おジャマトリオ参戦 【ジャマキャン】の成立

2018年3月8日

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【前書き】

 【第3期の歴史11 友情 YU-JYO 遊戯王史上最も意味不明のカード】の続きになります。ご注意ください。

 相手プレイヤーに握手を申し込むという、カードゲーム全体を見渡しても類例がほぼ見当たらない斬新なカードが誕生し、当時のプレイヤーの間に少なからぬ混乱が起こりました。

 とはいえ、具体的に何らかの悪影響があったわけでもなく、時間が経つにつれて次第に話題に上らなくなっていきました。

 9月中旬のレギュラーパック販売以降、大きな変動もなくメタゲームが推移していましたが、11月下旬に遂に動きが起こることになります。

 

【ガーディアンの力 武器が本体】

 2002年11月21日、「ガーディアンの力」が販売されました。新たに53種類のカードが誕生し、遊戯王OCG全体のカードプールは1501種類に増加しています。

 ビートダウン向けのパワーカード、コントロール向けのトリッキーなカード、そしてコンボ向けの凶悪なループギミックパーツと3拍子揃った面白いパックです。いずれも何らかの形で規制経験のあるカードであり、中には現在でも禁止カードに指定され続けている危険なものも存在します。

 メタカードにも優秀なカードが多く、特に「闇より出でし絶望」は【トマハン】への有力なカウンターとして高く評価されていました。「スキルドレイン」といった将来的に注目を浴びるカードも密かに収録されており、パックとしての価値は高いものだったと言えるでしょう。

 一方で、「エクゾディア・ネクロス」などの後世でも扱いに困るデリケートなカードも少なくありません。そもそもパックのメインテーマである「ガーディアン」シリーズ自体が非常に癖のある性能であり、これを使いこなすのは中々歯ごたえのある挑戦です。

 愛好家の方には失礼な物言いとなってしまうことをあらかじめ謝罪いたしますが、率直に申し上げて当たりと外れの差が極端に大きいパックだったのかもしれません。

リアルファイト必至 おジャマトリオ

 とはいえ、前述の通り目玉カードが多数収録されていたことは事実です。

 そのうち、当時の環境に最も影響を及ぼしたカードと言えば、やはり「おジャマトリオ」に他ならないでしょう。

相手フィールド上に「おジャマトークン」(獣族・光・星2・攻0/守1000)を3体守備表示で特殊召喚する(生け贄召喚のための生け贄にはできない)。「おジャマトークン」が破壊された時、このトークンのコントローラーは1体につき300ポイントダメージを受ける。

 相手フィールドに「おジャマトークン」という名前の、特殊な性質を持ったトークン3体を特殊召喚する効果を与えられています。具体的には、生け贄召喚のための生け贄にできず、さらに破壊された時にコントローラーに300ダメージを与えるという性質です。

 つまりどちらもデメリットであることは言うまでもありません。ステータスも貧弱極まりないため、まさしく名前の通り邪魔にしかならないトークンです。

 加えて当時は自分フィールドのモンスターを能動的に処理する手段が限られており、生け贄召喚を除けば「ブラック・ホール」でまとめて流すか、「キャノン・ソルジャー」の弾にする程度しかありませんでした。しかし、前者は貴重な全体除去を消費させられる上に合計900ダメージを負ってしまい、後者も一般的なビートダウンデッキではまず採用されないカードです。

 よって、基本的に相手に破壊されるまでは延々とモンスターゾーンを埋め続けるため、当時このトークンをプレゼントされて喜ぶプレイヤーはまず居なかったと断言しても良いでしょう。

 一方で、このカードを発動したプレイヤーはカード・アドバンテージを失っており、テンポ面ではともかくリソース面では損をしています。加えてそもそもの話、ビートダウン戦法を主軸とする場合は遅かれ早かれトークンを戦闘破壊しなければなりません。

 しかしその場合、僅か900ダメージと引き換えにダイレクトアタックを3回分逃していることになり、ライフ・アドバンテージ面で大幅に損をしていることは明らかです。

 つまり、この「おジャマトリオ」は発動するとカード・アドバンテージとライフ・アドバンテージの両方を失うカードであり、普通に使っても全く役に立たないどころか、デッキに入れること自体が損であると言わざるを得ません。トークンをプレゼントする方もされる方も損をするという、まさに誰のためにあるのか分からないカードという評価が当てはまるでしょう。

 しかし、そんな「おジャマトリオ」も一時期は制限カード指定を受けていた過去を持っています。これは開発側が錯乱したわけではなく、この「おジャマトリオ」が使い方次第では無類の強さを発揮する優秀なロックカードでもあったからです。

 「おジャマトリオ」をキーカードに据えた遊戯王最初のデッキ、【ジャマキャン】の成立です。

 

【メタビート】の原形 【ジャマキャン】

 【ジャマキャン】は、「おジャマトリオ」「マジック・キャンセラー」の2枚を中核とする【ロックバーン】の一種にして、【メタビート】の開祖とも言えるデッキです。当時蔓延していた大量の禁止級魔法カードへのメタデッキとして開発されました。

このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り魔法カードは発動できず、全てのフィールド上魔法カードの効果は無効になる。

 上記は「マジック・キャンセラー」の当時のテキストです。魔法版「人造人間-サイコ・ショッカー」とも言うべきモンスターであり、効果そのものの持つ制圧力は本家の比ではありません。

 当時はデッキ内のカード比率は魔法カードが最も高いケースが大半だったため、場合によってはゲームが動かなくなるほどの高い制圧力を発揮します。もちろん自分も魔法カードを使えなくなりますが、最初から罠カード中心の構築に寄せることで影響を最小限に抑えることができるでしょう。

 一方で、ステータスは下級モンスター並であり、サポート無しではあっさり戦闘破壊されてしまう欠陥性を抱えています。エースモンスターとして評価された「人造人間-サイコ・ショッカー」と違い、誕生以降目立った活躍がなかったのはこれこそが原因だったと言っても過言ではありません。

マジック・キャンセラーを戦闘から守るカード

 その弱点を埋めるカードとして浮上したのが「グラヴィティ・バインド-超重力の網-」でした。

レベル4以上のモンスターは攻撃する事ができなくなる(表示形式の変更は可能)。

 2000年12月14日、「Thousand Eyes Bible -千眼の魔術書-」から生まれた永続罠カードです。コントローラー問わず、全てのレベル4以上のモンスターの攻撃を封じる効果を持っています。

 そして、この時期のレベル3以下のモンスターに「マジック・キャンセラー」を戦闘破壊できるモンスターは存在していません。つまり、このロックを決めることで「マジック・キャンセラー」は戦闘に対しては事実上無敵の存在となります。

 ただし、これだけでは「同族感染ウィルス」などの除去効果持ちモンスターはもちろん、「魔導戦士 ブレイカー」による魔法・罠除去効果によってもロックを抜けられてしまいます。いずれも当時は必須カード級の扱いを受けていたため、これらを無視して環境を生き抜くことはできません。

 「おジャマトリオ」は、そうしたモンスターへの対策として取り上げられたカードです。上述の通りアドバンテージこそ失ってしまうものの、妨害能力で右に出るものはそうありません。

 これ1枚では3つしかモンスターゾーンを埋められませんが、相手がモンスターを2体並べた瞬間に発動することで疑似的にロックを決められます。自分が【ジャマキャン】を使っていることを隠しながら立ち回っていれば、この状況を狙うのはそれほど難しいことではないでしょう。

 とはいえ、これだけではトークンの自爆特攻によってロックを解除されてしまう以上、構造的にやや不安が残るのは否めません。あらかじめ「マジック・キャンセラー」を守備表示で出していれば回避できますが、その場合は相手に狙いを悟られてしまうのがネックです。

マジック・キャンセラーを除去から守るカード

 そのため、やはり「群雄割拠」と組み合わせてこそコンボが完成すると言えるでしょう。

お互いのプレイヤーはそれぞれ種族が1種類になるように、フィールド上の自分のモンスターを墓地へ送る。このカードが存在する限り、お互いに自分のフィールド上に出せるモンスターの種族はそれぞれ1種類だけになる。

 お互いに1種族しかモンスターをコントロールできなくなるため、更地に「おジャマトークン」を押し付けることで獣族以外のモンスターの召喚行為全般を完全に封殺できます。当時は有力な獣族モンスターがほとんどおらず、実質的に全てのモンスターの召喚を封じるコンボだったと言っても過言ではありません。

 また、このコンボを決めることで必然的に「マジック・キャンセラー」が戦闘破壊されなくなるのも魅力の一つです。「グラヴィティ・バインド-超重力の網-」以外に戦闘破壊への対策を持てるというのは安定性の観点から見てもありがたく、デッキの地力の向上にも貢献します。

 もちろん、盤面次第では「おジャマトリオ」に頼らずロックに持っていくことも可能です。むしろそうした疑似ロックに持ち込んだ上で相手の自爆特攻を誘い出し、モンスターが居なくなった瞬間に「おジャマトリオ」を発動して完全ロックを決めるというのが有力な勝ちパターンの一つでもありました。

 ちなみに、この「おジャマトリオ」ですが、2枚同時に発動することで相手のモンスターゾーンを完全に埋め立てる使い方もできます。もちろん、その際はトークンが1体あぶれてしまうため、「サンダー・ブレイク」などでその分を処理しなければなりませんが、この状況に持ち込めばグラヴィティ・バインド-超重力の網-」どころか「群雄割拠」すら必要なくなります。

 流石にあまり気軽に狙えるコンボではありませんが、状況次第では実現できるケースもあるため、覚えておいて損はないと言えるでしょう。

相手のライフを削るカード

 もちろん、ロックを決めるだけでは勝ちに繋がらないため、何らかのフィニッシャーを用意しなければなりません。

 【ロックバーン】の名を冠することから分かるようにバーンカードが採用されるケースがほとんどですが、その性格はおおよそ2パターンに大別されます。

 1つ目は「自業自得」を始めとする大火力を数発撃ち込んで相手を焼き切るパターンです。

相手のフィールド上モンスター1体につき、相手に500ポイントのダメージを与える。発動後このカードを破壊する。

 1999年10月17日、「BOOSTER5」から生まれた罠カードです。相手フィールドのモンスターの数に応じたバーンダメージを与える効果を持ち、最大2500ダメージが狙えます(新マスタールール現在は3500)。このデッキでは「おジャマトリオ」を多用するため、安定して1500以上のバーンダメージを叩き出すことができるでしょう。

