異星の最終戦士 環境の不発地雷

2018年2月2日

【前書き】

 【第2期の歴史31 ダークヒーローゾンバイアと魂を喰らう者バズーが強かった頃】の続きとなります。特に、この記事では前後編の後編の話題を取り扱っています。ご注意ください。

 

【制圧効果を持つモンスター達】

 前記事の通り、「Labyrinth of Nightmare -悪夢の迷宮-」には「ダーク・ヒーロー ゾンバイア」や「魂を喰らう者 バズー」など、一癖ありながらも優秀な高打点モンスターが収録されていました。

 しかし、それらとは別方向の優秀さを持ったモンスターも誕生しています。単体での性能は高いとは言えませんが、他のカードと組み合わせることで真価を発揮するモンスター達です。

 

異星の最終戦士 絶大な制圧能力

 その筆頭は、何と言っても「異星の最終戦士」という融合モンスターに他ならないでしょう。

ダーク・ヒーロー ゾンバイア魔力吸収球体 このカードが特殊召喚された時、他の自分のモンスターを全て破壊する。このカードがフィールド上に存在する限り、お互いに他のモンスターを召喚(反転召喚・特殊召喚)できない。

 「ダーク・ヒーロー ゾンバイア」「魔力吸収球体」を素材に融合召喚できるモンスターです。ステータスは上級モンスター並ですが、なんと他のモンスターの召喚行為全般を封じるというとんでもない制圧能力を与えられています。

 特殊召喚時に自身以外の自分フィールドのモンスターを全て破壊してしまうデメリットを持つため、まさに「最終戦士」とも呼ぶべきモンスターです。モンスターはセットすることしかできなくなり、反転召喚も行えないため、自力では一切身動きが取れなくなってしまいます。

 攻撃を受けてリバースした場合は行動できるようになりますが、この時期のカードプールでは「異星の最終戦士」の攻撃に耐えられるモンスターは少なかったため、純粋な戦闘面での不安要素はありません。

 融合モンスターの例にもれず召喚難易度は高いモンスターですが、その重さに見合うだけのポテンシャルは持ち合わせているカードです。効果そのものは今でも通用するほどの強さであり、むしろゲームスピードが加速した現在でこそ輝くモンスター(※)とも言えるでしょう。

(※実際に第9期中頃には「デビル・フランケン」を絡めた先攻制圧パーツとして、第10期には「やぶ蛇」から呼び出すカードとしてトーナメントクラスの採用実績を残しています)

 ただし、「サイバーポッド」や「異次元の戦士」など、当時においてもこのカードに対処できる環境クラスのモンスターは少なくありませんでした。そもそも魔法・罠カードに対しては何の耐性も持っておらず、汎用除去1枚であっさり処理されてしまいます。

 この頃は除去といえば魔法か罠の2択だった都合もあり、このカードを真っ当な手段で活躍させるのは難しい状況となっていました。辛うじて「デビル・フランケン」の選択肢の一つとして運用できないこともありませんが、その場合は用途的に「サウザンド・アイズ・サクリファイス」と競合してしまいます。

 多くの場合、デメリットがなく除去も行える後者が優先されるため、やはり活躍は難しいと言わざるを得ません。強烈な展開封殺効果もゲームスピードの関係上今ほどには活かし切れず、誕生当時は厳しい立ち位置に置かれていました。

 しかし、同年11月29日に「Mythological Age -蘇りし魂-」が販売された瞬間にこの状況が一転、【ラストバトル!】のキーカードとして猛威を振るうことになります。詳しくは後ほどの記事で解説いたしますが、こちらも【宝札エクゾディア】と同じく先攻1キルデッキの一種です。

 どのような形にせよ、強烈な効果を持つカードは悪用されやすいということなのかもしれません。

 

専用デッキ【異星の最終戦士】 ストーリーにも忠実?

 一方で、先に述べた通りカタログスペックそのものは非常に強烈かつ独特であったため、この専用デッキとして【異星の最終戦士】と呼ばれるファンデッキも考案されています。

 

サンプルデッキレシピ(2001年7月12日)
モンスターカード(20枚)
×3枚 キラー・トマト
心眼の女神
聖なる魔術師
ダーク・ヒーロー ゾンバイア
×2枚 クリッター(エラッタ前)
黒き森のウィッチ(エラッタ前)
破壊神 ヴァサーゴ
×1枚 人喰い虫
魔力吸収球体
魔法カード(18枚)
×3枚 早すぎた埋葬
融合
×2枚 大嵐
天使の施し
融合賢者
×1枚 苦渋の選択
強欲な壺
サンダー・ボルト
死者蘇生
ハーピィの羽根帚
ブラック・ホール
罠カード(2枚)
×3枚  
×2枚  
×1枚 王宮の勅命(エラッタ前)
リビングデッドの呼び声
エクストラデッキ(5枚)
×3枚 異星の最終戦士
×2枚 音楽家の帝王
×1枚    

 

