リクルーターの誕生と巨大化の影 扱いにくすぎるトゥーンモンスター

2018年1月3日

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【前書き】

 【第2期の歴史6 第1期絶版カードの再録パック アクアマドールくじ】の続きになります。ご注意ください。

 第1期初期に誕生したカードの再録パックが連続で販売され、それらのカードの入手難易度がやや下がる形となりました。

 とはいえ、大半のプレイヤーにとっては実の薄いカード群となっており、この時期は環境の変動もほとんど起こっていません。

 終わりの見えないハンデス地獄が続く遊戯王OCGでしたが、二ヶ月半にも及ぶ停滞の末に、遂に状況が動くこととなります。

 

【Pharaoh’s Servant -ファラオのしもべ-】

 2000年7月13日、「Pharaoh’s Servant -ファラオのしもべ-」が販売され、新たに52種類のカードが誕生しました。遊戯王OCG全体のカードプールは825種類となり、第2期突入から二度目のカードプールの更新がようやく成された格好となります。

 前弾と同じく、当弾にも優秀な新規カードが多数収録されており、凶作であった再録パックから一転して実入りの多い内容となっていました。

攻撃力 倍化と半減

 恐らく、この時に最も人目を引いていたカードは「巨大化」という装備魔法でしょう。

・自分のライフポイントが相手より下の場合、このカードは装備モンスター1体の攻撃力を倍にする。自分のライフポイントが相手より上の場合、このカードは装備モンスター1体の攻撃力を半分にする。その攻撃力とは装備モンスターの元々の攻撃力である。

 驚くべきことに、自分のライフが相手より低い場合、装備モンスターの攻撃力を2倍にするという豪快な効果を持っています。非常にインパクトのあるカードであり、当時は衝撃をもって受け入れられました。

 性能に関しては、「デーモンの斧」のような純粋な装備カードとは違い、やや尖ったバランスとなっています。

 もちろん、攻撃力を倍化させる効果が強力であることは言うまでもありません。下級アタッカーに装備させるだけでも打点負けすることは少なく、戦闘補助としては信頼できるカードです。

 しかし、自分のライフが相手より高い場合に攻撃力が半減してしまうデメリットの存在から、有利な場面ではむしろ足枷となってしまう欠点があります。

 つまるところ、このカードを起点として反撃に応じた場合、戦闘ダメージによってライフ差がひっくり返ってしまい、一気に装備モンスターの打点が縮んでしまう形となります。事実上モンスターを使い捨てているようなものであるため、アドバンテージの損失は非常に重いものとなるでしょう。

 ただし、こちらのライフが低い時に、相手モンスターに装備させて弱体化させるというテクニックも存在します。攻撃力が半減すれば大抵のモンスターは戦力外となるため、戦闘破壊することも難しくありません。

 しかしながら、そもそも純粋に戦闘補助として使うのであれば「デーモンの斧」で十分であり、そちらは安定して運用できる上に自己回収効果も付随しています。全体的にピーキーな性能と言わざるを得ず、上述したような真っ当な使い方を目的にデッキに採用されることはそれほどありませんでした。

 こうした事情から、「巨大化」は真っ当でない目的のために悪用されていく形となりました。

 ライフが逆転することで装備モンスターが弱体化するのであれば、一撃で相手のライフを0にしてしまえば良いという理屈です。自分からライフを削って無理矢理相手のライフを下回り、しかる後に大型モンスターに「巨大化」を装備させて殴るという、どちらかというと即死コンボよりの使い方が主流となっています。

 とはいえ、この頃は実際には一撃でライフが0になるケースは少なく、このコンボで大ダメージを与えた後、他のモンスターの追撃でとどめを刺すパターンが大半でした。

 逆に申し上げれば、将来的には一撃必殺を狙いに行くことに特化したデッキが現れるということでもあります。これをキーカードに据えた【デビフラ1キル】はあまりにも有名なのではないでしょうか。

【第2期の歴史10 デビフラ1キル 原初の後攻1キルデッキ】

リクルーターの誕生

 他に特筆すべき変化としては、リクルーターの誕生があります。

 一例として、「キラー・トマト」のテキストを以下に記します。

・このカードが戦闘によって墓地へ送られた時、デッキから攻撃力1500以下の闇属性モンスター1体をフィールド上に召喚(表向き攻撃表示。レベル5以上でも生け贄不要)してもよい。その後デッキをシャッフルする。

 戦闘破壊されて墓地へ送られた時、デッキから対応属性のモンスター1体を特殊召喚する効果を持っています。「キラー・トマト」の場合は闇属性です。

 戦闘で破壊されても即座に後続へと繋げることができるため、非常にアドバンテージを失いにくい強みがあります。また、リクルーター自身もリクルート範囲に含まれている関係上、自分自身を呼び続けることで粘り強く戦線を維持できるモンスターです。

 もちろん、攻撃力1500以下でさえあれば上級モンスターであっても呼び出すことができます。展開手段に乏しかった当時においてはその補助パーツとしての側面も併せ持っており、全体的にスペックの高いカード群となっていました。

 この時に誕生したリクルーターは「キラー・トマト」だけでなく、各属性対応の全6種が生まれています。いずれも属性部分が異なるだけで共通の効果を与えられていました。

 そのため、攻撃力1500という数値は「リクルーターライン」とされ、以降の環境では一つの基準として扱われていくことになります。この「リクルーター」という概念は現代にも引き継がれており、形を変えて環境に存在し続けている歴史の長いカード群です。

全体強化フィールド魔法

 リクルーターとは別方向の属性関連カードとして、全体強化効果を持った各種フィールド魔法もこの時に現れています。

・全ての闇属性モンスターの攻撃力は500ポイントアップ! 守備力は400ポイントダウン!

