ヴァンパイア・ロード 第2期最強格の上級アタッカー
・前書き
・海馬ストラク 必須カードの再録と新たなパワーカード
・除去耐性持ちのアタッカー ヴァンパイア・ロード
・専用デッキ【ヴァロン】系の成立 出張による活躍も
・当時の環境 2002年1月24日
・まとめ
【前書き】
【第2期の歴史41 制限改訂2002/1/1 手の施しようがない暗黒時代】の続きとなります。ご注意ください。
制限改訂によって【八汰ロック】【ラストバトル!】に対して圧力がかけられたものの、もはや焼け石に水と言える状況であり、期待に沿うほどの効果は上げられませんでした。
半年以上前から続く【宝札エクゾディア】の脅威に加え、前年12月の暮れに現れた【現世と冥界の逆転】も徐々に知名度を高め始めており、遊戯王OCGはドローロックと先攻1キルに支配される「闇のゲーム」と化していくことになります。
一方、そうして次第に重くなる空気に活を入れようとするかのように、原作キャラクターをテーマに据えたストラクチャーデッキが販売されました。
海馬ストラク 必須カードの再録と新たなパワーカード
2002年1月24日、「STRUCTURE DECK-海馬編-」が販売されました。全48種類のカードが収録されており、うち2枚が新規カードとなります。
同時期に現れていた書籍同梱カードも含め、1月中に誕生した新規カードは計5枚です。遊戯王OCG全体のカードプールは1212種類に微増しました。
非常に多くの必須カードを再録していたことで有名なストラクチャーデッキで、とりあえずこれを3箱揃えれば【グッドスタッフ】が組めたと言っても過言ではありません。とりわけ「ブラッド・ヴォルス」と「破壊輪(エラッタ前)」はゲーム同梱カードゆえに入手が難しく、ある程度カードを揃えているプレイヤーにとってもありがたい内容となっていました。
除去耐性持ちのアタッカー ヴァンパイア・ロード
しかし、この時のストラクチャーデッキの目玉カードはそうした再録カードではありません。
第2期屈指の優良アタッカー、「ヴァンパイア・ロード」の誕生です。
このカードが相手プレイヤーに戦闘ダメージを与える度に、カードの種類(モンスター、魔法、罠)を宣言する。相手プレイヤーはデッキからその種類のカード1枚を選び、墓地に送る。また、このカードが相手のカードの効果で破壊され墓地に送られた場合、次の自分のスタンバイフェイズにフィールドに特殊召喚される。
自身が戦闘ダメージを与える度に相手のデッキのカードを墓地へ送る効果と、相手の効果で破壊された場合に自己再生できる効果の2種類の効果を与えられています。1つ目の効果は取り立てて優れているわけではありませんが、2つ目の効果は第2期当時としては最高クラスの性能です。
単純に考えても「効果破壊が通じない上級モンスター」であり、その有用性はもはや語るまでもありません。当時は上級モンスターへの対処には除去カードを用いることが多く、その定石が崩されるというだけで対処法が大きく狭まってしまいます。
とりわけ当時は【八汰ロック】の全盛期であり、「八汰烏」の攻撃を通すために大量の除去がデッキに積まれるのがスタンダードな構築でした。そのため、相対的にこの除去耐性が強烈に作用する格好となり、一躍必須カードとしての立ち位置を確立していくことになります。
場合によっては「人造人間-サイコ・ショッカー」以上に優先されるケースすらあり、ほぼ固定状態だった上級モンスターの採用枠に変化が生じ始めた形です。惜しむらくは採用先が【グッドスタッフ】ではなく、暗黒時代の象徴である【八汰ロック】であったということでしょうか。
ただし、攻撃力は2000と上級ラインを大きく下回っているため、戦闘破壊に弱い点には注意しなければなりません。
最低限下級アタッカーラインの1900を超えているとはいえ、デメリットアタッカーには容易に突破されてしまう程度の数値です。「ゴブリン突撃部隊」や「ダーク・ヒーロー ゾンバイア」など、警戒すべきカードは一定数存在しています。
また、この時期は「ニュート」が猛威を振るっていた関係上、弱体化効果によって打点を1500まで下げられ、後続で処理されてしまうケースも少なくありません。その場合は下級モンスターとの1:1交換となるため、非常に損な取引を押し付けられてしまうことになります。
もちろん、効果破壊された場合も自己再生までに若干のタイムラグが生まれる以上、復活前に勝負を決められることも起こり得るシチュエーションの一つです。こうした「押し切り戦法」は「破壊輪(エラッタ前)」などで発生しやすく、言い換えれば「人造人間-サイコ・ショッカー」を使う場合は起こり得ない事象でもあります。
結局のところ、「ヴァンパイア・ロード」が優秀なカードであったことは間違いありませんが、環境的に強みを発揮できる土壌にはなく、また純粋なカードパワーも「人造人間-サイコ・ショッカー」に及んでいなかったことは留意しておくべきでしょう。
