【レスキューシンクロ】の歴史・時代ごとのデッキレシピまとめ

2019年6月23日

【前書き】

 【レスキューシンクロ】の大まかな歴史・時代ごとのデッキレシピについてまとめています。メタゲームやデッキ概要の解説については下記のリンクをご参照ください。

 

2008年7月 【シンクロダムド】型

サンプルデッキレシピ(2008年7月19日)
モンスターカード(22枚)
×3枚 X-セイバー エアベルン
召喚僧サモンプリースト
ダーク・アームド・ドラゴン
レスキューキャット(エラッタ前)
×2枚 サイバー・ドラゴン
N・ブラック・パンサー
ライトロード・ハンター ライコウ(エラッタ前)
×1枚 クリッター(エラッタ前)
D.D.クロウ
ファントム・オブ・カオス
冥府の使者ゴーズ
魔法カード(14枚)
×3枚 大寒波
×2枚 アームズ・ホール
貪欲な壺
×1枚 大嵐
サイクロン
死者蘇生
精神操作
洗脳-ブレインコントロール(エラッタ前)
早すぎた埋葬
ハリケーン
罠カード(4枚)
×3枚  
×2枚 奈落の落とし穴
×1枚 激流葬
聖なるバリア -ミラーフォース-
エクストラデッキ(15枚)
×3枚  
×2枚 キメラテック・フォートレス・ドラゴン
ゴヨウ・ガーディアン(エラッタ前)
氷結界の龍 ブリューナク(エラッタ前)
×1枚 A・O・J カタストル
X-セイバー ウルベルム
ギガンテック・ファイター
剣闘獣ガイザレス
スターダスト・ドラゴン
ブラック・ローズ・ドラゴン
ミスト・ウォーム
メンタルスフィア・デーモン
レッド・デーモンズ・ドラゴン

 

 【レスキューシンクロ】はその名の通り、レスキューキャット(エラッタ前)」を中核に据えたシンクロデッキの一種です。第6期突入とともに実装されたシンクロ召喚システムを最も早い段階で取り入れたアーキタイプであり、事実上は遊戯王OCGにおけるシンクロデッキの開祖に当たります。

 上記サンプルレシピはその中でも特に【シンクロダムド】と呼ばれていた型であり、シンクロ召喚だけではなく「ダーク・アームド・ドラゴン」の運用にも特化していたという特徴がありました。

 というより、レスキューキャット(エラッタ前)」からの展開が自然と闇属性カウントに繋がるようにデッキが構成されているため、実質汎用アタッカーのような感覚で運用可能だったと言っても過言ではありません。従来の【ダムドビート】が基本的に【闇属性ビート】以外の形を取れなかったことを考えれば非常に革命的な話であり、これ以降は文字通り新時代の【ダムドビート】としての地位を築き上げていくことになります。

 他方では、氷結界の龍 ブリューナク(エラッタ前)」と「早すぎた埋葬」を絡めたブリュループギミックの存在も見過ごすことはできません。

 特に【レスキューシンクロ】では「レスキューキャット(エラッタ前)」と「早すぎた埋葬」の2枚が揃うだけでループに突入することができたため、他のデッキと比べても明らかに強固なシナジーを形成していたことが窺えます。上記レシピでは「アームズ・ホール」を採用(※)することでさらにループ成功率を高めており、ビートダウンデッキでありながら即死コンボを内蔵したコンボデッキとしての顔も持っていたと言えるでしょう。

(※ただし、当然「大寒波」とはアンチシナジーになるため、構築によっては不採用のケースもありました)

 いずれにしても、当時の【シンクロダムド】が極めて凶悪なデッキパワーを備えていたことは間違いなく、やがては2008年上半期環境をほぼ完全に支配下に置いてしまうという惨状を生み出しています。レスキューキャット(エラッタ前)」「召喚僧サモンプリースト」「ダーク・アームド・ドラゴン」の全てを無条件で3積みできたという恐ろしい時代であり、歴代【レスキューシンクロ】の中でも分かりやすく最強の時代です。

 

2008年9月 【メタビート】型

サンプルデッキレシピ(2008年9月22日)
モンスターカード(23枚)
×3枚 X-セイバー エアベルン
巨大ネズミ
ライオウ
×2枚 召喚僧サモンプリースト
ダーク・アームド・ドラゴン
N・ブラック・パンサー
ライトロード・ハンター ライコウ(エラッタ前)
レスキューキャット(エラッタ前)
×1枚 クリッター(エラッタ前)
コアラッコ
サイバー・ドラゴン
冥府の使者ゴーズ
魔法カード(10枚)
×3枚 大寒波
×2枚 貪欲な壺
×1枚 大嵐
サイクロン
死者蘇生
洗脳-ブレインコントロール(エラッタ前)
ハリケーン
罠カード(7枚)
×3枚 王宮の弾圧
×2枚 奈落の落とし穴
×1枚 激流葬
聖なるバリア -ミラーフォース-
エクストラデッキ(15枚)
×3枚  
×2枚 ゴヨウ・ガーディアン(エラッタ前)
氷結界の龍 ブリューナク(エラッタ前)
ブラック・ローズ・ドラゴン
×1枚 A・O・J カタストル
ギガンテック・ファイター
キメラテック・フォートレス・ドラゴン
剣闘獣ガイザレス
スターダスト・ドラゴン
ナチュル・ビースト
ミスト・ウォーム
メンタルスフィア・デーモン
レッド・デーモンズ・ドラゴン

