ゾンビキャリアが壊れカードだった時代 僅か半年強で制限行き

2019年3月5日

スポンサーリンク

【前書き】

 【第6期の歴史6 ブラック・ローズ・ドラゴン誕生 全て壊すんだ合戦環境の到来】の続きになります。特に、この記事では前後編の後編の話題を取り扱っています。ご注意ください。

 

ゾンビキャリア 汎用チューナーとしても強すぎたカード

 レギュラーパック「CROSSROADS OF CHAOS」から現れたトップレアの筆頭、それは「ゾンビキャリア」という下級チューナーでした。

手札を1枚デッキの一番上に戻して発動する。墓地に存在するこのカードを自分フィールド上に特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたこのカードは、フィールド上から離れた場合ゲームから除外される。

 結論から言えばまず間違いなく第6期環境最強のチューナーであり、むしろシンクロ時代全体を見渡してもトップクラスの性能を誇るパワーカードです。もちろん、一部分において「ゾンビキャリア」を上回る強さを発揮するチューナーは少なからず存在しますが、総合的に見てこれほど汎用性に優れたチューナーは「ゾンビキャリア」をおいて他になかったのではないでしょうか。

 効果自体は「手札1枚をデッキトップに戻すことで自己再生する」という非常にシンプルなもので、さらにデメリットとして蘇生後にフィールドを離れた場合は除外されるという性質を持っています。現在の価値観では極々あり触れた効果であり、特別強いと言えるような性能ではありません。

 しかし、これは2008年当時としては「壊れカード」と言って差し支えないほどに凶悪な蘇生効果でした。

 というのも、この時期のカードプールではモンスターの展開手段が今ほど豊富ではなく、特にチューナーに関しては一部の例外を除けば「手札からそのまま通常召喚する」というのが最もポピュラーな方法だったからです。息をするように特殊召喚を連発する現代では想像しにくい話ですが、逆にだからこそ「レスキューキャット(エラッタ前)」や「緊急テレポート」といったカードが高い評価を受けていたとも言えるでしょう。

 翻って「ゾンビキャリア」はそれ自体が展開手段を内蔵しているチューナーであり、この時点で当時のほぼ全てのシンクロサポートよりも優秀であることは明らかです。この時期のシンクロ召喚ギミックは基本的に「チューナー」と「それを展開するカード」のコンボによって成り立っていたため、それを1枚でこなす「ゾンビキャリア」の強さは文字通り頭一つ抜けています。

 さらに、闇属性かつアンデット族という恵まれたステータスを与えられていたことも「ゾンビキャリア」の強さを際立たせていました。これにより「馬頭鬼」を筆頭とする【アンデット族】サポートはもちろん、終末の騎士」や「ダーク・グレファー」といった闇属性サポートにも対応していたため、非常に幅広いデッキで採用が検討できる汎用チューナーという立ち位置を確立していった形です。

 また、一見するとディスアドバンテージに見える手札コストですが、これも実際には1:1交換の消費にとどまっており、デメリットらしいデメリットはセルフドローロックの危険のみに限られることが分かります。盤面的には「緊急テレポート」から「クレボンス」を呼び出しているのとほぼ同じ状況になるため、事実上「ゾンビキャリア」が墓地に落ちるだけで自動的に「緊急テレポート」をサーチしているようなものと言っても過言ではありません。

 加えて、この時期は「生還の宝札」が無制限カードだったため、これと併用することで手札コストすら実質無視することができました。元々【アンデット族】自体が蘇生手段の豊富な種族であるという背景もあり、2重の意味で抜群のシナジーを持っていると評価されていたカードです。

 まさに従来のチューナーの常識を完全に塗り替えるようなカードであり、これが【シンクロ召喚】システムの実装後3ヶ月で誕生してしまったことは明らかな調整ミスと言うほかないでしょう。

 そうした環境での活躍の結果、「ゾンビキャリア」は2009年3月の改訂でいきなりの制限カード指定を受けることになります。チューナーとしては史上初となる制限カード行きであり、また誕生から半年強での規制という意味でもOCG稀に見る厳しい対応です。

 しかし、制限カードとなった後も「ゾンビキャリア」の採用率が落ちることはなく、依然として環境の最前線で使われ続けていました。本場である【シンクロアンデット】【スーパードローライダー】は規制により弱体化していましたが、【ライトロード】や【墓地BF】など相性の良いデッキはいくらでもあり、一時期はどこを見ても「ゾンビキャリア」がいるという環境が成立していたほどです。

 そのため、一体なぜいつまで経っても禁止カードにならないのか(※)と不思議がられていたこともあり、実質的には禁止カード並の凶悪さを誇っていたと言えるのではないでしょうか。

