霊滅術師カイクウがメインから3積みされる【カオス】環境
・前書き
・当時の環境 2003年4月24日
・【カオス】が1強時代を築き上げてしまった理由
・その他 一癖ある強力なコンボパーツ達
・ロックバーンの魂 ボーガニアン
・コンボデッキのお供 リロード
・まとめ
【前書き】
【第3期の歴史21 怒れる類人猿(バーサークゴリラ) 最強のデメリットアタッカー】の続きとなります。特に、この記事では前中後編の後編の話題を取り扱っています。ご注意ください。
【当時の環境 2003年4月24日】
【第3期の歴史20 【カオス】の降臨 遊戯王の終わりの始まり】以降の前中後編の記事内容を総括した項目となっています。ご注意ください。
遊戯王史上最凶クラスのシリーズカードである【カオス】が誕生し、当時の環境に天変地異が巻き起こりました。従来のモンスターとは文字通り桁違いのカードパワーを備えており、遊戯王OCGというカードゲームそのものに甚大な被害をもたらしています。
その影響力は【カオス】と役割が被る従来のエースアタッカーはもちろんのこと、光・闇属性に属さないモンスターが軒並み評価を落としてしまったほどです。これまで環境に存在していたモンスターは【カオス】のコストになるかどうかという一点で大きく二分されることとなり、その基準を満たさないモンスターは採用圏外の烙印を押されてしまったと言っても過言ではありません。
逆に【カオス】のコストとして活用できるモンスターはこれまで以上に高評価を受け、必須カードとしての地位を確固たるものとしました。光属性からは「異次元の女戦士」や「ブレイドナイト」が、闇属性からは「魔導戦士 ブレイカー」や「魔導サイエンティスト」が環境有数のパワーカードとして名乗り上げています。
また、当時は評価を落としつつあった「聖なる魔術師」や「サイバーポッド」も属性的なシナジーから再評価が成され、しばしば採用候補に名前が挙がるようになりました。もっとも、上記のカードと比べて若干仕事をしにくい印象はあり、あくまでも補助的な採用にとどまっていた部分はあったのではないでしょうか。
【カオス】が1強時代を築き上げてしまった理由
しかし、やはり【カオス】参戦によって引き起こされた最も大きな出来事は、これまで完全な無名カードだった「霊滅術師 カイクウ」が有力なメタカードとして環境に浮上したことだったのではないでしょうか。
このカードが相手に戦闘ダメージを与える度に、相手墓地から2枚までモンスターを取り除く事ができる。またこのカードがフィールド上に存在する限り、相手は墓地のカードをゲームから取り除く事はできない。
2001年7月21日、「Labyrinth of Nightmare -悪夢の迷宮-」から生まれたモンスターです。これが場に立っているだけで相手は【カオス】を特殊召喚できなくなり、さらに戦闘ダメージを通すことで墓地リソース自体を奪っていくことができます。
打点も1800と比較的高めであり、安定してアタッカーとして運用していけるのも強みです。当時は除去が蔓延していたため長時間の維持は困難ですが、一度でも墓地を掃除できれば最低限の仕事は果たしたと考えることもできるでしょう。
また、この除外メタ効果は自分には一切影響が及ばないため、逆に自分が【カオス】を使う場合は「霊滅術師 カイクウ」が邪魔になることもありません。加えて「霊滅術師 カイクウ」自身が闇属性であるために【カオス】の餌にもなるなど、とことん【カオス】とは好相性だったカードです。
つまるところ、当時の環境で「霊滅術師 カイクウ」を最も効果的に運用可能だったのは【カオス】であり、【カオス】対策には【カオス】を用いることが最善の選択だったということになります。言うまでもなくメタゲームとしては不健全極まりない姿ですが、事実としてそうなってしまっている以上、プレイヤー視点ではどうにもならない話だったことは否めません。
