ガジェットトリオ 遊戯王前半期最強の下級モンスター

2018年6月11日

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【前書き】

 【第4期の歴史3 マインドクラッシュと氷帝メビウス 当初は不遇の立場】の続きになります。ご注意ください。

 2004年5月27日に第4期第1弾となるレギュラーパックが販売され、新時代の遊戯王OCGは穏やかなスタートを切ることとなりました。

 おおよそ第3期終盤の流れを引き継ぐ形でメタゲームが展開されており、カードプールの更新が与えた影響は軽微なものであったと言えます。将来的に【お触れホルス】を形成する「ホルスの黒炎竜 LV8」もこの時点では活躍が難しく、新戦力としては辛うじて「氷帝メビウス」が試されていた程度です。

 続投組を中心とするメタゲームが展開される中、突如として遊戯王前半期を代表する大型新人が姿を現すことになります。

 

【LIMITED EDITION 6 一体いつ配布されたのか】

 2004年前半期、週刊少年ジャンプ21号~24号にて応募者全員サービスが実施され、「LIMITED EDITION 6」が配布されました。新たに5種類のカードが誕生し、遊戯王OCG全体のカードプールは1876種類に増加しています。

 配布時期が「前半期」と非常に曖昧な表現となっておりますが、私個人による調査では正確な配布日時が判明せず、このような表記を取らせていただいている次第です。ご容赦ください。

 ……一応、遊戯王wikiの関連ページには一通り目を通してみたのですが、ページによって7月配布、4月配布、3月配布など記述が食い違っており、どの記事のデータが正確なのかが全く分からない状況です。

 また、外部専門サイトによると21号~24号の販売日は2004/05/03~2004/05/24とあり、上記のいずれとも異なっていました。

 ここまで来るとそもそも21号~24号に配布されたという記述自体が誤りである可能性すら浮かび上がってくるため、率直に申し上げて迷宮入りの状況と言わざるを得ません。

 ただし、2004年に実施された応募者全員サービスは2004/06/14の時のものを最後としているため、少なくとも7月に配布されたという記述は信憑性が薄いのではないでしょうか。

 

初代ガジェット 圧倒的なアドバンテージ生成能力

 配布時期に関しては上記のような結果に終わってしまいましたが、収録内容についてはもちろん正確なところが判明しています。枚数は僅か5種類ながら中身は非常に充実しており、極めて長期に渡って環境の最前線で活躍し続けたカードも含まれていたほどです。

 それは「ガジェット」と呼ばれるモンスター群でした。

このカードが召喚・特殊召喚に成功した時、デッキから「レッド・ガジェット」1体を手札に加える事ができる。

このカードが召喚・特殊召喚に成功した時、デッキから「イエロー・ガジェット」1体を手札に加える事ができる。

このカードが召喚・特殊召喚に成功した時、デッキから「グリーン・ガジェット」1体を手札に加える事ができる。

 それぞれ、上から「グリーン・ガジェット」「レッド・ガジェット」「イエロー・ガジェット」のテキストとなります。グリーンがレッドを、レッドがイエローを、イエローがグリーンをサーチする効果を持っており、さながら数珠繋ぎのような関係と言えるでしょう。

 結論を先に申し上げれば、この「ガジェット」シリーズのモンスターは間違いなく遊戯王前半期を代表するパワーカードに他なりません。

 まず単純に、ほぼノーリスクでアドバンテージを稼げるという点が既に尋常ではありません。

 召喚と同時に後続を確保できるため、「キラー・トマト」などのリクルーターをも上回る凄まじい継戦能力を誇ります。攻撃力は1400~1200と物足りない数値ですが、そうした打点の低さを補って余りあるメリットを持つモンスターです。

 当時はカード1枚1枚の持つ価値が非常に重く、たった1枚分のカード・アドバンテージを巡って攻防が繰り広げられるゲームバランスが成立していました。そこに現れたガジェットの存在はまさしく革命そのものであり、これまでのアドバンテージの概念を覆すほどの影響を及ぼしています。

 さらに、サーチしたガジェットからそのまま次のガジェットに繋がるため、実質的にはデッキ内の全てのガジェットに繋がることが約束されていると言っても過言ではありません。つまり1体引き込めば全て引き込んだも同然ということであり、時間が経つにつれてリソース差が広がっていくことになります。

 従来の下級モンスターとは次元の違うカードパワーを備えていることは明らかであり、それは言わば第8期に出現する【征竜】と同等クラスの衝撃をもたらしたカード群そのものだったのではないでしょうか。

 そして、こうした「ガジェット」の持つ強みを活かすことを目的とし、遊戯王史上稀に見る超巨大なアーキタイプ、【ガジェット】が形成されていくことになりました。

 

