ジェムナイト・パールがランク4のエースだった頃

2019年7月5日

【前書き】

 【第7期の歴史14 【超古深海王シーラカンス】が極悪TODデッキだった時代】の続きになります。ご注意ください。

 「シューティング・クェーサー・ドラゴン」の参戦によって【ジャンクドッペル】や【シーラカンス】などのシンクロデッキが躍進を遂げ、後期シンクロ時代における旗頭として名を馳せていくことになりました。特に【ジャンクドッペル】は【六武衆】とともに環境を代表するトップデッキに成長しており、以降のメタゲームもこれを基準の一つとして推移しています。

 新勢力の台頭を受けて環境の勢力図が塗り替わっていく中、直後のカードプール更新により更なるメタの変動が巻き起こることになります。

 

ジェムナイト・パール 2011年のランク4の星

 2011年4月26日、デュエルターミナル「-エクシーズ始動!!-」の稼働が開始しました。新たに30種類のカードが誕生し、遊戯王OCG全体のカードプールは4902種類に増加しています。

 エクシーズの名を冠していることからも窺えるように、優秀なエクシーズ関連カードの収録が多かったタイトルです。【代行天使】の火力面を支えた「ダイガスタ・フェニクス」はその筆頭ですが、一方で【ラヴァル】待望のメインエンジン「ラヴァルバル・ドラグーン」や、後に【聖刻リチュア】のキーカードを務める「イビリチュア・ガストクラーケ」など、エクシーズ以外の優良カードも目を引きます。

 とはいえ、当弾のプッシュがエクシーズモンスターに集中していたことは間違いなく、中でも「ジェムナイト・パール」の存在は一際輝きを放っていたのではないでしょうか。

ランク4/地属性/岩石族/攻撃力2600/守備力1900
レベル4モンスター×2

 テキスト僅か11文字とこれ以上なく刺激的なデザインに仕上がっており、遊戯王全体でもトップクラスに少ない情報量で構成されているカードです。レベル4モンスター2体でエクシーズ召喚できる疑似バニラアタッカーであり、このカードがエクシーズ黎明期におけるカードパワー設定の基準を務めたと言っても過言ではありません。

 実際、2011年環境においてはランク4エクシーズの筆頭アタッカーとして名を馳せており、特に「スターダスト・ドラゴン」「真六武衆-シエン」などの2500打点を狩れるという強みが高評価を受けていました。ポジションそのものはシンクロ期における「大地の騎士ガイアナイト」に近いカード(※)ですが、その実績の大きさはそちらとは比べ物になりません。

(※ただし、一時期は「ガイアナイトの悲劇」を連想するプレイヤーも少なくなく、1ヶ月後に攻撃力2800の凶効果持ちエクシーズが出るフラグではないかと戦々恐々されていたこともありました)

 もっとも、「ジェムナイト・パール」のカードパワーそのものは特別高いということはなく、あくまでも優良カードの域に収まる奥ゆかしいモンスターだったことは事実です。

 これは「ジェムナイト・パール」に限った話ではありませんが、エクシーズモンスターのステータスは大抵の場合素材となったモンスターの合計値を下回ることは避けられません。そのため、基本的にはエクシーズ効果を目当てにこれを呼び出すことになりますが、前述の通り「ジェムナイト・パール」は何の効果も持っていない疑似バニラモンスターです。

 つまり、やっていること自体は「レベル4モンスター1体をリリースし、もう片方のレベル4モンスターの攻撃力を2600にする(ただし効果は無効化)」ということに過ぎず、はっきり言って動きとしてはあまり強くはありません。むしろ除去でディスアドバンテージを負いやすくなる分だけ損をしているほどであり、何も考えずに使っても役には立たないカードと言えます。

 逆に言えば、状況をしっかり考えて使えば真っ当に活躍できるカードということでもあり、やがては環境の攻撃力ラインを定義づけるカードの1枚にまで大躍進を遂げることになります。

 

【代償ガジェット】台頭の兆し 元祖ランク4モンスターズ

 こうした「ジェムナイト・パール」全盛期の真っ只中において、その採用先の筆頭候補として浮上したのが【代償ガジェット】と呼ばれるデッキです。

 その名の通り、「血の代償」と【ガジェット】のシナジーに着目したデッキであり、2005年という古の時代から続く由緒正しきアーキタイプです。そのコンセプトの中核は「グリーン・ガジェット」「レッド・ガジェット」「イエロー・ガジェット」のトリオを連鎖的に並べていくことにありますが、これが「ジェムナイト・パール」を含めたランク4エクシーズと最高のコンビネーションを発揮することは言うまでもありません。

 「血の代償」のギミックが回っている場合、「ジェムナイト・パール」は実質的に「ライフコスト1000だけで出せる2600打点」に化けるため、さながら【代行天使】における「ガチガチガンテツ」のような活躍が期待できます。というより、ガジェットの連鎖が最大9回続くことを考えれば爆発力はそれ以上であり、コンボさえ決まればワンキルを狙うのも難しいことではありません。

 もちろん、コンボではなく単純にガジェット2体をランク4に変換するだけでも動きとしては十分に強力です。1ターンのタイムラグがあるとはいえ実質リソースの消費なしで出てくる2600打点は強烈の一言であり、単純なシナジーそのものは「マシンナーズ・フォートレス」や【TG】をも凌駕している部分がありました。

 言い換えれば、これまでは単体では脅威になり得なかったガジェットトリオが潜在的な戦闘力を内包するようになったということでもあり、事実上はサーチ効果持ちの【融合呪印生物】のようなカード群に変貌を遂げたことになります。相手視点では除去しても損、かと言って放置するとランク4に繋がってしまうというジレンマに苦しむモンスターであり、【ガジェット】のカードパワーはランク4エクシーズの参戦を受けて2倍にも3倍にもなったと言っても過言ではないでしょう。

 こうした【ガジェット】躍進の流れを支えたのは「ジェムナイト・パール」だけに限らず、同じく当弾から現れていた「イビリチュア・メロウガイスト」「ヴァイロン・ディシグマ」の2種も筆頭エクシーズとして活躍していました。もちろん、ランク4の開祖である「No.39 希望皇ホープ」も必須枠に収まっており、これらが2011年環境における【代償ガジェット】の基盤を形作っていたことは間違いありません。

 遊戯王OCGにおける「ランク4モンスターズ」の第一世代の誕生であり、これ以降数世代に渡って続くインフレの食物連鎖の最下層部分を背負うことになります。

 

【後編に続く】

 「ジェムナイト・パール」についての話は以上です。

 情報判明当初からその刺激的なデザインによって多くの脚光を浴びており、実際のトーナメントシーンにおいてもその注目に恥じない実績を残していくことになります。中でも2011年におけるランク4系の筆頭デッキである【代償ガジェット】とのシナジーは目を見張るものがあり、「ジェムナイト・パール」を語る上では切っても切れない関係にあったと言えるでしょう。

 しかし、エクシーズ黎明期におけるランク4の顔を務めていたのは「ジェムナイト・パール」だけではありません。むしろメタゲームへの影響という意味では「ジェムナイト・パール」以上に環境を動かしていた強烈な書籍同梱カードが同じタイミングで参入を決めていたのです。

 後編に続きます。

 ここまで目を通していただき、ありがとうございます。