これが【カオス】が1強時代を築き上げてしまった大きな理由の1つであり、また【カオス】全盛期が遊戯王屈指の暗黒期と言われる理由でもあります。もちろん、最大の理由が【カオス】自体の異次元のパワーにあったことは明白ですが、流石にメタデッキの生存すら許さないという状況はいくら何でも異常です。
ともあれ、こうした環境の変化を受け、当時存在していたビートダウン系デッキはその全てが【カオス】に侵食されてしまうことになりました。【トマハン】など、コンセプト的に【カオス】の採用が難しいデッキは圧倒的なデッキパワー格差からことごとく駆逐され、逆に【八汰ロック】などの【グッドスタッフ】系デッキは事実上【カオス】に吸収されてしまった格好です。
一方、コンボデッキである【デビフラ1キル】は一見すると被害が少ないようにも見えますが、実際には存在意義を失いかねないほどの被害を被っています。というのも、上述の通り【カオス】があまりにも逸脱した打撃能力を備えていたため、下手をするとコンボを決めるよりも「カオス・ソルジャー -開闢の使者-」で殴った方が手っ取り早いという話になりかねなかったからです。
言うなれば【カオス】は【デビフラ1キル】並にキルターンが早い【グッドスタッフ】であり、それはもはや完全上位互換デッキ以外の何物でもありませんでした。
一応、前記事で触れた通り【カオス】以外にも「怒れる類人猿」を始めとするパワーカード参戦の気配はありましたが、やはり【カオス】のコストにならない以上は声がかかることもなく、カタログスペックの高さに反して活躍の機会は訪れていません。【ノーカオス】と称し、あえて【カオス】を採用しないことを選んだ【グッドスタッフ】も一部では試されていたものの、流石に完全体【カオス】相手では無謀な戦いと言わざるを得ず、ほぼほぼ自己満足の領域です。
このように、ビートダウン界隈は【カオス】を除いて死滅してしまっている状況でしたが、辛うじて【ジャマキャン】が環境の隅にとどまっています。
元々ロックデッキゆえにビートダウン戦法には耐性があり、構造的にはビートダウンデッキに属する【カオス】に対しても一定の勝率をキープできていました。下記で解説している「ボーガニアン」の誕生によって安定火力を手にしていたことも追い風となり、【カオス】のメタデッキと言えなくもない活躍をしていた時代だったと言えるでしょう。
……もっとも、現実問題として勝率が5割を超えることはあり得ず、【カオス】に対抗するのは明らかに無理があったことは否定できません。上述の通り、【カオス】対策には【カオス】を握るのがベターな選択であり、少しでも勝敗を意識する場合、あえて【ジャマキャン】を選ぶメリットは皆無だったからです。
事実上の【カオス】1強環境の到来であり、当時の遊戯王OCGは文字通り混沌の渦へと飲み込まれていきました。
【その他 一癖ある強力なコンボパーツ達】
当時の環境で起こった出来事については以上ですが、実は「混沌を制す者」パック出身の面々はこうしたビートダウン向けのカードだけではありません。【カオス】の悪名によってそれ以外が霞んでしまっている印象が否めないパックですが、将来的にコントロールデッキやコンボデッキで多用されることになる優秀なカードが多数現れていたことにも触れておく必要はあるでしょう。
具体的には、除外ギミックを主軸に据えたデッキのキーカードにもなり得る「異次元の偵察機」「魂吸収」のほか、【マジエク1キル】のサポートとなる「残骸爆破」は特に有名です。
また、【侍ターボ】の「大盤振舞侍」や【凡骨ビート】の「凡骨の意地」、【つまずき】の「つまずき」など、カード名がそのままデッキ名となるほどの中核カードも少なくありません。かの【コスモロック】を生み出した「宇宙の収縮」はその筆頭と言えるのではないでしょうか。
とはいえ、こうしたコンボパーツはあくまでもコンボパーツでしかなく、単体では全く機能しないことは明らかです。当時は特に面白い使い道があったわけでもなく、カードプールの拡大によってコンボが発見されるまではその他大勢の中に埋もれていました。
