人造人間サイコショッカーの実績まとめ 全盛期~衰退期までの歴史

2018年10月28日

【前書き】

 遊戯王OCGに存在するカードの中に、「人造人間-サイコ・ショッカー」と呼ばれるカードが存在します。

①:このカードがモンスターゾーンに存在する限り、お互いにフィールドの罠カードの効果を発動できず、フィールドの罠カードの効果は無効化される。

 遊戯王OCGを代表する上級モンスターの1体であり、原作アニメでの活躍もあって非常に知名度の高いカードです。攻撃力2400という上級ライン丁度の基本的なステータスに加え、フィールドのあらゆる罠カードを問答無用で封殺する優秀な永続効果を持っており、かつては環境における屈指のパワーカードとして名を馳せたこともありました。

 とはいえ、流石にゲームスピードが高速化した今現在では力不足感が強いことは否めず、実際にシンクロ期突入頃を境に第一線を退いています。そのため、現役プレイヤーにとっては過去のカードという印象が強い(と思われる)存在ではあり、また、恐らくは今後もトーナメントレベルで存在感を示すことは考えにくいのは確かです。

 しかし、古参プレイヤーにとっては記憶に強く残るカードの1枚であることも間違いありません。全盛期においてはもちろんのこと、今なお思い出の中で存在感を放ち続けているという方は決して少なくないのではないでしょうか。

 この記事では、そんな「人造人間-サイコ・ショッカー」が一体どのような歴史を辿って今に至っているのかを解説していきます。

 

第2期

 

リビデショッカーコンボが猛威を振るっていた頃

 「人造人間-サイコ・ショッカー」の全盛期は驚くべきことに、その登場の瞬間から訪れています。

 2000年9月28日販売のレギュラーパック「Curse of Anubis -アヌビスの呪い-」のトップレアとしてメタゲームに参入、間もなく環境最強クラスのパワーカードとして勇名を轟かせています。この時期のカードプールの上級ラインは「デーモンの召喚」の2500が最高、次点が「機械王」の実質2300となっていたため、単純に攻撃力2400というステータスそのものが既に評価に値する魅力だったのです。

 その上で「王宮のお触れ」と同等以上の強力な罠無効能力を備えており、これは当時のカードパワーの水準を鑑みれば反則一歩手前のスペックでした。この頃によく使われていた「聖なるバリア -ミラーフォース-」や「万能地雷グレイモヤ」などの攻撃反応罠、また同パックから現れていた「王宮の勅命(エラッタ前)」「リビングデッドの呼び声」といった強力な罠カードをこれ1枚で封殺できてしまうため、その利便性は「デーモンの召喚」などのバニラアタッカーとは比較にすらなりません。

(実際に「人造人間-サイコ・ショッカー」の参戦以降は「デーモンの召喚」の採用率が一気に低下しています。)

 また、これ以降2000年10月~2001年初頭までの3ヶ月強は、「リビングデッドの呼び声」との組み合わせによる蘇生コンボ、いわゆる「リビデショッカーコンボ」が猛威を振るった時期でもあります。詳しいルールの解説はここでは省きますが、要は「人造人間-サイコ・ショッカー」をフリーチェーンで蘇生するコンボ(※)と考えれば間違いありません。

(※現在の価値観ではコンボというには物足りませんが、第2期当時としては強力な動きでした)

 関連カードの規制状況については下記の通りです。

 

  0年9月28日~ 0年11月1日~ 1年1月15日~
人造人間-サイコ・ショッカー 制限 制限
リビングデッドの呼び声 無制限 制限
黒き森のウィッチ(エラッタ前) 無制限

 

 誕生から僅か1ヶ月で「人造人間-サイコ・ショッカー」が制限カード入りしていますが、その頃はまだ「黒き森のウィッチ(エラッタ前)」が無制限カードであったため、それほど大きな痛手には繋がっていませんでした。

 そうしたこともあり、「リビングデッドの呼び声」に直接の規制が入る2001年初頭頃まではリビデショッカーコンボの流行が続いていたという形です。

 

【スタンダード】の必須枠だった頃 最古のエースアタッカー

 このように、制限改訂によって2001年以降はリビデショッカーコンボを狙って成立させることは難しくなりましたが、これによって「人造人間-サイコ・ショッカー」の勢いが衰えたわけではありません。その後は【スタンダード】におけるエースモンスターの象徴として君臨、あらゆるビートダウンデッキの必須枠として名を馳せていくことになります。

 こうした「人造人間-サイコ・ショッカー」1強の牙城は長らく崩されることはなく、これに対処できるモンスターはそれだけで高評価を受けていたほどです。具体例としては大型融合モンスターを呼び出せる「デビル・フランケン」や、変わったところでは「魂を喰らう者 バズー」などのパンプ能力持ちモンスターが挙げられます。

