制限改訂2003/1/1 第3期最初の制限改訂
【前書き】
【第3期の歴史15 遊戯王の歴史 2002年の総括】の続きとなります。ご注意ください。
2002年が無事に終わりを告げ、遊戯王OCGは4度目の新年を迎えることとなりました。前年と比較して全体的に安定したゲームバランスが整えられており、環境においても健全なメタゲームが繰り広げられていました。
一方で、無限ループの成立を招いた「蝶の短剣-エルマ」などの危険なカードが現れていたことは無視できません。それ以外にも単純にカードパワーが高すぎる汎用カードの存在もちらつき、ゲームバランスに一定の問題が発生していたことは事実です。
こうした事態への対策として、第3期1回目となる制限改訂が行われることとなりました。
【制限改訂 2003年1月1日】
2003年1月1日、遊戯王OCGにおいて11回目となる制限改訂が行われました。
制限カードに指定されたカードは以下の50枚です。
キラー・スネーク(エラッタ前) | 無制限 |
---|---|
クリッター(エラッタ前) | 準 |
同族感染ウィルス | 無制限 |
魔導戦士 ブレイカー | 無制限 |
悪夢の蜃気楼 | 無制限 |
蝶の短剣-エルマ | 無制限 |
天使の施し | 準 |
お注射天使リリー | - |
---|---|
黒き森のウィッチ(エラッタ前) | - |
サイバーポッド | - |
処刑人-マキュラ(エラッタ前) | - |
人造人間-サイコ・ショッカー | - |
ドル・ドラ | - |
ならず者傭兵部隊 | - |
ニュート | - |
ファイバーポッド | - |
封印されしエクゾディア | - |
封印されし者の左足 | - |
封印されし者の左腕 | - |
封印されし者の右足 | - |
封印されし者の右腕 | - |
メタモルポット | - |
八汰烏 | - |
いたずら好きな双子悪魔 | - |
押収 | - |
大嵐 | - |
苦渋の選択 | - |
強引な番兵 | - |
強奪 | - |
強欲な壺 | - |
心変わり | - |
サンダー・ボルト | - |
死者蘇生 | - |
団結の力 | - |
手札抹殺 | - |
成金ゴブリン | - |
ハーピィの羽根帚 | - |
早すぎた埋葬 | - |
光の護封剣 | - |
ブラック・ホール | - |
魔導師の力 | - |
リミッター解除 | - |
王宮の勅命(エラッタ前) | - |
現世と冥界の逆転(エラッタ前) | - |
聖なるバリア -ミラーフォース- | - |
停戦協定 | - |
破壊輪(エラッタ前) | - |
魔法の筒 | - |
無謀な欲張り | - |
リビングデッドの呼び声 | - |
準制限カードに指定されたカードは以下の9枚です。
強制転移 | 無制限 |
---|
守護者スフィンクス | - |
---|---|
カオスポッド | - |
切り込み隊長 | - |
増援 | - |
フォース | - |
抹殺の使徒 | - |
補充要員 | - |
ラストバトル! | - |
無制限カードに緩和されたカードはありません。
以上が当時コナミから下された裁断となります。変動8枚、そしてその全てが規制強化という状況であり、前回と同じく規制強化の方向に動いている改訂です。
また、制限カードに指定された7枚のカードのうち、5枚が無制限カードから一気に規制強化されています。なおかつ5枚中3枚が第3期出身のカードであるという事実も興味深いところです。
第3期出身のパワーカードへの規制
無制限カードだった「魔導戦士 ブレイカー」「同族感染ウィルス」「蝶の短剣-エルマ」の3枚が一気に制限カードへと指定されました。
前者2枚は純粋にカードパワーが極めて高く、ほぼ必須カードと化していたため、おおよそ妥当な規制と言えるでしょう。この時期はサーチャーの規制も厳しくなっており、枚数が絞られたことによるダメージは決して無視できません。
結果的に、この規制は汎用パワーカードに対する圧力としてはかなり有効に機能しました。さらに、下級アタッカー枠にスペースが空いた影響で「異次元の女戦士」に声がかかることになるなど、間接的に他のカードの再評価が行われるきっかけにも繋がっています。
もちろん、制限カードに指定された後もカードパワーの高さは健在であり、これ以降も必須カードとして環境で存在感を示していくことになりました。
「蝶の短剣-エルマ」は単体では弱小カードに過ぎませんが、「鉄の騎士 ギア・フリード」「王立魔法図書館」と絡めた無限ドローコンボが横行していたため、制限カード指定もやむなしの状況です。
当時のカードプールでは装備魔法カードのサーチ手段は存在しておらず、このギミックを主軸に据えた【ギアフリード1キル】は事実上の解体宣言を下されています。前年の11月下旬に誕生してから早々に規制が入っている辺りに、開発側の無限ループへの厳しい姿勢が表れていると言えるでしょう。
第2期出身のパワーカードへの規制
