サウザンド・アイズ・サクリファイス現る 凶悪な盤面制圧力

2018年1月22日

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【前書き】

 【第2期の歴史20 意味不明の攻撃力 ゴブリン突撃部隊】の続きになります。特に、この記事では前中後編の中編の話題を取り扱っています。ご注意ください。

 

【ラスボス特権 絶大なボード・コントロール能力】

 「サウザンド・アイズ・サクリファイス」の当時のテキストは以下の通りです。

サクリファイス千眼の邪教神 このカードがフィールドにある限り、他のモンスターは表示形式を変更できず、攻撃もできない。相手モンスター1体の攻撃力・守備力を得る。この効果は1ターンに1度しか使えず、吸収モンスターは1体まで、対象モンスターは装備カード扱いとする。

 融合モンスターの1体で、儀式モンスターである「サクリファイス」と、攻守0のバニラである「千眼の邪教神」が素材に指定されています。非常に難しい召喚難易度を持つ一方、ステータスは攻守ともに0と最低値であり、その代わりに極めて凶悪な制圧効果を与えられていました。

 一見して効果テキストが込み入っており、一目見るだけで「とにかく複雑な効果を持っているらしい」ことだけは分かります。「攻撃力・守備力を得る」「吸収モンスター」など、第2期当時としてもテンプレートから外れた不安定なテキストが記されており、これだけで正確な効果を読み取るのは困難です。

 しかし、この「サウザンド・アイズ・サクリファイス」は原作漫画では王国編ラスボスが最後の最後に使用したモンスターであり、遊戯王屈指の知名度を誇るカードでもありました。当然その効果も広く知られており、そこから推測してテキストを解釈するプレイヤーが現れるのは自然な流れです。

 「最強サイクロン」しかり、そうした「アニメを参考にしたゲームの理解」は非常に問題を生みやすかったのですが、この時に限っては大きな騒動にはなりませんでした。

 遊戯王OCGとしては極めて珍しいことに、このOCG版「サウザンド・アイズ・サクリファイス」は原作版効果のほとんど全てを完璧に再現していたからです。

原作版サウザンド・アイズ・サクリファイス

 原作版効果を簡単にまとめると以下のようになります。

①:相手モンスターの行動を封じる効果。

 

②:相手モンスターを無限に吸収し、その合計のステータスを得る効果。

 

③:吸収モンスターにダメージを肩代わりさせる効果。

 ①の効果は、「表示形式の変更と攻撃宣言を封じる」という形で再現されています。ただし、相手だけでなく自分のモンスターも身動きが取れなくなってしまうため、他のアタッカーとの共存はできないことに注意が必要です。

 また、「ならず者傭兵部隊」などのモンスター効果を封じることもできません。とはいえ、元々原作でも「クリボー」の機雷化能力が原因で敗北しているため、むしろそうした弱点を忠実に再現していると捉えるべきでしょう。

 ②の効果は、「相手モンスターを装備カード扱いとして装備し、その攻守の数値分ステータスが上昇する」という形で再現されました。ルール的に矛盾する部分がなく、綺麗にOCGへと落とし込まれています。

 装備できる数は1体までと弱体化が入っていますが、原作のように無限に吸収可能では流石に強すぎるため、妥当な調整です。テキストにもその点がしっかりと明記されており、効果の誤解釈などの問題もそれほど起こっていません。

 ③の効果に関しては、記述スペースの都合もあってか残念ながら削られてしまっています。しかし、①の効果の存在から大きな欠点とはならず、あまり気にされることはありませんでした。

 ちなみに、現在ではエラッタによってこの効果も「戦闘破壊時に装備モンスターを身代わりにする」という形で再現されています。とことん公式に愛されているカードであり、まさに別格とも言うべき扱いです。当時の不安定なテキストに関しても、原作効果を可能な限り再現しようとしたことの裏返しとも取れるのではないでしょうか。

 さらに、カード自体のレアリティという面でも非常に優遇されており、遊戯王OCG史上初となる「アルティメットレアリティ」仕様のカードとして生まれてきています。いわゆるレリーフ加工が施されているため、とても紙製のカードとは思えないほどの芸術的な美しさを誇るカードに仕上がっていました。

 総じてラスボスの切り札にふさわしい力の入れ具合となっており、同じラスボス使用カードである「トゥーン」とは比較にならない好待遇を受けています。あるいは、OCG版「トゥーン」の評判が振るわなかった反動で、こうした特別扱いへと繋がっていたのかもしれません。

 