 

 とはいえ、このような不健全な環境が許されるはずがなく、直後の2008年9月の改訂で【レスキューシンクロ】に早々に規制が入ることになります。

 レスキューキャット(エラッタ前)」「召喚僧サモンプリースト」「ダーク・アームド・ドラゴン」の3枚が同時に準制限カードに指定され、デッキの安定性が大きく低下してしまうことになりました。継戦能力が落ちたことはもちろん、単純に手札に引き込む確率が下がったことで【レスキューシンクロ】1本に頼った構成を取れなくなり、コンセプトを切り替えることを余儀なくされた形です。

 また、ブリュループを成立させていた「早すぎた埋葬」も禁止カードとなったため、これまでのようにループ突入からイージーウィンに持ち込むことも不可能になりました。全体的に様子を見つつも危険な部分を潰したような規制が行われており、これ以降は【レスキューシンクロ】も一時的にトップメタから後退しています。

 しかし、多少弱体化したとはいえ【レスキューシンクロ】そのものの強さは健在であり、9月以降の環境でも引き続きメタの一角として存在感を示していました。

 具体的には、空いたデッキスペースに「ライオウ」「王宮の弾圧」といったメタ要素の強いカードを取り入れることで相手の減速を狙い、相対的にデッキパワーの低下を補う構成にシフトしています。見方によっては【レスキューシンクロ】ギミックを下敷きとした【メタビート】のようにも取れるデッキであり、いわゆる「主流メタビ」に近いアーキタイプに姿を変えていた時代です。

 加えて、9月下旬に獲得した「ナチュル・ビースト」という強力な新兵器の存在も見逃せません。

 というより、この時期の【レスキューシンクロ】が【メタビート】型に移行していったのも「ナチュル・ビースト」の影響によるところが大きく、「ナチュビを突破してくる大型モンスターにメタを張る」という意図から型の派生が進んだとも言えます。実際、当時の環境では「レスキューキャット(エラッタ前)」は当然として、「ゾンビキャリア」など魔法カードに頼らず6シンクロを立ててくるカードも多かったため、「ナチュル・ビースト」を単独で運用するのは非常にリスキーなプレイング(※)だったのです。

(※例えば、安易にナチュビを棒立ちさせると「ゴヨウ・ガーディアン(エラッタ前)」に奪われてしまうなどの危険がありました)

 とはいえ、こうした対策を踏まえた上でも当時のトップメタであった【シンクロアンデット】には勝つことができず、終始2番手の立ち位置に甘んじていたことは否めません。年末頃になると「アーカナイト・マジシャン」を得たことで【AKB】型の研究も進んでいますが、同パックから現れていた「ダーク・ダイブ・ボンバー(エラッタ前)」によって第6期最悪レベルのワンキル環境が引き起こされてしまったため、結局はトップメタには食い込めないまま環境が流れてしまっています。

 

2009年3月 【墓守猫(AKB)】型

サンプルデッキレシピ(2009年3月1日)
モンスターカード(19枚)
×3枚 X-セイバー エアベルン
墓守の偵察者
×2枚 召喚僧サモンプリースト
N・ブラック・パンサー
レスキューキャット(エラッタ前)
×1枚 クリッター(エラッタ前)
コアラッコ
サイバー・ドラゴン
ダーク・アームド・ドラゴン
墓守の番兵
冥府の使者ゴーズ
ライトロード・ハンター ライコウ(エラッタ前)
魔法カード(15枚)
×3枚 大寒波
貪欲な壺
×2枚 月の書
封印の黄金櫃
×1枚 大嵐
サイクロン
死者蘇生
洗脳-ブレインコントロール(エラッタ前)
ハリケーン
罠カード(6枚)
×3枚  
×2枚 奈落の落とし穴
×1枚 激流葬
死のデッキ破壊ウイルス(エラッタ前)
聖なるバリア -ミラーフォース-
ダスト・シュート
エクストラデッキ(15枚)
×3枚  
×2枚 アーカナイト・マジシャン
ダーク・ダイブ・ボンバー(エラッタ前)
×1枚 A・O・J カタストル
ギガンテック・ファイター
キメラテック・フォートレス・ドラゴン
ゴヨウ・ガーディアン(エラッタ前)
スターダスト・ドラゴン
ナチュル・ビースト
氷結界の龍 ブリューナク(エラッタ前)
ブラック・ローズ・ドラゴン
ミスト・ウォーム
メンタルスフィア・デーモン
レッド・デーモンズ・ドラゴン

