魂を削る死霊 最強の壁&ハンデスアタッカーと言われた時代

2018年2月24日

【前書き】

 【第3期の歴史1 第3期スタート 世界統一フォーマット導入】の続きになります。ご注意ください。

 第3期の開始と共に行われた世界統一フォーマットの導入は、間接的に遊戯王OCGのゲーム性の発展に寄与しました。単純にテキストの記述可能量が増えたというだけの話ではなく、文字数の関係で効果を記述できないケースが減り、結果的に開発側によるゲームデザインの自由度が大きく広がったからです。

 もちろん、カードの外見的にもスマートな見た目となり、PS-21版の「トゥーン・マーメイド」のように無理にテキストを凝縮する必要がなくなっています。また、効果の記述にもある程度共通の文章が使用されるようになったことで、効果の誤解釈が以前と比較して格段に起こりにくくなりました。

 流石に現在ほど明確なテンプレートが完成しているわけではありませんでしたが、少なくとも第2期に比べれば改善されていたのは確かです。原作ファンのプレイヤーの中には、「溶岩魔神ラヴァ・ゴーレム」の複雑な効果が再現されていることに衝撃を受けた方も少なくなかったのではないでしょうか。

 

【新たなる支配者 第3期最初のパック】

 2002年5月16日、「新たなる支配者」が販売されました。55種類の新規カードが誕生し、遊戯王OCG全体のカードプールは1325種類に増加しています。

 前書きで少し触れた通り、非常に革新的な効果を与えられたカードが多数現れたパックです。「城之内ファイヤー」で有名な「溶岩魔神ラヴァ・ゴーレム」を筆頭に、「大逆転クイズ」や「黒蛇病」、「タイムカプセル」など、第2期フォーマットでは文字数的にデザインできなかったと思われる複雑なカードが連続して誕生しています。

 

通称「たけし」 戦闘破壊耐性持ちモンスターの開祖

 その中でも最も際立った特徴を持っていたのは、何と言っても「魂を削る死霊」という下級モンスターに他なりません。

このカードは戦闘によっては破壊されない。魔法・罠・効果モンスターの効果の対象になった時、このカードを破壊する。このカードが相手プレイヤーへの直接攻撃に成功した場合、相手はランダムに手札を1枚捨てる。

 攻守300/200とステータスこそ貧弱ながら、なんと戦闘によって破壊されないという極めて個性的な耐性を与えられています。現在でこそ有り触れた効果ですが、2002年当時としては革命的な効果であり、遊戯王における戦闘破壊耐性持ちモンスターの開祖にあたる存在です。

 単純に戦闘に対しては無敵の壁となれるため、「岩石の巨兵」などのステータス頼りの壁モンスターとは比較にならない硬さを発揮します。低ステータスゆえにサーチ・リクルートが利きやすいのも魅力で、そうした取り回しの良さも壁モンスターとしての信頼性を高めていることは言うまでもありません。

 流石に効果による除去には無力ですが、それは逆に「相手に除去カードの消費を強いる」ことができる強みでもあります。壁モンスターとして1回分のバトルフェイズをやり過ごしたのち、最終的に除去カードと1:1交換するというのは決して悪い取引ではありません。

 ただし、何らかの効果の対象に取られた場合に自壊してしまうデメリットを抱えているため、あまり過信しすぎるのは危険です。「収縮」などの単体強化カードはもちろん、「攻撃の無力化」などに巻き込まれた場合でも自壊してしまいます。

 とはいえ、1:0交換で自滅してしまうというのは実際にはそれほど遭遇率が高いシチュエーションではなく、気にしすぎる必要はありません。総合的には従来の壁モンスターを遥かに凌駕する性能を誇る、まさに最強の壁モンスターだった存在です。

 