 コンセプトは非常に単純明快で、一言で言えば「異星の最終戦士」で戦うことに全てをかけたデッキです。第1期に流行した【融合召喚】の亜種であり、実質的には融合先を「異星の最終戦士」にスイッチさせた構成となります。

 ただし、従来の【融合召喚】にはない固有の強みをいくつか持っていたため、単なるファンデッキでは終わらないポテンシャルを秘めたデッキだったことも間違いありません。

 最大の強みは融合素材である「ダーク・ヒーロー ゾンバイア」が第2期当時基準ではパワーカードの部類に含まれるモンスターだったことでしょう。この頃の融合素材モンスターは基本的にカードパワーが低い傾向がありましたが、ダーク・ヒーロー ゾンバイア」は当時の【グッドスタッフ】でも採用圏内に入るほどの逸材であり、これを気兼ねなく3積みできるというのは【融合召喚】としては破格です。

 その他、細かいところでは正規融合によって蘇生制限を満たせることも重要で、具体的には「早すぎた埋葬」などの蘇生カード、及びそれを再利用する「聖なる魔術師」により「異星の最終戦士」を何度でも戦線復帰させられるようになります。これにより上記項目で弱点として取り上げた除去耐性の無さをある程度カバーすることができ、デビル・フランケン」に頼らずあえて【融合召喚】を使う(※)ことにも明確な利点が生まれています。

(※つまり、「デビフラで出した方が手っ取り早い」という禁句を封じることができます)

 

異星の最終戦士の悲惨すぎるカバーストーリーについて

 ちなみに、上記のデッキは「異星の最終戦士」のカバーストーリーにも比較的忠実なデッキに仕上がっているため、いわゆるフレーバーデッキの一種として見ることもできます。

 これに関して説明する前に、まずは「異星の最終戦士」のカバーストーリーについて軽く触れておきます。

星を守るため戦い続ける。しかし星にはもう彼しかいない

 上記はゲームソフト「遊戯王デュエルモンスターズ3」における「異星の最終戦士」のフレーバーテキストです。見ての通り悲劇的と言うほかない設定ですが、ここに「ダーク・ヒーロー ゾンバイア」の設定を絡めるとより一層悲惨な背景が見えてきます。

 「ダーク・ヒーロー ゾンバイア」とは設定上は遊戯王DM作中内に存在するアメリカンコミックヒーローの一種なのですが、ゾンバイア自身が死神であるがゆえに正義をなすごとに命が削られていくという過酷な宿命を背負っており、その設定はOCGの効果にも反映(※)されています。

(※戦闘のたびに攻撃力が下がり、なおかつプレイヤーは傷つけないというフレーバーが見て取れます)

 そんな彼が「魔力吸収球体」に寄生されて正気を失い、ひたすら戦い続けた成れの果ての姿こそが「異星の最終戦士であると言えるでしょう。「星にはもう彼しかいない」ことにすら気付かないほどに人格が崩壊しきっており、死神が正義に目覚めた末路がこれというのは中々にヘビーな話(※)です。

(※「ガガギゴ」然り、OCG出身のキャラクターは悲惨な末路を辿りやすい傾向にあります)

 こうした背景を踏まえて上記のデッキを見てみると、これがおおむね「異星の最終戦士」のカバーストーリーをなぞっていることが窺えます。

 上記項目での解説の通り、このデッキは「異星の最終戦士」で戦うことに全てをかけたデッキであり、なおかつ蘇生カードによる使い回しを前提としているなど、コンセプト的に自然と「異星の最終戦士」の設定通りのデュエルを行うことになります。加えて蘇生のたびに自分フィールドが吹き飛ぶため、異星の最終戦士」が戦い続ける限り星が救われることは永遠にない(※)という残酷な事実も暗示されている再現ぶりです。

(※もしくは、仮に生存者がいても自ら根絶やしにしてしまうという意味合いにも取れます)

 上述の通り、純粋な強さという意味ではカジュアルレベルの域を出ないデッキでしたが、そうしたゲーム上のカタログスペックとは別のフレーバーに富んだ魅力を持ったデッキだったのではないでしょうか。

 

封じ込める坊主 ジョウゲン

 話が妙に脱線してしまいましたが、気を取り直してOCGの解説に戻ります。

 上記の「異星の最終戦士」に関連する効果を持つモンスターとして、「昇霊術師 ジョウゲン」も同パックから現れています。

手札を1枚ランダムに墓地に捨てる。この場合、フィールド上の特殊召喚されたモンスターを全て破壊する。またこのカードがフィールド上に存在する限り、モンスターを特殊召喚できない。

 こちらは特殊召喚のみを封じる効果です。また、手札をランダムに1枚捨てることで「特殊召喚によってフィールドに出ているモンスター」を全て破壊する効果も持っています。

 下級モンスターゆえにメタカードとしては「異星の最終戦士」よりも扱いやすく、デッキによってはメインギミックに組み入れることも考えられます。ただし、ステータスは貧弱であり、何らかの方法で守らなければあっさり戦闘破壊されてしまう弱みは無視できません。