遊戯王前半期の王者 【ガジェット】の成立

 【ガジェット】は、デッキ名の通り「ガジェット」三兄弟による潤沢なアドバンテージ生成能力を中核に据えたビートダウンデッキです。

 明確なコンセプトの決まりはなく、【ビートダウン】に属するあらゆるデッキと融合可能だったと言っても過言ではありません。事実上「ガジェット」モンスターが入っていれば【ガジェット】に分類されていたと考えることができるでしょう。

 (もちろん、「ガジェット・ソルジャー」は全くの無関係です。念のため)

 その拡張性の高さから無数とも言える型が存在しますが、おおよその区分に分ければ以下の4つに大別されます。

 

【除去ガジェット】 基本にして最強の型

 1つ目の型は【除去ガジェット】と呼ばれるタイプです。

 【ガジェット】の基本形にして最強の型であり、最も広く知られているデッキタイプとも言えます。簡潔に申し上げれば、打点の低いガジェットへの攻撃を「炸裂装甲」などの攻撃反応罠で防ぐとともに相手の場を空け、ダイレクトアタックを中心にビートダウンを行っていくというコンセプトです。

 最も理想的な回りは以下のような状況となるでしょう。

 

①:ガジェットを召喚し、攻撃反応罠を伏せる。

 

②:相手モンスターを罠で迎撃する。

 

③:次のガジェットを召喚し、2体でダイレクトアタック。罠を伏せる。

 

④:繰り返し。

 

 流石に都合が良すぎるシチュエーションですが、考え方としては上記のようなものとなります。

 基本的に「ガジェット」モンスターは戦闘破壊される以外の方法によってはアドバンテージを失いません。正確には、戦闘破壊された場合ですら1:1交換にとどまっているのですが、盤面に脅威を残しているという意味では損をしているとも言えます。

 逆に言えば、戦闘破壊さえ防げば常に潤沢なリソースを保ち続けるのも難しいことではありません。よって除去カードを駆使して相手モンスターを捌いていけば、いずれは相手のリソースが尽きて自然と勝利が転がり込んでくるでしょう。

 そう考えた場合、「炸裂装甲」などの攻撃反応罠カードは「攻撃を防ぎつつモンスターを除去するカード」であり、これ以上なくデッキコンセプトに噛み合います。この事実こそが【除去ガジェット】が最強の型と謳われた所以であり、「ガジェット」の特性を最も効果的に活かしたデッキタイプだったと言えるのではないでしょうか。

 もちろん、これと同等の働きができるカードであれば攻撃反応罠でなくとも構いません。代表的なのは「奈落の落とし穴」に始まる召喚反応罠であり、変わったところでは「収縮」などの戦闘補助カードも候補に挙がります。

 また、罠カードではなく魔法カードに比重を置いた型もあり、そちらは区別のために【魔法ガジェット】と呼ばれることもありました。「地割れ」や「地砕き」はもちろん、時には「ハンマーシュート」まで投入して除去に特化した非常に攻撃的な型です。

 場合によっては除去を完全に魔法カードに絞り、「王宮のお触れ」を採用する型もあります。こちらは特に【お触れガジェット】と呼ばれて区別され、下記の【メタガジェット】における代表的な型として知られます。

 【次元斬】の要素を取り入れた【次元斬ガジェット】も広義では【除去ガジェット】に分類される型でしょう。

 モンスター効果かつ除外による除去を主軸としているため、本来苦手とする【ネフロード】や【お触れホルス】に耐性があるのが強みです。反面、召喚権が競合して手札でモンスターが渋滞を起こしやすい欠点を抱えており、回転力、展開力は【除去ガジェット】の中でも低い部類に入ります。

 とはいえ、ガジェットの持つ打点の低さを自然とカバーできるというメリットもあり、事実上は【ハイビートガジェット】にも属している型です。また、こうした召喚権の競合回避のために「血の代償」のギミックが取り入れられることも多く、結果的に【代償ガジェット】の要素を含んでいることも少なくありません。

 このように、【除去ガジェット】は他のあらゆる型にまたがって遍在していたと言っても過言ではない型であり、まさしく【ガジェット】の中の【ガジェット】に他ならない存在となっていました。むしろ【ガジェット】であるからには少なからず【除去ガジェット】の要素を含んでいるとも取れ、それこそが基本形と言われていた理由だったのではないでしょうか。

 

【メタガジェット】 【メタビート】の系譜

 2つ目の型は【メタガジェット】と呼ばれるタイプです。

 上記でも少し触れていますが、一言でまとめれば永続系メタカードを積んだ【ガジェット】であり、多分に【メタビート】の要素を含んだ型とも言えます。その時に流行している主流デッキにメタを張ったカード選択が取られるため、決まった構築は存在しません。

