ならず者傭兵部隊 あらゆるデッキで必須除去として使われた時代
・前書き
・闇を制する者 OCG独自の世界観
・ならず者傭兵部隊 制限カード経験持ちのパワーカード
・「デッキにあるだけで仕事をする」という異質な価値観
・「ならず優先権」について ヴェーラーが効かない時代
・増援 最高の戦士族サポート
・処刑人マキュラをサーチするカードとして悪用されていた時代
・戦士の生還 戦士族専用サルベージ
・後編に続く
【前書き】
【第2期の歴史33 第2期最強のアタッカー ニュート】の続きとなります。ご注意ください。
ゲーム同梱カードから「ニュート」という爆弾が現れ、プレイヤーの間で少なくない混乱が起こりました。「ヂェミナイ・エルフ」などの従来の1900アタッカーと比べて明らかに性能が抜きん出ており、販促の意図を理解しながらも買わざるを得ない状況でした。
超高額パックの複数購入を強いられる最中、そうした状況に待ったをかけるようにレギュラーパックの販売が行われることになります。
【闇を制する者 OCG独自の世界観】
2001年9月20日、「Struggle of Chaos -闇を制する者-」が販売されました。新たに50種類のカードが誕生し、遊戯王OCG全体のカードプールは1147種類となっています。
当時のOCGとしては異色の「原作新規カード未収録」のパックであり、OCG独自の要素が随所に散りばめられていました。パック全体のテーマとして種族間抗争が取り上げられており、収録内容は悪魔族・戦士族・ドラゴン族の3種族関連カードで占められています。
また、OCGの世界観を匂わせるバックストーリーの展開が始まったことも特徴の一つです。「切り込み隊長」を筆頭に、今後様々なカードのイラストに登場するモンスターが多数現れており、まさに「OCGのキャラクター」とも呼べる存在として愛されていくことになります。
ならず者傭兵部隊 制限カード経験持ちのパワーカード
もちろん、当パックの参戦はOCG環境に対しても様々な影響を及ぼしており、中でも「ならず者傭兵部隊」の誕生は極めて大きな衝撃を孕んでいたと言うほかありません。
このカードを生け贄に捧げる。フィールド上のモンスター1体を破壊する。
自身を生け贄に任意のモンスターを除去する効果を与えられています。極めてシンプルに優秀な除去効果であり、当時としては破格の扱いやすさを誇っていたモンスターです。
これまでの除去効果持ちのモンスターは「人喰い虫」などのリバースモンスター、あるいは「異次元の戦士」のような何らかの条件を要求するタイプのものが主役となっていました。それ以外の起動効果や誘発効果を内蔵するタイプはいずれも扱いが難しく(※)、汎用性に優れているとは言えません。
(※参考までに、この頃は「ドリーム・ピエロ」が比較的優秀とされる時代でした)
しかし、この「ならず者傭兵部隊」の場合は何の前提条件もなく、ただ自身を生け贄にするだけで除去効果を発動できてしまいます。当時としては明らかに条件が飛び抜けて緩く、まさに従来の常識を覆す利便性を持っていたことは疑いようもありません。
除去の対応範囲が極めて広いことも大きな魅力の一つです。表示形式を問わないことはもちろん、セットモンスターを安全かつタイムラグなしで処理できるため、従来よりも格段にリバースモンスターに対処しやすくなっています。
実際、この頃のカードプールではセットモンスターへの対処法が限られており、この解決手段は「抹殺の使徒」など一部のカードに依存しているところがありました。しかし、そうしたアンバランスさが「ならず者傭兵部隊」の参入によって一気に解消されたため、間接的にデュエルの奥深さが増したことは間違いないでしょう。
「デッキにあるだけで仕事をする」という異質な価値観
一方、戦士族のモンスターカードであるというカタログスペックそのものも「ならず者傭兵部隊」が持つ強みの1つです。
外見上は「召喚権を消費する1:1交換のモンスター除去」に過ぎないカードですが、実質の使い勝手の良さはその遥か上を行っています。具体的には、「クリッター(エラッタ前)」を始めとするサーチャーのほか、「巨大ネズミ」などのリクルーター、また下記で取り上げている「増援」にも対応しており、「肝心な時に手札に来ない」という除去カード最大の悩みを抱えることがありません。
よって通常の除去カードとは異なり、「ただデッキにあるだけでシルバーバレットとして常に仕事をしている」ということであり、「ならず者傭兵部隊」を採用しているかどうかがプレイングやゲーム展開にも影響を及ぼします。これはサーチやリクルートが飽和する現代遊戯王においてはそれほど珍しい話ではありませんが、いわゆる「手札にあるカードだけで戦う」という【グッドスタッフ】的な考え方が主流だった第2期当時としては極めて異質な概念です。
他方では、各種蘇生カードとの相性の良さも見逃せません。
これが墓地に落ちている場合、全ての蘇生カードが除去に化けるようなものであり、非常に強力かつ実用的なコンボとして機能します。召喚権を使わずに済むというのもポイントで、事実上はノーコストの「死者への手向け」を撃っているような感覚となるでしょう。
総評としましては、あらゆる面から見て当時最高クラスの性能を与えられた除去カードという印象です。流石に単純なカードパワーという意味では「サンダー・ボルト」などには敵いませんが、汎用性においてはそれらのパワーカードすら凌駕するポテンシャルを秘めていたのではないでしょうか。
