制限改訂2004年9月 カオスエンペラー消滅 【グッドスタッフ】崩壊の足音

2018年6月25日

【前書き】

 【第4期の歴史8 異次元からの帰還 遊戯王最強格の帰還カード】の続きとなります。ご注意ください。

 2004年8月上旬のカードプール更新によって環境が揺れ動き、当時のメタゲームに一定の変化が訪れました。全体的にコンボデッキ界隈を中心とした変動でしたが、【次元斬】が強化されるなどビートダウン界隈の動きも見られます。

 また、8月のカードプール更新はこれが最後ではなく、13日に劇場版遊戯王配布カードから1種類、21日にVジャンプ付録から1種類、25日に「ザ・ヴァリュアブル・ブック7」から2種類、計4種類の新規カードが現れています(全1951種)。いずれもコレクションアイテム的なカードであり、環境に及ぼした影響は皆無です。

 そんな折、続く9月に大規模なカードプールの調整が入ることになりました。

 

【制限改訂 2004年9月1日】

 2004年9月1日、遊戯王OCGにおいて16回目となる制限改訂が行われました。

 禁止カードに指定されたカードは以下の13枚です。

混沌帝龍 -終焉の使者-(エラッタ前) 制限
クリッター(エラッタ前) 制限
黒き森のウィッチ(エラッタ前) 制限
死者蘇生 制限
団結の力 制限
天使の施し 制限
ブラック・ホール 制限
聖なるバリア -ミラーフォース- 制限
八汰烏
いたずら好きな双子悪魔
サンダー・ボルト
ハーピィの羽根帚
王宮の勅命(エラッタ前)

 

 制限カードに指定されたカードは以下の45枚です。

お注射天使リリー 禁止
サイバーポッド 禁止
神殿を守る者 無制限
ファイバーポッド 禁止
メタモルポット
苦渋の選択 禁止
心変わり 禁止
サイクロン 無制限
激流葬 無制限
死のデッキ破壊ウイルス(エラッタ前) 無制限
第六感 無制限
ヴァンパイア・ロード
カオス・ソルジャー -開闢の使者-
キラー・スネーク(エラッタ前)
混沌の黒魔術師(エラッタ前)
人造人間-サイコ・ショッカー
同族感染ウィルス
ドル・ドラ
ならず者傭兵部隊
封印されしエクゾディア
封印されし者の左足
封印されし者の左腕
封印されし者の右足
封印されし者の右腕
魔鏡導士リフレクト・バウンダー
魔導サイエンティスト
魔導戦士 ブレイカー
悪夢の蜃気楼
押収
大嵐
強引な番兵
強奪
強欲な壺
蝶の短剣-エルマ
手札抹殺
成金ゴブリン
早すぎた埋葬
光の護封剣
魔導師の力
現世と冥界の逆転(エラッタ前)
停戦協定
破壊輪(エラッタ前)
魔法の筒
無謀な欲張り
リビングデッドの呼び声

 

 準制限カードに指定されたカードは以下の8枚です。

暗黒のマンティコア
カオスポッド
切り込み隊長
処刑人-マキュラ(エラッタ前)
強制転移
増援
抹殺の使徒
ラストバトル!

 

 無制限カードに緩和されたカードはありません。

 以上が当時コナミから下された裁断となります。変動19枚であり、これまでと比較して非常に大がかりな制限改訂です。

 また、そのうち規制強化が14枚、緩和が5枚となっており、全体的にデフレの方向に動いていることも分かります。さらに、新たに禁止カード指定を受けたカードも8枚と多く、様子見の向きが強かった前回とは打って変わって大胆な規制だったと言えるでしょう。

 

パワーカードへの規制 禁止カード行き

 「混沌帝龍 -終焉の使者-(エラッタ前)」を筆頭に、数多くのパワーカードが禁止カードに指定されています。

 2大サーチャーとして長い間活躍した「クリッター(エラッタ前)」「黒き森のウィッチ(エラッタ前)」や、蘇生カードの象徴「死者蘇生」、最強のドローソース「天使の施し」、強力な全体除去カード「ブラック・ホール」「聖なるバリア -ミラーフォース-」など、この時に環境から消えたカードは数知れません。

