ゴブリン突撃部隊 意味不明の攻撃力(第2期基準)
【前書き】
【第2期の歴史19 三幻神降臨 バージョン別商法と捨てられた良心】の続きとなります。ご注意ください。
ゲーム同梱カードから「破壊輪(エラッタ前)」「ブラッド・ヴォルス」などのパワーカードが誕生し、【グッドスタッフ】が順当に強化を積み重ねました。
しかし、様々な理由からプレイヤー泣かせの収録方法となっており、一般的なプレイヤーには中々手が届かない状況に陥ってしまっています。在庫数そのものが少ないためにシングル買いも厳しいものがあり、他のプレイヤーと競い合うようにショップに張り込むプレイヤーすら居たほどです。
争奪戦の様相を呈し始める白熱した状況をよそに、その1週間後にレギュラーパックが販売されることになります。
【千眼の魔術書 独特な収録カード達】
2000年12月14日、「Thousand Eyes Bible -千眼の魔術書-」が販売されました。新たに52種類のカードが誕生しました。遊戯王OCG全体のカードプールは962種類となっています。
非常にトリッキーな性能のカードが多数収録されていたことで有名なパックで、当時のプレイヤーにも大きな驚きをもって受け入れられました。
規格外の打点 ゴブリン突撃部隊
その筆頭は、まず間違いなく「ゴブリン突撃部隊」というモンスターカードに他ならないでしょう。
このカードが攻撃したら、バトルフェイズ終了時に守備表示にする。次のターンこのカードの表示形式は変更できない。
攻撃した場合、そのバトルフェイズ終了時に守備表示になる効果を持った下級モンスターです。さらに、次のターンは表示形式を自力で変更できないという制約もついてきます。当時としては非常に目新しい効果であり、多くのプレイヤーの興味を引き付けました。
しかし、このカードの真の特徴はその極端なステータスにこそあります。なんと攻撃力が2300と上級モンスター並の数値となっており、下級モンスターとは到底思えない強烈な打撃力を持っていました。
反面、守備力は0と最低値であり、「聖なる魔術師」にすら戦闘破壊されてしまう超虚弱体質です。攻撃後は2ターン先まで守備表示に固定されてしまうデメリットを考慮すれば、事実上は使い切りのアタッカーとして見るべきモンスターでしょう。
とはいえ、この時期のデメリットアタッカーの代表格は「ダーク・エルフ」や「地雷蜘蛛」など、いずれもライフポイント的な負担が重いモンスターばかりとなっていました。当時の【グッドスタッフ】ではライフコストの消費がかさむカードは思いのほか多く、結果的にそれらと競合してしまう状況は少なくありません。
そのため、直接的なコストがかからない「ゴブリン突撃部隊」はローリスクミドルリターンの優良カードとされ、高い評価を受けることになります。
使い切りと考えた場合であっても、相手の「ヂェミナイ・エルフ」を戦闘破壊しつつ一度限りの壁になれる、というのは決して悪い取引ではありません。【グッドスタッフ】ではもちろん、他のデッキでも汎用的に運用可能な期待の新人として高い採用率を誇っていた強力なアタッカーです。
半上級モンスターの開祖 魔導ギガサイバー
上記の「ゴブリン突撃部隊」に関連する「召喚が容易な高打点モンスター」として、「魔導ギガサイバー」という上級モンスターも現れています。
自分のフィールド上モンスターが相手より2体以上少ない場合、このカードは生け贄なしで召喚できる。
特定の条件を満たすことにより、ノーコストで召喚できる特殊な上級モンスターです。上記テキストには「召喚」と記されていますが、当初より「特殊召喚扱いである」という裁定が出ていました。
いわゆる「半上級モンスター」であり、その開祖とも言えるモンスターでもあります。上級モンスターでありながら下級モンスターのようにも振る舞うという性質から、このように呼称されるようになりました。
性能面で評価する場合、召喚権を行使せずに高打点モンスターを用意できるため、不利な盤面における切り返し札として機能する優秀なカードです。召喚条件とも噛み合っており、また当時はモンスターの展開手段もそれほど速くなかったことから、自身の効果で展開力を補強できる切り返し札として注目を集めました。
