【ラストバトル!】の成立 はびこる先攻1キル

2018年2月9日

【前書き】

 【第2期の歴史36 暗黒期到来 八汰烏の脅威と【グッドスタッフ】の最期】の続きとなります。特に、この記事では前中後編の中編の話題を取り扱っています。ご注意ください。

 

【ラストバトル 絶対に決着がつくカード】

 「ラストバトル!」の当時のテキストは以下の通りです。

自分ライフが1000以下の時、相手ターンに発動可能。自分フィールド上モンスターを1体選び、他のお互いのフィールドと手札のカードを全て捨てる。その後、相手はデッキからモンスター1体を特殊召喚し、戦闘を行う(プレイヤーへの戦闘ダメージは無視)。ターン終了時にモンスターが残ったプレイヤーをデュエルの勝者とする。その他の場合は引き分けとする。

 目に見えて複雑なテキストであるため、ひとまず現行テキストに修正してもう一度見てみます。

①:自分のLPが1000以下の場合、相手ターンにのみこのカードを発動できる。自分フィールドのモンスター1体を選び、そのモンスター以外のお互いの手札・フィールドのカードを全て墓地へ送る。その後、相手はデッキからモンスター1体を表側攻撃表示で特殊召喚し、この効果で自分が選んだモンスターと戦闘を行う。この戦闘で発生するお互いの戦闘ダメージは0になる。
②:このカードを発動したターンのエンドフェイズに以下の効果を適用する。
●プレイヤー1人のみがモンスターをコントロールしている場合、そのプレイヤーはデュエルに勝利する。
●お互いにモンスターをコントロールしている場合、このデュエルは引き分けとなる。
●お互いにモンスターをコントロールしていない場合、このデュエルは引き分けとなる。

 むしろ余計に分かりにくくなったような気がしてなりませんが、簡単にまとめると以下のような処理となります。

 

①:自分のライフが1000以下かつ相手ターンにのみ発動できる。

 

②:自分フィールドのモンスター1体を選び、それ以外のお互いの手札・フィールドのカードを墓地へ送る。

 

③:相手プレイヤーはデッキから任意のモンスター1体を特殊召喚する。

 

④:バトルフェイズ(通常のものとは別)を発生させ、②と③のそれぞれのモンスター同士で戦闘を行う。

 

 効果解決時に行う処理はここまでです。以降は通常通りにターンを進め、エンドフェイズまでは何も起こりません。ただし、②~④の流れを処理した場合、お互いの手札・フィールドは更地となっているため、多くの場合はそのまま何もせずにエンドフェイズを迎える格好となるでしょう。

 エンドフェイズに入った場合、最後の残存効果を解決します。

⑤:モンスターをコントロールしているプレイヤーはデュエルに勝利する。それ以外の場合は引き分けとする。

 どちらか片方のプレイヤーがモンスターをコントロールしている場合、そのプレイヤーをデュエルの勝者とします。それ以外の場合、つまりお互いにモンスターをコントロールしている、またはフィールドにモンスターが存在しないなどの場合、そのデュエルは引き分けとなります。

 こうして列挙してもなお分かりにくい効果であり、ルールが整備され切っていなかったOCG初期を象徴するようなカードです。ゲームバランスどうこうの話ではなく、ルール的な扱いの難しさから今後類似のカードが刷られることは恐らくないのではないでしょうか。

 性能を見る場合、一言で申し上げると「非常に悪用しやすい」カードです。これ単体では扱いに困る性能ですが、特定のカードと組み合わせることで「絶対に勝てる状況」を作り出すことができます。

 前提として、素直な運用方法では根本的に自分が不利となってしまうことは念頭に置かなければなりません。フィールドからしかモンスターを選べない自分に対して、相手はデッキの中から一番強いモンスターを選べるからです。

 では、このカードを賢く悪用する場合、一体どのような運用方法が考えられるでしょうか?

 その答えこそが【ラストバトル!】の成立でした。

 

【ラストバトル!】成立 ジョウゲンとのワンキルコンボ

 【ラストバトル!】は、そのデッキ名の通りラストバトル!」をキーカードに据えた先攻1キルコンボデッキです。単体では扱いにくい「ラストバトル!」の効果で確実に勝利することを目的として設計されました。

 具体的なデッキの構造は専用ページにて解説していますが、キーカードとなるのは「昇霊術師 ジョウゲン」などの「特殊召喚封じ効果を持ったモンスター」となります。

手札を1枚ランダムに墓地に捨てる。この場合、フィールド上の特殊召喚されたモンスターを全て破壊する。またこのカードがフィールド上に存在する限り、モンスターを特殊召喚できない。

 「ラストバトル!」の性質上、単純に強いモンスターを用意したところで確実な勝利は望めません。例えば攻撃力4500の「青眼の究極竜」を苦労して用意したとしても、「異次元の戦士」を出されれば呆気なく引き分けに持ち込まれてしまうでしょう。

 そうでなくとも、「クリッター(エラッタ前)」などのサーチャーを出されても結果は同じです。「ラストバトル!」の特殊勝利判定が行われるのはエンドフェイズであるため、サーチしてきたモンスターを通常召喚されるだけで作戦が瓦解してしまいます。