 これらのカードは【カオス】ではもちろん、【ノーカオス】【次元斬】【ミーネ・ウイルス】などのビートダウンデッキでは必須カードとも言える存在でした。そのため、当時存在していたあらゆるビートダウンデッキは構築の変化を余儀なくされ、結果的に当時の環境を一変させるほどの多大な影響を及ぼしています。

 とりわけ【カオス】が受けたダメージは大きく、2枚看板の片割れが消えたことによる精神的主柱の喪失という意味でも無視できない影響があったのではないでしょうか。

 また、なぜか「団結の力」が禁止カード指定を受けていたことにも触れておきます。

 誕生当時の第2期ではともかく、第3期以降の環境ではあまり使われておらず、精々ターボ系デッキの隠し味に投入される程度でしたが、この規制状況を見る限り開発側からは危険視されていた模様です。

 もちろん、打点強化カードとしてはトップクラスの性能であり、決して弱いカードではありません。しかし、やはり上記の顔触れと比べれば見劣りすることは否めず、あえてこのタイミングで規制に向かった意図は不明です。

 実際、次の制限改訂では再び制限カードに戻されています。開発側としてもやや過剰な規制であった認識はあったということでしょう。

 

無制限から制限へ 2004年の中心メンバー

 「サイクロン」「激流葬」「死のデッキ破壊ウイルス(エラッタ前)」「第六感」の4枚が同時に制限カード指定を受けています。

 いずれも無制限カードからの制限行きであり、ゲームバランスに大きな影響が見られる規制です。特に「第六感」に対処が入った事実は極めて大きく、これによって「サイコロゲー」の発生率がかなり抑制されました。

 とはいえ、1枚はデッキに入れられるため、やはり時と場合によっては「サイコロゲー」が成立してしまうことは事実です。「第六感」そのものが凶悪パワーカードであるということもあり、依然としてサイコロを常備する状況から逃れることはできなかったのではないでしょうか。

 

【ミーネ・ウイルス】完全解体 しかし死デッキは引き続き続投

 「死のデッキ破壊ウイルス(エラッタ前)」は何と言っても「ウイルス地獄」の代名詞であり、これに対して規制が入るのもごく自然な流れでしょう。単純なカードパワーの高さはもちろん、【ミーネ・ウイルス】や【ウイルスカオス】などの流行を招いてしまった事実は決して小さくありません。

 とはいえ、単純に「死のデッキ破壊ウイルス(エラッタ前)」というカード自体が当時としては凶悪だったため、これ以降も引き続きパワーカードとして環境に続投を決めていました。

 その後は5年にも渡って制限カードの位置にとどまり続け、やがては禁止カード指定を下されています。最終的にはエラッタによって完全消滅し、死のデッキ破壊ウイルス」に生まれ変わって2015/1/1に釈放の日を迎えました。

 その後は細々と一部のデッキで使われつつ徐々に規制が緩められ、1年3ヶ月後の2016/4/1に無制限カードに規制解除されるという結末を辿っています。よって事実上、第4期初頭のこの時期までが全盛期であったと見るべきでしょう。

 

サイクロンが制限カード級とされる世界観

 一方、「サイクロン」「激流葬」の2枚は純粋にカードパワーの高さを咎められての規制となります。「サイクロン」はその汎用的な魔法・罠除去能力から、「激流葬」は容易に1:1交換以上を見込める全体除去性能から、それぞれ標準的に多くのデッキに積まれていたことによる結果です。

 現在の価値観では「激流葬」はともかく、「サイクロン」はそれほど強くはないようにも思えますが、当時は1:1交換の魔法・罠除去というだけで非常に貴重でした。ほとんどのデッキに3枚フル投入される必須カードとなっていたため、制限カード行きも極めて妥当な話でしょう。

 それどころか、一時期は禁止カード行きも囁かれていたほどの存在です。ツイスター」などの下位互換カードが現れるにつれてその噂はより一層濃厚となり、いつ使用できなくなるかと戦々恐々とされていた方も少なくなかったのではないでしょうか。