 

 その後、2009年3月の改訂で【シンクロアンデット】【スーパードローライダー】が姿を消したことにより、再び【レスキューシンクロ】の天下が訪れることになります。

 従来の【レスキューシンクロ】に「墓守の偵察者」「墓守の番兵」による【墓守】ギミックを取り入れ、ビートダウン耐性を高めるとともに「アーカナイト・マジシャン」のシンクロ召喚を安定化することに成功しています。さらに、これまでネックであった初動の不安定さも「封印の黄金櫃」を採用することでカバー(※)しているなど、弱体化を上手く切り抜ける構築が選択されていました。

(※中盤以降は「貪欲な壺」のサーチ手段にもなるため、間接的にスタミナ不足の解決にも貢献していた重要なカードです)

 もちろん、上記の「ナチュル・ビースト」パッケージも前期環境から引き継いでおり、【レスキューシンクロ】自身も含め魔法カード比率の高いデッキに対して有利に立ち回ることができました。なおかつ、同改訂で「ゴヨウ・ガーディアン(エラッタ前)」「氷結界の龍 ブリューナク(エラッタ前)」の2枚が制限カード行きとなっていたことも追い風となり、これを守り切るのも以前と比べて容易になっています。

 こうした【墓守】採用型【レスキューシンクロ】は俗に【墓守猫】、もしくは「アーカナイト・ビート(※)」から取って【AKB】と呼ばれ、間もなく【レスキューシンクロ】における主流型としての地位を確立していくことになります。

(※英語版が出るまでは「アーカナイト」は「Arcane」「Knight」から来ていると考えられていたため、このような頭文字が取られていました)

 加えて、環境末期には【剣闘獣】との複合である【猫剣闘獣】も環境トップに食い込んでくるなど、まさに「猫天国」としか言いようがない時代が広がっていました。

 ちなみに、同じく2009年3月の改訂を機に台頭した勢力としては【旋風BF】が挙げられますが、これですら【レスキューシンクロ】の勢いを抑え込むことはできていません。

 というのも、【BF】カテゴリ最強のアタッカーである「BF-蒼炎のシュラ」を【墓守】ギミックによって受け流されてしまうケースが多く、本来のビートダウン性能の高さを上手く発揮できない状況にあったからです。

 その他、【レスキューシンクロ】を仮想敵に見据えた【ダークアンデット】などのメタデッキも少なからず実績を残していました(※)が、やはり全体の割合としては【レスキューシンクロ】が圧倒的なシェアを築いていました。

(※当時の選考会では【ダークアンデット】が代表の一角を射止めています)

 いずれにしても、この時期の【レスキューシンクロ】が2009年上半期のトーナメントシーンをほぼ完全に牛耳っていたことは間違いありません。

 その結果、2009年9月の改訂では「レスキューキャット(エラッタ前)」「召喚僧サモンプリースト」の2枚が同時に制限カード指定を下され、アーキタイプとしては非常に致命的なダメージを負うことになりました。さらに、同じタイミングで「大寒波」も制限カード行きとなるなど、明らかに【レスキューシンクロ】を強く意識した調整が行われていた改訂です。

 もちろん、「レスキューキャット(エラッタ前)」自体のカードパワーの高さが失われていたわけではありませんが、少なくとも【レスキューシンクロ】として大々的に名を馳せることはなくなったと言えるでしょう。

 

恐怖の呪文「サモサモキャットベルンベルン」の実態について

 ちなみに、上記の【墓守猫】全盛期に急激に広まった「ダーク・ダイブ・ボンバー(エラッタ前)」のワンキルゲームを揶揄した「サモサモキャットベルンベルン」という呪文はあまりにも有名ですが、この実態が意外と誤解されて広まっているように思えるため、この場で軽く言及しておきます。

 まずは具体的な動きを下記に示します。

 

①:「召喚僧サモンプリースト」を召喚し、効果で2体目の「召喚僧サモンプリースト」をリクルートする。

 

②:リクルートした「召喚僧サモンプリースト」から「レスキューキャット(エラッタ前)」をリクルートする。

 

③:「レスキューキャット(エラッタ前)」から「X-セイバー エアベルン」2体をリクルートする。

 

④:上記4体を素材に「ダーク・ダイブ・ボンバー(エラッタ前)」2体をシンクロ召喚し、攻撃後に射出して合計8000ダメージ。

 

