【TG】(テックジーナス)全盛期到来 出張セットとしての流行

2019年6月28日

【前書き】

 【第7期の歴史9 遊戯王の歴史 2010年の総括】の続きになります。ご注意ください。

 2010年が終わりを告げ、遊戯王OCGは12度目の新年を迎えることとなりました。【インフェルニティ】に代表されるようにデザイナーズデッキへの露骨なテコ入れが随所に見られた時代であり、後に訪れる「9期」の予行演習を思わせる環境推移が起こっています。

 とはいえ、見た目ほど劣悪なゲームバランスが広がっていたわけではなく、全体を通して判断すれば比較的健全な形でメタが回っていた1年だったと言えるでしょう。

 シンクロ時代も次第に終わりが見えてくる折、ファイブディーズ最終弾となるレギュラーパックから強力な新人が姿を見せることになります。

 

TG ストライカーがパワーカードだった時代

 2011年2月11日、レギュラーパック「EXTREME VICTORY」が販売されました。新たに80種類のカードが誕生し、遊戯王OCG全体のカードプールは4756種類に増加しています。

 第7期出身パックの例に漏れず、カテゴリ単位のサポートカードの収録が豊富だったタイトルです。【荒行六武衆】を成立させた「六武衆のご隠居」や「紫炎の道場」といった環境クラスのカードはもちろん、【カラクリ】を実戦レベルの強さに引き上げた「カラクリ小町 弐弐四」や、一時期【メンタルマスター1キル】の土台を務めた「寡黙なるサイコプリースト」を筆頭とする各種【次元サイキック】の面々、変わったところでは【ワーム】の強さを3倍に引き上げたとも言われる「W星雲隕石」など、遊戯王でもよく知られる著名なカードを多数輩出していました。

 しかし、そんな中でも最大の注目を集めていたのは、やはり【TG】シリーズのカード群をおいて他になかったのではないでしょうか。

相手フィールド上にモンスターが存在し、自分フィールド上にモンスターが存在しない場合、このカードは手札から特殊召喚する事ができる。
フィールド上に存在するこのカードが破壊され墓地へ送られたターンのエンドフェイズ時、自分のデッキから「TG ストライカー」以外の「TG」と名のついたモンスター1体を手札に加える事ができる。

 上記は【TG】の中核をなすキーカードである「TG ストライカー」の当時のテキストです。サイバー・ドラゴン」などと同様の特殊召喚効果を持ったチューナーであり、単体でもシンクロ召喚のサポートをこなせる優秀なモンスターと言えます。

 さらに、一部の【TG】に共通する「破壊されたターンのエンドフェイズに後続をサーチする効果」も内蔵しているため、他のチューナーと比べて妨害にも比較的強かったという特徴があります。状況次第では一度限りの壁にしつつ「TG ラッシュ・ライノ」などのアタッカーに変換することもでき、基本的に単独では機能しにくいチューナーとしては破格の利便性を誇っていました。

 もちろん、逆に「TG ワーウルフ」などからこれをサーチすることもできたため、とにかく使い勝手の良さという意味では右に出るものはありません。シンクロサポート用のカードでありながらビートダウン要員として使っても普通に強いと言われていたほどであり、結果として本場である【TG】ではもちろん、他のデッキでも汎用シンクロギミックとして出張されるまでの地位を築き上げています。

 ただし、この頃はまだ「デブリ・ドラゴン」や【植物シンクロ】ギミックなどの強力なライバルが幅を利かせていたため、出張ギミックとしての有用性はそれほど見出されていなかったという背景も存在します。

 実際、「グローアップ・バルブ」や「ダンディライオン」、「ローンファイア・ブロッサム」といったパワーカード揃いのギミックと比べてしまえば流石に見劣りする部分があったことは否めません。そのため、これらが現役を務めていた2011年3月2011年9月環境ではその陰に隠れがちな状況にあり、トーナメントシーンでの活躍も散発的なものにとどまっていました。

 とはいえ、第7期当時の基準において「TG ストライカー」がパワーカードだったこと自体は間違いなく、時間経過とともに【TG】ギミックそのものの評価も次第に見直されていくことになります。

 また、これにより【TG】だけでなく【TG】と相性の良いデッキも再評価が進んでおり、中でも【ガジェット】と組み合わせた【TGガジェット】は非常に有名なアーキタイプです。単純に各種ガジェットを6シンクロに変えられるというだけでも既に強力ですが、何より「魔法・罠カードでモンスターをバックアップする」というデッキコンセプトそのものが【TG】の性質とも噛み合っていたことがこうした実績に繋がったと言えるでしょう。

 

【TG代行天使】の成立 元祖【白黒】系デッキ

 こうした【TG】出張ギミック流行の波に最も上手く適応したのは、前年末に現れていた新アーキタイプである【代行天使】でした。

 元々【代行天使】はシンクロ召喚とエクシーズ召喚を同時に使いこなせる【白黒】系デッキの開祖として有名ですが、それでも2011年当時のカードプールでは展開パターンの噛み合わせが若干悪かったことは否定できません。基本的に一度の召喚権からしか盤面を広げていくことができないため、創造の代行者 ヴィーナス」を召喚した場合はシンクロに繋げず、「神秘の代行者 アース」に至ってはそれだけでは何の展開にも繋がらずに棒立ちになってしまいます。

 しかし、ここに「TG ストライカー」を絡めた場合、創造の代行者 ヴィーナス」には5~9までのシンクロが、「神秘の代行者 アース」にはランク2エクシーズという選択肢が浮上します。低レベルのチューナーという特徴が二重の意味で噛み合っており、これがあったからこそ2011年9月以降の環境で【代行天使】がトップメタに立てたと言っても過言ではないでしょう。

