インフェルニティが環境トップだった頃 2010年のガンループ地獄

2019年4月15日

【前書き】

 【第6期の歴史30 氷結界の龍トリシューラ無制限時代 禁止カード経験持ちの極悪シンクロ】の続きになります。ご注意ください。

 DTから「氷結界の龍 トリシューラ」という怪物が現れ、以降のOCG環境は全面的にこの脅威に晒され続けることになりました。現在の水準に照らし合わせてもパワーカードと言って差し支えない強さを持ったカードであり、これが2010年のシンクロ界隈を牛耳っていたことは疑いようもありません。

 第6期環境もいよいよ最終局面となる2010年2月、その下旬において当時のメタゲームを大きく揺るがす大規模なカードプールの更新が入ります。

 

インフェルニティ全盛期 ファンデッキからトップメタへ

 2010年2月20日、レギュラーパック「THE SHINING DARKNESS」が販売されました。新たに80種類のカードが誕生し、遊戯王OCG全体のカードプールは4219種類に増加しています。

 第6期最後を飾るタイトルにふさわしく、数多くの優良カードを輩出していたパックです。このパック出身の新規カードによって少なくとも3つの環境デッキが新たに成立しており、さらに【植物シンクロ】などの出張単位で名を馳せた有力ギミックをも生み出しています。

 それ以外にも、「無の煉獄」のようなコンボデッキ向けのドローソースや、「混沌の落とし穴」「異次元への隙間」などのサイドカードとして活躍したメタカードの存在も見逃すことはできません。特に「異次元への隙間」は直近の環境でも早々に採用実績を残しており、現在ではマイナーカードながら第7期初頭環境を形作ったカードの1枚です。

 とはいえ、そうしたカード群の中でも一際注目を集めていたのは、間違いなく【インフェルニティ】カテゴリの新規サポート群だったのではないでしょうか。

1ターンに1度、手札から「インフェルニティ」と名のついたモンスター1体を墓地へ送る事ができる。
また、自分の手札が0枚の場合、フィールド上に存在するこのカードを墓地へ送る事で、自分の墓地に存在する「インフェルニティ」と名のついたモンスターを2体まで選択して自分フィールド上に特殊召喚する。

 上記は【インフェルニティ】最強の専用サポート、「インフェルニティガン」の当時のテキストです。もはや見るからに書いてあることが色々とおかしく、率直に言って調整ミス気味に強すぎるパワーカードと言わざるを得ません。

 単純に考えてもモンスター2体を蘇生する1:2交換のカードが弱いはずがありませんが、【インフェルニティ】カテゴリは蘇生先のモンスターも優秀な面々が揃っているため、その相乗効果によって凶悪さに拍車がかかってしまっています。

 具体的には、「インフェルニティ・ネクロマンサー」を蘇生すれば更なる展開に繋ぐことができ、「インフェルニティ・ビートル」であれば2体に分裂しつつシンクロ召喚のサポートをこなせます。そして「インフェルニティ・デーモン」に至っては2枚目の「インフェルニティガン」をサーチできてしまうため、デッキに残っている「インフェルニティガン」の枚数分だけ同様の展開を行うことすら可能です。

 つまり、「インフェルニティ・デーモン」でサーチできる「インフェルニティガン」で「インフェルニティ・デーモン」を蘇生できるというループ構造が成立するため、実質「インフェルニティガン」が2枚目の自分自身をサーチできるという状況に陥ります。もはや1:2交換が云々という次元の話ではなく、このコンボがアドバンテージの概念を完全に破壊していることは言うまでもありません。

 これが俗に言う「ガンループ」の概念であり、この凶悪なコンボこそが当時の【インフェルニティ】を環境トップに導いたと言っても過言ではないでしょう。なおかつ、この「ガンループ」の成功率を大きく底上げする「インフェルニティ・インフェルノ」も同パックから現れているなど、この時の【インフェルニティ】に対するプッシュの強さ(※)はかなり露骨なものがありました。

(※ちなみに、「インフェルニティガン」はアニメでも未登場の完全オリジナルカードです)

 実際のところ、インフェルニティガン」は現在の基準に照らし合わせてすら壊れカードの領域に足を踏み入れており、これが2010年という時代に現れていたことは間違いなく何かが狂っていたのではないでしょうか。

 

