氷結界の龍ブリューナク参戦 エラッタ前のバウンス地獄
・前書き
・完全体ブリューナク ループコンボの権化
・早すぎた埋葬との蘇生ループ 僅か半年で禁止2枚輩出
・【シンクロアンデット】の心臓 間もなく制限行き
・そして禁止カードに 理由は言わずもがな
・後編に続く
【前書き】
【第6期の歴史1 新召喚法「シンクロ召喚」導入 引退騒動のような何かの勃発】の続きとなります。ご注意ください。
マスタールールの制定とともに【シンクロ召喚】が導入され、遊戯王OCGはカードゲームとして新たな境地に足を踏み入れました。第5期以前のセオリーを完全に塗り替えるような話であり、ゲーム環境に対してのみならずOCG人口にも一部影響が及んだほどです。
時代の激変の気配にプレイヤーの期待と不安が高まる中、3月中にシンクロ界隈のカードプールに大きな動きが起こります。
完全体ブリューナク ループコンボの権化
2008年3月12日、デュエルターミナル第1弾である「DUEL TERMINAL -シンクロ覚醒!!-」の稼働が開始されました。新たに30種類のカードが誕生し、遊戯王OCG全体のカードプールは3146種類に増加しています。
「シンクロ覚醒」というセット名にふさわしく、非常に強力なシンクロモンスター及びチューナーを輩出していたタイトルです。第6期を代表するチューナー「X-セイバー エアベルン」を筆頭に、「A・O・J カタストル」「ミスト・ウォーム」といった往年の名カードが一斉に姿を現しています。
中でも「氷結界の龍 ブリューナク(エラッタ前)」の存在はあらゆる意味で既存の常識を破壊するようなカードだったのではないでしょうか。
自分の手札を任意の枚数墓地に捨てて発動する。その後、フィールド上に存在するカードを、墓地に送った枚数分だけ持ち主の手札に戻す。
見るからに何かがおかしいと分かるテキストですが、実際OCG全体を見渡しても最強クラスの起動効果です。フィールドの任意のカードをバウンスできるというだけでもシンプルに強い除去効果ですが、「氷結界の龍 ブリューナク(エラッタ前)」の真価はセルフ・バウンスコンボや各種ループギミックへの悪用適正の高さにこそあります。
早すぎた埋葬との蘇生ループ 僅か半年で禁止2枚輩出
代表的なコンボとしては、「早すぎた埋葬」を絡めた蘇生ループが特に有名です。
「早すぎた埋葬」は破壊以外の方法でフィールドを離れた場合は装備先のモンスターが自壊しないため、バウンスカードとの組み合わせによりローリスクで再利用することができます。しかし、これまでは「ハリケーン」や「アビス・ソルジャー」など一部のカードでしかコンボを狙えず、汎用蘇生カードとしては「死者蘇生」の下位互換として見られている状況でした。
ところが、この時に「氷結界の龍 ブリューナク(エラッタ前)」が参戦したことにより、「早すぎた埋葬」は一転して遊戯王最強クラスの壊れカードに変貌を遂げることになります。
上述の通り、「氷結界の龍 ブリューナク(エラッタ前)」は単純に汎用シンクロモンスターとしても極めて優秀であり、【シンクロ召喚】のギミックを含むのであればエクストラの必須枠になると言われていました。なおかつ、レベル6シンクロはシンクロモンスターの中でも特に出しやすい部類に入るため、必要なタイミングでこれを呼び出すのはそう難しいことではありません。
つまり、「氷結界の龍 ブリューナク(エラッタ前)」の存在はほとんどのデッキが標準的に「早すぎた埋葬」の蘇生ループギミックを搭載しているという末期的な状況を生み出してしまったことになります。おまけに装備カードである「早すぎた埋葬」は「アームズ・ホール」によるサーチ・サルベージに対応するため、その気になれば簡単に4枚体制を作れたことも問題の深刻化に繋がっていました。