ロックバーンの魂 ボーガニアン
一方で、【カオス】時代の当時においても一定の注目を集めていた即戦力も存在しています。
自分のスタンバイフェイズ毎に相手ライフに600ポイントダメージを与える。
上記は「ボーガニアン」の当時のテキストです。毎ターン、自分のスタンバイフェイズに600バーンダメージを飛ばす効果を持っています。
直接アドバンテージに繋がる効果ではなく、またステータスもリクルーター以下と単体ではお世辞にも強いモンスターとは言えません。しかし、維持するだけで継続的にダメージを稼いでいけるモンスターというのは当時としては貴重であり、相手の行動をロックするコントロールデッキにおいてはフィニッシャーにもなり得るポテンシャルを秘めていました。
とりわけ群雄型【ジャマキャン】での活躍は目を見張るものがあり、機械族である「マジック・キャンセラー」と共存できるという唯一無二の強みを活かし、遂には必須カードにまで登り詰めています。ダメージ効率こそ後進の「ステルスバード」などに劣りますが、そうしたカタログスペックとは異なる方面で評価が噛み合った結果でしょう。
コンボデッキのお供 リロード
しかしながら、第3期当時に最も使われたコンボパーツと言えばやはり「リロード」に他なりません。
自分の手札をデッキに加えてシャッフルする。その後、デッキに加えた枚数分のカードをドローする。
一言でまとめれば、自分の手札をもう一度引き直すような効果です。効率そのものは「手札抹殺」と同等ですが、こちらはデッキに戻してしまうため墓地利用もできず、額面通り純粋な手札交換カードとして運用することになります。
もちろん、ただ発動するだけではこのカード1枚分のディスアドバンテージを負ってしまうため、普通のデッキに入るカードではありません。特定のカードを引き込みたいコンボデッキで多用されるほか、【ジャマキャン】などのロック系コントロールデッキでもしばしば使われていたカードです。
しかし、当時このカードを最も効果的に活用することができたのは【サイエンカタパ】でした。
性質上、「魔導サイエンティスト」と「カタパルト・タートル(エラッタ前)」をフィールドに揃えさえすれば勝利が確定するため、ディスアドバンテージを気にする必要はありません。一応、「魔法石の採掘」などとの兼ね合いがあることから完全に無視して考えることはできませんが、先攻1キルの成功率向上に大きく貢献していた有力なデッキパーツのひとつです。
「名推理」や「モンスターゲート」を多用する関係上、状況次第では「モンスターをデッキに戻す」ことが重要な意味を持つケースもあります。元々コンボデッキとは相性の良いカードですが、こうした理由から【サイエンカタパ】とは特に親和性が高く、当デッキではフル投入確定クラスの必須カードだったと言えるでしょう。
とはいえ、流石に2003年4月24日当時のカードプールで【サイエンカタパ】を実用レベルで構築することは難しく、この「リロード」も当初から大きな注目を集めていたわけではありません。上述の通り【ジャマキャン】などで細々と使われることもありましたが、やはりこのカードの主戦場はコンボデッキに他ならず、浮上の機会は【サイエンカタパ】の台頭を待つこととなりました。
【まとめ】
前記事、前々記事と合わせて、「混沌を制す者」販売によって起こった出来事は以上です。
パック名の通り、【カオス】の降臨によって遊戯王というカードゲームそのものが混沌に支配され、メタゲームは【カオス】一色に塗り潰されることになります。【ジャマキャン】や【ノーカオス】など、【カオス】以外の勢力の奮闘の気配もありましたが、結局のところ混沌を制す者もまた混沌に他ならず、当時の環境は終わりの見えない暗黒時代へと突入していきました。
ここまで目を通していただき、ありがとうございます。
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