実際、およそ8ヶ月後の2002年5月には制限カード行きとなっているほどであり、「ならず者傭兵部隊」の強さが第2期の水準を上回っていたことが窺えます。それどころか、第2期に限らず第3期~第5期中頃までの数年間に渡ってデッキを問わず必須除去として活躍するなど、文字通り遊戯王前半期を代表するパワーカードの位置付けにあったと言っても過言ではない存在です。
「ならず優先権」について ヴェーラーが効かない時代
その他、こうしたカードスペックの話とは別に、俗に「ならず優先権」と呼ばれる基本テクニックについても言及しておきます。
詳しくは上記関連記事で解説しているためここでは触れませんが、一言で言えば「ならず召喚後に優先権をキープしたまま除去効果を発動する」プレイングのことを指します。もちろん現行ルールでは成立しないプレイですが、当時は優先権ルールが今とは異なっていたため、「ならず者傭兵部隊」に限らず起動効果持ちモンスターを使用する上では欠かせない知識となっていました。
特に「ならず者傭兵部隊」の場合は自己リリースによってフィールドから墓地に逃げられるため、当時のほぼ全ての妨害をすり抜けられる強みを持っていました。
現代のプレイヤーに伝わりやすい表現で言うなら「ヴェーラーを当てるタイミングがない自己リリース効果」のような使用感であり、カウンターなどを踏まない限り確実に除去を通せる手段として重宝されていたテクニックです。
増援 最高の戦士族サポート
もちろん、「Struggle of Chaos -闇を制する者-」収録の有力カードは「ならず者傭兵部隊」だけではありません。
デッキからレベル4以下の戦士族モンスター1体を手札に入れ、デッキをシャッフルする。
上記は「増援」の当時のテキストとなっています。
遊戯王OCG屈指の知名度を誇る種族サポートカードにして、戦士族という種族が持つ最大の強みとすら言える極めて強力なカードです。シンプルなテキストが示す通り、戦士族の下級モンスター1体をサーチするという効果を持っています。
効果自体は地味ながら、その状況で最も必要なカードを持ってこられる柔軟性は尋常ではありません。通常魔法であるという点も利便性を高め、「クリッター(エラッタ前)」などのサーチャーと違ってタイムラグなしでサーチが可能です。
もはや戦士族デッキで採用されていなければ嘘とすら言える存在であり、戦士族を含むあらゆるデッキで必須カードとして名を上げていくことになります。それどころか、「異次元の戦士」や「ダーク・ヒーロー ゾンバイア」などの汎用アタッカー、そして上記の「ならず者傭兵部隊」も戦士族モンスターに属している関係上、当時の【グッドスタッフ】においても採用圏内に入っていたほどです。
現在でも数多くの戦士族カテゴリデッキを支えている1枚であり、そしてこの先の時代でも活躍を続けていくことになるカードと言えるのではないでしょうか。
処刑人マキュラをサーチするカードとして悪用されていた時代
とはいえ、そんな「増援」も第2期中のトーナメントシーンにおいてはもっぱら「処刑人-マキュラ(エラッタ前)」をサーチするカードとして悪用されていたため、上記のような真っ当な活躍は中々望めない立場にあったことは否めません。
実際、「増援」は第2期終盤の制限改訂で規制されているのですが、これは【現世と冥界の逆転】を筆頭とする各種先攻1キルデッキで濫用されていたことが理由です。つまり【戦士族】のキーカードとして活躍した結果ではなく巻き添え規制の一種であり、実質的にはそうした事例の皮切りとなったカードでもあったと言えるでしょう。
戦士の生還 戦士族専用サルベージ
上記の「増援」とは別軸のサポートカードとして、「戦士の生還」という魔法カードも現れています。
自分の墓地から戦士族モンスター1体を選択して手札に加える。
大まかにはサルベージ版「増援」と言えるカードですが、こちらはレベル制限なく使用できる強みがあります。当時は墓地のカードを再利用する手段が乏しく、その部分を補えるこのカードは非常に高く評価されました。
ただし、「増援」と比較した場合、全体的に見劣りする部分が多いことは否定できません。即効性、汎用性、柔軟性など様々な面において水をあけられており、こちらが優先されるケースは稀です。決して弱いわけではありませんが、少なくとも【グッドスタッフ】に入るカードではないでしょう。
とはいえ、そもそも【グッドスタッフ】に入る「増援」の方が優秀すぎるというだけの話であり、種族サポートとしては十分な性能を持ち合わせているカードです。第2期以降、あらゆる戦士族デッキの要を務めていくことになる1枚であり、「戦士族と言えば増援と生還」と言われるほどの活躍を見せていました。
【後編に続く】
「Struggle of Chaos -闇を制する者-」に収録されていたカードのうち、戦士族関連カードについては以上となります。
現環境でも通用する「増援」や、第2期当時としては規格外の性能を与えられた「ならず者傭兵部隊」など、全体的にパワーカードの収録が多かったのが特徴です。OCG独自の要素を盛り込んでいた影響もあり、パックそのものとしても高い人気を集めていました。
しかし、この時に現れていた優秀なカードは戦士族だけではありません。残りの悪魔族・ドラゴン族にも環境を動かしうるカードが含まれています。
後編に続きます。
ここまで目を通していただき、ありがとうございます。
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