ちなみに、誤解しやすい部分ですが、破壊された時の場所は条件に問わないため、「死のデッキ破壊ウイルス(エラッタ前)」などで手札から破壊された場合でも自己再生効果を発動できます。初期の「クリッター(Vol.6)」と同じ処理ですが、この時期の「クリッター(エラッタ前)」は「フィールドから墓地へ送られた場合しか効果を発動できない」裁定に変更されていたため、その処理と関連付けて「フィールドで破壊された場合しか自己再生できない」と誤解してしまうプレイヤーも一定数存在していました。
専用デッキ【ヴァロン】系の成立 出張による活躍も
とはいえ、前置きした通り「ヴァンパイア・ロード」が当時としては最高峰のスペックを誇る上級モンスターだったことは間違いありません。
将来的には「ピラミッド・タートル」とのシナジーを武器に環境を席巻するパワーカードであり、さらには専用デッキとして【ヴァロン】系(※)と呼ばれるアーキタイプが成立することになります。
(※キャラクターの「ヴァロン」とは無関係です)
【ヴァロン】系とは特定のデッキを指した名称ではなく、大まかには「ヴァンパイア・ロード」「ピラミッド・タートル」「魂を削る死霊」「生者の書-禁断の呪術-」の4種を投入したデッキ全般の総称に当たります。しかし、これも厳密な区分けが存在したわけではなく、例えば「ヴァンパイア・ロード」「ピラミッド・タートル」の2種だけでも【ヴァロン】と呼ぶケースもありました。
そのため、どちらかというと現在における出張ギミックに近い性質を持っていたアーキタイプであり、その開祖にあたる存在の1つ(※)だったと言えるでしょう。
(※詳しくは下記の記事で言及しています)
この【ヴァロン】セットが流行し始めたのは第3期初頭頃のことで、メタゲームによって浮き沈みはありつつも常に環境の最前線で存在感を示していました。相性の良い【トマハン】ではもちろん、【八汰ロック】を含めた【グッドスタッフ】系列のデッキでも多用され、最終的には【ヴァロン】が入らないデッキの方が珍しくなってしまったほどです。
その結果、2003年4月10日の制限改訂では「ヴァンパイア・ロード」が制限カード指定を受け、ようやく【ヴァロン】全盛期が終息を迎えています。性質上、汎用上級アタッカーとしての使い勝手はさほど落ちてはいませんが、逆に【ヴァロン】というギミックを組むことは難しくなった形です。
上級モンスターとしては「人造人間-サイコ・ショッカー」に次いで2例目となる制限入りであり、名実ともに遊戯王初期環境における最強格のエースアタッカー(※)の座にあった存在なのではないでしょうか。
(※しかし、その後間もなく現れた【カオス】により、一瞬で姿を消してしまうのですが……)
【当時の環境 2002年1月24日】
「ヴァンパイア・ロード」という除去耐性を持つ上級モンスターが現れたことで、【八汰ロック】を中心に上級モンスターの採用枠に大きな動きが起こっています。
当時環境に蔓延していた除去カードの大部分を受け流すことができるため、これまでの上級モンスターと比べて場持ちの面で信頼性が高い点が魅力です。その一方、打点の低さからデメリットアタッカーや同じ上級モンスターには弱く、運用にはリスクが伴うことは留意しなければなりません。
やはり「人造人間-サイコ・ショッカー」とは相互互換の関係であり、採用の有無はメタゲームとの相談となっていたのではないでしょうか。
ただし、この「ヴァンパイア・ロード」も基本的に【八汰ロック】同士のミラーマッチでしか機能しないモンスターであることはしっかりと認識しておくべきです。【宝札エクゾディア】を始めとする先攻1キルデッキを相手にした場合、強みの除去耐性もほぼほぼインクの染みでしかありません。
対して、「人造人間-サイコ・ショッカー」であれば罠無効効果が【現世と冥界の逆転】などに刺さるシチュエーションも僅かながら存在します。流石に例外的と言えば例外的な状況ですが、「ある」と「ない」では天と地ほどに違うというのも事実です。
将来的には規制を受けるほどの活躍をする「ヴァンパイア・ロード」ではありますが、少なくともこの時期に限れば「人造人間-サイコ・ショッカー」優勢の時代だったと言えるのかもしれません。
【まとめ】
「ヴァンパイア・ロード」の参戦によって起こった出来事は以上です。
極めて実戦的な能力を与えられていたモンスターではあったものの、精鋭中の精鋭である「人造人間-サイコ・ショッカー」を押し退けるほどの性能ではなく、この時点では「天空騎士パーシアス」などと同じく選択肢の一つにとどまっています。
また、根本的に先攻1キルが猛威を振るう状況が改善される気配もなく、当時の遊戯王OCGは依然として暗黒の空気に包まれていました。
ここまで目を通していただき、ありがとうございます。
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