インフェルニティガン3積みの狂気 トリシュ3連打は基本

 加えて、当時の【インフェルニティ】の潜在能力を強烈に引き出していたのが「氷結界の龍 トリシューラ」の存在です。

 言わずと知れた9シンクロ最強の一角であり、一時期は禁止カードに指定されていたこともあるOCG屈指のパワーカードですが、これが上記の「ガンループ」と絶大なシナジーを形成することは言うまでもありません。

 具体的な始動パターンは挙げればキリがありませんが、その中でも特に使用率が高かった基本的な展開ルートをいくつか下記に示します。

インフェルニティガン始動

 

①:墓地に「インフェルニティ・デーモン」「インフェルニティ・ネクロマンサー」「インフェルニティ・ビートル」の3枚を揃える。

 

②:「インフェルニティガン」を発動し、「インフェルニティ・ネクロマンサー」「インフェルニティ・デーモン」の2体を蘇生(※)する。

 

(※「D.D.クロウ」ケア。どちらを抜かれても最低限の展開を行えるようにするため)

 

③:「インフェルニティ・デーモン」の効果で「インフェルニティガン」をサーチし、それを伏せる。

 

④:「インフェルニティ・ネクロマンサー」の効果で「インフェルニティ・ビートル」を蘇生する。

 

⑤:3体で「氷結界の龍 トリシューラ」をシンクロ召喚する。

 

⑥:②に戻り、トリシュ3連打まで。ただし、最後のループ時には「インフェルニティ・デーモン」の蘇生を後に回し、サーチ先を自由に選べるようにする。

 

インフェルニティ・ネクロマンサー始動

 

①:墓地に「インフェルニティ・デーモン」「インフェルニティ・ネクロマンサー」「インフェルニティ・ビートル」の3枚を揃える。(「インフェルニティ・デーモン」2体と「インフェルニティ・ビートル」でも可)

 

②:「インフェルニティ・ネクロマンサー」を召喚し、効果で「インフェルニティ・デーモン」を蘇生する。

 

③:「インフェルニティ・デーモン」の効果で「インフェルニティガン」をサーチする。

 

④:「インフェルニティガン」で「インフェルニティ・ネクロマンサー」「インフェルニティ・ビートル」の2体を蘇生する。

 

⑤:「インフェルニティ・ビートル」の効果で同名モンスター2体をリクルートする。

 

⑥:効果使用済みの「インフェルニティ・ネクロマンサー」を含む3体で「氷結界の龍 トリシューラ」をシンクロ召喚する。

 

⑦:「インフェルニティ・ネクロマンサー」の効果で「インフェルニティ・デーモン」を蘇生する。

 

⑧:同じくトリシュ3連打まで。(さらに、「インフェルニティガン」を1枚残すことができる)

 

インフェルニティ・ミラージュ始動

 

①:墓地に「インフェルニティ・デーモン」「インフェルニティ・ネクロマンサー」「インフェルニティ・ビートル」の3枚を揃える。

 

②:「インフェルニティ・ミラージュ」を召喚し、効果で「インフェルニティ・デーモン」「インフェルニティ・ネクロマンサー」を蘇生(※)する。

 

(※「サイクロン」をケアする場合は「インフェルニティ・デーモン」の蘇生を後回しにする)

 

③:「インフェルニティ・デーモン」の効果で「インフェルニティガン」をサーチし、それを伏せる。

 

④:「インフェルニティ・ネクロマンサー」の効果で「インフェルニティ・ビートル」を蘇生する。

 

⑤:3体で「氷結界の龍 トリシューラ」をシンクロ召喚する。

 

⑥:「インフェルニティガン」で「インフェルニティ・デーモン」「インフェルニティ・ネクロマンサー」を蘇生する。

 

⑦:③に戻り、トリシュ3連打まで。(さらに、「インフェルニティガン」を1枚残すことができる)

 

 上記はガンループにおける雛形ルートであり、これらに付随する形で数多くの派生ルートが開発されています。このループの最もおかしいところは「カテゴリ内のギミックだけで全ての動きが完結している」ことであり、この状況を1枚で作り出す「インフェルニティガン」の異常性(※)はもはや計り知れません。

(※実際、「インフェルニティガン」規制前と規制後の【インフェルニティ】は完全に別物であるとする声もあります)

 何にせよ、一旦ループに入りさえすれば息をするように「氷結界の龍 トリシューラ」を3連打できるというのは極めて理不尽と言うほかなく、当時の「トリシュ地獄」はその7割が【インフェルニティ】によって引き起こされているとも言われていたほどです。