【サウザンド・アイズ・サクリファイス】

 公式のプッシュとプレイヤーの需要が噛み合い、「サウザンド・アイズ・サクリファイス」は非常に大きな人気を集めることになりました。

 現在、ネットで資料を調べる限りでは「当初はほとんど見向きされなかった」という意見が多いのですが、少なくとも私個人の周囲においては強い注目を集めていたモンスターです。その召喚条件の難しさから、誕生時点では環境の最前線で活躍するポテンシャルはありませんでしたが、大きく分けて3つの型の専用デッキが考案されています。

儀式召喚軸

 一つ目は儀式モンスターである「サクリファイス」を主軸に据えたタイプの構築です。

相手モンスター1体の攻撃力・守備力を得る。吸収モンスターがいる時、超過したプレイヤーダメージは相手プレイヤーも受ける。この効果は1ターンに1度しか使えず、吸収モンスターは1体まで。対象モンスターは「サクリファイス」の装備カード扱いとする。

 2000年4月20日、「Magic Ruler -魔法の支配者-」で誕生していた儀式モンスターです。「イリュージョンの儀式」によって儀式召喚することができます。

 「サウザンド・アイズ・サクリファイス」の前形態となるモンスターで、その融合素材の1体となっています。効果も多くの部分で共通しており、とりわけ「戦闘ダメージを相手にも押し付ける効果」は進化先にはない特有の性質です。

 全体的なカードパワーは進化先に譲っていますが、召喚自体は遥かに容易であり、デッキの構築難易度もそれほど高くありません。同年7月13日に「Pharaoh’s Servant -ファラオのしもべ-」で「センジュ・ゴッド」「ソニックバード」などの儀式サポートが現れていたこともあり、カジュアルな場では【儀式召喚】の一種として【サクリファイス】が使用されていたこともありました。

 そうしたデッキに「サウザンド・アイズ・サクリファイス」を混ぜたものがこの型となります。元から完成していたデッキにギミックを追加する格好となるため、調整はやや難しめとなるでしょう。

 特に、儀式召喚と融合召喚という2つの召喚方法を同時に取り入れなければならない関係上、デッキの構造的にかなりの無理がかかってしまいます。「融合」を1枚2枚挿す程度では逆に事故率が上がるだけであり、しっかりと土台から仕上げ直さなければなりません。

 そのため、物理的にデッキ枚数が40枚に収まり切らない可能性が高くなってしまいます。残念ではありますが、恐らくはどちらかに特化した方がデッキとしては安定するでしょう。

 おおむねファンデッキ的な要素が強く、どうしても「サクリファイス」と「サウザンド・アイズ・サクリファイス」を共演させたいなどの「やむを得ない理由」がない限り、避けた方が無難であるかもしれません。

融合召喚軸

 二つ目は【融合召喚】を下敷きに、いっそ「サウザンド・アイズ・サクリファイス」に完全特化してしまうという構築です。

 【融合召喚】(第1期)はそのデッキ名の通り、融合召喚ギミックを主軸に据えたコンセプトデッキとなっています。第1期終盤に「心眼の女神」を始めとする融合サポートカードが多数誕生したことがきっかけとなり、熱心なファンにより考案されました。

 第1期当時は「クリッター(Vol.6)」や「天使の施し」などの回転パーツを潤沢に投入していたため、その平和な外見からは想像もできないほどの爆発力を発揮することもありました。この時期はサーチャーにもエラッタが入り、さらにドローソースも規制を受けていることから爆発力は失いましたが、デッキ構築が不可能となったわけではありません。

 むしろ「早すぎた埋葬」「リビングデッドの呼び声」などの優秀な蘇生カードを獲得したことで、これまでとは別方向に強化を受けている格好です。一度正規召喚してしまえば何度でも蘇生することができるため、強力な融合モンスターを苦労して呼び出すことにも大きな価値が生まれています。

 特に「サウザンド・アイズ・サクリファイス」は再三触れたように「出せれば凶悪」なモンスターであり、デッキのフィニッシャーとして申し分ない性能を秘めています。除去耐性がなく、「サンダー・ボルト」などに対処されてしまうという欠点も、蘇生カードによる使い回しを前提とするのであれば大きな問題とはなりません。

 それどころか、蘇生する度に装備がリセットされるため、何度でも相手モンスターを吸収し直すことが可能です。場合によっては「自分から墓地へ送る」ことでロックを解除してしまうなど、他の型よりも自分の首を絞めにくい点も評価できます。

