生還の宝札 エクゾディアの復権とキュアバーン1キル

2018年1月29日

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【前書き】

 【第2期の歴史27 激流葬の誕生 不遇の時代】の続きになります。特に、この記事では前後編の後編の話題を取り扱っています。ご注意ください。

 

【生還の宝札 爆アド発生装置】

 「生還の宝札」の当時のテキストは以下の通りです。

自分の墓地からモンスターがフィールド上に特殊召喚された時、デッキからカードを1枚ドローする事ができる。

 墓地からモンスターを蘇生する度に、カードを1枚ドローできる効果を持った永続魔法カードです。これ単体では何も仕事をしませんが、「死者蘇生」などの蘇生カードと組み合わせることで極めて反則的なドローエンジンへと変貌します。

 単純に全ての蘇生カードに1ドローのおまけがつくようになるため、これが1枚張ってあるだけで手札が減ることはなくなります。もちろん、複数枚張られていればその分だけアドバンテージが累積していくのは言うまでもありません。

 また、第2期当時のカードプールには存在していませんでしたが、「ヴァンパイア・ロード暗黒のマンティコアなどの自己蘇生効果を持ったモンスターとの相性も抜群です。特に後者は2枚揃うことで無限ループを形成することから、【宝札マンティコア】として歴史に名を残しました。

 ただし、このカードを張った時点で1枚分のアドバンテージを失っているため、元を取るには少なくとも2回はドロー効果を発動しなければなりません。

 しかし、当時の【グッドスタッフ】では蘇生カードは2~4枚前後の採用枠が基準となっており、またそれらを再利用するギミックが用意されるケースも稀でした。そのため、「生還の宝札」のドロー効果を活かし切ることができず、それどころか単体で仕事をしないこのカードは逆に足を引っ張ってしまう可能性も少なくありません。

 そうした都合もあり、この「生還の宝札」は【グッドスタッフ】に代表するフェアデッキで使われることはなかったものと思われます。漠然とデッキに積むだけでは全く役に立たないカードであり、あくまでもコンボパーツとしての運用が主となるでしょう。

 言い換えれば、コンボパーツとしては極めて優秀なカードでもあったということです。

 「生還の宝札」をキーカードに据えたコンボデッキ、【宝札エクゾディア】が突如環境に浮上しました。

【宝札エクゾディア】の襲来

 【宝札エクゾディア】は、従来の蘇生カード軸のコンセプトを下敷きに、「生還の宝札」をドローエンジンに搭載した先攻1キル系コンボデッキです。前身の【苦渋エクゾディア】とは異なり、完全に先攻1キルに特化しているケースが多く、採用カードも速度を追求した選択となっています。

 具体的なデッキの動かし方に関しましては専用ページで解説しております。ご興味をお持ちの場合、お手数ですがそちらをご覧ください。

 「生還の宝札」によるドロー加速をデッキの回転エンジンに据えているため、何をおいても墓地を肥やさなければ始まりません。「天使の施し」や「苦渋の選択」はもちろん、自分から墓地に行ける「サンダー・ドラゴン」も必須カードに含まれるでしょう。

 非常にリスキーな選択ですが、通常の【エクゾディア】では採用されない「手札抹殺」もフル投入が基本だったとのことです。その場合、エクゾディアパーツを捨てざるを得ない状況を見越し、「補充要員」の採用は必須となるでしょう。

 ただし、その「補充要員」も当時は制限カードであり、素引きするにはかなり深くデッキを掘り進めなければなりません。最悪デッキの底に眠っているケースを考慮すると、パーツ回収ルートはあくまでも最後の滑り止めであると認識しておくべきでしょう。

 また、「補充要員」では効果モンスターを回収できないため、エクゾディア胴体を手札に引いてしまった後はそもそも「手札抹殺」を撃てなくなることには注意が必要です。なるべく序盤に使い切ってしまい、後から引いた場合も「天使の施し」のコストにしてしまうなど、ある程度は割り切った運用を考える必要があります。

 場合によっては採用しない型も考えられますが、その場合は先攻1キルを狙うのは難しくなるため、低速コンボデッキよりに構築を寄せる形となるでしょう。「リビングデッドの呼び声」を始めとした罠カード、「聖なる魔術師」「闇の仮面」といったリバースモンスターなど、先攻1キル特化型では採用できないカードを積めるのが魅力です。

 どちらの型も一長一短である以上、最後はプレイヤーの好みによるところとなってくるのではないでしょうか。

 