(※当時よく言われていた理由としては、「蘇りし魔王 ハ・デス」などの専用シンクロの存在意義を奪わないためではないかという話が有力でした)

 

スポンサーリンク


専用デッキ【シンクロアンデット】の台頭

 このように、第6期環境全体を通して猛威を振るっていた「ゾンビキャリア」でしたが、やはりその全盛期が2008年9月2009年3月環境において訪れていたことも確かです。

 具体的には【シンクロアンデット】のキーカードとして間もなく頭角を現し、これ以降のメタゲームをその支配下へと置いています。この時期はまだ【レスキューシンクロ】が強かった関係であまり目立ってはいませんでしたが、そちらが弱体化してからは凄まじい勢いでシェアを拡大していきました。

 この対抗馬として各種【メタビート】や、「次元の裂け目」を取り入れて墓地対策に舵を切った【次元剣闘獣】などが試され続けていましたが、【シンクロアンデット】を完全に抑え込むことはできていません。むしろ【光アンデット】など逆にメタ側に回った【アンデット】に押されている向きすらあり、メタを張ってもどこかが漏れてしまうという苦しい局面に置かれています。

 ちなみに、【シンクロアンデット】のひな形が完成したのが7月末から8月頭にかけての話だったため、1ヶ月ほどではありますが「早すぎた埋葬」と共存できていた期間もありました。上述の通り、メタゲームにおいては【レスキューシンクロ】に押され気味だった【シンクロアンデット】ですが、デッキパワーに関して言えばブリュループ搭載型の時期の方が凶悪だったとする意見もあります。

 とはいえ、後々には「闇の誘惑」や「ダーク・ダイブ・ボンバー(エラッタ前)」といった重要なデッキパーツを獲得して更なる強化を遂げることもあり、総合的にはやはり後期型の【シンクロアンデット】の方が強かったのではないでしょうか。

 

その他シンクロ系デッキ 【スーパードローライダー】ほか

 【シンクロアンデット】以外にも「ゾンビキャリア」の恩恵を受けたデッキは数多く、中でも【スーパードローライダー】の躍進は一際目を引きます。

 【ライダー】の名を冠していることから見て取れるように、元々は「光と闇の竜」を素早く召喚することをメインコンセプトとしていたデッキです。強力なドローソース「闇の誘惑」の誕生を受けて開発されたアーキタイプであり、「デステニー・ドロー」「トレード・イン」を合わせた「ドロー三種の神器」によるスーパードロー加速が最大の魅力と言えるでしょう。

 しかし、最終的には「ゾンビキャリア」を活かして連続シンクロ召喚によるワンキルを狙うデッキに変貌しているため、厳密には【ライダー】系に属しているデッキとは言えません。「光と闇の竜」が使われていたのは「ダーク・ダイブ・ボンバー(エラッタ前)」が出てくる前までの話であり、それ以降はほぼデッキには入らなくなっていたのではないでしょうか。

 ややこしくなりましたが、要するに現在で言うところの【シンクロダーク】に近いコンセプトを掲げていたデッキとなっています。「ダーク・グレファー」や「D-HERO ディアボリックガイ」といった今日でもよく知られる顔触れが必須枠を務めており、カードプールの古さを除けばこれと同型であると考えて差し支えありません。

 この時期特有の採用カードとしては、メインから3積みされた「大寒波」の存在が特に目を引きます。ワンキル特化型というコンセプトの都合上、実質「通れば勝ち」とすら言える最高に噛み合った1枚(※)であり、各種ドローソースとのアンチシナジーを気にせずにフル投入が前提とされていました。

(※ただし、元々この時期は「大寒波」自体がかなり流行していたため、こうしたワンキル特化戦法は【スーパードローライダー】以外でもよく取り入れられていました)

 いずれにしても、こうした凶悪なシンクロデッキが「ゾンビキャリア」1枚から成立したことは間違いなく、これを第6期という時代を象徴するカードの1枚に数えることに不足はないでしょう。

 

【まとめ】

 「ゾンビキャリア」についての話は以上です。

 これまでのチューナーの常識を覆す圧倒的なカードパワーにより環境を席巻、間もなくメタゲームを【シンクロアンデット】【スーパードローライダー】によって塗り潰しています。その結果、2009年3月の改訂では早々に制限カード指定を下されていますが、規制を受けた後も勢いが衰えることはなく、一時期は禁止カード行きが妥当という声も少なからず上がっていました。

 現在では似たような性質を持ったカードもそれなりに増えており、かつてほどの存在感は残っていませんが、それでも相性の良いデッキでは今なお使われ続けている永遠の名カードです。

 ここまで目を通していただき、ありがとうございます。