 もちろん、「TG ストライカー」ほどではないにしろ「TG ワーウルフ」とも好相性であり、「創造の代行者 ヴィーナス」であれば「神聖なる球体」の特殊召喚に反応してランク3エクシーズに変換可能です。とりわけ「虚空海竜リヴァイエール」の使い勝手の良さは群を抜いており、マスター・ヒュペリオン」で除外した天使族モンスターを帰還させることで戦線維持と墓地コスト確保の両方をこなすことができるほか、この展開力を利用してワンキル(※)に持っていくことすらできました。

(※そのため、【TG代行天使】はワンキルデッキとしての側面も持っていたと言えます)

 また、逆に【TG】側から見た場合も【代行天使】とは相性が良く、具体的には「ガチガチガンテツ」を安定して立てられるという意味でシナジーを形成しています。

このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、自分フィールド上のモンスターの攻撃力・守備力は、このカードのエクシーズ素材の数×200ポイントアップする。

 後半の全体強化効果によって「TG ストライカー」の打点がリクルーターラインに、「TG ワーウルフ」の打点が準アタッカーラインに到達するため、後続サーチ効果と合わせて疑似的な【ガジェット】のように機能していたことがその理由です。

 「【TG】はそのまま殴っても強い」と言われていた所以がこれであり、【代行天使】における【TG】は他のデッキのそれよりも一段上の強さを発揮します。

 結果として生み出されたアーキタイプこそが世に言う【TG代行天使】であり、この成立以降は【代行天使】における主流型として名を馳せていくことになりました。

 

【カオス】の種としても優秀 自然と墓地に溜まる闇属性

 このように、【代行天使】とは最高のシナジーを形成していた【TG】でしたが、この出張ギミックが【代行天使】を中心に使われていたことにはもう一つ大きな理由が存在します。

 簡単に言えば、当時の【TG代行天使】は2011年9月の改訂で制限復帰を遂げることになるカオス・ソルジャー -開闢の使者-」を最も上手く使いこなせるデッキでもあったからです。

 ここでは「カオス・ソルジャー -開闢の使者-」の強さについては解説を省きますが、結論としてこれが2011年当時の基準においても壊れカードと言って差し支えない存在だったことは間違いありません。流石にかつてのようなアーキタイプの柱を務めるほどの絶対的な権威は失っていましたが、それでも「開闢を採用できること」がデッキの大きな強みとして考えられる程度には強大な影響力を持っていたことは確かです。

 翻って当時の【代行天使】は派生構築にあたる【カオス代行天使】の例にもある通り、明らかに「カオス・ソルジャー -開闢の使者-」を採用可能なデッキに該当します。光属性は言うに及ばず、闇属性についても「TG ワーウルフ」とそれをサーチできる「TG ストライカー」によって賄うことができ、これを安定してフィニッシャーとして機能させるのは難しいことではありません。

 なおかつ、【代行天使】は先述のように「ガチガチガンテツ」を軸にしたビートダウン戦法を取ることもできるため、サーチ効果を目当てに素材のまま【TG】を立たせておくことにも無駄が生じにくいという利点がありました。「TG ストライカー」で1000前後のライフを取った後に「TG ワーウルフ」を確保し、しかる後に「カオス・ソルジャー -開闢の使者-」で殴り込むというのは【TG代行天使】における黄金パターンの一つと言っても過言ではないでしょう。

 いずれにしても、この時期の【TG代行天使】が【カオス】の土台としても優れた適性を持っていたことは明らかであり、このことが間接的に【TG】出張ギミック流行の後押しとなっていたことは間違いありません。

 事実上、【代行天使】の隆盛とともに評価を高めていった遅咲きの出張ギミックであり、時代の流れに上手く乗ることに成功していた先進的なカード群だったのではないでしょうか。

 

純構築の【TG】の活躍? 【スキドレTG】の悲劇

 ちなみに、【TG】は出張ギミックとしての活躍が有名ですが、純構築であっても意外な実績を残していたことでも知られます。

 ……と言っても、実際には【スキドレバルバ】ギミックを軸に「TG1-EM1」「幻獣の角」などで下級TGをバックアップして戦う【メタビート】に近いコンセプトが主流であり、アニメのようにシンクロ召喚を主体とした構築が取られることはほとんどありませんでした。

 これは【TG】自体のサポートが少なかったことも理由の一端ですが、何より上記の出張ギミックの完成度が極めて高かったため、純構築ですら出張軸で組んだ方が強いという結論が出てしまったことによる結果です。中堅カテゴリが実質的な上位互換ギミックに淘汰されてしまうというのはOCGではあり触れた話ですが、流石に自分自身に負けるというのは前代未聞と言わざるを得ず、ある意味他のどのカテゴリよりも不遇なカテゴリだったのかもしれません。

 

【まとめ】

 【TG】及び【TG代行天使】についての話は以上です。

 2011年冒頭時点では【植物シンクロ】ギミックなどの存在もあり、出張セットとしては注目が薄い状況にありましたが、ひとたび有用性が見出されてからの躍進は著しく、最終的にはOCG環境を代表する汎用ギミックのポジションを確立するに至っています。その結果、2012年3月の改訂では「TG ストライカー」がいきなり制限カード指定を下されており、それだけ当時の【TG】ギミックが脅威を振り撒いていたと言えるでしょう。

 ここまで目を通していただき、ありがとうございます。