 

コンボパーツへの規制 【神殿フルハンデス】ほぼ消滅

 単体では強さを発揮しませんが、危険なコンボを成立させることから「神殿を守る者」が制限カードに指定されました。

 さらに、恐らくはその巻き添えとなり、「メタモルポット」も準制限カードから制限カードに規制強化されています。この時期は「メタモルポット」もそれほど使われておらず、【グッドスタッフ】での採用率も低かったため、実質的には【神殿フルハンデス】を意識した規制強化であったと言えるのではないでしょうか。

 もしくは、下記で触れる「サイバーポッド」との入れ替え改訂という可能性もあります。その場合、【デッキ破壊1キル】の存在を考慮していたということが有力な根拠と考えられますが、やはり正確な理由については不明です。

 とはいえ、元々「メタモルポット」自体が汎用枠のカードではない以上、この規制強化による影響は一部のデッキのみにとどまっていたのかもしれません。

 

規制緩和 禁止カードから制限カードへ

 「お注射天使リリー」「サイバーポッド」「ファイバーポッド」「苦渋の選択」「心変わり」の5枚が制限カードに規制緩和されました。

 これらは前改訂で禁止カードに指定されたカード群であり、半年の封印期間を経ての現役復帰となっています。禁止カード制度導入にあたり様子見として規制されたカード群でもあったため、今回はそれを踏まえての規制解除という形です。

 やや邪推が含まれる推測ですが、「禁止カードに指定されても復帰の可能性がある」という事実を明示するための規制緩和だった可能性も低くはありません。事実、次の制限改訂では5枚中3枚が再び禁止カードに戻されています。

 もっとも、単純に禁止カード制度の扱いそのものに慣れていなかったという都合もあるでしょう。この時はまだ2回目であり、手探りの状態であっても致し方ないとは言えるのではないでしょうか。

 

【当時の環境 2004年9月1日】

 「死のデッキ破壊ウイルス(エラッタ前)」が制限カードに指定されたことにより、【ミーネ・ウイルス】が壊滅的なダメージを負っています。

 禁止カードには指定されていないため、完全にコンセプトが崩壊したわけではありませんが、流石にサーチ手段がない制限カードを軸にデッキを組むのは無理があると言うほかありません。これ以降、いくつかの派生デッキが考案されてはいますが、少なくともトップメタからは撤退したことは確かです。

 同じ理由で【ウイルスカオス】も大きく衰退しています。元々【ウイルスカオス】自体が【ミーネ・ウイルス】のメタとして開発されたデッキであるという背景もあり、そもそも【ウイルスカオス】を使う理由そのものが薄れてしまった結果です。

 そして、その【カオス】も「混沌帝龍 -終焉の使者-(エラッタ前)」の禁止カード化によって被害を被っている以上、ほぼこの時点で【ウイルスカオス】も姿を消してしまったのではないでしょうか。

 このように【カオス】に弱体化が入る一方、【ノーカオス】が受けたダメージも決して小さくありません。禁止カードの枚数が増えたことにより、これまでの主流のデッキ構築理論、「必須カードを順番に積んでいく」という考え方だけではデッキスペースを使い切れなくなったからです。

 その結果、「40枚に届いていないが入れたいカードがない」という状況に陥るケースが増加し、次第に【グッドスタッフ】というアーキタイプそのものが揺らぎ始める結果に繋がっています。もちろん、ある瞬間に突然消えたということはありませんが、これ以降は年単位の時間をかけてゆっくりと衰退していくことになりました。

 こうした【グッドスタッフ】の失速を受け、相対的に【次元斬】【アビス・コントロール】【深淵1キル】などのカード間のシナジーを活かしたデッキが勢力を拡大していっています。とりわけ【アビス・コントロール】の躍進は目を引き、一気にトップメタへと躍り出たほどです。