バーン系1キルデッキ 【宝札ビッグバン】

 【宝札エクゾディア】の派生デッキとして、【宝札ビッグバン】という先攻1キル系コンボデッキも開発されています。

自分がライフポイントを回復する度に、相手プレイヤーに500ポイントのダメージを与える。

 キーカードである「ビッグバンガール」の当時のテキストです。「生還の宝札」と同様「Spell of Mask -仮面の呪縛-」に収録されており、このカードもまたコンボパーツとして高いポテンシャルを持ち合わせていました。

 ライフゲインの度にバーンダメージを与えるため、これがフィールドに立っているだけで「治療の神 ディアン・ケト」などのライフゲインカードがバーンカードに化けます。それだけと言ってしまえばそれだけの効果であり、漠然と使うだけでは真価を発揮できません。

 しかし、あたかもルールの一部を書き換えているかのような効果は遊戯王OCG全体で見ても珍しく、上述の通りポテンシャルの高さは目を見張るものがあります。専用デッキを組む価値は十分にあり、実際に【キュアバーン】の中核をなすカードとして広く知られているモンスターです。

 とはいえ、その【キュアバーン】もコントロール寄りのロックバーン系デッキであり、防御カードで時間を稼ぎながら継続的にダメージを与えていくコンセプトで組まれています。間違っても先攻1キルを狙えるデッキではありませんが、この時期においてはその限りではありません。

 「ビッグバンガール」の最高の相棒として、「ホーリー・エルフの祝福」が浮上しました。

裁定変更前のホーリー・エルフの祝福

フィールド上のモンスター1体(表示形式は問わず)につき300ポイントのライフポイントを回復する。

 2000年9月28日、「Curse of Anubis -アヌビスの呪い-」に収録されていた罠カードです。フィールドのモンスターの数×300ポイントのライフゲインを行う効果を持っています。

 包み隠さずに申し上げるのであれば、このカードはそれほど強力なカードではありません。回復量がモンスターの数に依存する上に倍率も300と低いため、十分な回復量を見込むには大量にモンスターを並べる必要があります。

 しかし、それだけモンスターを並べられるほど有利な状況であれば、わざわざライフゲインを行う必要性は薄いでしょう。逆に相手がモンスターを並べている場合、多少ライフゲインしたところで焼け石に水であると言わざるを得ません。

 そもそもカード1枚消費してライフゲインのみを行うこと自体が極めて弱い行動です。総じて活用法を見出しにくいカードであり、誕生当初は全く注目されることはありませんでした。

 しかし、ライフゲインをバーンに変換する「ビッグバンガール」が現れたことで状況が一変します。

 当時の「ホーリー・エルフの祝福」は現在と裁定が異なっており、ライフゲイン効果が複数回発生する処理となっていました。例えばモンスターが5体存在する場合、1500ゲインを1回行うのではなく、300ゲインを5回行うという形です。

 これを「ビッグバンガール」と組み合わせた場合、500×5回分の2500バーンに変換することができます。もちろん、複数体並んでいればその分だけ効果が累積していき、3体ではなんと7500バーンです。コンボ前提とはいえカード1枚のダメージ効率としては常識の範疇を超えており、2枚あればほとんどの状況で勝利することができるでしょう。

ビッグバンガールを並べるデッキ

 このコンボの成立に狙いを定めたデッキこそが【宝札ビッグバン】の正体です。【宝札エクゾディア】と同様に「生還の宝札」をドローエンジンに据え、「盤面を完成させる」ことを最終目的としています。

 具体的なデッキの動きは専用ページにまとめていますが、結論だけを申し上げれば以下の2パターンに大別されます。

 

①:「ビッグバンガール」2体を含むモンスター5体+「ホーリーエルフの祝福」2枚

 

②:「ビッグバンガール」3体を含むモンスター6体(相手フィールド含む)+「ホーリーエルフの祝福」1枚

 

 基本は①を目指し、何らかの理由で「ホーリーエルフの祝福」を1枚しか用意できなくなった場合は②のルートに切り替えます。デッキの性質上、一旦回り始めれば止まることは少ないため、それなりに現実的な確率で先攻1キルを実現できるでしょう。

 上記の【宝札エクゾディア】と比較した場合、捨てて困るカードがないことから「手札抹殺」を気軽に撃ちやすい点が強みとなります。反面、デッキが「完全に回り切ること」を前提に構築されているため、スタートダッシュに失敗した場合は苦しい展開に追い込まれてしまうことは否定できません。

