激流葬の誕生 不遇の時代
・前書き
・レリーフ加工 原作出身カードのアルティメットレア再録
・仮面の呪縛 パワーカードとコンボパーツ
・激流葬 設置型ブラック・ホール
・速攻魔法の除去カード 死者への供物
・団結の力 最強の打点補助装備魔法
・魔導師の力(物理)
・後編に続く
【前書き】
【第2期の歴史26 ギルファーデーモン 無限ループとタイミングを逃すルール】の続きとなります。ご注意ください。
「暗黒魔族ギルファー・デーモン」の誕生をきっかけに「タイミングを逃す」ルールが整備され、いずれ訪れるであろう無限ループへの備えが完成する格好となりました。この時点では判例もなく、認知度の低いルールでしたが、この9ヶ月後に「リーフ・フェアリー」とのループが注目され、一躍知名度を高めることになります。
2月22日には「鋼鉄の襲撃者-METAL RAIDERS-」が販売され、「Vol.6」「Vol.7」「BOOSTER7」から計84種類のカードが再録されています。特にこの時期の「大嵐」は設置店の少ないブースターシリーズでしか入手できず、レアリティの割に供給が少なめだったため、その問題を解消するパックとして重宝されました。
また、3月1日に第2回目となる全国大会が開催されるなど、大きなイベントも起こっています。レギュラーパックの販売こそありませんでしたが、それを補うだけの勢いは持っていたのではないでしょうか。
しかし、私個人の都合を持ち出してしまい恐縮ですが、この頃は丁度受験期を迎えていたため、腰を据えてカードゲームを遊ぶというのも中々難しい状況でした。情報収集こそ行っていましたが、噂を小耳に挟む程度であり、実際の環境に触れていたわけではありません。
諸々の事情でカード資産の大半を失っていた都合もあり、遊戯王OCGからは一時的に身を引いていた次第です。可能な限り正確な情報提供を心掛けるつもりではありますが、実経験に基づいているわけではなく、伝聞や憶測を根拠としている部分も多々あります。ご了承ください。
レリーフ加工 原作出身カードのアルティメットレア再録
2001年4月19日、「Spell of Mask -仮面の呪縛-」が販売され、新たに51種類のカードが誕生しました。遊戯王OCG全体のカードプールは1021種類となり、遂に総カード数4桁の大台へと乗っています。
当パックの収録内容は52種類中51種類が新規カードであり、1枚のみ再録カードが含まれていました。この1枚再録は以降のレギュラーパックごとに行われ、第3期終盤まで続いています。
内容はいずれも原作出身カードとなっており、この時のパックでは「青眼の白龍」がピックアップされていました。ただし、単なる再録ではなく、レアリティが「アルティメットレア」仕様となっていたのが特徴です。
再録リストは以下の通りです。
青眼の白龍 | Spell of Mask -仮面の呪縛- |
---|---|
ブラック・マジシャン | Labyrinth of Nightmare -悪夢の迷宮- |
デーモンの召喚 | Struggle of Chaos -闇を制する者- |
ブラック・デーモンズ・ドラゴン | Mythological Age -蘇りし魂- |
暗黒騎士ガイア | Pharaonic Guardian -王家の守護者- |
真紅眼の黒竜 | 新たなる支配者 |
リボルバー・ドラゴン | ユニオンの降臨 |
バスター・ブレイダー | 黒魔導の覇者 |
カオス・ソルジャー | ガーディアンの力 |
暗黒魔族ギルファー・デーモン | 闇魔界の脅威 |
マジシャン・オブ・ブラックカオス | 混沌を制す者 |
封印されしエクゾディア | 暗黒の侵略者 |
人造人間-サイコ・ショッカー | 天空の聖域 |
竜騎士ガイア | ファラオの遺産 |
これらの初期レリーフのカード群は現在では入手困難な希少品であり、ネットオークションなどでは数万円で取引されているものも存在します。特に「青眼の白龍」は2016年4月~7月頃に【青眼の白龍】として環境トップを取っており、レギュレーションの都合もあって世界大会でも優勝するなどの活躍をしていたため、一時期は非常に高騰していました。
【仮面の呪縛 パワーカードとコンボパーツ】
もちろん、新規カードに関しても見るべきところは沢山あります。規制経験を持つパワーカードのほか、特殊なコンボデッキのコンボパーツとなる変わり種のカードも多数収録されていました。
