむしろ「クロウ握ってない方が悪い」という環境でもありました)

 

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当時はルールが違ったヴェーラー 一部の起動効果には無力

 その他、当時の「エフェクト・ヴェーラー」にまつわる有名な話として、「自身をリリースして効果を発動するタイプの起動効果」を止めることができないという弱点を持っていたことでも知られます。

 というのも、この頃は優先権の扱いが現在と若干異なっており、一部のタイミングに限り相手に優先権を渡さないまま起動効果を発動できるというルールが存在していたからです。代表的なところではレスキューキャット(エラッタ前)」や「インフェルニティ・ミラージュ」には割り込むタイミングがないまま墓地に逃げられてしまうケースが多く、これが災いして「痒いところに絶妙に手が届かない妨害性能」という揶揄を受けることもありました。

 特に「インフェルニティ・ミラージュ」は当時の環境では非常に遭遇率が高かったモンスターであり、これに対処できないというのはかなり苦しい欠点です。一方、「レスキューキャット(エラッタ前)」の方は制限カードゆえに遭遇率自体は低めでしたが、それでも妨害できる場所がないまま「ナチュル・ビースト」の着地を許してしまう弱点は決して見過ごせるものではありません。

 当時の「エフェクト・ヴェーラー」が最終的に「D.D.クロウ」に採用率で負けてしまった理由の一端がこれにあったことは間違いなく、意外に少なくない「エフェクト・ヴェーラー」のウィークポイントを窺わせるエピソードの一つです。

 

「エンドフェイズに発動するタイプの効果」との関係性

 ちなみに、「エフェクト・ヴェーラー」が抱えていたもう1つの大きな抜け道として、「エンドフェイズに発動する効果を止められなかった」というものも存在します。

 より正確に言えば、「エンドフェイズ時まで持続する効果は、エンドフェイズ内でその効果の適用を終了する処理を行わなければならない」という基本ルール(※)に絡んだ裁定であり、平たく言えば過去の「エフェクト・ヴェーラー」はメインフェイズ1~メインフェイズ2の間でしか効力を発揮しないカードだったのです。

(※2014年7月10日に行われた大規模エラッタにより現在では消滅しています)

 とはいえ、上述の通り2010年当時のカードプールにおいてはスペルスピード1のモンスター効果が大多数を占めており、エンドフェイズに効果を発動するモンスターはごく少数にとどまっていたため、当初はこの欠点(※)が問題になることはほとんどありませんでした。

(※というより、そもそもルール自体があまり知られていなかった節もあります)

 その後、これが明確に問題視されるようになったのは第8期中頃のことで、具体的には「魔導教士 システィ」を擁する【魔導書】の環境入りによって効果時間の欠陥が浮き彫りとなり、次第にルール自体も広く知られるようになったというのが大まかな事の経緯です。

 ちなみに、ややこしいことに強制効果が絡んだ場合は例外的に上記のルールからは逸脱した挙動を示します。

 具体的には、「ヴェーラーを撃った側が効果が適用されるかどうかを選べるが、効果が適用されないことを選ぶ権利は自分にある」という奇妙な状況に陥ります。一見すると意味不明ですが、これは「お互いに優先権を放棄した場合、ターンプレイヤーから先に処理を行わなければならない」というルールに絡んだ話です。

 例えば「月読命」などのスピリットモンスターを対象に「エフェクト・ヴェーラー」を発動した場合、お互いに優先権を放棄すると先に「月読命」の処理が入るため、「相手が優先権を放棄するかどうか」によって手札に戻るかどうかが決まります。しかし、そもそも最初に優先権が回ってくるのが自分である以上、そのタイミングで「月読命」の処理を行ってしまえば効果が適用されないことが決まり、相手は「効果が適用されること」を選ぶ権利を喪失するという理屈です。

 つまり、月読命」が手札に戻るかどうかの最終決定権は相手にある一方、「月読命」が手札に戻らないことを選ぶ権利は自分にあり、その状況に限り相手は「月読命」が手札に戻ることを選べないという非常にややこしい関係が成立していました。

 ひょっとすると、「エフェクト・ヴェーラー」のルール変更の背景にはこういった煩雑な処理を簡略化する意図があったのかもしれません。

 

【後編に続く】

 「エフェクト・ヴェーラー」についての話は以上となります。

 2010年当時としては破格の汎用性を誇った「準パワーカード」と言える存在であり、第7期どころか現在においてすら数多くの実績を残しているOCG最高峰の手札誘発です。この時期に限って言えばカタログスペックの高さを上手く発揮できない状況にありましたが、将来的には環境の必須カードとまで言われるようになったことからもその有用性が窺えます。

 とはいえ、当パックから現れていた優良カードは「エフェクト・ヴェーラー」だけではありません。というより、むしろ純粋なカードパワーでは「エフェクト・ヴェーラー」をも上回る強力なドローソースが参入を決めていたのです。

 後編に続きます。

 ここまで目を通していただき、ありがとうございます。