ダーク・ダイブ・ボンバー全盛期伝説 最速禁止入りの極悪シンクロ
【前書き】
【第6期の歴史12 ナチュル・ビーストが【レスキューシンクロ】の相棒だった頃】の続きとなります。ご注意ください。
「ナチュル・ビースト」の参戦によって【レスキューシンクロ】が順当に強化され、少なからず当時のメタゲームにも影響が及びました。しかし、この時期に限って言えば「刺さるようで刺さらない」というカードでもあったため、活躍の機会はしばらく先に持ち越す形となっています。
細かな変動はありつつも全体的な勢力図は動かないという構図でメタゲームが展開される中、続く11月に当時の環境を根本から揺るがす致命的なカードが参入を決めることになります。
通称DDB ワンキルゲーム乱造装置
2008年11月15日、レギュラーパック「CRIMSON CRISIS」と、「デュエリストボックス」が同日に販売されました。レギュラーパックから新たに80種類、デュエリストボックスから新たに1種類、計81種類の新規カードが誕生し、遊戯王OCG全体のカードプールは3521種類に増加しています。
専用サポートも含め、非常に優秀なカードが多数収録されていたパックです。デッキ単位ではもちろん、メタゲームを動かすレベルで環境に影響を与えたカードも少なくありません。
【AKB】の「アーカナイト・マジシャン」、【デブリダンディ】の「デブリ・ドラゴン」はその筆頭ですが、それ以外にも【猫剣闘獣】成立の間接的な要因にもなった「剣闘獣サムニテ」や、地味なところでは「ブラック・ボンバー」も一時期は使われていた実績があります。
しかし、そんな中でも一際危険な輝きを放っていたのは間違いなく「ダーク・ダイブ・ボンバー(エラッタ前)」だったのではないでしょうか。
チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上
自分フィールド上に存在するモンスター1体をリリースして発動する。リリースしたモンスターのレベル×200ポイントダメージを相手ライフに与える。
遊戯王OCGにおける射出モンスターの危険性を象徴するカードであり、そして数ある禁止カードの中でも史上最強クラスとも謳われる存在です。現在ではエラッタによって存在すら無かったことにされており、その意味では「混沌帝龍 -終焉の使者-(エラッタ前)」などと同格の永久禁止カードに該当します。
効果そのものは「射出モンスターのレベル×200のバーンダメージを与える」と非常にシンプルですが、シンプルゆえに手が付けられないほどの壊れ性能となっており、少なくとも今後絶対に印刷されないカードであることは間違いありません。単純にエクストラデッキに用意できる「キャノン・ソルジャー」というだけでも既に禁止カード相当の性能ですが、「ダーク・ダイブ・ボンバー(エラッタ前)」の強さの本質は「そもそも普通に使っても凶悪すぎる」という部分にこそありました。
DDBの強さの本質とは
基本的に、遊戯王における射出系カードはダメージ倍率が低く設定される傾向にあり、普通に使うだけではカード・アドバンテージ分の消費に見合わないバーンダメージしか得られない(※)ようになっています。例えば「キャノン・ソルジャー」は500バーン、「アマゾネスの射手」は600バーン、「メガキャノン・ソルジャー」ですら750バーンにしか届きません。
(※逆に言えば、だからこそ効率を無視して致死ダメージを与えるループギミックに悪用されていたとも言えます)
一方、「ダーク・ダイブ・ボンバー(エラッタ前)」にはこうした常識は一切通用しません。
単純に自分自身が2600打点のアタッカーであることはもちろんですが、それ以上に問題なのはやはりその高すぎるダメージ変換効率です。レベル4モンスターの段階で800ダメージと実用レベルの数値に到達し、レベル6では1200と【フルバーン】の採用基準を軽く上回る効率(※)を叩き出します。
(※「モンスター1体をリリースすることでバーンカードをサーチする能力」をプレイヤーが有すると考えればその恐ろしさが分かります)
要するにどのような状況であってもカード・アドバンテージの消費に釣り合ったダメージが期待できるということであり、例えるならば「ダーク・ダイブ・ボンバー(エラッタ前)」はそれ1枚で【ビートダウン】を【ビートバーン】に変えてしまうカードなのです。
これは今ほどゲームスピードが速くなかった当時としては致命的な状況でした。
なぜなら、当時のゲームバランスでは8000のライフを無傷の状態から削り切るのは難しく、モンスターを並べて総攻撃したとしても決着がつくことは稀だったからです。つまりそこに逆転の余地があったということであり、そもそもそれを前提にゲームバランスの整備がなされていたとも言えます。
しかし、「ダーク・ダイブ・ボンバー(エラッタ前)」の存在はその前提を粉々に壊し、「低ライフを晒したが最後DDBに焼き切られる」という末期的な価値観を生み出しました。これによりゲーム最序盤であってもワンキルを警戒せざるを得なくなったため、一時期は「実質ライフ4000からゲームが始まる」などと言われることさえあったほどです。
この対策として「ライフ・コーディネイター」などの各種バーンメタが注目を受けていた時期もありましたが、こうしたバーンメタは押し並べて汎用性に乏しく、そもそも実用レベルのカードパワーを持っていないという欠点があったため、実質的には対策のしようがないという状況にありました。
それどころか、最終的には「相手にDDBを使われる前に自分がDDBを使うことでDDBに対策する」という対策とも言えない対策が持ち上がってしまうことになります。一見すると意味不明な話ですが、これは要するに「攻撃は最大の防御」という理屈であり、「ワンキルされる前にワンキルしてしまえばワンキルされない」という身も蓋もない結論によるものです。