 勢力拡大の理由としましては、「サイクロン」が制限カードに指定されたことでレベル制限B地区」や「グラヴィティ・バインド-超重力の網-」の信頼性が高まったことが挙げられるでしょう。この時期の実用レベルの魔法・罠除去カードは「大嵐」「魔導戦士 ブレイカー」も含めた3枚程度しか存在せず、ロックを維持することが極めて容易になったことによる結果です。

 【次元斬】などのビートダウンデッキとの相性差は言うに及ばずであり、【カオス】と互角に戦うことも十分に可能だったのではないでしょうか。

 同様の理由で【ロックバーン】などのバーンデッキも一部で頭角を現していっています。こちらはメイン最強のアーキタイプとも言われており、サイドによる対策なしでは太刀打ちできない地雷デッキとして非常に恐れられました。

 こうした流れもあり、以降の環境では「氷帝メビウス」を見かけるケースが次第に増えていくことになります。上述の通り、この時の規制で「サイクロン」に厳しい規制が入ったことも一因です。

 とはいえ、やはり「サイクロン」ほどの使い勝手の良さはなく、また重さの関係で3積みするのは難しいという都合もあります。結局のところ、ビートダウンデッキとの対戦における【アビス・コントロール】の有利は揺らぎません。

 もっとも、【深淵1キル】などのコンボ内蔵型コントロールデッキには速度で劣るため、順風満帆の状況とは行かなかったのも事実です。この改訂でサイバーポッド」「ファイバーポッド」という最凶格のリバースモンスター2体を獲得した影響も大きく、確実に脅威度を上げています。

 ただし、その【深淵1キル】も勢力を拡大する一方、総合的なデッキパワーそのものは意外にも低下していました。というのも、「天使の施し」を「魔法石の採掘」や「聖なる魔術師」で使い回すギミックが特に重要視されていたため、それが潰されたことで回転力を大きく損なってしまったからです。

 「深淵の暗殺者」を絡めた場合、「天使の施し」は「強欲な壺」をも上回るドローソースに変貌します。しかもタイムラグなく捨てた手札を回収できるため、2枚目以降の「魔法石の採掘」を引くことでさらにドローが連鎖していくことも珍しくありません。

 上手く繋がれば9枚ドローなどといった常軌を逸したアドバンテージを獲得することも可能であった以上、これが規制されなければ嘘というものでしょう。

 ちなみに、「天使の施し」へのアクセスに使われていたのは「第六感」でした。手札に引いた場合はもちろん、墓地に落ちてもサルベージできるため、どう転んでもメリットになるという理屈です。

 「第六感」に対して規制が入った背景には、こうした理由も含まれていたのかもしれません。

 

【サイエンカタパ】は一体何がどうなっていたのか?

 環境の変化という意味では上記の解説で以上ですが、ある意味で最も物議を醸していたのは、【サイエンカタパ】がほぼノーダメージであったという事実に他ならないでしょう。

 一応、「死者蘇生」「天使の施し」の禁止カード化によって軽傷は負っていますが、それは他のデッキも同じことであり、【サイエンカタパ】を意識した規制ではありません。明らかに公式から完全放置されており、もう何が何だか分からないという状況です。

 補足として、「サイバーポッド」の制限復帰によって【デッキ破壊1キル】が大幅に強化されていたことにも触れておきます。こうした違和感著しい規制状況を踏まえる限り、当時の開発側が色々な面で機能不全を起こしていたことは間違いありません。

 時期的にもアニメGXの放送を控えていた大事なシーズンであり、このタイミングで失敗が続いてしまったことは開発側にとっても大きな損失だったのではないでしょうか。

 

【まとめ】

 2004年9月1日の制限改訂で起こった変化は以上です。

 非常に大規模な変動があった改訂であり、様々な部分においてゲームバランスに影響が現れています。中でも【アビス・コントロール】の台頭は一際目を引く出来事です。

 カード単体の強さではなく、シナジーを活かして立ち回るデッキの先駆けであり、そしてそれは【グッドスタッフ】の時代が終わりを迎えつつあったことの証明だったのかもしれません。

 【サイエンカタパ】など、シナジーを活かしすぎてどうにかなってしまったデッキもありましたが……。

 ここまで目を通していただき、ありがとうございます。

 

Posted by 遊史