友情 YU-JYO 遊戯王史上最も意味不明のカード
【前書き】
【第3期の歴史10 デビルズ・サンクチュアリが最高の生け贄サポートだった頃】の続きとなります。ご注意ください。
書籍同梱カードから2枚の優良カードが現れ、当時の環境にさざ波が起こりました。いずれも大きな影響には繋がりませんでしたが、唯一無二とも言える独特な性能から将来的に注目を集めることになるカードです。
一方で、メタゲームに直接の波及はなく、依然として【八汰ロック】【トマハン】【デビフラ1キル】らが上位を占める状況は動いていません。カードプールの更新も上記書籍同梱カードを最後に途絶え、大規模な変動は11月のレギュラーパックを待つこととなります。
しかし、そうした環境の推移とは全く別の場所で起こった、ある歴史的な出来事には触れておく必要があるでしょう。
遊戯王最大の謎カード、「友情 YU-JYO」の誕生です。
【真理の福音 友情と結束】
2002年11月1日、「遊☆戯☆王キャラクターズガイド 真理の福音」が販売されました。書籍同梱カードとして新たに2種類のカードが誕生し、遊戯王OCG全体のカードプールは1448種類に増加しています。
この「真理の福音」はいわゆるキャラクターブックであり、原作漫画に登場したキャラクターのプロフィールなどを中心に取り扱った書籍です。しかし、OCGプレイヤーにとっては本の内容以上に、それに同梱されていたカードの方が衝撃的だったのではないでしょうか。
友情 YU-JYO 見えるけど見えないもの
遊戯王OCG史上最大の謎とされるカード、それは「友情 YU-JYO」という魔法カードでした。
相手プレイヤーに握手を申し込む。相手が握手に応じた場合、お互いのライフポイントは現時点のお互いのライフポイントを合計して半分にした数値になる。自分の手札に「結束 UNITY」が存在する場合、そのカードを相手に見せる事で、相手は必ず握手に応じなければならない。
効果はひとまず置いておくとして、まず目につくのは「相手プレイヤーに握手を申し込む」という見るからに異質なテキストでしょう。カードゲームのテンプレートから外れていることは言うまでもなく、率直に申し上げて明らかに生まれてくるゲームを間違えています。
性能自体も「お互いのライフを足して2で割る」という、遊戯王全体を見渡しても類を見ない非常に珍しい効果です。類似カードは「自爆スイッチ」や「ライフチェンジャー」などごく一部に限られています。
しかし、実際にこれを使うことを考える場合、お世辞にも強いと言えるようなカードではありません。
まず、効果の性質上相手のライフが多い時でなければ効力を発揮しないことは明らかです。一方で、相手が有利な状況の場合、わざわざライフを平均化してまで握手に応じる理由がないことは言うまでもありません。
つまりどのような状況であっても単体では役に立たないカードです。精々相手の友情につけ込む程度ですが、確実性については保証しかねます。
ただし、手札の「結束 UNITY」を見せることで相手に握手を強要する効果を持つため、使い方次第では変則的なバーンカードとして運用することもできなくはないでしょう。
自分のフィールド上モンスター1体を選択する。選択したモンスターの守備力はエンドフェイズまで、自分のフィールド上に表側表示で存在するモンスター全ての元々の守備力を合計した数値になる。
上記は当時の「結束 UNITY」のテキストです。モンスター1体の守備力を、自分フィールドの表側表示モンスター全ての元々の守備力の合計にするという効果を持っています。
正直に申し上げますと、これもあまり強いとは言えないカードなのですが、「友情 YU-JYO」のコンボパーツとして見る場合は性能は二の次です。結果だけを見ればライフを平均化するだけですが、どんな相手とも握手できるというのは唯一無二のアドバンテージと考えることもできるでしょう。