 とはいえ、流石の「人造人間-サイコ・ショッカー」も永遠に絶対的な地位を築くことはできません。

 2001年下半期になると「ニュート」や「ならず者傭兵部隊」といった強力な下級モンスターが立て続けに参入し、相対的に立ち位置が難しくなっています。「人造人間-サイコ・ショッカー」も上級モンスターである以上は1:1交換不利の法則からは逃れられず、アドバンテージを失いにくい下級モンスターの台頭は厳しい向かい風でもあったのです。

 しかし、そうした逆風下においても上級モンスターの中では並ぶものがなかったことは事実です。時代の変化という荒波に晒されつつも【スタンダード】における必須カードの立場が揺らぐことはなく、環境屈指のパワーカードとして高い評価を維持していました。

 

【八汰ロック】と【先攻1キル】に飲み込まれた頃

 そうした状況に致命的な衝撃が走ったのは2001年末、レギュラーパック「Mythological Age -蘇りし魂-」が販売された瞬間のことでした。

 遊戯王OCG史上最悪のカードとも言われる「八汰烏」を筆頭に、先攻1キルデッキ【ラストバトル!】を成立させた「ラストバトル!」、また極めて凶悪なリセット効果を持つ「ファイバーポッド」など、まさに震え上がるようなラインナップが揃い踏みしています。

 さらに、時を同じくして現れた「処刑人-マキュラ(エラッタ前)」「現世と冥界の逆転(エラッタ前)」らによって【現世と冥界の逆転】が成立、上記のカード群と合わせてまたたく間にメタゲームを荒廃させてしまった格好です。

 当然、これらが同時に産声を上げたことで遊戯王OCGのゲームバランスが滅茶苦茶になってしまったことは語るまでもありません。その煽りを受けて「人造人間-サイコ・ショッカー」も無法地帯に飲み込まれてしまい、第2期終盤は底なしの暗黒期へと堕ちていくことになりました。

 

第3期

 

ヴァンパイアロードがライバルだった頃

 その後、第2期最終盤となる2002年5月に制限改訂が実施され、荒れ果てたカードプールに大規模な治療が行われることになります。

 これにより「人造人間-サイコ・ショッカー」も無事に復権を遂げていますが、流石にこの頃になると1強と呼べるほどの権威は維持できなくなっていました。時代の進行とともにカードプールが順調に成長を続けたことにより、「ヴァンパイア・ロード」や「天空騎士パーシアス」といった強力なライバルが頭角を現し始めていたからです。

 特に「ヴァンパイア・ロード」は当時のカードプールでは非常に強固な除去耐性を誇っており、戦闘破壊による突破を除いた場合、現実的な対処手段は「強奪」などのコントロール奪取カードしか残りません。

 それどころか、「ピラミッド・タートル」とのコンボにより実質生け贄無しで特殊召喚することさえできるなど、当時としては調整ミス気味に強すぎるモンスターだったのです。

 もちろん、それでも「人造人間-サイコ・ショッカー」がパワーカードであることに変わりはありませんでしたが、採用率においては「ヴァンパイア・ロード」に軍配が上がっていたことは否定できない現実だったのではないでしょうか。

 

【カオス】という混沌に引きずり込まれた頃

 凶悪な吸血鬼が暴れ回る環境は「ヴァンパイア・ロード」が制限カード指定を受けたことで沈静化し、遊戯王OCGにも再び温かい日光が降り注いでいます。

 これによって「ピラミッド・タートル」を安易にデッキに積むことは難しくなり、【アンデット族】などの専用デッキ以外では上記ギミックを見かけることは珍しくなりました。半分下級モンスターと化していた「ヴァンパイア・ロード」は純粋な上級モンスターに立ち振る舞いを改め、「人造人間-サイコ・ショッカー」らと同格の立ち位置に落ち着いた格好です。

 しかし、この直後に次元違いのカードパワーを誇る【カオス】らが参入、第3期環境は混沌の暗黒時代に突入していくことになります。

 これにより、そもそも生け贄召喚というシステムそのものが半ば崩壊してしまい、人造人間-サイコ・ショッカー」を含む上級モンスターは一斉に環境から姿を消しました。

 一応、【ノーカオス】などの【カオス】を採用しないビートダウンデッキでは声がかかることもありましたが、これまでのようにエースアタッカーとして脚光を浴びる状況はほぼ無くなったことは間違いないでしょう。

 

第4期

 

【サイエンカタパ】が怖すぎた頃

 「人造人間-サイコ・ショッカー」が環境に復帰を遂げたのは、第4期突入からしばらくの時間が経過した後のことでした。

 時間経過とともに環境の整備が進んだことでゲームスピードが減速し、上級モンスターに活躍の場が戻ったことによる結果です。【ロックバーン】や【アビス・コントロール】などのロックデッキ対策としても重宝されるなど、以前とはまた別の方向で活躍していくことになります。

