ライトニング・ボルテックスが強かった時代
・前書き
・FLAMING ETERNITY 有力カードと不発地雷
・ライトニング・ボルテックス 全体除去カードの後継
・魔のデッキ破壊ウイルス 意外と使われなかったパワーカード
・賢者ケイローン 2枚目以降の魔導戦士ブレイカー
・中編に続く
【前書き】
【第4期の歴史9 制限改訂2004/9/1 カオスエンペラー消滅 【グッドスタッフ】崩壊の足音】の続きとなります。ご注意ください。
大規模な制限改訂によって当時の環境に調整が入り、【ミーネ・ウイルス】や【カオス】、さらには【ノーカオス】などの【グッドスタッフ】系デッキが大きく弱体化しました。
一方で、【アビス・コントロール】のような「カード間のシナジーを活かしたデッキ」は勢力を拡大していき、実際に当時のトップメタにまで成長を遂げています。これには仮想敵である「サイクロン」が規制されたことも関係していましたが、それを踏まえても非常に驚くべき出来事だったと言えるのではないでしょうか。
その後は目立ったカードプールの更新はなく、10月3日に書籍同梱カードが2種類ほど現れた程度です(全1953種)。メタゲームの大きな変動は11月下旬のレギュラーパックの販売を待つこととなります。
【FLAMING ETERNITY 有力カードと不発地雷】
2004年11月25日、レギュラーパック「FLAMING ETERNITY」が販売されました。新たに60種類のカードが誕生し、遊戯王OCG全体のカードプールは2013種類に増加しています。
第4期という新時代にふさわしく、非常に多くの優良カードを輩出したパックです。新たな帝シリーズの「地帝グランマーグ」、使い勝手の良い防御カード「威嚇する咆哮」に加え、将来的にメタカードとして浮上する「闇の護封剣」などの優秀なカードが現れています。
ただし、この時に現れたのはこうした「真っ当に優秀なカード」ばかりではありません。当初は注目を全く集めなかったにもかかわらず、環境の変化によって大躍進を遂げたカードも密かに参入してきています。
【レスキューシンクロ】の「レスキューキャット(エラッタ前)」はその筆頭ですが、【ノーデン1キル】の陰の立役者を務めた「再融合」なども特に知名度の高いカードでしょう。
変わったところでは、【ベン・ケイ1キル】の「重装武者-ベン・ケイ」、そして遊戯王史上最も難解なカードと囁かれる「ポールポジション」も根強い人気を誇ります。特に後者は「調整中」絡みの話題を大いに提供し、その分野においてはカルト的な信仰を集めているほどです。
ライトニング・ボルテックス 全体除去カードの後継
とはいえ、やはり当時において多くの注目を浴びていたのは、「ライトニング・ボルテックス」を始めとする強力な汎用カードに他なりません。
手札を1枚捨てる。相手フィールド上に表側表示で存在するモンスターを全て破壊する。
相手フィールドの表側表示モンスターを全て破壊するという、シンプルにして強力な効果を持った全体除去カードです。ただし、発動に手札コスト1枚を要求されるため、2体以上破壊できて初めて等価交換となります。
また、セットモンスターには一切対処できないなど、いくつかの欠点を抱えていることは否定できません。これまでの全体除去カードのように「いつ使っても強いカード」ではなく、しっかりと使うタイミングを考える必要があるカードです。
事実上、禁止カードに指定された「サンダー・ボルト」の後継カードであり、また当面はそちらを規制解除する予定はないという開発側の意思表明であったとも言えるでしょう。
しかしながら、この「ライトニング・ボルテックス」はこうした調整を施されながらも、なお強力なパワーカードとして当時の環境に多大な影響を及ぼすことになりました。
そもそも2004年11月時点のカードプール内において、実用レベルの全体除去カードは「激流葬」程度しか残っておらず、それすら制限カード指定を受けていたという状況です。つまり当時は全体除去カードというだけで貴重な時代であり、「ライトニング・ボルテックス」も判明当初から高い評価を受けることになります。
ネックとなる手札コストも「キラー・スネーク(エラッタ前)」によってカバーしやすく、特に「深淵の暗殺者」を積んでいるデッキでは必須カード級の扱いを受けていたと言っても過言ではありません。以降はほとんどのゲームでこのカードを見かけるようになり、アタッカーを不用意に並べるのは悪手であるという価値観が浸透していったほどです。
その後、前評判通りに環境有数のパワーカードとして実績を残していった結果、直近の制限改訂ではいきなり制限カードに指定されるという流れに繋がっています。当時の緩やかなゲームスピードにおいては、全体除去という概念そのものがゲームバランスを崩しうる存在だったのかもしれません。
魔のデッキ破壊ウイルス 意外と使われなかったパワーカード
時点で注目を集めたと思われるカードは「魔のデッキ破壊ウイルス」です。
自分フィールド上の攻撃力2000以上の闇属性モンスター1体を生け贄に捧げる。相手のフィールド上モンスターと手札、発動後(相手ターンで数えて)3ターンの間に相手がドローしたカードを全て確認し、攻撃力1500以下のモンスターを破壊する。
