グラヴィティバインドが突破できない時代
・前書き
・独特な性質のパワーカード
・最強クラスの攻撃抑制カード グラヴィティ・バインド
・相手も自分も何もさせないカード 大寒波
・リミッター解除 強いようで強くなかった頃
・当時の環境 2000年12月14日
・まとめ
【前書き】
【第2期の歴史21 サウザンド・アイズ・サクリファイス現る 禁止歴9年の貫禄】の続きとなります。特に、この記事では前中後編の後編の話題を取り扱っています。ご注意ください。
【独特な性質のパワーカード】
非常にトリッキーな性質を持つカードの収録が多かった「Thousand Eyes Bible -千眼の魔術書-」ですが、その中でも飛び切りの変わり種について取り上げていきます。
全部で3枚あるため、それぞれ個別に解説いたします。
最強クラスの攻撃抑制カード グラヴィティ・バインド
1枚目は「グラヴィティ・バインド-超重力の網-」という永続罠カードです。
レベル4以上のモンスターは攻撃する事ができなくなる(表示形式の変更は可能)。
これが魔法&罠ゾーンに存在する限り、全てのレベル4以上のモンスターの攻撃を封じる効果を持っています。前記事で触れた「サウザンド・アイズ・サクリファイス」とは類似した効果ですが、こちらは表示形式の変更は許してしまい、さらにレベル3以下のモンスターに対しては全く影響を及ぼしません。
しかし、元々下級アタッカーはレベル4であることが多く、実用上の問題には繋がらないケースが大半です。当時の環境で活躍していた低レベルモンスターは「クリッター(エラッタ前)」や各種リバースモンスター程度であり、いずれも打点的な脅威はそれほど高くありません。
総じてビートダウンデッキ全般に強く出られるカードとなっており、コントロールデッキのお守りとして環境の最前線で存在感を示していくことになります。現在では流石に一線からは引いていますが、一時は制限カードに指定されたことすらある遊戯王屈指のパワーカードです。
中でも【ジャマキャン】や【アビス・コントロール】での活躍は目覚ましいものがあり、対策なしでは突破不可能なロックカードとしてビートダウンデッキを恐れさせていました。遊戯王前半期の環境でロックデッキ対策が必須とされていたのもこうした「攻撃抑制カードの理不尽な強さ」が理由だったと言っても過言ではなく、まさに環境を裏から牛耳っていたカードに他なりません。
とはいえ、この時期は「人造人間-サイコ・ショッカー」全盛期の時代であり、しばらくは伸び悩む日々が続いています。除去されるまでもなく「展開のついで」に効果を無効化されてしまうケースが多く、思うようにロックが決まらなかったことがその理由です。
しかし、その「人造人間-サイコ・ショッカー」も直前の制限改訂で制限カード指定を受けていた(※)ため、極端な向かい風の状況に置かれていたわけではありません。現代に比べて除去の手段が限られていたこともあり、第2期当時から一定の採用率を維持していたのではないでしょうか。
(※しかし、この頃は「黒き森のウィッチ(エラッタ前)」が無制限カードだったため、やはりロックを安定して維持するのは困難でした)
相手も自分も何もさせないカード 大寒波
2枚目は「大寒波」という魔法カードです。
このカードは、メインフェイズ1の開始時にしかプレイできない。自分の次のターンが来るまで、お互いに魔法・罠カードをプレイすることはできない。
やや複雑なテキストですが、要は「次の相手ターン終了時まで、お互いに魔法・罠カードを発動、セットできない」という効果を与えられています。遊戯王OCG全体で見ても比類するものが少ない特殊なカードであり、そして見た目からは想像もできないほどの凶悪な制圧力を発揮するパワーカードでもありました。
単純に考えても往復1ターンの間は魔法・罠カードの使用を封印することができます。更にはカードのセットを封じてしまう関係上、罠カードに関しては往復2ターンもの間発動を遅らせることが可能です。当時は魔法・罠カードの採用比率も今以上に高く、これ1枚で莫大なテンポ・アドバンテージを稼ぐことができました。
しかし、それは自分にとっても同じことであり、ただ使うだけではこのカード1枚分のディスアドバンテージを負うだけです。メインフェイズ1の開始時にしか発動できないため、「自分だけカードを使ってから発動する」などの分かりやすい悪用法も不可能となる調整が施されています。
そもそも第2期当時はゲームスピード自体が遅く、テンポ・アドバンテージの概念も現在ほどには重視されていません。結局のところ時間稼ぎ以上の価値を見出せず、誕生当初は実戦で使われるケースもほとんどありませんでした。
その後、時代が進むにつれて強力な効果モンスターが現れ始め、上記の評価も次第に塗り替えられていくことになります。凶悪なポテンシャルを持ち合わせながらも周囲の環境に恵まれず、長い間雌伏の時代を過ごした遅咲きのパワーカードです。