 とはいえ、この時期は【サイエンカタパ】というどうしようもない怪物も猛威を振るっていたため、ビートダウン界隈から一歩外に出れば世紀末状態だったことは否定できません。一応、対人的な都合から遭遇率自体はそれほど高くはなかったとは言われていますが、逆に言えば「遭遇したら最期」という滅茶苦茶な環境だったことは確かです。

 

汎用上級アタッカーとして活躍していた頃

 その後、2005年3月の改訂で【サイエンカタパ】にようやく対処が入り、遊戯王OCGは健全な姿を取り戻すことに成功しています。

 一方で、これまで環境の必須カードとして活躍していたパワーカードも次々と姿を消しており、ビートダウンデッキの代表だった【スタンダード】の栄華にも陰りが見え始めることになりました。それに伴い、「人造人間-サイコ・ショッカー」も次第に必須級パワーカードとまでは言われなくなっていき、これ以降は汎用上級アタッカーの1体に役割をシフトさせています。

 主な採用先としては2005年3月~9月頃の【変異カオス】や、2005年11月~2006年3月頃の【黄泉帝】などが有名です。特に【黄泉帝】の現役頃には【MCV】【Vドラコントロール】などのマッチキルデッキが流行していたため、その対策としても大きな注目を集めていました。

 しかし、あくまでも採用候補の内の1枚という趣が強く、やはり以前のように必須と呼ばれるほどの存在ではなくなっていたのではないでしょうか。

 

第5期

 

時代の変化についていけなくなった頃

 第2期中頃に現れて以降、長きに渡って環境で存在感を示し続けてきた「人造人間-サイコ・ショッカー」でしたが、第5期突入からしばらくする頃にはその勢いもかなり衰えていました。

 その傾向は【エアブレード】や【ダークゴーズ】などの新時代のトップデッキが台頭する2006年下半期において決定的なものとなり、それらが落ち着く2007年以降も「風帝ライザー」などの次世代のカード群に後塵を拝していた印象があったことは否めません。

 もはや2400打点のメリット効果持ちというだけではあり触れたカードに過ぎず、召喚後即座にアドバンテージを取ることができない「人造人間-サイコ・ショッカー」は根本的に型落ちの性能に凋落していたのです。

 一応、【ガジェット】や【チェーンバーン】のメタとして注目されることも多少はありましたが、それもサイドデッキレベルの話にとどまります。その上、ゲームスピードの高速化により「王宮のお触れ」との評価が逆転、罠メタとしての役割も次第にそちらにお株を奪われるようになっていきました。

 そんな「人造人間-サイコ・ショッカー」の数少ない活躍の場がワンキル系デッキにおける疑似伏せ除去カードとしての役割であり、具体的には2007年後期の【エアブレード】や【ダークガイア】、変わったところでは【ドグマブレード】のアグレッシブ・サイドボーディング要員など、さながら「リクルートできるお触れ」とでも言うべき存在として細々と実績を残しています。

 逆に言えば、かつてのように純粋なアタッカーとして使われる機会はもはや完全に失われてしまったということであり、実際に2007年9月の改訂で準制限に、さらにその次の改訂である2008年3月に無制限カードへと規制緩和が進んでいった格好です。

 事実上、「人造人間-サイコ・ショッカー」の現役時代が終わりを迎えた瞬間であり、これ以降トーナメントシーンで姿を見かける機会はほぼ無くなったと言えるでしょう。

 

【まとめ】

 「人造人間-サイコ・ショッカー」の生涯については以上です。

 誕生後間もなく遊戯王OCG屈指のパワーカードとして環境に君臨、その結果僅か1ヶ月で制限カード指定を受けるという衝撃のデビューを果たしています。その後も浮き沈みはありつつも年単位でメタゲームに顔を見せていましたが、やがては時代の変化についていくことができなくなったという経緯です。

 とはいえ、これをもって環境での活躍が完全に皆無となったわけではありません。実際、単発的な形には限られますが、第6期以降の環境においても細々と採用実績を残しています。

 また、将来的には「人造人間-サイコ・リターナー」などの専用サポートも手に入れており、これにより【未来ショッカー】と呼ばれる専用デッキが開発されるに至るなど、開発側、プレイヤー側ともに何かと愛されるカードだったことは確かです。

 もちろん、かつてほどの活躍は望めなくなっているというのは事実ですが、ある意味では生涯現役と言えるモンスターなのかもしれません。

 ここまで目を通していただき、ありがとうございます。

 

Posted by 遊史