 とりわけ後攻時は構造的な欠陥が目立ち、展開の合間に「激流葬」などを合わせられた場合は悲惨の一言です。リソースの大半を盤面展開に割いている以上、一度崩れてからの立て直しはほぼ不可能でしょう。

 とはいえ、【宝札エクゾディア】にはない独自の強みを持っていたことも事実です。どちらのデッキを選ぶのかはやはり好みの問題となってくるのではないでしょうか。

 ネタの域ですが、この「生還の宝札」のギミックを活かせば大抵のコンセプトは成立させることができます。例えば、【宝札エクゾディア】のエクゾディアパーツを「ハンデス三種の神器」に差し替えれば【先攻全ハンデス】が組めるでしょう。

 もちろん、そんなことをするくらいなら特殊勝利を狙った方が効率が良いことは言うまでもありませんが……。

 

【当時の環境 2001年4月19日】

 【第2期の歴史27 激流葬の誕生 不遇の時代】以降の前後編の記事内容を総括した項目となっています。ご注意ください。

 「激流葬」の誕生によって安易な大量展開のリスクが高まったほか、モンスターの召喚行為自体に危険が伴うようになりました。

 しかし、【グッドスタッフ】には「人造人間-サイコ・ショッカー」という心強い味方がおり、それほど影響は受けていません。【デッキ破壊】もモンスターの展開は副次的なものに近く、やはり直接的なダメージには繋がっていない格好です。高いカードパワーを秘めていたことは事実でしたが、環境に恵まれず活躍の機会は先に持ち越す形となります。

 対して、「生還の宝札」が与えた影響は大きく、【宝札エクゾディア】【宝札ビッグバン】という2つの先攻1キルデッキを生み出してしまうことになりました。流石に第1期の【エクゾディア】ほどの凶悪さは持ち合わせていませんでしたが、先攻1キルデッキの肩書きに恥じない爆発力を秘めていたことは間違いありません。

 ただし、【宝札エクゾディア】はともかく【宝札ビッグバン】は完全に新規のデッキとなっており、開発には相応の時間を要したものと思われます。特に「ビッグバンガール」は効果も非常に独特であり、一見して強さが分からないカードです。

 おおよその流れとしましては、まず【キュアバーン】の発見があり、ある程度のひな形が完成したのが先であったと見るべきでしょう。その後、【宝札エクゾディア】を参考にコンセプトがコンボ寄りに高速化していき、やがては【宝札ビッグバン】の成立に繋がったのではないでしょうか。

 とはいえ、実際にこの目で確認したわけではなく、明確な事実関係については不明瞭な部分が残ります。

 前記事でも申し上げましたが、この時期は諸々の事情で一時的に遊戯王から離れており、実際のゲームには全くと言って良いほど触れていない身です。噂話は耳にしていたものの、これらの先攻1キルデッキが実際にどれほどの猛威を振るったのかという話については言及する術を持ちません。

 一応、2001/1/15制限のデッキで一人回しをしてみましたところ、成功率は体感3割という感覚です。これに暗黒期指定を行うかどうかは判定が難しいところですが、少なくとも現実的な確率で先攻1キルが成立してしまうことは間違いありません。

 特に【宝札エクゾディア】先攻1キルに失敗してもサーチャールートに切り替えられるなど、融通が利きやすく地力の高さも相当です。何より先攻1キルという概念そのものが持つ脅威を考慮するのであれば、暗黒時代の一つとして数えることに不足はないのではないでしょうか。

 

【まとめ】

 前記事と合わせて、「Spell of Mask -仮面の呪縛-」販売によって起こった出来事は以上です。

 「激流葬」など、優秀なカードを輩出していたことは間違いありませんでしたが、それ以上に危険なコンボパーツの収録が多いパックとなっていました。とりわけ「生還の宝札」の凶悪さは飛び抜けており、これを軸にした先攻1キルデッキを複数生み出してしまったほどです。

 ちなみに、記事では取り上げませんでしたが、一部でカルト的な人気を誇る「アマゾネスの射手」もこのパック出身のモンスターとなります。効果自体は「キャノン・ソルジャー」と同型ですが、戦士族・地属性・レベル4という恵まれたステータスを与えられているほか、高いイラスト・アドバンテージも持ち合わせていました。

 ここまで目を通していただき、ありがとうございます。

 

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