魔導サイエンティスト 1枚で環境を動かしたカード

2018年3月2日

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【前書き】

 【第3期の歴史7 魔導戦士ブレイカー 遊戯王前半期最強の下級アタッカー】の続きになります。特に、この記事では前中後編の中編の話題を取り扱っています。ご注意ください。

 

コンボでもビートダウンでも最強 魔導サイエンティスト

 「魔導サイエンティスト」の当時のテキストは以下の通りです。

1000ライフポイントを払う事で、融合デッキからレベル6以下の融合モンスター1体を特殊召喚する。この融合モンスターは相手プレイヤーに直接攻撃する事はできず、ターン終了時に融合デッキに戻る。

 1000ライフコストを払い、レベル6以下の融合モンスター1体を特殊召喚する効果を与えられています。ただし、この効果で呼び出した融合モンスターはダイレクトアタックを行えず、エンドフェイズにエクストラデッキに戻ってしまう制約がかかっています。

 一見するとライフの払い損にも思える効果ですが、実際には強烈な汎用性と爆発力を併せ持つ遊戯王史上最強クラスの起動効果です。

 まず、単純に考えても対モンスター専門のアタッカーとして運用することができます。ダイレクトアタックこそ不可能ですが、モンスターへの攻撃は問題なく行えるため、実質的には使い切りの「ダーク・ヒーロー ゾンバイア」のような使用感を持った効果となるでしょう。

 この時期のレベル6以下の融合モンスターの最高攻撃力は「紅陽鳥」の2300であり、ほとんどの下級モンスターは討ち取れるほか、「ヴァンパイア・ロード」への有力な回答にもなり得ます。ライフコストこそかさむものの、ゴブリン突撃部隊」を好きな時に呼び出せると考えれば悪い取引ではありません。

 さらに、この手の効果にありがちな「効果の無効化デメリット」などもかかっていないため、「サウザンド・アイズ・サクリファイス」を呼び出せば高打点の最上級モンスターにも対応できます。その場合は「サウザンド・アイズ・サクリファイス」でしか攻撃できなくなりますが、「人造人間-サイコ・ショッカー」などの上級アタッカーを単独で突破できる事実を鑑みれば安い出費でしょう。

 他にも、魔法無効化効果、サーチャー、リクルーター潰し効果を持つ「魔人 ダーク・バルター」、罠無効効果を持つ「ドラゴン・ウォリアー」、リバースモンスターメタ効果を持つ「デス・デーモン・ドラゴン」など、この効果の持つ幅広い選択肢は尋常ではありません。大抵の状況にはこれ1枚で対応できると言っても過言ではないのではないでしょうか。

 何よりも問題だったのは、この効果にターン1制限がかかっていなかったという事実です。つまりライフが続く限り1ターンに何度でも効果を発動できてしまうため、上記の全ての選択肢を自在に、そして同時に使い分けることすらできました。

 これらを総括して結論を導き出すと、この「魔導サイエンティスト」は攻撃力2300、通常魔法・通常罠を無効にし、リバース効果を封殺、サーチャー、リクルーターを無力化、相手モンスター全てに攻撃を行い、さらにはモンスターを無条件で吸収する能力を備えた怪物モンスターであるということになります。

 単刀直入に申し上げて、意味不明のカードです。

 前記事の「魔導戦士 ブレイカー」も何かがおかしいカードでしたが、こちらは次元が違うと言わざるを得ません。カード1枚の持つ能力としてはあまりにも異質であり、もはやその強さはプレイヤーの理解を超越しています。

 もちろん、現在では禁止カードに指定されて久しいカードです。カードプールが広がったことで凶悪さにも拍車がかかっており、エラッタなしでの復帰はまずあり得ないと断言しても良いでしょう。

 しかしながら、実に恐ろしいことに、こうしたビートダウン軸での「魔導サイエンティスト」の運用法はあくまでも余技に過ぎませんでした。

 このカードは遊戯王屈指のパワーカードであると同時に、遊戯王屈指の極悪先攻1キルコンボデッキ、【サイエンカタパ】のキーカードでもあったからです。

 

第3期最強の先攻1キル 【サイエンカタパ】の影

 【サイエンカタパ】は、デッキ名の通り「魔導サイエンティスト」と「カタパルト・タートル(エラッタ前)」をキーカードに据えた先攻1キルコンボデッキです。

自分のフィールド上モンスターを生け贄に捧げる。捧げたモンスターの攻撃力の半分のダメージを相手に与える。

 上記は初出の「カタパルト・タートル(エラッタ前)」のテキストです。2000年1月27日、「Vol.7」から誕生したモンスターで、「キャノン・ソルジャー」などと同様の射出効果を持ち合わせています。