ただし、この方法で握手を決めた場合、そのプレイヤーとの間に友情が芽生えることは恐らくないであろうことには注意しなければなりません。そのため、可能であれば相手プレイヤーとあらかじめ友好関係を築いておき、しかる後に満を持してこのコンボを決めにいくべきです。
……どうにも本末転倒感があるのは否めませんが、やはり初対面のプレイヤーに握手を強要するというのは少々考えものでしょう。
ちなみに、この握手強要コンボに利用する「結束 UNITY」は相手に見せるだけで済むため、「友情 YU-JYO」を複数枚握っている場合はこれ1枚で何度も握手を申し込むことができます。それをすることに何のメリットがあるのかは分かりませんが、何らかのコンボに利用できる可能性もゼロではありません。
とはいえ、真面目に「友情 YU-JYO」の使用方法を考える場合、恐らく手札コストか何かにしてしまうのが一番賢い使い方であるのは確かです。身も蓋もない結論ですが、やはり「友情 YU-JYO」そのものが根本的に弱すぎるカードであるため、そもそもこれを使おうとすること自体が土台無理な話であることは否めません。
このカードの採用を考える場合、握手アドバンテージをどの程度重視するかという話になってくるのではないでしょうか。
【当時の環境 2002年11月1日】
「友情 YU-JYO」という意味不明のカードが現れたことにより、遊戯王OCGは限定的にカードゲームとは全く関係ない行動を取れるようになりました。
とはいえ、ゲーム的には実用性に乏しく、環境に与えた影響も皆無です。しかし、相手プレイヤーと握手するという効果は遊戯王以外のカードゲーム含め類例がほとんどないため、歴史的な出来事として取り上げるべき事件ではあったのではないでしょうか。
一方で、「結束 UNITY」の方は一部の専用デッキで採用候補に挙がることもあり、影響が皆無であったと断言することはできません。しかし、いずれにしても大々的に活躍があったわけではなく、やはり大半のプレイヤーにとってはコレクションアイテムに近いカードだったのではないでしょうか。
ちなみに、この「友情 YU-JYO」はその独特な効果から使用不可カードと思われがちですが、実際には公式大会などでも問題なく使用可能です。だからと言って、このカードを大真面目に大会に持ち込むプレイヤーはほぼ居ないと思われますが……。
専用デッキ? 【握手暗黒界】について
ところが、人とは違うことを考える人はどこにでもいるもので、この「友情 YU-JYO」をキーカードとする【握手○○】なる奇妙なアーキタイプがこの世に存在することには触れておく必要があるでしょう。
当然、長らくネタの域を出ない立場に置かれていたのですが、およそ9年後の2011年下半期頃に一応の完成形として【握手暗黒界】が成立してしまうことになります。
モンスターカード(11枚) | |
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×3枚 | 暗黒界の狩人 ブラウ |
暗黒界の術師 スノウ | |
暗黒界の龍神 グラファ | |
×2枚 | 暗黒界の尖兵 ベージ |
×1枚 | |
魔法カード(29枚) | |
×3枚 | 暗黒界の取引 |
暗黒界の門 | |
結束 UNITY | |
手札断殺 | |
テラ・フォーミング | |
トレード・イン | |
成金ゴブリン | |
友情 YU-JYO | |
×2枚 | アドバンスドロー |
×1枚 | おろかな埋葬 |
死者蘇生 | |
手札抹殺 | |
罠カード(0枚) | |
×3枚 | |
×2枚 | |
×1枚 | |
エクストラデッキ(?枚) | |
×3枚 | |
×2枚 | |
×1枚 | (適当な汎用エクシーズ) |
(※元ネタに当たる資料が発見できなかったため、当時のカードプールを元に再現した疑似サンプルとなっています。ご了承ください)
とりあえず握手さえできれば何でもいいという意味不明なデッキであり、これを【暗黒界】に分類するのは【暗黒界】ファンに対して申し訳なくなってくるような異物です。見ての通りゲームに勝利できる見込みは非常に稀薄と言わざるを得ませんが、確率的にはマッチ中に2~3回は握手できる(※)可能性があります。