 ただし、こちらのパターンは4~5枚のバーンカードを撃ち込まなければならない上に、カウンターにも弱いのが難点です。性質上、ある程度デッキスペースを割かざるを得ない点も厳しく、手放しで選べる選択肢ではありません。

 そのため多くの場合、「拷問車輪」などを駆使して継続的にバーンダメージを稼いでいく2つ目のパターンが選ばれることになります。

このカードがフィールド上に存在する限り、指定した相手モンスター1体は攻撃できず、表示形式も変更できない。自分のスタンバイフェイズ時、このカードは相手ライフに500ポイントのダメージを与える。指定モンスターがフィールドから離れた時、このカードを破壊する。

 2002年5月16日、「新たなる支配者」から生まれた永続罠カードです。対象としたモンスターの攻撃と表示形式変更を封じる効果のほか、毎ターン500バーンダメージを与える効果も併せ持っています。

 まさしく【ジャマキャン】のためにあるようなカードであり、必須カード級のデッキパーツと言えるでしょう。カードパワーが低いため投入枚数は吟味する必要がありますが、最低でも2枚は欲しいところです。

 他にも、「溶岩魔神ラヴァ・ゴーレム」などの変則的なバーン効果持ちモンスターも採用候補に入ります。こちらは「グラヴィティ・バインド-超重力の網-」との併用が前提となりますが、ゲームメイクに失敗して「人造人間-サイコ・ショッカー」を通してしまった際の回答にもなり得るのが魅力です。

 この時点では誕生していませんでしたが、「ボーガニアン」なども有力な選択肢に入るでしょう。マジック・キャンセラー」と同じく機械族モンスターであるため、群雄割拠」とも問題なく共存できます。

 

群雄型【ジャマキャン】は主流ではない?

 このように、【ジャマキャン】においては準キーカード級の働きをする「群雄割拠」ではありますが、実際にはこのタイプは【ジャマキャン】の派生デッキの一つに過ぎず、主流の型ではなかったという説が有力視されている模様です。

 しかしながら、個人的な認識としましては群雄型【ジャマキャン】こそが主流の型であったと考えています。むしろ「群雄割拠」を採用していない【ジャマキャン】との遭遇はほとんどなかったと言っても過言ではありません。

 実際、当時結果を残していたのは主に群雄型【ジャマキャン】であったと記憶しています。それ以外の型が結果を出していなかったとは思いませんが、少なくとも主流ではなかったという認識です。

 しかし、現実に群雄型【ジャマキャン】が主流と見なされていない以上は誤った理解だったと認めるほかありません。恐らく【ジャマキャン】の成立当初は「群雄割拠」の発見に至っておらず、その形のままデッキの知名度が広がった結果、こうした普及率の格差に繋がっていったのではないでしょうか。

 もしくは、地域によって異なるメタゲームが展開されていた可能性も低くはないでしょう。当時は今ほどネットが普及しておらず、情報の共有がなされにくい状況にあったことも一因です。

 とはいえ、正確な事実関係が判明するはずもなく、今となっては結論の出ない話と言えるのかもしれません。

 補足となりますが、「魔法カードにメタを張る」というコンセプトの元に組まれたデッキは実は【ジャマキャン】が初出ではなく、2001年初頭に【アロマ・チェイン】というコントロールデッキが考案されていました。しかし、こちらは複数の理由から実戦級のデッキパワーを得るには至らず、ほどなく自然消滅していった経緯を持っています。

 そうした事情を加味して考えるのであれば、やはり主流デッキの一角として結果を残した【ジャマキャン】こそが開祖であったと結論付けても良いのではないでしょうか。

 

【中編に続く】

 「おジャマトリオ」の参戦によって起こった出来事は以上です。

 一見すると何の役に立つか分からないカードでありながら、実際には優秀なロックパーツとしての立ち位置を見出し、やがては【ジャマキャン】成立の決め手になりました。もちろん、【ジャマキャン】以降の環境においても大きな活躍を見せ、最終的には第5期終盤に制限カードに行き着いています。

 現在では環境の変化、そして何よりルールの変化によってロックカードとしての役割は終えていますが、今なおこのカードの鬱陶しさが印象に残っているプレイヤーも少なくないのではないでしょうか。

 しかしながら、「ガーディアンの力」に収録されていた目玉カードは「おジャマトリオ」だけではありません。むしろ危険度という意味ではこれの遥か上を行く凶悪なコンボパーツが含まれていたことには触れておかなければならないでしょう。

 中編に続きます。

 ここまで目を通していただき、ありがとうございます。

 

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