キラー・スネーク全盛期の歴史 禁止カードになるまでの道のり

2019年1月6日

【前書き】

 遊戯王OCGのカードプールの中に、「キラー・スネーク(エラッタ前)」と呼ばれるカードが存在します。

自分のスタンバイフェイズ時にこのカードが墓地に存在している場合、このカードを手札に戻すことができる。

 ステータスは貧弱ですが、自分のスタンバイフェイズにノーコストで自身をサルベージする効果を持っており、効果的に活用すれば無限のアドバンテージをもたらすと言っても過言ではありません。その強さから誕生早々に規制を受け、時期により復帰しつつも第4期終盤の2005年9月の改訂で禁止カードに指定されてしまったカードです。

 その後はエラッタによって存在すら無かったことにされており、遊戯王OCGのカードの中でも一際危険な気配を放っていることが窺えます。

 この記事では、そんな「キラー・スネーク(エラッタ前)」全盛期の歴史や、禁止カードに指定されるに至った理由などについて解説していきます。

 

キラースネークが禁止カードになった理由

 「キラー・スネーク(エラッタ前)」は遊戯王前半期の水準を遥かに超えるパワーカードであり、その活用方法は極めて膨大です。このカードを絡めたコンボ・ギミックは無数に存在するため、これが禁止カードになった理由は挙げればキリがありません。

 

 「キラー・スネーク(エラッタ前)」が最初に名を残したのは、第2期初頭環境における【キャノンバーン】での活躍でした。

 【キャノンバーン】はその名の通り、「キャノン・ソルジャー」による射出効果をメインコンセプトに据えたビート・バーンデッキの一種です。ビートダウンといえば【スタンダード】一択だった第2期当時としては革新的なギミックを搭載したデッキであり、また遊戯王OCGにおけるバーンデッキの開祖としても知られます。

 【キャノンバーン】の中核となるのは「キャノン・ソルジャー」と「血の代償」のコンボですが、もちろん射出の弾となるモンスターがいなければコンボが成立しません。この頃は「スケープ・ゴート」などの優秀なトークン生成カードも誕生していなかったため、これまではサーチャーである「クリッター(エラッタ前)」「黒き森のウィッチ(エラッタ前)」で無理矢理代用するしかありませんでした。

 そこに現れたのが「キラー・スネーク(エラッタ前)」であり、毎ターン自動で回収できる弾丸としての役割を見出された格好です。当時は「苦渋の選択」が無制限カードだったこともあり、キラー・スネーク(エラッタ前)」を3枚同時に墓地に揃えるのもそう難しいことではありません。

 毎ターン3枚分のアドバンテージを得られる「苦渋キラスネ」コンボが弱いはずがありませんが、意外なことにこのギミックが【キャノンバーン】以外で使われることは言われているほど多くありませんでした。というのも、この時期のカードプールでは手札コストや生け贄を利用するカードが数えるほどしか(※)なかったため、むしろ「キラー・スネーク(エラッタ前)」を手札で腐らせてしまう危険の方が大きかったからです。

(※具体的には「天使の施し」「死者への手向け」「マジック・ジャマー」の3枚が特に有名でしたが、逆に言えばその程度しか相方がいなかったとも言えます)

 

あまり目立たなかった日陰の時代

 しかし、やはり当時の「キラー・スネーク(エラッタ前)」が【キャノンバーン】のキーカードとして猛威を振るっていたことは間違いありません。

 その結果、2000年11月1日の改訂で「キラー・スネーク(エラッタ前)」が制限カード行きとなり、【キャノンバーン】を構築することが不可能になりました。これにより先述の「苦渋キラスネ」コンボの威力も激減し、このギミックを【スタンダード】で見かけることも更に少なくなっていった格好です。

 こうした流れを受け、以降しばらくは「キラー・スネーク(エラッタ前)」にとっての日陰の時代が続くことになります。

 一応、制限カード行きになったことが逆に「スペースを取らない」というメリットになり、隠し味程度にデッキに投入されるケースがなかったわけではありません。しかし、それでも大抵は苦し紛れの壁にしかならず、当時貴重だった召喚権を割いてまで使うようなカードではなかったのは事実です。

 結局、第2期中は特に見せ場もないまま時間が過ぎていき、2002年1月1日の改訂で無制限カードへと釈放の日を迎えています。

 しかし、その時期はその時期で【八汰ロック】【現世と冥界の逆転】【宝札エクゾディア】といった暗黒時代のデッキが暴れ回っていたため、やはり根本的に「キラー・スネーク(エラッタ前)」が活躍できるような環境ではなかったと言えるでしょう。

 

「悪夢の蜃気楼」コンボでの活躍

 「キラー・スネーク(エラッタ前)」の本格的な活躍は、第3期突入以降に始まっています。

 2002年5月1日の制限改訂でカードプールに大規模な調整が入り、【現世と冥界の逆転】に始まる凶悪デッキの数々が一斉に解体されました。それにより環境がデフレと低速化を同時に迎え、相対的に「キラー・スネーク(エラッタ前)」にも脚光が当たった形です。

 こうした「キラー・スネーク(エラッタ前)」躍進の背景には、「悪夢の蜃気楼」「サンダー・ブレイク」など相性の良いカードを多数獲得していた都合もあります。

 特に「悪夢の蜃気楼」は「キラー・スネーク(エラッタ前)」とは最高の相性を誇り、放っておいても高確率でアドバンテージを稼いでくれます。1:1交換の繰り返しが基本だった当時としては破格のコンボであり、この「キラスネ蜃気楼」コンボこそが「キラー・スネーク(エラッタ前)」の使用法として最も有名であると言っても過言ではないでしょう。