(※そしてその後敗北します)
ただし、この【握手暗黒界】は完成形と言われるだけあって【握手】系デッキの中では最強のデッキパワーを誇るため、その気になれば真面目にデュエルをすることも可能です。実際、デッキを回転させる過程で「暗黒界の龍神 グラファ」が盤面に複数体並ぶことも珍しくないため、2011年当時基準では下手なファンデッキより強かった疑惑すらあります。
もちろん、話題性やネタ性に関しては非の打ち所がなく、一時期はカジュアル界隈を大いに賑わせたこともありました。
【まとめ】
遊戯王最大の謎カード、「友情 YU-JYO」についての話は以上となります。
何と言っても相手に握手を要求する効果は奇抜の一言であり、むしろ握手の代名詞とすら言えるカードです。実際にこのカードを採用するデッキは【握手○○】と呼称されることが多く、一部ではカルト的な人気を誇るカードでもあります。
最終的には【握手暗黒界】などというデッキが生み出されてしまったほどであり、まさにネタカードの頂点に君臨していると言っても過言ではない存在でしょう。
ここまで目を通していただき、ありがとうございます。
ディスカッション
コメント一覧
コロナウイルスの今の時期に使ったらアカンからある意味禁止カードやな。
コメントありがとうございます。
実を言うとこのカードに関しては「握手する意思を示せば握手を行ったものとする」という裁定が出ていますので、一応使用上の問題は発生しないようになっていたりします。
ただ、そうなるとこのカードを使う意義が根本的に消失してしまうため、本当に何のためにやるのか皆目見当がつかなくなってしまうのですが……。
ファラオの審判というショックルーラー的拘束カードを使う為のコストというのが一番実用性があるだろうか…
コメントありがとうございます。
現状のカードプールにおいて握手コンボに実用性を見出すのが難しすぎる以上、やはりこれを生かすのであれば審判を使うしかないという結論になってしまうように思います。
個人的に少し考えてみましたが、
①:「永遠の淑女 ベアトリーチェ」で「ファラオの審判」を墓地に落とす
②:「幻獣機アウローラドン」で「ファラオの審判」をサルベージ
③:相手ターンに「永遠の淑女 ベアトリーチェ」で「友情 YU-JYO」か「結束 UNITY」を墓地に落として「ファラオの審判」の発動条件を満たす
このような動きができれば先攻制圧に近いコンボが実現できそうです。普通のデッキで狙うのは難しそうですが、上記2枚と相性のいいドライトロン辺りを土台にすれば実用化できるかもしれません。
問題はどう考えても素のドライトロンで普通に制圧した方が強いということですが……。
現在は裁定変更で「握手する意志を示せば握手しなくてもよい」→「審判の判断を仰ぐ」に変更されたようです
結局は審判によって意志さえ示せば問題ないとジャッジされるような気がしますが。
コメントありがとうございます。
握手関連の裁定変更についての情報ありがとうございます。一見すると何故あえて変更したのか意図が掴めないところもありますが、やはり握手することそのものが目的のカードとも言える都合上、握手をする必要は無いと公式に明言する裁定は具合が良くなかったのかもしれません。
でもまだこれは使い道がある方だからまだ使い方があるカードだと思いますよ 色々カードが増えた現在だとこれ普通のデュエルだと使う機会ほぼ無いだろうと思うのとかたくさんありますから 例えると真エクゾディアとか必死の思いで相手を特殊勝利させるとか
コメントありがとうございます。
おっしゃる通り「友情 YU-JYO」には握手をするという唯一無二のアドバンテージがありますので、そういった意味では間違いなく使い道のあるカードと言えそうです。個人的にも好きな部類のカードですし、現在のカードプールで改めて活用法を考えてみるのも面白いかもしれません。