 ちなみに、手札によっては「氷結界の龍 ブリューナク(エラッタ前)」によるセルフバウンスを駆使してトリシュ4連打以上を狙うことも可能でした。場合によっては先攻1ターン目に4ハンデスを決めて事実上の先攻1キルに持ち込むことも不可能ではなく、当時の環境が文字通りこの2龍によって氷結させられていたことは疑いようもないでしょう。

 もちろん、これほど致命的な状況が見過ごされるはずがなく、2010年9月の改訂では「インフェルニティガン」「氷結界の龍 トリシューラ」の2枚が同時に制限カード指定を下されることになります。これにより上記の「ガンループ」ギミックは完全に崩壊し、それに伴って【インフェルニティ】自体も中堅クラスのデッキにまで勢いを落とすことになりました。

 逆に言えば、本来は中堅レベルの実力に収まるはずのデッキを1枚でトップメタに押し上げるほどの影響力を持っていたということでもあり、それだけ「インフェルニティガン」のカードパワーが異常な領域にあったことを裏付けているのではないでしょうか。

 

インフェルニティ対策カード 墓地メタ・サイク系の流行

 このように、「インフェルニティガン」という凶器を振り回して暴れていた【インフェルニティ】でしたが、必ずしもトリシュ3連打からのワンキルが横行していたわけではありません。

 

サンプルレシピ(2010年4月17日)
モンスターカード(17枚)
×3枚 インフェルニティ・デーモン
インフェルニティ・ネクロマンサー
インフェルニティ・ビートル
ダーク・グレファー
×2枚 インフェルニティ・ミラージュ
×1枚 ゾンビキャリア
ダーク・アームド・ドラゴン
ヘルウェイ・パトロール
魔法カード(15枚)
×3枚 インフェルニティガン
強欲で謙虚な壺
×2枚 封印の黄金櫃
×1枚 大嵐
おろかな埋葬
サイクロン
増援
ハリケーン
闇の誘惑
ワン・フォー・ワン
罠カード(8枚)
×3枚 インフェルニティ・インフェルノ
×2枚 奈落の落とし穴
×1枚 神の宣告
激流葬
聖なるバリア -ミラーフォース-
エクストラデッキ(15枚)
×3枚 氷結界の龍 トリシューラ
×2枚 スプレンディッド・ローズ
×1枚 A・O・J カタストル
A・O・J ディサイシブ・アームズ
インフェルニティ・デス・ドラゴン
ゴヨウ・ガーディアン(エラッタ前)
神海竜ギシルノドン
スクラップ・ドラゴン
スターダスト・ドラゴン
氷結界の龍 ブリューナク(エラッタ前)
ミスト・ウォーム
ワンハンドレッド・アイ・ドラゴン

 

 これに関しては上記のデッキレシピを見れば一目瞭然ですが、当時の【インフェルニティ】では「インフェルニティ・インフェルノ」「封印の黄金櫃」「強欲で謙虚な壺」などの現在の価値観では悠長なサーチカードもフル投入が前提とされており、ガンループ突入には平均2~3ターンかかるケースがほとんどだったからです。

 つまり、そこにつけ込む隙が存在していたということであり、これ以降の環境では様々な対策が講じられていくことになります。

 【インフェルニティ】のメタカードとして最初に名前が持ち上がったのはやはり「D.D.クロウ」であり、ガンループを手札から妨害する手段として一気に流行が進んでいます。同じく墓地メタに属する「異次元への隙間」とは相互互換の関係ですが、奇襲性の高さから最終的には「D.D.クロウ」が主流(※)となり、少なくともサイドには確実に、場合によってはメインから採用されるケースもありました。

(※ただし、「D.D.クロウ」だけでは手が足りない場合も多く、両方が採用されている構築も少なくありませんでした)

 一方、別の方角からの対策としては、インフェルニティガン」を直接潰せる「砂塵の大竜巻」などのサイク系除去も有力候補に浮上しています。

 これは同環境で【インフェルニティ】と勢力を二分していた【旋風BF】に対しても刺さるという利点があったことが大きく、その受けの広さから当時はサイドの必需品とまで言われていたほどのカードです。場合によっては「ツイスター」が追加で用意されることすらあるなど、近年でも屈指の「サイク環境」が到来していました。

 上記の派生としては、同じくフリーチェーン除去に属する「ゴッドバードアタック」なども有用な対策カードに数えられます。これは【旋風BF】では3積み確定クラスの必須カードでもあったため、上記の「D.D.クロウ」と合わせて対【インフェルニティ】における最有力パッケージとして浸透していきました。