 特に有名なのは「王宮のお触れ」で罠系デッキにメタを張る【お触れガジェット】、「閃光の追放者」で墓地利用デッキにメタを張る【閃光ガジェット】の2つでしょう。それぞれ、【除去ガジェット】や【未来オーバー】の流行に合わせて開発され、メタゲームの複雑化に一躍買っていました。

 とりわけ【閃光ガジェット】の残した実績は多く、2006年の選考会では日本代表4名中3名がこれを使っていたほどです。当時の墓地利用系デッキの流行度を窺わせるとともに、【ガジェット】の持つ拡張性の高さを象徴するような結果だったと言えるでしょう。

 (ちなみに、残りの1名も「閃光の追放者」を積んでいたこと自体は変わりません。なんと4名全員がメインから3積みしている状況でした。)

 その他、【弾圧ガジェット】や【パキケガジェット】など、特殊召喚にメタを張る型も存在します。特に後者は【ガジェット】の天敵である「キメラテック・フォートレス・ドラゴン」に素で耐性を持つ強みもあり、2007年~2008年頃に【メタガジェット】の代表として活躍しました。

 ただし、この【メタガジェット】は共通の弱みとして「デッキスペースに余裕がない」という欠点を抱える型でもあります。他の型に比べてメタにスペースを割いている分、十分に除去のスペースを取ることができず、デッキとしての地力は【除去ガジェット】に大きく劣ります。

 あくまでも【メタビート】の一種である以上、その時の環境に合わせた適切なカード選択を要求される上級者向けの【ガジェット】と言えるでしょう。

 

【ハイビートガジェット】 打点は正義

 3つ目の型は【ハイビートガジェット】と呼ばれるタイプです。

 その名の通り、打点の低い「ガジェット」のサポートとして攻撃力の高いモンスターを採用した型であり、「打点は正義」を地で行く豪快なアーキタイプです。

 最も広く知られている【ハイビートガジェット】は何と言っても【サイドラガジェット】に他ならないでしょう。メイン打点として「サイバー・ドラゴン」を搭載しており、ほとんどの下級モンスターを一方的に討ち取れるメインアタッカーとして活躍していました。

 また「サイバー・ドラゴン」自体が特殊召喚効果を持つため、「ガジェット」と召喚権を潰し合わない点も評価できます。一度でもモンスターを戦闘破壊できれば「地砕き」と同等の働き、次のターンまで生き残ればそれ以上の仕事も望める強力なエースモンスターです。

 種族的なシナジーを活かし、「リミッター解除」が採用される場合もありました。こちらは元々【ガジェット】にも入り得る有力なサポートカードでもあったため、爆発力に特化する場合は3枚フル投入されることも少なくなかったほどです。

 これに最大限特化した型が【フラガジェ】であり、「デビル・フランケン」から「サイバー・ツイン・ドラゴン」「サイバー・エンド・ドラゴン」を呼び出し、攻撃力倍化によって速やかにゲームを終わらせるコンボは非常に恐れられました。

 実際に当時の環境でもこのギミックが猛威を振るい、ほどなく「リミッター解除」が制限カードに指定される結果にも繋がっています。もちろん、これ以外にも「リミッター解除」が規制されるに至った理由は存在していましたが、【サイドラガジェット】や【フラガジェ】の流行がその一因であったことは間違いないと言えるでしょう。

 これ以外の【ハイビートガジェット】としては、「悪魔のくちづけ」を採用した【キスガジェット】なども有名どころに含まれます。個人的には、それほど結果を残していた印象はない型でもあるのですが、一時期は妙に流行していた印象もある不思議な型です。

 攻撃力の高さを活かして攻めるという分かりやすいコンセプトから、万人に受け入れられやすい素直なデッキだったことがその理由なのかもしれません。

 

【代償ガジェット】 最古の【ガジェット】

 4つ目の型は【代償ガジェット】と呼ばれるタイプです。

 「血の代償」によって一気にガジェットを展開し、総攻撃をかけて素早くゲームを終わらせることを狙いとします。【ガジェット】の中では最も爆発力が高く、状況次第ではワンショットキルを仕掛けることも不可能ではありません。

 反面、事故を引き起こしやすいという不安定さを抱える型でもあり、構築にはかなりの精度が要求されます。場合によってはデッキ枚数をあえて40枚以上に増やすなど、通常のデッキ構築理論から外れた選択を取ることも十分に考えられるでしょう。

 また、この【代償ガジェット】は【ガジェット】の中では確認できる限り最古となる型でもあります。というのも、元々「ガジェット」の情報が出た時点から「血の代償」とのコンボが注目を集めており、実際に販売される前からデッキの型が考案されていたからです。