 この時期は現在ほど特殊召喚を多用する環境ではなかったこともあり、プレイヤーの注目を集めるようなカードではありませんでした。

 しかし、先攻1キルのギミックに利用するのであればそうした都合を考える必要はありません。このカードも「異星の最終戦士」と同じく、【ラストバトル!】のコンボパーツを務めることになるモンスターです。

 

除外封じと墓地封じ カイクウ

 その他、特殊召喚メタとは別系統のメタ効果を持ったモンスター、「霊滅術師 カイクウ」についても触れておきます。

このカードが相手に戦闘ダメージを与える度に、相手墓地から2枚までモンスターを取り除く事ができる。またこのカードがフィールド上に存在する限り、相手は墓地のカードをゲームから取り除く事はできない。

 これがフィールドに存在する限り、相手プレイヤーはコスト・効果問わず墓地のカードを一切除外できなくなります。さらに、戦闘ダメージを与える度に相手の墓地のモンスターを除外する効果も持つため、除外メタとしても墓地メタとしても運用できる優秀なカードです。

 モンスターとしてのステータスもそれなりに恵まれており、攻撃力1800と準アタッカー級の戦闘能力を持ち合わせています。リクルーターやサーチャーに対して力負けすることはないため、「昇霊術師 ジョウゲン」と比べて単体で運用しやすい強みがありました。

 しかし、この時期は除外に関係するカードもほとんど現れておらず、ほぼバニラに近い状態だったことは事実です。辛うじて仮想敵となり得るカードは「魂を喰らう者 バズー」程度であり、メタカードとしての活躍を期待できる状況ではありません。

 効果が活かせない以上は「ヂェミナイ・エルフ」の下位互換でしかなく、活躍の機会は先の時代に持ち越す形となっていました。これが環境レベルで注目されるようになるのは【カオス】全盛期以降の話です。

 

【当時の環境 2001年7月12日】

 【第2期の歴史31 ダークヒーローゾンバイアと魂を喰らう者バズーが強かった頃】以降の前後編の記事内容を総括した項目となっています。ご注意ください。

 「王宮の号令」という強烈なリバースモンスターメタカードが現れたことにより、リバースモンスターを多用する【デッキ破壊】が大きなダメージを受けています。

 汎用性の乏しさからメイン戦で遭遇するケースはほぼ無かったものと思われますが、サイド戦ではこれとぶつかることは避けられません。「サイクロン」などの魔法・罠除去はもちろん、場合によっては「人造人間-サイコ・ショッカー」を採用することも考えられるのではないでしょうか。

 「ダーク・ヒーロー ゾンバイア」「魂を喰らう者 バズー」らの参戦が与えた影響も大きく、【グッドスタッフ】においては有力な選択肢として浮上しました。この2パック前に現れていた「ゴブリン突撃部隊」も合わせ、環境全体に1900ラインを超える実戦級アタッカーが次第に増加していっている状況です。

 一方で、相対的に「ヂェミナイ・エルフ」「ブラッド・ヴォルス」の信頼性が低下し始めていますが、まだまだ現役であり、【グッドスタッフ】に限らずビートダウンデッキ全般で主力アタッカーを務めていました。

 「異星の最終戦士」「昇霊術師 ジョウゲン」については上記の通り、この時点では真価を発揮しておらず、環境にも全く顔を出していません。しばらくは日陰で時を過ごす格好となり、活躍の機会は「ラストバトル!」の誕生を待つことになります。

 総評としましては、【グッドスタッフ】が強化を受けた一方、【デッキ破壊】がやや向かい風を受けた形です。流石にこれだけでトップメタから転落するほど脆いデッキではありませんが、少なからぬダメージを負ってしまったことは否めません。

 ただし、そもそもこの時期は【宝札エクゾディア】を始めとする先攻1キルデッキが流行し始めており、こうした真っ当なメタゲームが行われていたかどうかは疑問が残る部分もあります。以前の記事でも申し上げましたが、当時は丁度受験期を迎えていたため、実際にどのような環境が広がっていたのかについては明言できません。

 とはいえ、少なくとも先攻1キルデッキが環境を荒らしていたことは事実であり、メタゲームにも同様に混乱が生じていたのではないでしょうか。

 

【まとめ】

 前記事と合わせて、「Labyrinth of Nightmare -悪夢の迷宮-」販売によって起こった出来事は以上です。

 即戦力となるカードは汎用カードやメタカードに限られ、コンボパーツはいずれも遅咲きのカードとなっていました。ただし、悪用した時の凶悪さは「生還の宝札」に勝るとも劣らないものがあり、浮上するまでは不発地雷として残り続けることになります。

 一方で、こうしたゲームレベルの話とは別に【異星の最終戦士】などのファンデッキも考案されるなど、興味深い出来事も引き起こしていたパックだったと言えるでしょう。

 ここまで目を通していただき、ありがとうございます。

 

著者情報:遊史

Posted by 遊史