 上記は「ダークゾーン」のテキストになります。全ての闇属性モンスターの打点を500上昇させる効果を持ち、下級アタッカーの攻撃力を上級ラインまで押し上げることができます。

 こと戦闘においては相当の影響力を発揮するカードですが、この「全て」というのが曲者で、相手モンスターも含めて強化してしまうという大きな問題点を抱えていました。特に、【グッドスタッフ】においてはカード選択が似通ってしまう傾向にあったため、お互いに強化が入って結局打点が動かないままというケースも少なくありませんでした。

 結果的にフィールド魔法を張った側がカード1枚分損をする形となる以上、少なくとも当時の【グッドスタッフ】で使われることはなかったと記憶しています。

 専用デッキを組むのであればその限りではないのでしょうが、その場合はフィールド魔法を引けなければ総崩れとなってしまうなど、デッキコンセプトとして成立させるのも難しい状況となっていました。

ティウンティウントゥーン

 しかし、上記のフィールド魔法カードも、ここで誕生した「トゥーン」シリーズのカード群に比べればまだ救いようがありました。

 トゥーンモンスターについて詳しく触れる前に、まず一例として「トゥーン・マーメイド」のテキストをご覧ください。

・場に自分の「トゥーン・ワールド」がないと召喚不可。召喚ターンには攻撃不可。500ライフ払わなければ攻撃不可。「トゥーン・ワールド」が破壊された時このカードを破壊。相手がトゥーンをコントロールしていない場合このカードは相手を直接攻撃できる。トゥーンが存在する場合、相手のトゥーンを攻撃対象に選ばなければならない。

 非常に込み入った内容の効果となっていますが、要するにトゥーン・ワールド」というカードが無ければ使いものにならないモンスターです。「トゥーン・ワールド」が張られていなければ場に出すことすらできず、更には「トゥーン・ワールド」が破壊された瞬間に自滅してしまう超虚弱体質となっています。

 では、肝心の「トゥーン・ワールド」の性能はどうなのか、ということですが……結論を先に申し上げますと、非常に苦しいと言わざるを得ないカードでした。

・プレイされた時に1000ライフポイントを払う。さらに、毎回自分のスタンバイフェイズに500ライフポイントを払わなければ、このカードは破壊される。このカードがフィールドから墓地に送られた時、それまで払った分のライフポイントを自分のライフポイントに加算する。

 当時の「トゥーン・ワールド(エラッタ前)」のテキストです。この時のものはエラッタ前となっており、現在のものとは効果が異なっています。

 こちらもまた複雑なテキストが記述されていますが、ご覧の通り自分に損になることしか書かれていません。メリットとなる効果が一切無いにもかかわらず、毎ターン維持コストとしてライフを吸われ続けるというとんでもないカードです。

 墓地へ送られれば払った分のライフが戻ってくるため、一応の救済措置は用意されていると言えなくもないでしょう。しかし、その場合はトゥーンモンスターが全滅してしまう上に、そもそもこのカード1枚分のディスアドバンテージを負ってしまっており、大損していると言うほかありません。

 そして、とどめとなるのはトゥーンモンスターそのものの性能の低さです。

 これほどまでに苦労して得られるものは単なるダイレクトアタック能力と見返りに乏しく、しかも攻撃の度に更にライフコストを要求される始末です。とことんプレイヤーを苦しめる仕様となっており、遊戯王OCG全体で見ても扱いにくさで右に出るカテゴリはそうありません。

 現在では専用サポートカードも増え、ファンデッキとしての体裁を取れるだけの地力は獲得しています。しかし、この時期に限って申し上げれば「デッキとして成立しない」レベルの性能だったという評価を付けざるを得ないでしょう。

 このように、OCGでは悲しい性能のトゥーンモンスターではありますが、原作漫画では「王国編」のラスボスが使用したカード群であり、その反則的な効果で主人公を危ういところまで追い詰めています。

 流石にそのままの性能でOCG化することは難しかったと思われますが、それを踏まえてもあまりにも厳しい弱体化であると言わざるを得ません。原作のトゥーンモンスターに憧れてカードを揃えたは良いものの、その扱いにくさに頭を抱えたプレイヤーも少なくなかったのではないでしょうか。

後編へ続く

 さて、ここまでは比較的平和な出来事について触れてきました。

 しかしながら、この時に起きた変化は平和なことばかりではありません。上記の真っ当なカード群とは異なり、「ハンデス三種の神器」と同等クラスの禁止級カードが現れています。

 遊戯王屈指の凶悪なリバース効果を持つ、「サイバーポッド」の誕生です。

 後編に続きます。

 

【まとめ】

 2000年7月13日に起こった出来事の内、明るい部分に関することは以上になります。

 倍化半減という特殊な効果を持つ装備魔法や、リクルーターなどの革新的なデザインのモンスター、ピーキーながらも面白い性質を与えられたトゥーンモンスターなど、様々なカードが同時期に生まれ、当時のカードプールはにわかに色付く形となりました。

 しかし、とあるデッキの台頭により、環境の方は様々な意味で混乱に染まっていくことになります。

 ここまで目を通していただき、ありがとうございます。

 

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