 つまり誕生前から使い方が考察されるほどのポテンシャルを秘めていたということであり、そうした事実からも「ガジェット」の持つ無限の可能性が見えてくるのではないでしょうか。

 

【当時の環境 2004年5~6月】

 このように、鳴り物入りとも言える形で参入してきた「ガジェット」ではありますが……意外なことに、実は当初から環境での活躍があったわけではありません。草の根的な部分においてはともかく、大々的に【ガジェット】として活躍し始めるのは2005年4月頃のことであり、それまでの10ヶ月ほどを潜伏したまま過ごしています。

 カードパワーの高さを考えれば異常とも言える状況ですが、これにはいくつかの原因がありました。

 1つ目の理由は単純で、当時の環境に【カオス】という手負いの怪物が生き残っていたからです。

 「ガジェット」がパワーカードであることは事実ですが、流石に【カオス】に追随するほどの強さは持っていません。2枚看板の最上級カオスはおろか、単体の性能は「カオス・ソーサラー」にも及ばないでしょう。

 こうしたパワーカードに「ガジェット」の力だけで対抗するのは至難の技です。安定性という面においては勝っている部分もありますが、少なくとも総合力では大きく水をあけられています。

 また、【カオス】だけではなく、【ノーカオス】【次元斬】に対しても不利をつけられていたことは否めません。

 これは2つ目の理由でもあります。一言で申し上げれば「環境に存在するパワーカードが多すぎた」からです。

 この時期は禁止カード制度も導入されたばかりであり、「第六感」を始めとする極悪カードが3枚積めるような恐ろしいゲームバランスが成り立っていました。というより、むしろ全く成り立ってはいないのですが、とにかくパワーカードが至るところで飛び交う環境が構築されており、ガジェットの持つ「調整された強さ」が上手く発揮されない状況にあったことは事実です。

 例えば【ガジェット】と最高の相性を持つ「炸裂装甲」は優秀なカードですが、あくまでも優秀止まりであり、「心変わり」にはカードパワーで劣ります。一方で、その心変わり」は【ガジェット】とそれほど噛み合うカードではなく、炸裂装甲」ほどには役に立つことはないでしょう。

 同様のことが他の多くのカードにも当てはまります。「第六感」「悪夢の蜃気楼」「ファイバーポッド」、これらは【ノーカオス】では必須カードとも言える扱いを受けていましたが、【ガジェット】に無理矢理採用してもコンセプトから浮いてしまうことは明らかです。

 つまり相手だけが禁止カードを使えるようなものであり、実質的にハンデ以外の何物でもありません。全く勝ち目がないとまでは言いませんが、率直に申し上げて純正の【ガジェット】では流石に力不足が過ぎる状況です。

 こうしたカードパワー格差のほかに、デッキスペースという制約も大きな課題として立ち塞がります。

 性質上、ガジェットトリオは複数枚採用しなければその真価を発揮することができません。つまりガジェットを取り込むだけでメインの6~9枠が消費されてしまうということであり、これはデッキ構築の観点から見れば非常に致命的なハンデです。

 要は「他のカードを9枚抜いてまでガジェットを積むスペースがない」ということになります。確かにガジェットは強いカードですが、必須カードによる苛烈な枠争いが繰り広げられる中、9枠もの広大なスペースを捻出することはおおよそ不可能な話でしょう。

 結局のところ、第3期の傷跡が色濃く残る2004年環境では【ガジェット】も上手く羽ばたくことができず、活躍の機会は2005年にまで持ち越すこととなりました。

 

【まとめ】

 遊戯王前半期の王者、【ガジェット】参入直後の状況については以上です。

 第4期当時としては破格とも言えるカードパワー、ポテンシャルを備えるモンスター群ではありましたが、流石に禁止カードが蔓延する環境を生き抜けるほどではなく、当初は目立たない位置に隠れていました。

 しかし、規制によって環境が整えられる2005年以降は主流デッキの一角として浮上するなど、大きく躍進を遂げています。その後も姿かたちを変えて年単位で活躍し続け、常に環境のどこかに存在の跡を残していたと言っても過言ではありません。

 補足となりますが、この「ガジェット」シリーズはかつては極めて入手困難なレアカードだったことでも知られます。需要の高さに反して「LIMITED EDITION 6」を最後に絶版となっており、一時期は3枚揃えるために福沢諭吉を持ち出さなければならないまでに暴騰していたほどです。

 その後、2006年9月14日販売の「ストラクチャーデッキ-機械の叛乱-」で再録が決まってからは安価に手に入るようになりましたが、それ以前の【ガジェット】に後光が差して見えていたプレイヤーも少なくないのではないでしょうか。

 ここまで目を通していただき、ありがとうございます。

 

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