アビス・ソルジャー参戦 【アビス・コントロール】の成立

2018年6月13日

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【前書き】

 【第4期の歴史4 ガジェットトリオ 遊戯王前半期最強の下級モンスター】の続きになります。ご注意ください。

 ガジェットトリオという遊戯王前半期を象徴するパワーカードが誕生し、当時のプレイヤーに大きな話題を提供しました。

 しかし、この時期はまだ至るところに危険なカードが蔓延しており、「ガジェット」の持つ調整された強さが活かされにくい状況でもありました。要はライバルが凶悪すぎたために目立っておらず、活躍の機会はおおよそ1年後に持ち越すことになっています。

 ちなみに、この時期に行われた世界大会では順当に【カオス】が優勝しています。というより、上位入賞者リストは軒並み【カオス】で埋め尽くされていた次第です。

 では【サイエンカタパ】はどうなったのかと言うと、意外なことに特に結果は残していません。日本代表の一角を奪い取るなど、国内予選レベルではトーナメントシーンを荒らし尽くした【サイエンカタパ】でしたが、海外ではカードプールの違いもあって知名度がそれほど高いわけではなく、純粋に【カオス】との使用率の差という物量に押し潰されてしまったということでしょう。

 世界大会という一大イベントに世間が湧く中、その数日後に密かに有力な新人が現れることになります。

 

アビス・ソルジャー バウンス効果持ちの高打点アタッカー

 2004年7月29日、ゲームソフト「遊戯王カプセルモンスターコロシアム」と、その攻略本が同時販売されました。新たに3種類のカードが誕生し、遊戯王OCG全体のカードプールは1879種類に増加しています。

 カードプール更新量はごく僅かですが、上記で触れた通り非常に優秀なカードが誕生していたことには触れておかなければなりません。

 それは「アビス・ソルジャー」というモンスターでした。

水属性モンスター1体を手札から墓地に捨てる。フィールド上のカード1枚を持ち主の手札に戻す。この効果は1ターンに1度だけ自分のメインフェイズに使用することが出来る。

 手札コストとして水属性モンスターを捨てることで、対象の任意のカードをバウンスする効果を備えています。カードの種類、裏表を問わず手札に戻してしまえるため、攻めている時に真価を発揮する攻撃的な能力です。

 反面、効果そのものはディスアドバンテージであり、あまり多用できる効果ではありません。手札コストにも水属性モンスターという縛りがある以上、少なくとも【ノーカオス】などに入る汎用カードではないでしょう。

 しかし、除去効果としての性能に優れていることは事実でもあり、当時から様々な活用法が見出されていっています。攻撃力1800という恵まれたステータスも相まってポテンシャルは非常に高く、専用デッキを組む価値は十分にあるカードだったことは間違いありません。

 そして、「アビス・ソルジャー」の強みを最大限に発揮するためのデッキとして、【アビス・コントロール】が成立することになりました。

 

【アビス・コントロール】の成立 【セルフ・バウンス】の始祖

 【アビス・コントロール】は、デッキ名の通り「アビス・ソルジャー」を中核に据えたビート・コントロールデッキです。バウンス効果そのものの除去能力はもちろん、手札に戻すことに意義のあるカードを駆使してゲームをコントロールすることを狙います。

 【セルフ・バウンス】の要素を最初に取り入れた主流デッキであり、その始祖とも呼べる存在です。さらに、型によっては【フィフティ・フィフティ】のコンセプトを同時に取り入れていることも多く、事実上はそれらとの複合デッキであったとも言えるでしょう。

 前者は「早すぎた埋葬」や「ビッグバン・シュート」、後者は「レベル制限B地区」や「王宮の弾圧」がしばしば取り上げられていました。とりわけ「王宮の弾圧」を積んだ【アビス・コントロール】は【弾圧アビス】と呼ばれて区別され、【変異カオス】時代におけるメタデッキとして一時期注目を集めています。

 そして、この「アビス・ソルジャー」の最高のパートナーとして活躍していたカードこそが「キラー・スネーク(エラッタ前)」です。毎ターンの自己回収によって無限の手札コストとなるため、実質ノーコストでバウンス効果を撃てることになります。

