「魔法石の採掘」制限時代 規制歴9年の凶悪カード(微嘘)

2018年4月26日

【前書き】

 【第3期の歴史38 八汰烏の骸とヂェミナイデビル 1年後2年後のメタカード】の続きとなります。ご注意ください。

 「PREMIUM PACK 6」から「マシュマロン」という有力な新人が誕生し、当時の環境においても即戦力として頭角を現していきました。

 「マシュマロン」以外にも優秀なカードは多く、いずれも将来的に活躍の機会が訪れる存在となっています。とりわけ「八汰烏の骸」は【変異カオス】時代に躍進を遂げ、一時とはいえ環境有数の主力カードとして活躍することになるほどです。

 第3期も終盤を迎えつつある遊戯王OCGでしたが、非常に悪いことに、最後の最後でとんでもない爆弾を落としていったことには触れておかなければなりません。

 

【マリクストラク 1000円で買える魔法石の採掘】

 2004年3月25日、「STRUCTURE DECK-マリク編-」が販売されました。収録カード55種類、うち2種類が新規カードとなっており、遊戯王OCG全体のカードプールは1810種類に増加しています。

(※見出しには1000円で買えるとありますが、正確な価格は当時の消費税込みで1260円となります)

 キャラクターストラクの例に漏れずデッキとしては紙束同然ですが、カード収集のための商品として見ればまずまずの品揃えです。もちろん、再録カードだけでなく新規カードも魅力的な内容であることは言うまでもありません。

 その片割れとなる「邪神の大災害」は発動条件こそ厳しいものの「大嵐」と同等の魔法罠除去効果を備えており、当時はもちろん、将来的にも時期によって時折環境に姿を見せていました。プレイング面に与えた影響も大きく、このカードの存在により「魔法・罠カードのセットはメイン2に行う」というセオリーが生まれたほどです。

 しかしながら、やはり当ストラクの真の目玉カードはもう片方の新規カードにあったと言うべきでしょう。

 

魔法石の採掘 悪用前提の魔法サルベージ

 その正体は、「魔法石の採掘」という1枚の魔法カードでした。

手札を2枚捨て、自分の墓地の魔法カード1枚を選択して発動する。選択したカードを手札に加える。

 任意の魔法カードを手札に回収するという非常に強力な効果を持つカードです。ただし、発動コストとして手札2枚を捨てることを要求されるため、アドバンテージ面では都合3:1交換となります。

 つまり撃つだけで2枚分のディスアドバンテージを負ってしまうということであり、まず普通のデッキで使いこなせるようなカードではありません。類似カードの「魔法再生」と比べれば多少は扱いやすくなっていますが、失ってしまうアドバンテージの数自体は変わらず、汎用性の低さについても同様でしょう。

 そもそも魔法カードを回収したいのであれば「混沌の黒魔術師(エラッタ前)」や「聖なる魔術師」を使えば済む話です。そちらと比べて「魔法石の採掘」には下準備の必要がなく、またタイムラグも発生しないという利点はありますが、流石にそれだけのために手札コスト2枚を捻出するというのは効率が悪すぎると言うほかありません。

 しかし、この「下準備の必要がなく、なおかつタイムラグが発生しない」という利点が唯一無二のものであることは事実です。ディスアドバンテージさえ気にしないのであれば上記2枚以上に取り回しに優れたカードであり、とにかく速度を追求するコンボデッキ、特に先攻1キル系のデッキを主戦場に暴れ始めることになります。

 

【サイエンカタパ】における活躍 3積み確定枠

 2004年当時においては、主に【サイエンカタパ】のキーカードとして猛威を振るっていました。

 コンボさえ決まれば勝てるデッキである以上、基本的にディスアドバンテージを気にする必要はありません。純粋に「名推理」「モンスターゲート」「遺言状」などを再利用するカードとして扱えるため、コンボ成功率を大きく上げることに繋がります。

 さらには手札コストを逆手に取り、「処刑人-マキュラ(エラッタ前)」を墓地に送る手段として活用することもできるでしょう。もちろん、「魔導サイエンティスト」などを捨てて蘇生する動きも重要です。

 性質上、複数枚引いた時に腐ってしまうという弱みもありますが、その場合は「魔法石の採掘」自体を捨てて有効牌に変換してしまうこともできます。総じて「いつ何枚引いても強いコンボパーツ」であり、【サイエンカタパ】では3積み確定の重要カードとして必須枠を埋めていました。

 

【深淵1キル】成立の立役者 アサシンループの恐怖

 他方では、「深淵の暗殺者」と組み合わせて【深淵1キル】成立のきっかけにもなっています。

 無限ループによる即死コンボを搭載したビート・コントロールデッキであり、当時の環境においても主流デッキの一角として存在感を示しています。コンボ成功率そのものは【サイエンカタパ】はおろか【宝札マンティコア】などにも遠く及びませんが、純粋にデッキの地力が高く、コンボ無しでも安定して戦える(※)強みがありました。