とどめとなったのが、遊戯王最強格のターボモンスター「D-HERO ディスクガイ(エラッタ前)」の存在です。
これまでの環境でも【ディスクライダー】や【デステニーダムド】のキーカードとして名を馳せていたカードですが、ブリュループの流行に伴って「D-HERO ディスクガイ(エラッタ前)」の凶悪さが一気に跳ね上がってしまったことは間違いありません。
さらに、上記ループに適当なチューナーを巻き込むことで「シンクロモンスターを連続展開しながらドロー加速する」という意味不明の状況を作り出せたことも凶悪さに拍車をかけていました。一応、ライフコストがかかるため完全な無限ループにはなりませんが、何度か使い回すだけでもゲームに勝つには十分です。
こうした危険極まりないループギミックの存在が許されるはずがなく、2008年9月の改訂で「早すぎた埋葬」と「D-HERO ディスクガイ(エラッタ前)」の2枚が同時に禁止カード指定を下されています。元々パワーカードと認識されていたカードではありますが、事実上「氷結界の龍 ブリューナク(エラッタ前)」に巻き込まれる形で規制されたというのは間違いありません。
一方、ギミックの根幹を成していた「氷結界の龍 ブリューナク(エラッタ前)」はノータッチの状況ですが、登場後間もないという商業的な事情もあり、一旦は様子見が入った形と言えるでしょう。
裏を返せば、当時の「氷結界の龍 ブリューナク(エラッタ前)」は上記2枚のカードを犠牲に生き残ったようなものであり、僅か半年で禁止カード2枚を輩出してしまった恐るべきカードです。
【シンクロアンデット】の心臓 間もなく制限行き
しかし、これ以降の環境でも「氷結界の龍 ブリューナク(エラッタ前)」の脅威が去ることはありませんでした。単純に「氷結界の龍 ブリューナク(エラッタ前)」が汎用シンクロとして優秀すぎたことも理由の一つですが、シンクロデッキの第2世代とも言える【シンクロアンデット】が間もなく台頭したからです。
【シンクロアンデット】はアンデット族を代表するチューナー「ゾンビキャリア」の誕生を受けて成立したアーキタイプであり、アンデット族の豊富な蘇生サポートを【シンクロ召喚】のギミックと組み合わせることをメインコンセプトに据えています。
その一方で、手札に「馬頭鬼」や「ゾンビキャリア」が固まると初動が遅れやすいリスクや、枠の関係で全体的に除去カードが薄い(※)といった弱点を抱えており、メインデッキの地力に限って言えば【レスキューシンクロ】に押され気味だったことは否めません。
(※実際、メインの除去手段はほぼ「ダーク・アームド・ドラゴン」頼みに近い状況でした)
こうした弱みを見事に解消していたのが「氷結界の龍 ブリューナク(エラッタ前)」の存在であり、むしろ「氷結界の龍 ブリューナク(エラッタ前)」の後押しこそが【シンクロアンデット】を環境トップに押し上げたとも言えるでしょう。
なおかつ、【シンクロアンデット】は主要モンスターのレベルの関係で6シンクロの召喚を非常に得意としていたため、「氷結界の龍 ブリューナク(エラッタ前)」を最低2枚、場合によってはフル投入も視野に入るほどの採用率を誇っていました。
それどころか、一時期は「蘇りし魔王 ハ・デス」「デスカイザー・ドラゴン」らを差し置いて「最強のアンデット族シンクロ」などと呼ばれていたことすらあり、そういった風評からも当時の「氷結界の龍 ブリューナク(エラッタ前)」の大きすぎる存在感が窺えるのではないでしょうか。
このように、【シンクロアンデット】を中心に環境で猛威を振るった結果、続く2009年3月の改訂で「氷結界の龍 ブリューナク(エラッタ前)」が制限カードに指定されることになります。誕生から僅か1年での出来事であり、第6期出身のシンクロモンスターとしては最速クラス(※)での規制入りです。
(※ちなみに、同じタイミングで「ゴヨウ・ガーディアン(エラッタ前)」も規制されています)