 そのため、当時としては珍しいことに、この【アビス・コントロール】にはおろかな埋葬」がメインパーツとして標準搭載されていました。この時期は実戦レベルの水属性モンスターが数えるほどしかいなかった都合もあり、「キラー・スネーク(エラッタ前)」を確保することが何よりも重要視されていたからです。

 他には、属性面のシナジーから「氷帝メビウス」が採用されていることもしばしばありました。【フィフティ・フィフティ】のギミックを含むことから重さも気になりにくく、最悪手札コストにしてしまえるという点も評価できます。

 総じてビートダウン面、コントロール面のどちらから見ても優秀なデッキであり、環境に影響を及ぼすだけのデッキパワーを備えていた実戦級デッキです。流石にこの時期に限ればメタ外の立ち位置でしたが、2004年9月の制限改訂で環境が整えられてからは次第に存在感を示していくことになります。

 その後は2005年3月に「アビス・ソルジャー」が準制限カードとなったことで勢いを落とし、最終的には「キラー・スネーク(エラッタ前)」の禁止カード化によって2005年9月に衰退を迎えることになりました。完全に解体されたわけではなく、将来的には【お触れホルス】のメタとして一瞬再浮上するなどの流れもありましたが、主流デッキとしての現役時代はここで終わったと見るべきでしょう。

 

【当時の環境 2004年7月29日】

 「アビス・ソルジャー」の誕生を受け、専用デッキである【アビス・コントロール】が開発されています。

 しかし、この時期は後年の禁止カードが多数環境に生き残っており、こうしたシナジーに特化したデッキよりも単純な【グッドスタッフ】が強い時代でした。また、【ミーネ・ウイルス】というハイビートキラーの存在も【アビス・コントロール】の立場を悪くしています。

 直接的な影響ではありませんが、「サイクロン」が無制限カードだったことも向かい風のひとつです。型によっては「レベル制限B地区」などのロックパーツを多用する関係上、ロックを容易に崩してくる魔法・罠除去の存在は鬼門と言えるでしょう。

 こうした事情もあり、この【アビス・コントロール】も当初はファンデッキよりの立ち位置にいたことは否めません。決して弱いデッキではありませんでしたが、活躍の機会は2ヶ月後の制限改訂を待つこととなりました。

 他方では、【カオス】の派生デッキである【ウイルスカオス】もこの頃より台頭し始めています。

 コンセプトはデッキ名の通り、「死のデッキ破壊ウイルス(エラッタ前)」を積んだ【カオス】です。【ミーネ・ウイルス】同様ハイビート系デッキ、特にミラーマッチに強いことから参戦以降は一気に勢力を拡大していっています。

 デッキの起こりとしましては、まず【カオス】側が【ミーネ・ウイルス】対策として低ステータスのモンスターを優先的に採用するようになったという背景が存在しました。

 代表的なモンスターとしては「魂を削る死霊」などが挙げられます。元々優秀な小型モンスターであることに加え、戦闘破壊耐性を持つことから場持ちもよく、ウイルス下に置かれてしまった際の延命手段としても活用できたからです。

 しかしながら、こうしたウイルスの影響を受けない闇属性モンスターは同時にウイルスの媒体にもなるという特徴を併せ持っています。その結果、次第に【カオス】側も「死のデッキ破壊ウイルス(エラッタ前)」を使い始めるようになり、やがては【ウイルスカオス】として明確に派生したという流れです。

 コンボギミックを搭載する以上、純粋なデッキパワー自体は下がりますが、それ以上に環境的に合致したコンセプトを備えていたと言えるでしょう。

 そしてそれはまさに、この時期の【カオス】が「メタゲームへの適応を考えなければならない程度には」弱体化していたということの証左でもあったのではないでしょうか。

 

【まとめ】

 「アビス・ソルジャー」参入頃の出来事については以上となります。

 専用デッキである【アビス・コントロール】を擁するなど、環境に及ぼした影響の大きさはカード1枚としては破格ですが、参入直後は活躍が難しく、やや埋もれてしまっている状況でした。

 そして、その環境もメタゲームの流れによって大きな変化を見せています。【ウイルスカオス】の台頭はその筆頭と言える変化であり、そしてそれは遊戯王OCGの持つカードゲームとしての奥行きを深める良い変化だったのではないでしょうか。

 ここまで目を通していただき、ありがとうございます。

 

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