 ただし、ダメージ量が固定ではなく、射出したモンスターのステータスに依存しているのが最大の特徴です。この時期はエラッタ前であり、ターン1制限も設けられていなかったため、射出するモンスター次第では引導火力級の大きなダメージが期待できるでしょう。

 しかし、それは逆に小型モンスターを射出しても豆鉄砲にしかならないということの裏返しでもあります。そして、多くの場合射出の弾として適しているのは小型モンスターです。例えば、【キャノンバーン】(第2期)の中核を務めた「キラー・スネーク(エラッタ前)」をこのカードで射出した場合、与えられるダメージは僅か150と「火の粉」にすら及びません。

 逆に大型モンスターは基本的に切り札とされることが多く、射出するよりもそのまま使った方が強いケースが大半でしょう。「青眼の究極竜」を射出すれば2250ダメージですが、直接殴れば4500ダメージです。

 そもそも、この「カタパルト・タートル(エラッタ前)」自体が上級モンスターであり、お世辞にも取り回しに優れているとは言えません。総合的な評価は落第点を付けざるを得ず、実際に誕生当時は全く注目されていませんでした。

 ところが、【サイエンカタパ】が開発されるや否や上記の評価が一変、悪名高いコンボパーツとして存在感を示していくことになります。

 具体的なギミックは以下の通りです。

 

①:「魔導サイエンティスト」と「カタパルト・タートル(エラッタ前)」の2体をフィールドに揃える。

 

②:「魔導サイエンティスト」の効果で攻撃力2100以上の融合モンスターを呼び出し、射出して1050ダメージ。

 

③:②を7回繰り返し、7350のダメージを与える。

 

④:「魔導サイエンティスト」と「カタパルト・タートル(エラッタ前)」を射出して650ダメージを与え、合計8000ダメージ。

 

 先攻1キルとしては非常に成立条件が緩く、【エクゾディア】(第1期)【現世と冥界の逆転】(第2期)に勝るとも劣らない抜群の安定感を誇ります。もちろん成立後は第3期環境をこれ以上ないほどに荒らし尽くし、遂には世界大会予選の上位入賞者の使用デッキを【サイエンカタパ】で埋め尽くしてしまうという悪行を成し遂げたほどの極悪デッキです。

 もっとも、「魔導サイエンティスト」の参戦後即座に【サイエンカタパ】が成立したわけではありません。プレイヤー側がこのコンボを発見していなかったという事情もありますが、そもそもデッキパーツ自体があまり出揃っておらず、物理的に構築が困難な状況だったからです。

 具体的には、重要なデッキパーツである「混沌の黒魔術師(エラッタ前)」「モンスターゲート」が現れるのは2003年の後半となっています。「魔法石の採掘」なども含めれば2004年にまで参戦時期がずれ込むこととなり、ほぼ第3期終盤と言って良い時代です。

 こうした事情を鑑みる限り、この【サイエンカタパ】も実際には2003年後半~2004年辺りが全盛期であったと見るべきでしょう。個人的な記憶としましても、これが騒がれ始めたのは【カオス】の後だったと記憶しています。

 そのため、この「魔導サイエンティスト」も当初はコンボパーツとしては見られておらず、純粋に高いカードパワーを持った凶悪モンスターとして【八汰ロック】などで活躍している状況でした。

 

【後編に続く】

 「魔導サイエンティスト」の参戦によって起こった出来事は以上となります。

 単純に使っても最強クラスのパワーカードでありながら、悪用すれば先攻1キルコンボデッキの成立を招いてしまうという、まさしく遊戯王OCG史上稀に見る極悪カードです。加えて効果の性質上、カードプールが拡大するほど凶悪さが増していくことは明らかであるため、これがそのままの性能で現役復帰することは未来永劫ないでしょう。

 とはいえ、当初は単なるパワーカードという認識が強く、【八汰ロック】などの常連メンバーに過ぎなかったというのは上記の通りです。立ち位置としては前記事の「魔導戦士 ブレイカー」と同様であり、むしろ単純な遭遇率ではフル投入が基本の「魔導戦士 ブレイカー」を下回っていたのではないでしょうか。

 いずれにしても凶悪カードを複数輩出してしまったことは間違いない「黒魔導の覇者」ではありますが、これ以外にも強力なカードが紛れていたことには触れておく必要があるでしょう。

 後編に続きます。

 ここまで目を通していただき、ありがとうございます。

 

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