激流葬 設置型ブラック・ホール
まずは汎用カードから触れていきます。1枚目は何と言っても「激流葬」です。
モンスターが召喚(または反転召喚か特殊召喚)された時に発動してもよい。フィールド上のモンスターを全て破壊する。
モンスターが召喚・反転召喚・特殊召喚された時、フィールドのモンスターを全て破壊する効果を持っています。罠カード版「ブラック・ホール」とでも言うべきカードであり、その相互互換カードです。発動条件があるため好きなタイミングでは撃てませんが、条件を満たせば相手ターンでも発動できるため、当時としては貴重な奇襲的要素を併せ持つ全体除去カードとして注目されました。
しかし、例によってこのカードも罠カードであり、「人造人間-サイコ・ショッカー」で無力化されてしまうという弱点を抱えています。
それほど厳しくはないものの発動条件を与えられている以上、フリーチェーンで発動可能な「破壊輪(エラッタ前)」のように器用に動くこともできません。結果的にプレイングによって「腐らせられる」ケースが多く、カタログスペックの高さに反して当初は活躍の機会に恵まれにくい状況に置かれていたようです。
もちろん、カードパワーの高さは健在であり、デッキに採用されることも決して少なくはなかったものと思われます。ゲーム中で遭遇する機会も多く、無警戒でいたせいで勝てるはずのゲームを落としたプレイヤーは数知れないのではないでしょうか。
考え得るシチュエーションとしては、「総攻撃をかけようとモンスターを召喚した瞬間、このカードを踏んで台無しになってしまう」などが挙げられます。そのため、あと一手で勝てるような状況であっても、セットカードがある場合は召喚行為を控えて勝負を急がないようにするなど、「激流葬」を意識したプレイングを取ることも選択肢の一つです。
もちろん、その場合は相手を延命させてしまうため、それはそれでリスクを冒しているということは認識しておく必要があるでしょう。おおむね「択」の問題であり、状況に応じてベターな選択を取っていくしかありません。
このように、「激流葬」が当時においても強力なカードだったことは確かです。
しかし、やはり当時現役だった「ブラック・ホール」や「サンダー・ボルト」などと比較すると見劣りする面もあり、長らく日の目を見ない不遇の時代(※)を過ごしていました。この状況が動くのは第4期突入直後のことで、具体的には禁止カード制度の導入によってカードプールがデフレを起こすタイミングを待つことになります。
(※しかし、制限カードになった後は第7期終盤までその位置にとどまり続けるなど、一転してパワーカードとして花開くカードです)
速攻魔法の除去カード 死者への供物
同じく優秀な除去カードとして、「死者への供物」という速攻魔法も挙げられます。
表側表示のモンスター1体を破壊する。次の自分のドローフェイズをスキップする。
表側表示のモンスター1体を破壊するという、非常にシンプルな単体除去カードです。速攻魔法ゆえにフリーチェーンで発動できるため、これまでの除去とは一線を画する使い勝手の良さを誇ります。
ただし、その代償として次のドローフェイズがスキップされてしまう重いデメリットが付与されています。実質1枚分のディスアドバンテージを抱えてしまう格好であり、考えなしに撃てるカードではありません。
特に当時の【グッドスタッフ】では1:1交換以上を取れるカードが採用基準とされていた関係上、ほぼ確実にアドバンテージを失ってしまう欠点は無視できないハンデです。類似効果を持つ「死者への手向け」であれば「キラー・スネーク(エラッタ前)」と組み合わせる、あるいはその状況で必要ないカードを捨てるなどによってコストを軽減可能ですが、このカードの場合はそうした手段を取ることもできません。
また、除去性能そのものに関しても「セットモンスターに触れられない」という大きな弱点が存在しています。リバースモンスターに対処できないというのは当時の除去としては苦しい欠点であり、総合的には厳しい評価を付けられている状況でした。
とはいえ、「人造人間-サイコ・ショッカー」を相手ターンに除去できる数少ないカードである事実は重く、その点を評価するのであれば採用も考慮に値します。