シンクロ全盛期におけるゲームスピードの加速現象の正体はこれであり、相手よりも早くゲームを終わらせるという認識が行き着くところまで行き着いてしまった結果だったと言えるでしょう。この時期に散見された引退騒動についても、その要因の多くが「ダーク・ダイブ・ボンバー(エラッタ前)」の存在によるものだったことは間違いないのではないでしょうか。
こうした環境での暴走の結果、「ダーク・ダイブ・ボンバー(エラッタ前)」は2009年9月の改訂でいきなりの禁止カード指定を下されることになります。当時としては最速、しかも大幅に記録を塗り替えてでの禁止カード行きであり、この記録が破られることは今後二度とないのではないか(※)とも言われていました。
(※しかし、後に【征竜】や「EMモンキーボード」によって100日以上も記録が更新されることになります)
いずれにしても、「ダーク・ダイブ・ボンバー(エラッタ前)」が遊戯王OCGでも最も凶悪なカードの1枚であることは疑いようもなく、今後どのようなインフレが起こるとしても類型カードがデザインされることはまずあり得ないのではないでしょうか。
現環境では弱い? DDBの本当の使い方
そんな「ダーク・ダイブ・ボンバー(エラッタ前)」というカードですが、実は現在のゲームバランスでは「普通に使うと弱い」のではないかという意見が少なからず存在することは確かです。
というのも、「総攻撃≒決着」という認識が当たり前になっている現代では上記のような「詰めのバーンカード」としての価値は相対的に落ちており、「ダーク・ダイブ・ボンバー(エラッタ前)」を使うまでもなくワンキルに持ち込めるケースは珍しくなくなっているからです。
実際、総攻撃で削り切れないライフを詰めるためだけに7シンクロ用のギミックを搭載するのは明らかに効率が悪く、そもそも素の展開力を高めて総打点を上げればいいという結論に至ります。もちろん、コンセプト的に火力面に難があるというデッキが存在するのも確かですが、その場合は「ダーク・ダイブ・ボンバー(エラッタ前)」を呼び出すこと自体が難しいという根本的な問題にぶち当たることになるでしょう。
しかし、これはもちろん「ダーク・ダイブ・ボンバー(エラッタ前)」を普通に使った場合の話であり、「普通に使わなければ極悪」のカードであることは間違いありません。単純に考えても合計レベルが40以上になるようにモンスターを並べるだけで先攻1キルが成立するため、ありとあらゆる展開系デッキが【DDB1キル】に行き着くことになる(※)のは容易に想像できる光景です。
(※分かりやすく言うと「トポロジック・ガンブラー・ドラゴン」のハンデス環境を更に酷くしたような状況に陥ります)
つまり、「ダーク・ダイブ・ボンバー(エラッタ前)」というカードはゲームバランスがインフレするほど【ビートダウン】では弱くなる一方、逆に射出カードとしての凶悪さは無限に跳ね上がっていくということになります。弱くなり続けると同時に強くなり続けるというカードは遊戯王全体を見渡してもほとんど例がなく、その意味でも他の永久禁止カードとは別格の特異性を備えているカードなのではないでしょうか。
そしてエラッタへ 牙を抜かれたDDB
ちなみに、前置きにある通り全盛期の「ダーク・ダイブ・ボンバー(エラッタ前)」は既に消滅しており、2014年4月の改訂でエラッタを踏まえて無制限カードに釈放されるという経緯を辿っています。
「ダーク・ダイブ・ボンバー」の効果は1ターンに1度しか使用できない。
①:自分メインフェイズ1に自分フィールドのモンスター1体をリリースして発動できる。リリースしたモンスターのレベル×200ダメージを相手に与える。
同名カードを含め1ターンに1度、しかもメインフェイズ1にしか射出効果を発動できなくなっているなど、以前の凶悪さからは想像もできないほどに弱体化してしまった形です。往年の「詰めのバーンカード」としてはもちろん、射出カードとしても使い道をほぼ喪失してしまい、どの角度から見ても実用レベルの性能ではなくなってしまいました。
一応、エクストラデッキに用意できる可変ダメージのバーンカードという意味では役割を残しているとも言えますが、その領域においても「マジックテンペスター」などに後塵を拝していることは否めません。そもそもその「マジックテンペスター」ですら環境レベルでは特に注目されていない(※)以上、この瞬間をもって「ダーク・ダイブ・ボンバー(エラッタ前)」の伝説が過去のものとなったことは間違いないと言えるでしょう。
(※カードプールの変化により2021年4月改訂で禁止行きになりました)
【後編に続く】
「ダーク・ダイブ・ボンバー(エラッタ前)」についての話は以上です。
その暴力的な火力によって当時の環境をまたたく間に火の海に変え、以降のOCGのゲームスピードを大幅に加速させてしまっています。第6期の中でも特に環境のインフレが極まった時期でもあることから、この時代を遊戯王における暗黒期の一つと数えることにも不足はありません。
しかし、当パックが生んだ怪物は「ダーク・ダイブ・ボンバー(エラッタ前)」だけではありませんでした。流石に「ダーク・ダイブ・ボンバー(エラッタ前)」と比べてしまえば小粒なパワーカードに過ぎませんでしたが、それでも当時の水準を遥かに超えた凶悪な下級チューナーが産声を上げていたのです。
後編に続きます。
ここまで目を通していただき、ありがとうございます。
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