ラヴァルバル・チェインがみんなのアイドル(値段的に)だった頃

2019年7月15日

【前書き】

 【第7期の歴史20 【カラクリ】が地味に強かった時代 2011年下半期の奮闘】の続きになります。ご注意ください。

 制限改訂によって環境の勢力図が大きく入れ替わり、代わりに【TG代行天使】や【暗黒界】、【次元ラギア】といったデッキが環境上位に躍り出ました。その他、【カラクリ】などの中堅デッキも頭角を現していましたが、時間経過によって【TG代行天使】の支配力が増していくことは避けられず、次第に1強環境の様相を呈していっています。

 トップメタ筆頭候補が【TG代行天使】に絞られるにつれて徐々にメタゲームが煮詰まる最中、10月稼働のデュエルターミナル最新弾によって再び環境が変化を迎えることになります。

 

ラヴァルバル・チェイン 墓地肥やしカードの代表格

 2011年10月4日、デュエルターミナル「-星の騎士団 セイクリッド!!-」の稼働が開始されました。新たに30種類のカードが誕生し、遊戯王OCG全体のカードプールは5076種類に増加しています。

 第7期出身のターミナルの中でも屈指の人気タイトルであり、非常に多くの優良カードを輩出したことで有名です。ダイガスタ・エメラル」や「セイクリッド・プレアデス」などの今なお現役を務めるカードはもちろん、ヴェルズ・ナイトメア」を始めとする過去の名カードの存在も見逃せません。

 とはいえ、この時に最も大きな注目を受けていたのは、まず間違いなく「ラヴァルバル・チェイン」をおいて他になかったのではないでしょうか。

レベル4モンスター×2
1ターンに1度、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除き、以下の効果から1つを選択して発動する事ができる。
●自分のデッキからカードを1枚選択して墓地へ送る。
●自分のデッキからモンスター1体を選択してデッキの一番上に置く。

 素材縛りのないランク4の一種であり、デッキから任意のカード1枚を墓地に送る万能墓地肥やし効果に加え、モンスター限定でデッキトップサーチを行うという2種類のエクシーズ効果を与えられています。

 結論を先に言ってしまえば、遊戯王OCGにおける墓地肥やしカードの代表格にあたる存在であり、ランク4エクシーズとしてもトップクラスの知名度を誇るモンスターです。「おろかな埋葬」の例にもあるように、遊戯王というカードゲームにおける墓地肥やしの強さはもはや常識と化して久しく、それをランク4エクシーズという召喚条件の軽いモンスターが保有していることは極めて破格と言うほかありません。

 単純に考えても、「ラヴァルバル・チェイン」がカードプールに存在するだけで「レベル4モンスターが2体揃う≒「おろかな埋葬」をサーチできる」という図式が成り立つようになるため、この時点で遊戯王のゲームシステムの一部を変えうるだけの影響力を秘めています。

 一方、後半のデッキトップサーチ効果の方は現在の価値観では若干悠長な性能ですが、こちらも第7期当時としては水準以上の性能であり、疑似「封印の黄金櫃」として高く評価されていました。

 いずれにしても、方向性の異なる優秀な効果を2つ内蔵した「ラヴァルバル・チェイン」が2011年当時において注目されないはずがなく、参入当初から多大な期待を集めていくことになります。特にこの時期は「ジェムナイト・パール」や「インヴェルズ・ローチ」などがランク4のカードパワーの基準を形作っている時代だったため、そのラインを明らかに逸脱した凶悪なカタログスペックは相当の衝撃がありました。

 とはいえ、シンクロ期における「氷結界の龍 ブリューナク(エラッタ前)」や「ダーク・ダイブ・ボンバー(エラッタ前)」のような露骨な壊れカードだったというわけではなく、相対的には「良バランスのパワーカード」に落ち着いていたカードだったと言えます。