 手札3枚からワンキルが決まる脅威の即死コンボであり、2009年当時のゲームスピードにおいては非常に凶悪な動きです。実際、この呪文の存在がゲームバランスの劣悪化を招いていたことは間違いなく、そのことは直後の制限改訂が証明しています。

 しかし、魔法カード2枚という緩いようで厳しい条件を要求されることに加え、ビッグアクションゆえに妨害を受けた時のリスクも大きかったため、巷で言われるほどこのコンボが当時の環境で横行していたわけではありません。どちらかというと「サモサモキャットベルンベルン」をちらつかせることで相手を牽制する目的が大きく、実際にこれを使用する機会が訪れるケースは非常に稀です。

 実戦環境においては「X-セイバー エアベルン」によるハンデスで手札を絞っていくプレイングが主流であり、体感的には一度のトーナメントで1回決まるかどうかという程度の使用頻度でした。

 

2010年7月 【植物猫】型

サンプルデッキレシピ(2010年7月17日)
モンスターカード(20枚)
×3枚 デブリ・ドラゴン
×2枚 X-セイバー エアベルン
ダンディライオン
D.D.クロウ
ライトロード・ハンター ライコウ(エラッタ前)
ローンファイア・ブロッサム
×1枚 キラー・トマト
クリッター(エラッタ前)
グローアップ・バルブ
コアラッコ
召喚僧サモンプリースト
スポーア
レスキューキャット(エラッタ前)
魔法カード(16枚)
×3枚 強欲で謙虚な壺
貪欲な壺
×2枚 月の書
封印の黄金櫃
×1枚 大嵐
おろかな埋葬
サイクロン
大寒波
ハリケーン
ワン・フォー・ワン
罠カード(枚)
×3枚  
×2枚 奈落の落とし穴
×1枚 聖なるバリア -ミラーフォース-
ダスト・シュート
エクストラデッキ(15枚)
×3枚  
×2枚 氷結界の龍 トリシューラ
×1枚 アーカナイト・マジシャン
アームズ・エイド
A・O・J カタストル
エンシェント・フェアリー・ドラゴン
ゴヨウ・ガーディアン(エラッタ前)
スクラップ・ドラゴン
スターダスト・ドラゴン
C・ドラゴン
ナチュル・ビースト
氷結界の龍 ブリューナク(エラッタ前)
フォーミュラ・シンクロン
ブラック・ローズ・ドラゴン
マジカル・アンドロイド

 

 このように、厳しい規制により環境から姿を消したかに見えた【レスキューシンクロ】でしたが、2010年に入って相性の良いカードを続々と獲得していったことで再びメタゲームに参入を果たすことになります。

 具体的には、1月に現れた「氷結界の龍 トリシューラ」によって従来の型には無かった高い盤面解決能力を手に入れたほか、「強欲で謙虚な壺」という汎用サーチカードによって実用レベルの安定性を確保することに成功しています。特に後者は「封印の黄金櫃」と合わせてサーチカード最大5枚体制という状況を作り出すことができたため、【レスキューシンクロ】ギミックに限らない多種多様なギミックとの折衷という新たな選択肢を生み出しました。

 その内の一つが「スポーア」「グローアップ・バルブ」「ローンファイア・ブロッサム」「ダンディライオン」らによる【植物シンクロ】ギミックであり、やがてはここに「デブリ・ドラゴン」を加えて【植物デブリ猫】として頭角を現すことになります。ギミックそのものは明確なシナジーを形成しているわけではありませんが、単純に心臓が2つになることで「片方のギミックが動かない場合でも戦える」という体制を取れたのが強みです。

 とはいえ、やはり2010年上半期環境と言えば【インフェルニティ】と【旋風BF】の2大勢力に支配されていた時代であり、流石の【レスキューシンクロ】であっても厳しい立場に置かれていたことは否めません。

 また、複数のギミックを積んだことで全体的にデッキスペースの余裕がなくなったため、以前のように【メタビート】軸にシフトすることも難しくなっていました。

 というより、そもそも【インフェルニティ】【旋風BF】の両方に同時に対応できるメタカードは数少なく、それらは【植物猫】では採用が困難だったという根本的な問題もあります。

 結局、当時の【レスキューシンクロ】がこうした苦境を打破する何かを得ることはできず、最後は2010年9月の改訂でレスキューキャット(エラッタ前)」自体が禁止カード指定を受けるという形で完全に息の根を止められることになりました。以降は「レスキューキャット(エラッタ前)」そのままの性能で現役復帰を遂げることはなく、現在ではエラッタによって存在すら抹消されるという経緯を辿っています。

 よって事実上、この瞬間をもって【レスキューシンクロ】の歴史が終わりを迎えたと言えるのではないでしょうか。

 

【まとめ】

 【レスキューシンクロ】の大まかな歴史・時代ごとのデッキレシピについては以上です。

 環境全体の流れについては下記リンクをご参照ください。

 

Posted by 遊史