しかし、この「魔導ギガサイバー」は攻撃力が2200と、上級モンスターとしてはかなり低めの数値です。それ自体は致命的ではありませんが、メタゲーム的な観点においては大いに問題があり、具体的には同期のアタッカーである「ゴブリン突撃部隊」に戦闘破壊されてしまいます。
「下級モンスターに戦闘破壊される上級モンスター」という図式であり、非常に厳しい減点ポイントであると言うほかありません。どちらも「黒き森のウィッチ(エラッタ前)」でサーチできるという点が更に足を引っ張り、扱いやすさという面でも「ゴブリン突撃部隊」に軍配が上がってしまうでしょう。
結果として、「ギガサイバーを使うくらいならゴブリンを使う」という考え方が広く浸透してしまうことになり、残念ながら当時の環境では目立った活躍をすることはできませんでした。
不確定カウンター マジック・ドレイン
もちろん、この時に現れた優良カードはモンスターばかりではありません。
新たな境地のカウンター罠カード、「マジック・ドレイン」の誕生です。
相手が魔法カードをプレイした時に発動してもよい。相手は手札から魔法カードを1枚捨てなければ、その魔法の発動を無効にし、それを破壊する。
「マジック・ジャマー」と同様に、魔法カードの発動を無効にするという分かりやすい効果を持っています。発動にコストがかからないため、アドバンテージを失わないのが強みです。
しかし、相手が「手札から魔法カードを捨てる」ことを選んだ場合、このカード自身の効果を無効にされてしまう欠点があります。言い換えれば、相手に対して「発動した魔法カード」か「手札の魔法カード」のどちらか片方を犠牲にさせる効果であり、外見に反して通常のカウンター罠とは大きく性質が異なっていました。
発動した時点でほぼ確実に魔法カード1枚とのトレードを行えますが、最終的な決定権が相手にある以上、常に狙った効果を発揮できるとは限りません。例えば、その状況で最も必要ない魔法カードを捨てられた場合、非常に損な取引を行うことになってしまいます。
このように、状況によって「被害が少ない方」を選ばれてしまう可能性が高く、何も考えずに使って強いカードとは言えません。単純に魔法カードを無効化したい場合、素直に「マジック・ジャマー」を使った方が良いでしょう。
ただし、相手の手札に魔法カードが存在しない場合、当然このカードの効果を無効にすることはできなくなります。その場合はノーコストの「マジック・ジャマー」となるため、そうしたシチュエーションでは非常に高いパフォーマンスを発揮するカードです。
相手の手札が少ないほどその確率は高くなり、0枚では確実に無効にできます。ハンデスカードと組み合わせて使うことで、安定した効力を発揮できるようになるでしょう。
しかし、この時期は「王宮の勅命(エラッタ前)」という強大すぎるライバルの存在があり、評価はそれほど振るっていません。このカードが評価され始めるのは「王宮の勅命(エラッタ前)」が制限カードに指定されて以降の話であり、それまでは収納ファイルで静かに眠り続けていました。
【中編に続く】
「Thousand Eyes Bible -千眼の魔術書-」で誕生したカードの内、比較的素直な性能のカードについては以上です。
3枚とも当時のカードとしては変わり種ですが、このパックの中ではまだ分かりやすい部類に含まれていました。カード単体で見た性能も安定しており、特に「ゴブリン突撃部隊」は【グッドスタッフ】の常連メンバーを長い間務めたほどの優等生となっています。
しかし、この時の本命はこうした「素直に優秀なカード」達ではありません。トリッキーなパックの目玉となるカードもまた、トリッキーな効果を与えられていました。
パック名にもなっている融合モンスター、「サウザンド・アイズ・サクリファイス」の誕生です。
中編に続きます。
ここまで目を通していただき、ありがとうございます。
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