 駄目押しとなったのが「同族感染ウィルス」の参戦でした。

 手札コストさえあれば好きなだけ除去が撃てる「同族感染ウィルス」と「キラー・スネーク(エラッタ前)」の相性の良さは語るまでもありません。単純に「同族感染ウィルス」自体が当時の基準ではパワーカードだったこともあり、【スタンダード】ではまず間違いなくこの2枚がセットで積まれていたほどです。

 このように、カードプールの拡大によって「キラー・スネーク(エラッタ前)」を活かすコンボが環境を席巻した結果、間もなく2003年1月1日の改訂で関連カードに規制が入ることになりました。当然「キラー・スネーク(エラッタ前)」も制限カードに逆戻りしており、時代の変化によってカードの強さが一変した好例と言えるのではないでしょうか。

 

汎用パワーカードとしての活躍

 その後、「キラー・スネーク(エラッタ前)」の立ち位置は以前までのような特定のコンボパーツ要員ではなく、単に「どんなデッキでも使える手札コスト要員」、つまり汎用カードの枠組みに移り変わっていきます。

 これはカードプールが広がったことで「手札コストを利用するカード」が珍しくなくなったことによる結果であり、わざわざコンボを意識するまでもなく強さを発揮できるようになったと言い換えることもできるでしょう。よってこれ以降はあらゆるデッキで「キラー・スネーク(エラッタ前)」と遭遇する可能性が生まれたと言っても過言ではなく、名実ともにパワーカードの仲間入りを果たした形です。

 とはいえ、流石の「キラー・スネーク(エラッタ前)」も常に環境の最前線にあったわけではありません。例えば第3期を象徴する2003年の【カオス】全盛期など、時代によっては採用率が低下していたこともあります。

 しかし、逆に言えばそうした例外を除けば常に使われていたということでもあり、ある意味ではこの時代こそが「キラー・スネーク(エラッタ前)」の全盛期だったと言えるのではないでしょうか。

 

【変異カオス】での活躍

 このように、長らく万能の手札コスト要員として愛用されてきた「キラー・スネーク(エラッタ前)」でしたが、その現役時代が永遠に続くことはありません。

 「キラー・スネーク(エラッタ前)」の最後の活躍の舞台は、2005年3月~9月環境の【変異カオス】に用意されていました。

 「キラー・スネーク(エラッタ前)」のレベルは1であるため、当然「突然変異」から「サウザンド・アイズ・サクリファイス」に繋ぐカードとして見ても一際優秀なカードです。事実上、召喚権を使う代わりにノーコストで「突然変異」を撃てることから、「スケープ・ゴート」や「聖なる魔術師」を種にする場合よりも気軽にアクションを起こせます。

 それ以外にも、【アビス変異】など型によってはデッキコンセプトレベルで動きに絡んでくることもあり、【変異カオス】における「キラー・スネーク(エラッタ前)」は見た目からは分からないほど多彩な役割を担っていました。

 そうした環境での流行の結果、続く2005年9月の改訂では遂に「キラー・スネーク(エラッタ前)」が禁止カードに指定され、その短くも長い現役時代を終えることになります。外見上は【変異カオス】での濫用が招いた結果にも見えますが、本質的な規制理由は「今後似たような悪用方法が無数に考案されることが容易に予想できるため」だったことは間違いないでしょう。

 

そして弱体化エラッタへ

 その後、完全体の「キラー・スネーク(エラッタ前)」が制限復帰することは一度たりともなく、およそ10年に渡って禁止カードにとどまり続けることになります。その間も「キラー・スネーク(エラッタ前)」と相性のいいカードは無数に誕生し続けており、第4期中にこれを禁止カード行きとしていたことは英断と言うほかありません。

 しかし、その一方で時代の変化とともに1:1交換の概念が形骸化していくにつれ、キラー・スネーク(エラッタ前)」の強みである「無限のコスト」という役割が貴重ではなくなっていったことも事実です。そもそも無限と言いつつ大抵は毎ターン1枚分のハンド・アドバンテージを得ているに過ぎない以上、禁止カード級の性能を持っているとは言えなくなっている部分もありました。

 結局、こうした議論をよそに2015年1月に弱体化エラッタが入り、また同改訂でこれが制限復帰を果たすこととなります。

 エラッタ後は「キラー・スネーク.」へと効果を改めていますが、様々な面から見て非常に扱いづらくなっており、それを裏付けるように直後の改訂ではあっさり無制限カードに完全釈放されてしまっています。かつての活躍を思えば何とも言い難い末路であり、時代の変化とカード自体の弱体化が同時に重なったことによる悲劇だったと考えるほかないでしょう。

 

【まとめ】

 「キラー・スネーク」の大まかな歴史については以上となります。

 その誕生直後から【キャノンバーン】のキーカードとして名を馳せたものの、カードプール全体で見れば活用方法に乏しく、事実【キャノンバーン】の衰退とともに一時期姿を消してしまった不遇のカードです。しかし、第3期に入る頃になると相性のいいカードが続々と現れ、やがては万能の手札コスト要員としての地位を確立していきました。

 その後は【変異カオス】での活躍もあって間もなく禁止カード行きとなり、以後10年近くに渡ってその位置にとどまることになります。

 最終的にはエラッタによる弱体化を受けて現役復帰を果たしましたが、もはや全く実用レベルの性能ではなくなっており、ある意味ではその瞬間をもって「キラー・スネーク(エラッタ前)」の時代が終わりを告げたと言えるのではないでしょうか。

 ここまで目を通していただき、ありがとうございます。

 

Posted by 遊史