「キラー・スネーク(エラッタ前)」「悪夢の蜃気楼」の2枚も無制限カードからの規制強化となります。
「悪夢の蜃気楼」は単体ではそれほど効果的に機能するカードではありませんが、「サイクロン」とのコンボによって超高効率のドローエンジンに化けるなど、とにかく悪用されやすいカードだったため妥当な規制です。これによって上記のドローコンボは使い勝手を大きく損ない、このアドバンテージ生成能力に頼ったゲームプランを取ることは難しくなりました。
しかし、それでもコンボが決まった時の見返りは圧倒的であり、さらにコンボパーツの「サイクロン」も元々汎用カードだったため、デッキに積むこともそれほど負担とはなりません。よって「決まれば良し」程度の意識で上記ギミックがデッキに残されるケースも多く、遭遇率を落としつつも依然として猛威を振るい続けることになりました。
「キラー・スネーク(エラッタ前)」は単純に手札コストとしてあまりにも優秀すぎたため、規制されない理由が無いとすら言える状況です。「同族感染ウィルス」や「サンダー・ブレイク」など、このカードと相性の良いカードが多数現れていたことも原因の一つだったのではないでしょうか。
また、この「キラー・スネーク(エラッタ前)」は第2期終盤の制限改訂で一旦制限解除されており、紆余曲折あっての再度の制限カード指定(※)となっています。カードプールの変化によって凶悪さを取り戻していった結果であり、無限の手札コストの危険性を再認識する制限改訂だったのかもしれません。
(※詳しい背景については下記の記事で解説しています)
その他の規制状況
「天使の施し」「クリッター(エラッタ前)」の2枚が準制限カードから制限カードに規制強化されています。
第1期に現れて以降、非常に長期間必須カードとして環境で活躍していたため、むしろ遅すぎる規制です。なぜ今まで見過ごされていたのか分からないと言えるほどであり、これ以降は制限リストの常連メンバーを務めることになりました。
また、「強制転移」が準制限カードに指定されたことにも触れておきます。
性質上、リクルーターとは抜群の相性を誇り、【トマハン】では3積み確定の必須カードと評価されていました。そのため、当デッキに対する圧力と考えればそれほど不自然な規制ではなかったのではないでしょうか。
【当時の環境 2003年1月1日】
「蝶の短剣-エルマ」への規制により、【ギアフリード1キル】が構築困難な状況に追い込まれています。
元々、総合力では【八汰ロック】などに及ばないデッキではありましたが、この規制によって致命的なダメージを負ってしまった形です。デッキ成立から1ヶ月と少しの出来事であり、開発側が無限ループを相当危険視していたことが窺える規制でもありました。
また、「魔導戦士 ブレイカー」「同族感染ウィルス」を筆頭に多数の汎用カードに規制が入り、【八汰ロック】が大きくデッキパワーを落としたことも変化としては見過ごせません。デッキコンセプトの性質上、いずれも致命傷に繋がるダメージではありませんが、やはり手痛い被害であることは事実です。
とはいえ、依然としてトップメタを名乗るのにふさわしい実力は維持しており、2003年も引き続き主流デッキの一角として存在感を示していくことになります。
最後に、「強制転移」の準制限カード指定によって【トマハン】がやや弱体化したことも取り上げておきます。しかし、さほど大きなダメージではなく、仮想敵の【八汰ロック】が後退していることもあって相対的にはむしろ勢力を拡大している印象です。
他の【グッドスタッフ】系列のデッキと違ってシナジーを武器に戦うデッキであるため、環境のデフレの影響を受けにくいことがその理由となるでしょう。
一方、【ジャマキャン】や【デビフラ1キル】に対しては全く手が加わっておらず、デッキパワーそのものは現状維持の状況となります。
しかし、ロックカードを多用する【ジャマキャン】にとっては「魔導戦士 ブレイカー」の規制強化は追い風であり、以前と比べてロックを崩されにくくなりました。
結論としましては、【八汰ロック】【トマハン】【デビフラ1キル】【ジャマキャン】の4デッキが勢力を分けている形です。【デビフラ1キル】を除けばいずれもコントロール色の強いデッキとなっており、全体的に環境が低速化していることが見て取れるのではないでしょうか。
【まとめ】
2003年1月1日の制限改訂で起こった変化は以上です。
無限ループでゲームを荒らしていた【ギアフリード1キル】が姿を消したほか、多数のパワーカードに規制が入ったことで環境のデフレが起こっています。ゲームバランスの調整としては十分な成果であり、開発側の意図した通りにバランス・コントロールが成されたと見るべきでしょう。
さりげなく金食い虫モンスターである「魔導サイエンティスト」が見逃されるなど、やや違和感の残る改訂でもありましたが……。
ここまで目を通していただき、ありがとうございます。
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