第2期最強のアタッカー ニュート

2018年2月3日

【前書き】

 【第2期の歴史32 異星の最終戦士 環境の不発地雷】の続きとなります。ご注意ください。

 環境に不発地雷を残しながらも優良カードが輩出され、当時の遊戯王OCGは先攻1キルの脅威に晒されつつもしばしの安定期を迎えていました。

 「Labyrinth of Nightmare -悪夢の迷宮-」の販売以降、7月、8月中は大きな動きはなく、書籍同梱カードや再録パックが現れた程度です。新規カードは合計で3種類誕生し、遊戯王OCG全体のカードプールは1091種類に微増しています。

 この時期に販売された「Booster Chronicle」はその名の通り、ブースターシリーズ出身のカードを再録したパックとなっていました。これまではカードダス形式(ガチャガチャ)でしか販売されておらず、場所によっては入手困難なカード群でしたが、通常パックに収録されたことでそうした問題が解消されています。

 特に「ヂェミナイ・エルフ」や「天使の施し」は需要も非常に多く、それに伴ってこの時の再録パックも高く評価されていました。

 そんな折、9月発売のゲーム同梱カードから強烈なパワーカードが現れることになります。

 

【メリット効果2つ 1900ラインの革命】

 2001年9月6日、「遊戯王真デュエルモンスターズⅡ 継承されし記憶」と、その攻略本が販売されました。ゲーム同梱カードから5種類、書籍同梱カードから1種類の計6種類の新規カードが誕生し、遊戯王OCG全体のカードプールは1097種類に増加しています。

 簡潔に結論を申し上げますが、この時のゲーム同梱カードには1枚の「大当たり」が含まれていました。DM4以来の「超高額パック」の襲来であり、プレイヤー泣かせの収録形式と言わざるを得ない状況です。

 騒動の原因となったカードは「ニュート」という下級モンスターでした。

リバース:このカードの攻撃力・守備力がそれぞれ500ポイントアップする。このカードを戦闘で破壊したモンスターは、攻撃力・守備力がそれぞれ500ポイントダウンする。

 リバースモンスターの1体で、「リバース時に自身の攻守を500上げる効果」と「自身を戦闘破壊したモンスターの攻守を500下げる効果」の2種類の効果を与えられています。それぞれ効果は独立しており、戦闘破壊された時の効果はリバースしていない状態でも発動します。

 いずれにしても単純なステータス増減を行うだけであり、効果そのものはそれほど強力とは言えません。しかし、このカードの真価は効果ではなく、その恵まれたステータスにこそありました。

星4/風属性/悪魔族/攻撃力1900/守備力400

 上記は「ニュート」のステータスです。1900アタッカーの「ヂェミナイ・エルフ」らと同格の数値であり、明らかにリバースモンスターの標準ステータスを逸脱しています。

 感覚的には「アタッカーにもなるリバースモンスター」というよりも「リバース効果も持っているアタッカー」に近いものがあるでしょう。言うなればメリット効果を2つ与えられた「ヂェミナイ・エルフ」そのものであり、事実上はその上位互換とも言うべきモンスターです。

 上述の通り、被戦闘破壊時の弱体化効果はリバースしていない場合でも発動するため、「ダーク・エルフ」などのデメリットアタッカーに対しても強気にぶつかることができました。

 攻守500ダウンの呪いはアタッカーにとっては致命的です。上級モンスターすら下級ラインに引きずり落とされるほどであり、従来の1900アタッカーの欠点である「デメリットアタッカーに狩られやすい」という弱みが綺麗に解消されています。

 唯一存在する弱点らしい弱点は、「抹殺の使徒」で全滅してしまうリスクがあるということでしょう。しかし、そもそも「ニュート」を不用意にセットしなければ済む話であり、それ以前にわざわざ「ニュート」を裏側守備表示で出すこと自体がレアケースであると言わざるを得ません。

 総評としましては、「人造人間-サイコ・ショッカー」以来の常識外れのパワーカードにして、第2期最強の下級アタッカーです。誰が見ても分かるほど露骨に強すぎるカードであり、流石にゲーム販促の意図を感じずにはいられません。

 とはいえ、結局のところプレイヤー側としては集めないわけにはいかず、レアカード入手のために手痛い出費を強いられる状況となっていました。

 

【当時の環境 2001年9月6日】

 「ニュート」の誕生によって下級アタッカー界隈に革命が起こり、これまでの主力アタッカーが相対的に大きく弱体化しました。

 【グッドスタッフ】においては3積み確定クラスの必須カードであり、その枠を空けるために「ヂェミナイ・エルフ」や「ブラッド・ヴォルス」が席を譲ることになります。構築によっては完全に抜けてしまうケースすらあり、こうしたバニラアタッカーは次第に肩身が狭くなっていきました。

 ただし、この「ニュート」は上述の通りゲーム同梱カードゆえに入手難易度が高く、3枚確保するのは簡単なことではありません。資産的な都合から引き続き「ヂェミナイ・エルフ」を主力として使っているプレイヤーも少なくなかったのではないでしょうか。

 また、メタゲーム的な観点においてもニュート」が価値を持つのは【グッドスタッフ】同士のミラーマッチに限られる都合があります。【デッキ破壊】はもちろんのこと、【宝札エクゾディア】に対してもほとんど意味を成しません。

 どの程度先攻1キルが幅を利かせていたのかにもよりますが、カタログスペックの高さに反して意外にも活躍の機会には恵まれないカードだったのかもしれません。

 とはいえ、そもそもからして「ニュート」のカードパワー設定が明らかに当時の水準を超えていたことは疑いようもなく、その結果2002年5月の改訂では制限カード指定を下されることになりました。その後も第3期中頃まではパワーカードとして猛威を振るっており、まさに一世代分は時代を先取りしていたモンスターだったと言えるでしょう。

 

【まとめ】

 「ニュート」の誕生によって起こった出来事については以上となります。

 この時期に現れた新規カードは僅か9種類しかなく、カードプール的にはほとんど動きがないという状況です。事実上は「ニュート」のみの参戦にとどまっている格好ですが、その「ニュート」も様々な理由から実際の使用者はさほど多くなく、一般プレイヤーにとっては変化に乏しい時期となっていました。

 ただし、「アマゾネスの鎖使い」などの独特な効果を持つモンスターも現れており、一部では地雷として話題になることもありました。

 ここまで目を通していただき、ありがとうございます。

 

Posted by 遊史