ハンデスアタッカーとしても活躍 ビートダウンの必須枠

 さらに、「魂を削る死霊」の強みはこうした場持ちの良さだけではありません。「首領・ザルーグ」と同様、ハンデス効果を持ったモンスターでもあったからです。

 本家と違って直接攻撃に成功した場合にしかハンデス効果を使用できませんが、元々戦闘に耐えうるステータスではないため、実質的には無いも同然の違いです。基本的には「八汰烏」と同じく、除去で場を空けてダイレクトアタックを狙っていくことになるでしょう。

 また、「首領・ザルーグ」には「ヂェミナイ・エルフ」などの標準アタッカーに戦闘破壊されてしまう弱みがありましたが、このカードの場合は同じ状況でも生き残ることができます。状況次第ではサンドバッグとして逆利用されてしまうースもありますが、多くの場面では「首領・ザルーグ」以上に逆境に強いモンスターです。

 モンスターを残せる点も重要で、手札に上級モンスターを抱えている場合、生け贄召喚に繋げて反撃の起点とすることもできます。当時はゲームスピードの関係上、一旦不利になってからの上級モンスターの展開が難しかったため、そうした面でも場持ちの良さが強みとして現れている格好です。

 加えてアンデット族であるため、「ピラミッド・タートル」のリクルートにも対応しています。それ自体も優秀ですが、何よりもこの時期に流行していたヴァンパイア・ロード」とギミックを共有できることが強く、次第に当時の必須ギミックとして浸透していくことになりました。

 総評としましては、【トマハン】はもちろん、【八汰ロック】などの【グッドスタッフ】系デッキにおいても採用されていた非常に優秀なモンスターです。いくつかの弱点こそありますが、当時有数のパワーカードであったことは疑いようもなく、将来的にはビートダウンデッキ全般の必須枠に近いポジション(※)すら築き上げています。

(※その結果、第5期初頭頃に制限カード行きとなり、以降4年半に渡ってその位置にとどまり続けています)

 現在では環境の変化によって第一線からは退いていますが、遊戯王前半期を中心に極めて長い間環境で活躍し続けたモンスターの1体です。戦闘破壊耐性という能力をゲームシステムとして浸透させた第一人者でもあり、そういった意味でもまさしく遊戯王OCGの歴史を動かしたモンスターと言っても過言ではないのではないでしょうか。

 

サンダー・ブレイク 「万能除去」の開祖

 上記の「魂を削る死霊」のように複雑な効果を持っていたわけではありませんが、同等クラスに強力なカードとして「サンダー・ブレイク」もこの時に誕生しています。

手札からカードを1枚捨てる。フィールド上のカード1枚を破壊する。

 カードの種類、表裏を問わず、ただカード1枚を破壊するという効果を持った極めてシンプルな除去カードです。まさに「万能除去」の呼び名がふさわしい効果であり、実質的にはその開祖に当たります。

 罠カードゆえにフリーチェーンで撃てる点も強みの一つに数えられるでしょう。相手の動きに合わせて的確な対処を行えるため、これまでの除去とは一線を画す汎用性の高さを発揮します。引いたターンに発動できない即効性のなさは若干気にかかりますが、それを踏まえても十分に優秀なカードと言えるのではないでしょうか。

 唯一にして最大の欠点は、発動に手札コストがかかってしまうという点です。基本的に2:1交換の損から抜け出せない以上、考えなしに採用できるカードではありません。

 とりわけこの時期は【八汰ロック】の全盛期であり、また【トマハン】も流行し始めているなど、全体的に手札破壊色の強い環境だったことも向かい風となります。コストが負担となるどころか、最悪コストすら払えず完全に腐らせてしまうケースも珍しいことではありません。

 

手札コスト筆頭 キラー・スネークとの共演

 いま一つ振るわない評価の中、最高の相棒として浮上したのが「キラー・スネーク(エラッタ前)」でした。

 2000年7月13日、「遊戯王デュエルモンスターズⅢ 三聖戦神降臨」から現れたモンスターです。エラッタ前のデザインであり、現在のものと比べて大きく利便性で優っています。

 その圧倒的なアドバンテージ生成能力から【キャノンバーン】(第2期)においては中核カードとなり、遂には当時の世界大会を制してしまったほどの存在です。

 こうした流れもあって2000年11月1日には制限カードに指定されていましたが、カードプールの変化から2002年1月1日に無制限カードに制限解除されており、この時期は3枚積むことができました。