リミッター解除 強いようで強くなかった頃
3枚目は「リミッター解除」という速攻魔法カードです。
自分の全ての表側表示機械族モンスターの攻撃力を倍にする。ターン終了時この効果を受けたモンスターカードを破壊する。
自分フィールドの機械族モンスターの攻撃力を倍にするという単純にして強力な効果を持っています。しかし、その代償として倍化効果を受けたモンスターはターン終了時に自壊してしまうなど、カード名から豊富なフレーバーを感じ取れる面白いカードです。
単純に打点が倍に伸びるため、下級アタッカークラスの攻撃力であってもフィニッシャー級の打撃力を得ることができます。複数体の倍化に成功した場合、簡単に1キル圏内の総火力に到達することができるでしょう。
ただし、発動ターン中に勝負を決めることができなかった場合、非常に不利な状況に立たされてしまうことには注意が必要です。恩恵を受けたモンスターが多いほど代償も大きくなるため、そうしたリスクを踏まえて慎重に運用しなければなりません。
とはいえ、リスクを恐れて中途半端な状況で発動したところで旨味は薄く、わざわざこのカードを使う利点もなくなってしまいます。つまり、このカードは「決まれば勝てるが決まらなければ負ける」というカードであり、まさに【機械族】の奥の手とも言えるカードとして高い評価を受けることになりました。
しかしながら、これが誕生した第2期当時では機械族モンスターも数が少なく、環境レベルの実力を持っていたのは「人造人間-サイコ・ショッカー」程度です。「メカ・ハンター」など、第1期で活躍した下級アタッカーも流石に時代遅れという印象が強く、機械族を主軸に据えたデッキを組むのは難しい状況となっていました。
そのため、「リミッター解除」のポテンシャルを活かすのも中々厳しいものがあり、この頃は「書いてあることは強いが実際は大して強くないカード」というような扱いを受けていました。上記の「大寒波」と同様に、時代が進むにつれて真価を発揮し始めるカードです。
【当時の環境 2000年12月14日】
【第2期の歴史20 ゴブリン突撃部隊 意味不明の攻撃力(第2期基準)】以降の前中後編の記事内容を総括した項目となっています。ご注意ください。
「ゴブリン突撃部隊」という有力な下級アタッカーが現れたことにより、【グッドスタッフ】が更なる打撃力を手にしました。生け贄の用意なく2000越えの打点をぶつけてくるようになった影響で、2300以下の攻撃力しか持たない上級モンスターが大きく評価を落としています。
しかし、この時期の上級アタッカーラインは「人造人間-サイコ・ショッカー」の2400が基準であり、環境上位における攻撃力ラインは崩れていません。むしろ「岩石の巨兵」や「ダーク・エルフ」など、壁モンスターやデメリットアタッカーに対しての影響が目立っていました。いずれも以前のような活躍が難しくなり、採用率が一気に低下しています。
強力な攻撃抑制カードである「グラヴィティ・バインド-超重力の網-」は、【デッキ破壊】【苦渋エクゾディア】などで使用感が試されることになります。しかし、上記で触れたように「人造人間-サイコ・ショッカー」に弱く、一番の仮想敵となる【グッドスタッフ】に効力が期待できません。
全体的に片手落ちな性能であり、やはり環境レベルには届かないカードとして見られていました。
総評としましては、【グッドスタッフ】が強化を受ける反面、【デッキ破壊】や【苦渋エクゾディア】は足踏みをしている格好となっています。しかし、【グッドスタッフ】が得たものも結局は単純な高打点モンスターでしかなく、他の2デッキに対して特別強いカードではありません。
そのため、前環境から大きな変動は起こっていない状況です。非常に面白い性質を持ったカードが多数現れた時期ではありましたが、それに反して環境への影響は軽微にとどまる形となっていました。
【まとめ】
前記事、前々記事と合わせて、「Thousand Eyes Bible -千眼の魔術書-」販売によって起こった出来事は以上です。
個々の性能だけを見るのであれば、優秀かつ特徴的な効果を持ったカードを多数輩出したパックとして高い評価を受けています。しかし、俯瞰視点においては思いのほか影響が少なく、大きな変化には繋がっていません。いずれもカードプールの増加によって再評価されたカードであり、活躍の機会は先に持ち越す格好となっていました。
ただし、【サウザンド・アイズ・サクリファイス】が考案されるなど、ファンデッキ界隈には大きな風が吹いています。個人的な話になりますが、私も第1期で【融合召喚】を組んでいた関係で融合召喚軸の【サウザンド・アイズ・サクリファイス】を組んでいました。
ここまで目を通していただき、ありがとうございます。
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