 融合素材の縛りの厳しさについても、「心眼の女神」などの融合素材代用モンスターを用いることによってある程度は緩和できるでしょう。正規の融合素材である「千眼の邪教神」は単体では全く役に立ちませんが、サーチャーによって必要な時にサーチできるため、ピン挿しにとどめることで事故率は最小限に抑えられます。

 完全に融合素材用と割り切ってしまうのであれば、「サクリファイス」の方を採用するのも面白い選択です。「センジュ・ゴッド」を経由することでアドバンテージを稼げるため、手札融合のリソース消費をカバーできます。

 ただし、その場合はハンデスなどで墓地に落とされるケースも考慮しておくべきでしょう。通常モンスターである「千眼の邪教神」と違って蘇生制限に引っかかるため、「墓地から釣り上げて融合素材にする」ルートを取ることができません。

 総評としましては、上記の儀式召喚軸と比べて全体的に安定しており、デッキとしての体裁は取れているという評価が当てはまるでしょうか。流石に【グッドスタッフ】などの強豪と張り合えるほどのデッキパワーはありませんが、カジュアルな場で楽しめる程度の実力は持っていました。

デビフラ軸

 最後は「デビル・フランケン」の踏み倒し効果で特殊召喚を狙う構築です。実際のところ、この型が最も現実的かつ実用的な使用方法となっています。

5000ライフポイントを支払う事で、自分の融合デッキからモンスターを1体フィールド上に出す事ができる。

 莫大なライフコストが要求されるとはいえ、本来召喚に大きな消耗を伴う融合モンスターを即座に呼び出せるというのは悪い取引ではありません。「デビル・フランケン」を棒立ちで晒してしまうコンボ共通の弱点も、「サウザンド・アイズ・サクリファイス」の攻撃抑制能力で自然とケアすることができます。

 どんなモンスターであっても表示形式にかかわらず吸収できるため、「青眼の究極竜」と違って確実にアドバンテージを取れる点が魅力です。上級モンスターを吸収できた場合は打点も確保でき、そのまま他のモンスターも戦闘破壊して更なるアドバンテージを稼げるでしょう。

 ただし、他の融合モンスターと同様に、この方法で出した「サウザンド・アイズ・サクリファイス」は蘇生制限に引っかかります。上記の融合召喚軸とは異なり蘇生による使い回しは不可能であり、一度除去されたらそれまでと諦めるしかありません。事実上は使い切りの除去+制圧札としての運用が主となるでしょう。

 しかし、この型の一番の魅力は、必要札が「デビル・フランケン」1枚だけという圧倒的な軽さにこそありました。例えば、【グッドスタッフ】などに1枚挿すだけでギミックとして成立します。

 元々、「デビル・フランケン」自体も【グッドスタッフ】で採用が検討される優秀なパワーカードです。汎用カードとしての立場を確立しているモンスターであり、理屈の上ではどんなデッキにも入れることができます。ライフコストにさえ折り合いを付けられるのであれば、「サウザンド・アイズ・サクリファイス」を実用レベルで活躍させるのは難しくないでしょう。

 問題があるとすれば、「デビル・フランケン」の数ある選択肢の内の一つとしての採用となるため、厳密には【サウザンド・アイズ・サクリファイス】ではなく【デビル・フランケン】に分類されてしまうという部分でしょうか。ゲーム上の問題はありませんが、ファンデッキとしては致命的と言える欠点なのかもしれません。

 とはいえ、この頃の【グッドスタッフ】ではライバルや「破壊輪(エラッタ前)」などの天敵が増えたこともあり、その「デビル・フランケン」も採用率を落としていたのは事実です。そのため、この「サウザンド・アイズ・サクリファイス」との遭遇率もそれほど高いわけではなく、全体的なカード評価も「デビル・フランケン」に帰属する格好となっていました。

 

【後編に続く】

 この時期の「サウザンド・アイズ・サクリファイス」に関する話は以上です。

 第4期に【変異カオス】のキーカードとして猛威を振るうことになるカードですが、当初はどちらかというとデビル・フランケン」の1パーツという認識が強く、活躍の機会も程々のところに落ち着いていました。ファンデッキなどではコンセプトの主軸に据えられることもありましたが、やはり環境クラスの地力を持っていたとは言えません。

 そんな「サウザンド・アイズ・サクリファイス」ですが、実は同パックで類似する効果を持ったカードも現れています。

 当時最高峰の攻撃ロックカード、「グラヴィティ・バインド-超重力の網-」の誕生です。

 後編に続きます。

 ここまで目を通していただき、ありがとうございます。

 

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