 そもそも、この時期はまだ現在ほどゲームスピードが高速化していなかったこともあり、レベル4を2体揃えるという条件が相応の制約として機能していたこともその一因です。

 実際、「ラヴァルバル・チェイン」が禁止カード行きとなったのは環境がインフレを起こす第9期中頃のことであり、それまでは「優秀でありながら強すぎない」というバランスに収まった名カードとして多くのプレイヤーに愛されていたのではないでしょうか。

 

チェインTUEEE事件 価格釣り上げ騒動に関して

 しかし、「ラヴァルバル・チェイン」に絡んだ話として有名なのはこうしたゲーム上のものだけではありません。このカードを語る上で避けては通れない話題として、某カードショップによる価格釣り上げ騒動について触れないわけにはいかないでしょう。

 ……と言っても、正直迂闊に首を突っ込むと危ない界隈なので、ここでは込み入った事情に触れることはしません。事の発端となった動画(※)そのものは関連ワードで検索すればすぐに見つかるため、興味のある方はお手数ですが別途動画サイト等をご確認ください。

(※3:30秒辺りからが問題のシーンです)

 一応、この件に関して(比較的)穏健派と思われる解説記事が見つかりましたので、下記にリンクを張っておきます。

 上記ページにもある通り、全てが全て某カードショップが元凶だったというわけではなく、言うなればドミノ崩しの最初の1個目になったような話だったことが窺えます。しかし、だからと言って騒動の引き金となった責任は決して小さくはなく、むしろその後の対応の悪さで余計な火種を撒いてしまっていた部分すらある以上、やはり当時の界隈の反応も無理からぬものだったのではないかという印象です。

 というより、そもそもこの件においては明らかに自分の意思で最初の1個目になっていたため、結論としては「軽い気持ちでドミノを崩したら思ったより沢山倒れたが、別に直すつもりはないという無責任さが見て取れる話だったと言えるでしょう。価格的な問題は言うに及ばず、一時期は「ラヴァルバル・チェイン」を「強いと口にする」ことですら論争の種となるケースがあるなど、対人問題に絡んだ面でもOCG界隈に悪影響をもたらした騒動でした。

 個人的にも、余計なトラブルの発生を防ぐために「優秀なカード」「便利な効果」などとわざわざ言い換えなければならず、さながら言葉狩りのような状況はかなり馬鹿馬鹿しかったことを覚えています。

 

【インフェルニティ】と魂の絆で繋がった関係

 このように、悪質な風評被害に見舞われてしまった「ラヴァルバル・チェイン」というカードですが、それはそれとして「ラヴァルバル・チェイン」が優秀なカードであることは間違いありません。

 上記の騒動が起こる前から相性の良いデッキでは即戦力として声がかかっており、中でも【インフェルニティ】との抜群のシナジーは一際目を見張るものがあります。

 「インフェルニティガン」の参戦によって環境トップに君臨し、そして「インフェルニティガン」の規制によって環境から姿を消していたアーキタイプですが、エクシーズ召喚システムの実装に伴って細々と強化を重ねていました。さらに、丁度この時期に「インフェルニティ・バリア」や「インフェルニティ・ジェネラル」(※)などの新規サポートを獲得していたことも追い風となり、環境上位には一歩及ばないながらも健闘を見せていた時代です。

(※現在では力不足が否めない性能ですが、当時は展開サポートとして一定の評価をキープしていました)

 そのタイミングに現れた「ラヴァルバル・チェイン」の存在はまさにニトロそのものであり、これ以降の【インフェルニティ】の躍進はこのカードの参入によって引き起こされたと言っても過言ではないでしょう。これまでネックであった初動の弱さが一気に改善されたため、環境の高速化にも十分に対応できるようになったからです。

 

名誉【IF】族 「インフェルニティ・チェイン」の活躍

 一例として、当時よく使われていた展開ルートを下記に示します。

・グレファーデーモンルート

 

①:手札が「ダーク・グレファー」「インフェルニティ・デーモン」と闇属性モンスター(※)の3体のみの場合。(※「インフェルニティ・ネクロマンサー」や「インフェルニティ・ビートル」の場合、より強力な展開が可能)

 