そして禁止カードに 理由は言わずもがな
しかし、例によって制限カード行きになった後も「氷結界の龍 ブリューナク(エラッタ前)」の時代が終わることはありませんでした。そもそものカードパワーが高すぎる以上は至極当然の成り行きであり、これ以降も依然パワーカードとして環境に居座り続けることになります。
また、カードプールの拡大に比例してコンボカードとしての有用性、要するに悪用適正が上昇し続けていたことも見逃せません。例えば【インフェルニティ】では「トリシュ4連打ループ」を成立させるパーツとして、【六武衆】では「無限トリシュ+無限ドロー」を成立させるパーツとして、【シーラカンスワンキル】では「継承ドゥローレンループ」のサブルートを成立させるパーツとして、それぞれ環境レベルで実戦投入された実績があります。
こうした環境での暴走の結果、「氷結界の龍 ブリューナク(エラッタ前)」は2012年9月の改訂で遂に禁止カード行きを宣告されることになりました。理由についてはもはや言うまでもなく(※)、むしろ遅すぎる規制だったとさえ囁かれていたほどです。
(※一応、あえて言うのであれば直前に現れていた【海皇水精鱗】の存在が禁止カード化の決定打となったと言えます)
現在はエラッタによる弱体化が入ったこと、また環境の変化もあって第一線からは退いているカードですが、このカードの無慈悲さが強く記憶に残っているという方も少なくないのではないでしょうか。
【後編に続く】
「氷結界の龍 ブリューナク(エラッタ前)」についての話は以上となります。
誕生直後から6シンクロの筆頭として環境で猛威を振るい、間もなく規制を受けたカードですが、その後もパワーカードとして常に環境に姿を見せていました。遊戯王最強クラスのシンクロモンスターという肩書きに偽りはなく、これがシンクロ黎明期に生まれてしまったことが「シンクロ召喚はインフレの象徴」という風評を決定付けたとも言えるでしょう。
しかし、「DUEL TERMINAL -シンクロ覚醒!!-」がもたらした出来事は「氷結界の龍 ブリューナク(エラッタ前)」の流行だけではありません。この時のカードプールの更新により、過去に誕生していた一部のマイナーカードが急浮上を果たしていたからです。
後編に続きます。
ここまで目を通していただき、ありがとうございます。
ディスカッション
コメント一覧
懐かしいですね、自分が丁度遊戯王から離れだした時期がブリューナクとゴヨウが暴れていた時期でした。
ブリューナクは今考えても色々おかしかったカードですがイラストはめちゃくちゃ好きなんですよね。
コメントありがとうございます。
ブリューナクはシンクロ実装直後ということもあってか盛大に調整に失敗してしまった感はあり、ゴヨウと合わせてシンクロ期のインフレを象徴するカードとなってしまったように思います。
ただ、ゴヨウの方は単純にパワーが高すぎるだけでしたが、こちらは効果のデザインそのものに問題があったことは否めず、そもそもシンクロ云々関係なくブリューナク自体が壊れていただけだったのかもしれません(おっしゃる通り今の基準で考えてもおかしな性能をしていますし……)
ゴヨウはアニメで(一部層に)人気のあった牛尾さんのエースカードだったこともあり、無情なコントロール奪取効果を使われてもまあまあ許せたのですが、ブリューナクは、お前誰だよ!?何なんだよ!?といった感じでしたね
ターミナル産ということもありシングル値段が高かったので僻みも入ってましたが…笑
コメントありがとうございます。
全盛期のブリューナクはあまりにも必須すぎると言いますか、とりあえず積まない理由は無いカードだったように思います。
おっしゃる通り値段も高価だったという事情もありましたし、色々な意味でプレイヤー泣かせの存在だったのかもしれません。