 つまりコンスタントに手札コストとして活用できる状況にあり、「サンダー・ブレイク」のパートナーとしても申し分ない働きが期待できます。また、性質上ハンデスに対しては滅法強いため、【トマハン】への有力な対策となり得る事実も見逃せません。

 このように、手札コストの問題さえ解決されてしまえば「サンダー・ブレイク」に残るのは強烈な除去性能という強みだけです。ほぼどんな状況でも腐ることがなく、当時のカードプールでは並ぶものがない最強の万能除去として機能します。

 

悪夢の蜃気楼とも好相性 「蜃気楼サイク」の更なる流行

 加えて、当時流行していた「悪夢の蜃気楼」との相乗効果も侮れないものがあります。

 「サイクロン」とは違い3:4交換と見返りはそれなりですが、「できる」と「できない」では大きく違うというのはカードゲームの常識です。これによって「悪夢の蜃気楼」がさらに使いやすくなり、結果的に「蜃気楼サイク」セット自体の採用率もより一層向上するなど、「サンダー・ブレイク」の参戦が与えた影響は計り知れません。

 面白いことに、この「悪夢の蜃気楼」は上記の「キラー・スネーク(エラッタ前)」とも一定のシナジーを形成します。自動サルベージによってディスカードを相殺できるほか、スタンバイフェイズ中は何度でもサルベージ効果が発動するため、以下のように少々奇妙な現象が発生するからです。

 

①:スタンバイフェイズに「キラー・スネーク(エラッタ前)」のサルベージ効果が発動する。

 

②:「悪夢の蜃気楼」のランダムディスカードに「キラー・スネーク(エラッタ前)」が巻き込まれる。

 

③:まだスタンバイフェイズ中であるため、再度「キラー・スネーク(エラッタ前)」のサルベージ効果が発動する。

 

 ランダムディスカードゆえに確実に狙えるわけではありませんが、上手く決まれば「天使の施し」とのコンボに匹敵するアドバンテージが得られるでしょう。状況次第では悪夢の蜃気楼」を使い捨てずに維持することを考えても良いほどです。

 ちなみに、「サンダー・ブレイク」をスタンバイフェイズに発動すればこれと同じ現象が起こります。上記に比べれば見返りはささやかですが、覚えておいて損はないでしょう。

 こうした悪用法が考え出されたためか、第3期最初の制限改訂では「キラー・スネーク(エラッタ前)」が再び制限カードに逆戻りしています。また、同じタイミングで「悪夢の蜃気楼」そのものも制限カード指定を受け、上記のドローコンボを狙って成立させることは非常に困難になりました。

 一方、この両者の懸け橋となっていた「サンダー・ブレイク」は手付かずで生き残っていますが、相棒2人を同時に失ったことで上述の欠点が浮き彫りになり、次第に環境での存在感を喪失していっています。

 もちろん、将来的には何度も環境に浮上しているカードではありますが、第3期中に限って言えば一時的に姿を消していたと言えるでしょう。

 

【中編に続く】

 「新たなる支配者」に収録されていたカードのうち、主に【八汰ロック】や【トマハン】で使われたカードについては以上です。

 2枚とも環境クラスの強力なカードであり、とりわけ「魂を削る死霊」のカードパワーの高さは尋常ではありません。「サンダー・ブレイク」の方は他のカードとの組み合わせによって浮上している形ですが、こちらは純粋にカード1枚の性能だけで上位へと食い込んでいます。

 それに加えて「ピラミッド・タートル」とのコンボも強さを補強しているなど、まさに鬼に金棒の状況と言えるのではないでしょうか。

 しかしながら、当パックに収録されていたのはこうした優良カードだけではありません。「突然変異」や「名推理」など、コンボデッキを中心に使用される独特なカードも現れていました。

 中編に続きます。

 ここまで目を通していただき、ありがとうございます。