 しかし、これらのサイク系除去は封印の黄金櫃」からの「ハリケーン」などで比較的安定して無力化されてしまうという弱点があったため、これだけでは完全な安泰は得られないと言われていたことは確かです。

 

対【インフェルニティ】最終兵器 ライオウ

 そのため、最終的には「ライオウ」の流行が進んでいくことになります。

 【インフェルニティ】はデッキの動きの大半が「インフェルニティ・デーモン」のサーチに強く依存しており、これを潰されると満足に身動きが取れなくなります。ガンループはもちろん、その下準備のためにパーツを集めることすら困難になり、文字通り「手札のカードだけで勝負するしかない」という状況に追い込まれてしまうからです。

 さらに、ほとんどの場合【インフェルニティ】のメインデッキには1900打点を超えられるモンスターは存在せず、この突破には各種シンクロモンスターや「ダーク・アームド・ドラゴン」などに頼るほかありません。つまり、ただでさえ身動きが取れないところに「シンクロモンスターを使い捨てること」を強要されるということであり、たとえ「ライオウ」を処理できたとしても相当苦しい状況に立たされることになります。

 また、「ライオウ」の処理に時間をかけるほどに相手が妨害手段を整えていくというタイムリミットの壁も避けては通れません。というより、そもそも運が悪ければ「ライオウ」1体だけで完封されかねないほど対処が難しい(※)と言われていたため、まさに【インフェルニティ】にとっては天敵となる最悪のカードです。

(※例えば、「ダーク・グレファー」で「ゾンビキャリア」を落とし、「インフェルニティ・デーモン」をデッキトップに置きつつ6シンクロで相打ちを取り、ようやく次のターンから下準備に入れる可能性があるというレベルで苦しい相手です)

 実際、【旋風BF】ではアンチシナジーを大目に見てメインから「ライオウ」が複数枚積まれることも多く、当時の【インフェルニティ】が最後には【旋風BF】に押し負けてしまったのも「ライオウ」の存在が理由だったと言っても過言ではないでしょう。

 

満足民の戦いはいつまで続くのか

 とはいえ、こうして強烈にメタを張られながらも【インフェルニティ】が2010年3月環境の最前線にあり続けたことは事実です。

 将来的には「D.D.クロウ」どころか「エフェクト・ヴェーラー」のメイン採用構築も浸透していくなど、【インフェルニティ】の参戦が引き起こした事態は数え切れません。かの有名な「ヴェーラー握ってない方が悪い」という迷言も実質【インフェルニティ】が生み出したようなものであり、やはり当時の環境が【インフェルニティ】の強い支配下に置かれていたことは間違いないと言えます。

 もっとも、上述の通りその強さは「インフェルニティガン」の存在によるところが大きかったため、2010年9月の改訂を境に第一線から姿を消してしまうのはやはり避けられないことでした。

 しかし、【インフェルニティ】の現役時代がこの時に終わったというわけではなく、時代に応じて様々なカードを取り入れて生存し続けていたアーキタイプでもあります。中でも「インフェルニティ・バリア」や「ラヴァルバル・チェイン」などの各種エクシーズモンスターにより強化を受けた2011年9月環境、「ソウル・チャージ」を武器に世界大会でも名を残した2014年4月環境など、時期によってはトーナメントレベルで再浮上を果たしたことも一度や二度ではありません。

 また、そもそも【インフェルニティ】というカテゴリ自体が高い人気を誇っていることもあり、いわゆる「満足民」による研究も今なお盛んに行われています。というより、これによる研究成果が上記実績の基盤を形作った面もあり、これだけファン人口の厚いカテゴリはOCGでも一握りです。

 遂には「カードプールの拡大によって無限に強化されていくテーマ」という称号すら与えられたほどであり、今後も何かの拍子に環境入りを果たす可能性を秘めているデッキなのではないでしょうか。

 

【中編に続く】

 【インフェルニティ】についての話は以上です。

 当初はファンデッキの立ち位置にあった存在ですが、「インフェルニティガン」を筆頭とする強力なサポートを大量に獲得したことで一気にトップメタにまで駆け上がっています。同じくアニメ出身カテゴリの【BF】と合わせての2強環境の到来であり、まさにアニメキャラ優遇の情勢が極まった時代だったと言えるでしょう。

 しかし、当パックから現れていた問題児は【インフェルニティ】だけではありません。見方によってはそれ以上に凶悪とも言える、ある恐るべきカテゴリが大幅に強化を受けていたからです。

 中編に続きます。

 ここまで目を通していただき、ありがとうございます。