【変異カオス】の台頭 2005年環境のトップメタ

2018年7月16日

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【前書き】

 【第4期の歴史15 制限改訂2005/3/1 【サイエンカタパ】の最期と【スタンダード】の衰退】の続きになります。特に、この記事では前後編の後編の話題を取り扱っています。ご注意ください。

 

突然変異と開闢 【カオス】の成れの果て

 当時の環境に突如現れた新勢力。その正体は【変異カオス】と呼ばれるデッキでした。

 一言でコンセプトをまとめるなら、「スケープ・ゴート」などを種に「突然変異」から「サウザンド・アイズ・サクリファイス」を展開し、「月読命」との強烈なシナジーを活かしてゲームを支配することを狙うビート・コントロールデッキです。2005年3月~9月環境におけるトップメタの筆頭であり、当時の選考会では当デッキの使用者が半数を占めるという事態にもなっています。

 また、デッキ名に【カオス】の名を冠していますが、カオス要素は「カオス・ソルジャー -開闢の使者-」1枚のみに限られるケースが大半です。実質的には【突然変異】とでも呼ぶべきアーキタイプとなっており、実際に当時は主に【変異スタン】の呼び名を与えられていました。

 そんな【変異カオス】ですが、このデッキを語る上で避けては通れない話題が存在します。それは「そもそもなぜこのようなデッキが突然生まれたのか」という根本的な疑問です。

 

【変異カオス】はなぜ生まれたのか?

 前提として、これまで「突然変異」は知る人ぞ知るコンボカード、つまり環境レベルのカードとは見られていない状況だったことは認識しておかなければなりません。そこから急激に採用率が跳ね上がり、遂にはトップメタにまで登り詰めたことは非常に興味深い出来事です。

 こうした状況に至るまでの経緯については諸説ありますが、大まかには2つの説が存在します。

 1つは非常に有名な説で、「スケープ・ゴート」の浮上をきっかけにデッキが成立したという可能性です。

 この時の制限改訂により【グッドスタッフ】が衰退期を迎えたことは前記事の通りですが、これは全体的に環境がデフレを起こしていたと言い換えることもできます。この影響で当時の遊戯王が中速環境へと移行した結果「スケープ・ゴート」の防御能力が再評価され、そのパートナーとして「突然変異」が見出されたという流れです。

 非常に分かりやすい経緯であり、遊戯王wikiにおいてもこちらの説が取り上げられています。

 もう1つの説は、サイバー・ドラゴン」参入の情報判明をきっかけにデッキが成立したという可能性です。

 というのも、元々以前から「突然変異」を活用するデッキとして【変異バルター】や【変異サウサク】などのファンデッキが考案されており、【変異カオス】が成立する土壌そのものは十分に整っていたからです。

 さらに、この時の制限改訂で「ヴァンパイア・ロード」が規制緩和され、【変異バルター】復権の流れが生まれていたことも見逃せません。そこに「サイバー・ドラゴン」という最高のピースを獲得したことでデッキの地力が大幅に跳ね上がり、やがては【変異サウサク】を吸収する形で【変異カオス】へと収束したのではないでしょうか。

 【変異カオス】の型の一つに【サイドラ変異】と呼ばれるデッキが存在することも有力な根拠に数えられます。

 しかし、「サイバー・ドラゴン」を輩出したパックの販売日は5月26日、つまり情報判明時点から実際に印刷されるまでにタイムラグがあったため、先にトーナメントシーンで結果を出したのは「スケープ・ゴート」軸でした。

 

【変異カオス】のメタデッキ 【弾圧アビス】の奮闘

 ともあれ、このような流れで成立した【変異カオス】は必然的に環境に最適化した構成が取られており、またたく間に当時の勢力図を塗り替えてしまうことになりました。この圧倒的な勢いに対抗するため、【弾圧アビス】と呼ばれるメタデッキが考案されています。

 デッキ名から見て取れるように【アビス・コントロール】の一種であり、「王宮の弾圧」による特殊召喚メタを駆使して有利に戦いを進めることを目的とします。というより、サウザンド・アイズ・サクリファイス」相手では従来のロックカードがほとんど意味を成さなかったため、実質的には苦肉の策とも言えるカード選択でもありました。

 当然、そのような急場しのぎの対応では【変異カオス】に到底太刀打ちできず、ほどなく自然衰退を迎えています。その後は「王虎ワンフー」を取り込んで【弾圧ワンフー】へと姿を変えるなどの努力がありましたが、そこまでしてようやく五分に届く程度でしかなく、メタデッキとしてはあまりに線が細すぎたと言うほかありません。

 加えてこれ以降の環境は【ガジェット】の時代の幕開けでもあり、その意味でも苦しい局面に置かれています。

 【ガジェット】のメインコンセプトは豊富な除去カードによる絶え間ないビートダウンです。つまり、このマッチアップにおける「王宮の弾圧」はただの置物でしかなく、頼みの綱の「王虎ワンフー」もあっさり除去されてしまうことは明らかです。

 こうした板挟みの状況ではメタに食い込むことすらままなりません。もちろん【変異カオス】を抑え込むどころの話ではなくなり、最終的にはほぼ完全に姿を消してしまうことになります。

 追い詰められた【弾圧アビス】が取った最後の一手は、自らも「突然変異」を取り込んで【アビス変異】へと姿を変えることでした。

 元々「サウザンド・アイズ・サクリファイス」のロック能力そのものは「アビス・ソルジャー」と相性がよいと評価されており、型によっては「デビル・フランケン」などと共に使われることもありました。その結果、いっそ【変異カオス】のギミックを取り込んでしまおうという発想に至ることはそれほど不自然ではありません。

 これは【変異カオス】視点でも悪い話ではなく、毎ターンのバウンスにより盤面コントロール能力の更なる向上が見込めるほか、純構築では対処法が限られるセットモンスターへの有力な回答となり得ます。欠点としては事故率が上がること、ややオーバーキルであることなどが挙げられますが、そうした弱みを抱えながらも一定のシェアを誇っていた実戦級のデッキです。

 もちろん、これらのギミックとアンチシナジーである「王虎ワンフー」「王宮の弾圧」がデッキから抜けていったことは言うまでもありません。とはいえ、デッキとしての完成度は上がっており、実際にある程度の結果を残していた事実からもそのことが窺えます。

 致命的な問題が一つあるとすれば、それはもはやこのデッキが【アビス・コントロール】から【変異カオス】の亜種に成り果てていたということでしょう。

 実際のところ、末期の【アビス変異】は【変異カオス】に「アビス・ソルジャー」を投入しただけとも言える構成に変化しており、ほぼ原形をとどめていない状況でした。そもそもメタデッキとしての意味を完全に喪失してしまっていた以上、やはり実質的にはデッキが消滅したも同然の状況だったのではないでしょうか。

 

【まとめ】

 前記事と合わせて、2005年3月1日の制限改訂で起こった出来事は以上となります。

 【サイエンカタパ】の完全崩壊、環境のデフレによる【スタンダード】の衰退など、歴史的な事件が同時に起こった非常に重要な改訂です。その変化を受けた【変異カオス】の台頭ももちろん大きな出来事であり、この日が第4期における重大な転換期だったことは誰の目にも明らかなことでしょう。

 そんな中、時代の波に飲まれて消えた【アビス・コントロール】のことも忘れてはならないのかもしれません。

 ここまで目を通していただき、ありがとうございます。

 

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