②:「ダーク・グレファー」を召喚し、闇属性モンスターをコストに「ヘルウェイ・パトロール」を墓地に落とす。

 

③:「ヘルウェイ・パトロール」を除外して「インフェルニティ・デーモン」を特殊召喚する。

 

④:「インフェルニティ・デーモン」の効果で「インフェルニティガン」をサーチする。

 

⑤:「ダーク・グレファー」と「インフェルニティ・デーモン」で「ラヴァルバル・チェイン」をエクシーズ召喚する。

 

⑥:「ラヴァルバル・チェイン」の効果で「インフェルニティ・ネクロマンサー」(または「インフェルニティ・ビートル」)を墓地に落とす。(コストは「インフェルニティ・デーモン」)

 

⑦:「インフェルニティガン」で「インフェルニティ・デーモン」「インフェルニティ・ネクロマンサー」(※)を蘇生する。(※「インフェルニティ・ビートル」の場合は「ガチガチガンテツ」を立てられるが、後続が続かなくなるリスクあり)

 

⑧:「インフェルニティ・デーモン」の効果で「インフェルニティ・バリア」(または「インフェルニティ・ブレイク」)をサーチする。

 

⑨:「インフェルニティ・ネクロマンサー」の蘇生先がある場合、更なる展開が可能。

 

 

・サモプリルート

 

①:手札が「召喚僧サモンプリースト」と魔法カード1枚のみの場合。

 

②:「召喚僧サモンプリースト」を召喚し、効果で「インフェルニティ・デーモン」をリクルートする。

 

③:「インフェルニティ・デーモン」の効果で「インフェルニティ・ネクロマンサー」をサーチする。

 

④:「召喚僧サモンプリースト」と「インフェルニティ・デーモン」で「ラヴァルバル・チェイン」をエクシーズ召喚する。

 

⑤:「ラヴァルバル・チェイン」の効果で「ヘルウェイ・パトロール」を墓地に落とす。(コストは「インフェルニティ・デーモン」)

 

⑥:「ヘルウェイ・パトロール」を除外して「インフェルニティ・ネクロマンサー」を特殊召喚する。

 

⑦:「インフェルニティ・ネクロマンサー」で「インフェルニティ・デーモン」を蘇生する。

 

⑧:「インフェルニティ・デーモン」の効果で「インフェルニティ・バリア」(または「インフェルニティ・ブレイク」)をサーチする。(後続を意識する場合、「インフェルニティガン」などをサーチしても良い)

 

 

 上記パターンは最小単位の展開例となっており、これら以外にも数多くのルートが開拓されています。いずれも従来の【インフェルニティ】では満足に動けなかったハンドであり、ここから盤面を構築できるようになったことの意味は極めて重いと言わざるを得ません。

 将来的に「煉獄龍 オーガ・ドラグーン」などが現れると「ラヴァルバル・チェイン」の重要度はより一層高まっていき、遂には「インフェルニティ・チェイン」の異名を付けられるほどの重要ポジションに収まることに成功しています。文字通りの意味での「無くてはならないキーカード(※)」と言っても過言ではなく、これ以降は数世代に渡り【インフェルニティ】の心臓として名を馳せていくことになりました。

(※正確には、無くても何とかしてしまうのが【インフェルニティ】というカテゴリなのですが……)

 

【後編に続く】

 「ラヴァルバル・チェイン」についての話は以上です。

 2011年出身のランク4エクシーズとしては飛び抜けたカタログスペックを秘めていたカードであり、実際に参入直後から非常に大きな注目を受けていました。しかし、それが災いして悪質な風評被害に見舞われてしまうという悲劇もありましたが、これだけ多くのプレイヤーに愛用されたカードはOCGでも極めて稀です。

 とはいえ、この時のターミナルから現れていた有望株は「ラヴァルバル・チェイン」だけではありません。むしろ短期的な影響においては「ラヴァルバル・チェイン」以上に環境を動かしていたパワーカードも参入を決めていたのです。

 後編に続きます。

 ここまで目を通していただき、ありがとうございます。