(※詳しくは上記関連記事もしくはデッキ個別ページで解説しています)

 

そして制限カードに しかし制限後も引き続き活躍

 このように、「魔法石の採掘」は誕生当時から数々のコンボデッキ、とりわけワンキル系デッキを中心に悪用されており、第4期を代表する凶悪コンボパーツとして恐れられていました。また、後世においても【MCV】【雑貨貪欲ターボ】などでキーカードを務めていたため、第4期終盤の制限改訂で制限カード指定を受けることになります。

 しかし、制限カードとなった後もコンボパーツとしての有用性が衰えることはなく、各種コンボデッキのお供としてはもちろん、時には【エアブレード】などのビートダウンデッキにおいてすら採用実績を残していました。

 もっとも、先述の通り「魔法石の採掘」そのものは特にカードパワーが高いというわけではなかったため、一定の脅威は振り撒きつつも第5期終盤には準制限カードに規制緩和されるという経緯を辿っています。

 ……が、問題はここからで、間の悪いことに【ドグマブレード】の全盛期と復帰が被ってしまったせいか、制限解除のタイミングを完全に逸してしまうという悲劇に見舞われています。

 その結果、なんと以後7年間に渡って準制限カードのまま足踏み状態が続くという状況に置かれており、これが無制限カードに釈放されたのは第9期中頃の話でした。制限カード時代も含めれば合計で9年以上規制されていた(※)ということになり、これほど長い間禁止制限リストに名を連ねたコンボカードは遊戯王全体でも稀でしょう。

(※とはいえ、経緯の関係上後期はただ放置されているだけという扱いでしたが……)

 現在ではカードプールやゲームスピードの変化から再び規制される可能性はほぼ無くなっていると言えますが、それでも遊戯王前半期の混迷を象徴するカードの1枚として数えることに不足はないのではないでしょうか。

 

【当時の環境 2004年3月25日】

 「魔法石の採掘」の誕生により、【サイエンカタパ】を筆頭に各種コンボデッキが大きく強化されました。

 【深淵1キル】というビート・コントロールデッキに加え、「サイバーポッド」の禁止カード化で消えたはずの【デッキ破壊1キル】も復権しています。流石にプレイングはシビアなものが要求されますが、「魔法石の採掘」を駆使すれば先攻1キルを成功させる(※)ことも決して不可能な話ではありません。

(※ここでは詳しくは語りませんが、お互いにデッキ0枚で迎える後攻1ターン目に戦慄した経験を持つプレイヤーも少なからずいらっしゃるのではないでしょうか)

 とはいえ、コンボデッキ部門では【サイエンカタパ】の一人勝ちという印象は強く、他の先攻1キルデッキはその後追い的な立場にありました。

 ビートダウン界隈に関しては【カオス】【ノーカオス】【次元斬】に対して【ミーネ・ウイルス】が勢力を拡大してきており、次第に「ウイルス地獄」とも言える環境が広がっていっています。

 時間が経つにつれて「死のデッキ破壊ウイルス(エラッタ前)」の効果範囲に入るか否かの「1500ライン」が重視されるようになり、低ステータスのモンスターを多めにデッキに取っておくなどの対応が行われるようになりました。

 一方で、全体的に罠カードの採用率が上がってきた影響で【ジャマキャン】が苦しい立場に追い込まれています。これまでのように「神の宣告」だけでは相手の行動を捌き切れなくなり、デッキコンセプトを維持することが難しくなっていきました。

 「盗賊の七つ道具」などを追加投入する動きもありましたが、根本的な部分で環境に付いていけていない印象は拭えず、緩やかに衰退の時期を迎えつつあったのではないでしょうか。

 

【まとめ】

 「魔法石の採掘」の参戦によって起こった出来事は以上となります。

 普通のデッキに入る汎用性はないものの、コンボデッキにとっては魂のカードとも言える存在であり、実際に環境での活躍も多かった実戦級カードです。主戦場は第4期でしたが、それ以降の環境においても時折思い出すように環境に浮上し、様々なコンボデッキに採用された実績を持つ偉大な存在と言えるでしょう。

 そして、遊戯王OCGの第3期の歴史はここまでで以上となります。厳密には同年4月にVジャンプ付録から新規カードが1枚現れています(全1811種)が、それ以外には特に目立った出来事も起こっていません。

 むしろ丁度この時期に原作漫画が完結を迎えていたということもあり、この時をもって一つの時代の節目とすることに違和感はないのではないでしょうか。

 長時間記事にお付き合いいただき、誠にありがとうございました。

 

Posted by 遊史