しかし、流石に「人造人間-サイコ・ショッカー」対策のためだけにこれを採用するのは効率的とは言えません。やはり実際には採用率もそれほど高いわけではなかったのではないでしょうか。
団結の力 最強の打点補助装備魔法
もちろん、この時に現れた優良カードは上記の除去カードだけではありません。遊戯王OCGでも最高峰の打点補助性能を持つ、「団結の力」という強力な装備魔法カードが誕生しています。
自分のコントロールする表側表示モンスター1体につき、装備モンスターの攻撃力と守備力を800ポイントアップする。
自分の表側表示モンスター1体につき攻守が800上昇するという、凄まじいまでの強化効率を誇る強烈な装備魔法カードです。マスタールール3以前では4000、新マスタールール以降はエクストラリンクを含めて強化値は最大で5600となります。カード1枚の強化値としては控えめに申し上げて破格であり、単純な打点補助カードの中では「遊戯王OCG最強の装備魔法」との評価を付けられることも少なくありません。
誕生当時も当然のように多大な注目を集めています。その話題性の高さは遊戯王から一時離脱していた私のところにまで連日噂が届いていたほどです。
装備カードとして性能を見る場合、装備先のモンスターをカウントする関係上、最低でも800ポイントは保証されます。この時点で当時の2番手である「悪魔のくちづけ」を上回っており、最低ラインの性能だけでトップクラスの性能を発揮している格好です。
2体になった瞬間に「デーモンの斧」すら凌駕するため、爆発力と安定性を兼ね備えたパワーカードという評価が当てはまるでしょう。全般的に扱いにくい装備魔法カードであるというハンデを物ともせず、当時の【グッドスタッフ】で使われるケースも珍しくありませんでした。
もちろん、装備ビートの本場【マハー・ヴァイロ】においても諸手を挙げて迎え入れられることになります。激戦区である【グッドスタッフ】ですら採用圏内に入っていたカードであり、何をおいても3積み確定となる必須カードです。
流石にこのカードの力だけで環境上位のデッキと対等に戦うことは難しかったと思われますが、ファンデッキとして一段上のデッキパワーを獲得したことは間違いないでしょう。
魔導師の力(物理)
上記の「団結の力」の対のカードとして、「魔導師の力」も現れています。
自分の魔法・罠ゾーンのカード1枚につき、装備モンスターの攻撃力と守備力を500ポイントアップする。
こちらはモンスターではなく魔法・罠カードをカウントします。「団結の力」と異なり裏側表示のカードも数に含むため、そちらと比べて枚数を稼ぎやすい強みがありました。
代わりに強化率は500とやや低く設定されており、最大値も3000とそれなりの数値です。また、フィールドゾーンも含めて魔法&罠ゾーンを全て埋めるのは現実的ではないため、実際のゲームでは1000~2000程度の強化値に落ち着くことになるでしょう。
とはいえ、このカードもまた装備魔法の中では破格の強化効率を誇るカードであることは言うまでもありません。性質上、魔法・罠カードはモンスターと異なり特に制限なくセットできるため、即効性という面では上回っている部分もあります。
パーミッション・コントロール系のデッキでは有力な打点補助カードとなり得るため、現在でも【メタビート】などでは採用候補に挙げられることもある優秀なカードです。流石に当時ほどの活躍は望めませんが、第2期出身かつ装備魔法という外見に反して、侮れないポテンシャルを秘めていると言えるのではないでしょうか。
【後編に続く】
「Spell of Mask -仮面の呪縛-」に収録されていたカードの内、単体で機能するタイプの汎用カードについての話は以上となります。
とりわけ「激流葬」は環境クラスのカードパワーを持つ優秀な除去カードであり、長い間最前線で活躍し続けた歴史の生き証人とも言うべき存在です。初期出身のカードながらいまだ力を損なっておらず、現在でも思い出したように環境に浮上しています。
しかし、このパックの目玉はそうした汎用カードではありません。「生還の宝札」を始めとした、単体では機能しないコンボ色の強いカード達こそが真の主役とも言うべき存在でした。
後編に続きます。
ここまで目を通していただき、ありがとうございます。
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