 しかし、そもそも相手にモンスターを出させないようにしてしまえば関係ありません。その場合、お互いに全てのカードが墓地へ送られたのち、フィールドには「昇霊術師 ジョウゲン」だけが残るという結果になります。

 当然そのままエンドフェイズに移行するため、自然と特殊勝利が確定するという理屈です。これを先攻1ターン目(正確には相手ターンのドローフェイズ)に決めることで先攻1キルが成立します。

 【宝札エクゾディア】などの他の先攻1キルデッキと比べた場合、2枚コンボかつ関連パーツに規制がかかっていない点が魅力となるでしょう。反面、ライフを1000以下に減らさなければならないため、単純にコンボパーツを集めるだけではコンボが成立しないことには注意しなければなりません。

 そのため、ほとんどの場合「デビル・フランケン」のギミックも搭載されることになります。

ダーク・ヒーロー ゾンバイア魔力吸収球体 このカードが特殊召喚された時、他の自分のモンスターを全て破壊する。このカードがフィールド上に存在する限り、お互いに他のモンスターを召喚(反転召喚・特殊召喚)できない。

 特殊召喚される融合モンスターは当然「異星の最終戦士」です。こちらも「昇霊術師 ジョウゲン」と同様に特殊召喚を封じる効果を持っており、自然とメインギミックに組み込むことができます。

 7000ライフのうち5000をこれで消費できるため、ノルマ達成までの道のりを大幅にショートカット可能です。残りは「早すぎた埋葬」などで自然と消費できるのではないでしょうか。

 蘇生カードを使うことから分かるように、「生還の宝札」をドローエンジンに据えるのが最もスマートな構築となるでしょう。構造的には【宝札エクゾディア】に近く、その同型デッキとも言える存在です。

 勝利手段は異なれど、エンジン部分が共通してしまうことを考慮する限り、本当に恐ろしいのは「生還の宝札」の方なのかもしれません。

 

ラストバトルの謎裁定及び禁止カード化の本当の理由について

 補足となりますが、この「ラストバトル!」というカードは処理が極めて複雑だったせいか、長らくカードの裁定が定まっていない時期がありました。とりわけバトルフェイズ生成周りの処理は調整中の項目が多く、ある程度裁定が固まるまでに10年近い時間を要しています。

 また、裁定そのものが時期により変動することも少なくなく、例えば上記の「昇霊術師 ジョウゲン」とのコンボについても「できる」「できない」「調整中」の間で揺れ動いていました。よってそもそも【ラストバトル!】というデッキが成立するかどうか自体が曖昧(※)だった面もあり、制限改訂とは無関係に解体と復活を繰り返していたよく分からないデッキです。

(※調整中の場合、その場にいるジャッジの判断によってデッキが使えるかどうかが決まっていました)

 最終的には第4期終盤の制限改訂で禁止カード指定を受けていますが、実はその直前には「昇霊術師 ジョウゲン」とのコンボが調整中に変更されており、デッキの構築自体が不可能な状況に置かれていました。もっと言えば、そもそも【ラストバトル!】というデッキ自体が第3期以降はほぼ流行しておらず、言ってしまえば「凶悪だが別に強くはないカード」としか思われていなかったため、規制そのものにかなりの唐突さがあった(※)ことは確かです。

(※実際、禁止行きになる前は4年以上準制限カードのまま放置されていました)

 そのため、恐らくは「ラストバトル!」の禁止カード化の本当の理由はカード自体の危険性によるものではなく、こうした特殊裁定の管理の手間を省くためのものだった可能性が高いです。ワンキルコンボに悪用された実績から規制理由を誤解される(※)ことも多いですが、実際にはルール的な扱いの難しさから来た規制だったのではないでしょうか。

(※とはいえ、【ラストバトル!】が第2期終盤に猛威を振るったこと自体は間違いないため、誤情報が広まってしまうのも無理はない話ではあります)

 いずれにしても、「ラストバトル!」というカードが生みの親すら匙を投げるほどの問題児だったことは疑いようもありません。性質上エラッタしようにもできないタイプのカードということもあり、現役復帰の見込みは限りなくゼロに近い永久禁止カードの一種です。

 

【後編に続く】

 「ラストバトル!」の誕生によって起こった出来事については以上となります。

 1枚のカードの存在が専用デッキの成立を招いたという点では「八汰烏」と同様です。こちらはコンボありきという形であり、流行度という面では「八汰烏」に及びませんが、単純な凶悪さでは負けていません。

 いずれにしても暗黒期クラスであり、どちらかというと五十歩百歩の状況でしょう。

 このように、恐るべきカードを2枚も輩出した「Mythological Age -蘇りし魂-」ではありますが、恐ろしいことに話はこれだけでは終わりません。上記2枚と同等クラスの凶悪カードがまだ1枚残っています。

 「ファイバーポッド」です。

 後編に続きます。

 ここまで目を通していただき、ありがとうございます。

 

著者情報:遊史

Posted by 遊史