「死のデッキ破壊ウイルス(エラッタ前)」と同系統のウイルスカードであり、こちらは攻撃力1500「以下」のモンスターをシャットアウトする効果を持ちます。ただし、ウイルスの媒体は攻撃力2000以上の闇属性モンスターでなければならないなど、コストは本家よりもかなり重めに設定されています。
この時期はその条件に当てはまるモンスターは少なく、その上「用意が簡単である」という条件を付け加えれば片手で数えられるほどしか残りません。具体例としましては、「魔導サイエンティスト」「ダーク・ヒーロー ゾンバイア」「可変機獣 ガンナードラゴン」などが候補に挙げられるでしょうか。
しかし、「魔導サイエンティスト」は当時制限カードであり、「ダーク・ヒーロー ゾンバイア」は既に第一線を引いて久しく、「可変機獣 ガンナードラゴン」に至ってはそもそも使われてすらいません。つまりこの「魔のデッキ破壊ウイルス」を運用することを考える場合、これらを特別にデッキに用意しなければなりませんが、それは【グッドスタッフ】系デッキにおいては大きな足かせとなってしまうことは明らかです。
見返りの大きさを考慮しても事故要員となるケースが多く、漠然とデッキに投入するだけでは役に立ちません。かといって【ミーネ・ウイルス】のように専用デッキをわざわざ組むほどの強さではなく、結局のところ「強いことは強いが扱いも難しい」という評価に落ち着いていました。
その後、このカードもまた「ライトニング・ボルテックス」と同様制限カードに指定されていますが、上述の通りパワーカードと言えるほどではなく、おおむね優秀止まりのカードです。にもかかわらず厳しい規制が入った背景には、前期環境で猛威を振り撒いた「死のデッキ破壊ウイルス(エラッタ前)」の色濃い影響、要はとばっちりのようなものだったのかもしれません。
賢者ケイローン 2枚目以降の魔導戦士ブレイカー
上記2枚と比べればやや小粒ですが、「賢者ケイローン」というモンスターも一定の評価を受けていました。
手札の魔法カードを1枚捨てる。相手フィールド上の魔法・罠カード1枚を破壊する。この効果は1ターンに1度だけ使用する事ができる。
1ターンに1度、手札の魔法カード1枚を「サイクロン」に変換するような効果を内蔵しています。現在では恐らく知らないプレイヤーの方が多いと思われるマイナーカードですが、当時は優秀な汎用アタッカーとして活躍を見せていた存在です。
というのも、この時期のカードプールでは汎用的な魔法・罠除去カードが「サイクロン」「大嵐」「魔導戦士 ブレイカー」の3枚程度しか存在せず、またいずれも制限カードと非常に線の細い状況が成り立っていたという時代背景が存在します。
「砂塵の大竜巻」や「氷帝メビウス」など、実戦レベルのカードこそ登場していましたが、いずれもやや状況を選ぶカードであることは否めません。
翻って「賢者ケイローン」は扱いやすい下級モンスターであり、デッキに複数枚採用しても負担になりにくい強みがあります。さらには攻撃力も1800とアタッカークラスに届いているため、どのような状況であっても戦力として数えられるのは非常に大きな魅力です。
また、当時は【アビス・コントロール】などのロックカードを多用するデッキが環境に存在しており、魔法・罠除去そのものの需要が高まっていたことも追い風と言えるでしょう。もちろん、腐った魔法カードを除去に変換する単純な使い方でも十分に強く、メインから積めるロックデッキへの対策として非常に重宝されたカードです。
ただし、効果自体はアドバンテージに繋がらないこと、またコストの種類が魔法カードに限定されていることには注意しなければなりません。類似の性能を持つ「魔導戦士 ブレイカー」のようにパワーカードと呼べるほどの強さは持たず、プレイヤーの選択次第ではサイドデッキへの投入にとどまるケースも少なくありませんでした。
実際に、このカードが一度も規制に引っかかったことがないという事実からも、「賢者ケイローン」の調整された強さが見えてくるのではないでしょうか。
【中編に続く】
「FLAMING ETERNITY」に収録されていたカードのうち、汎用カードとして注目を集めていたカードは以上となります。
「ライトニング・ボルテックス」を筆頭に、環境クラスの性能を持つ優秀なカードが何枚も現れ、当時のメタゲームにも大きな影響を及ぼしました。「魔のデッキ破壊ウイルス」や「賢者ケイローン」は外見ほどには強くはなく、それなりの活躍に落ち着きましたが、それでも一定以上の注目を集めていたことは紛れもない事実です。
このように、有力な新人を複数輩出した当パックですが、もちろんこの時に誕生したルーキーはこれだけではありません。単体では扱いが難しいながらも、他のカードとの組み合わせによって真価を発揮する強力なコンボカードも収録されています。
中編に続きます。
ここまで目を通していただき、ありがとうございます。
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