貪欲な壺 【リクルーターカオス】と【雑貨貪欲ターボ】の台頭
【前書き】
【第4期の歴史18 ハイドロゲドン強すぎ問題 対【ガジェット】最終兵器】の続きとなります。特に、この記事では前中後編の中編の話題を取り扱っています。ご注意ください。
貪欲な壺 強欲な壺の上位互換(の時もある)
「ハイドロゲドン」に次ぐトップレア、それは「貪欲な壺」という魔法カードでした。
自分の墓地からモンスターカードを5枚選択し、デッキに加えてシャッフルする。その後、自分のデッキからカードを2枚ドローする。
墓地のモンスター5体をデッキに戻し、その後2枚ドローする効果を持ったカードです。カード名から見て取れるように「強欲な壺」の同型カードであり、ドロー枚数だけを見れば同等の効率を誇ります。
もちろん、墓地にモンスターが足りなければ発動すらできないため、無条件で使えるあちらと比べると扱いが難しいのは事実です。とはいえ、流石に比較対象が悪く、単体評価では十分な性能を持ったパワーカードに他なりません。
実際にこのカードを活かすためだけに専用デッキがいくつも組まれており、その結果半年後の制限改訂ではいきなりの制限カード行きを果たしています。その後は一旦無制限カードにまで規制解除されたものの、環境の高速化によって再び制限カードに逆戻りするなど、時代に応じて何度も制限リストを行き来した経験を持つカードです。
第10期現在では無制限カードに復帰していますが、その位置に落ち着いたのは2018年4月と最近の出来事であり、いつ状況が動いても不思議ではありません。一昔以上の世代を跨いだ古いカードではありますが、今後も動向に目が離せない注目の1枚と言えるでしょう。
【リクルーターカオス】の成立 【トマハン】の後継?
「貪欲な壺」の参入は当時も大いに関心を集め、【変異カオス】全盛期にもかかわらず様々な使い方が模索されていっています。【除去ガジェット】でも息切れ防止を兼ねるドローソースとして脚光を浴び、特にミラーマッチでは必須とされたため最低でもサイドには用意しておくべきであるという定石も生まれていたほどです。
そんな中、この「貪欲な壺」を最大限に活用することを目的とし、専用デッキとして【リクルーターカオス】が見出されました。
【リクルーターカオス】はそのデッキ名の通り、リクルーターを軸に戦線を構築しつつ墓地を肥やし、「貪欲な壺」や「カオス・ソーサラー」を効果的に使うことを狙うビートダウンデッキです。「カオス・ソルジャー -開闢の使者-」の禁止カード化を受けて開発が進んだ【カオス】の後継デッキでもあり、大部分は異なりますが根元ではコンセプトと同じくしています。
リクルーターの中で共通して積まれるのは「キラー・トマト」「見習い魔術師」の2種で、特に前者は3積みが基本となる重要なキーカードの位置付けです。そのため、見方によっては次世代の【トマハン】とも言えるアーキタイプですが、流石にコンセプトがかけ離れすぎているため、やはり別種のデッキとして扱う方が自然ではあるでしょう。
フィニッシャーを務める「カオス・ソーサラー」の採用枚数に関してはプレイヤーごとに意見が分かれ、1枚~3枚のいずれにも明確な派閥が存在していました。
これに関してはリクルーターや「貪欲な壺」の採用枚数なども関係してくるため、一概に結論を出すことはできません。とはいえ、ある程度のテンプレートは定まっており、基本はそれに合わせた枚数調整を行います。
一応、当時の主流の型は「カオス・ソーサラー」「貪欲な壺」の2:2体制となっていました。元々【グッドスタッフ】に近いコンセプトを下敷きとしているため、爆発力よりも安定性を取った中間的な構成です。
そんな【リクルーターカオス】の具体的な強さについてですが、やはり【カオス】の名を冠するだけあって高いデッキパワーを誇り、2006年における主流デッキの一角として多くの結果を残しています。とはいえ、墓地利用デッキの常として墓地対策には滅法弱く、やがては【閃光ガジェット】に駆逐されてしまう結末を迎えることになりました。
【雑貨貪欲ターボ】 ハマると強い爆アドデッキ
上記の【リクルーターカオス】の更なる発展形として、【雑貨貪欲ターボ】というターボデッキも開発されています。
キーカードとなるのは「魔導雑貨商人」であり、リバース効果によって墓地を肥やしつつ「貪欲な壺」をサーチすることに特化したデッキです。とにかくデッキが回ることに意識を向けているため、上手く嵌れば相当の爆発力を発揮します。
ただし、派生元となる【リクルーターカオス】以上に墓地対策に弱く、また不安定なデッキであることは認識しておかなければなりません。
【リクルーターカオス】の場合は最悪【グッドスタッフ】の一種として振る舞うこともできますが、【雑貨貪欲ターボ】は墓地を封じられれば一巻の終わりです。構造上、魔法・罠カードは最低限のものしか採用されないため、その場合は構築に失敗した【フルモンスター】のような最期が待っています。
同様の理由で召喚権が競合しやすいのも大きな欠点の一つです。手札を効率的に捌く手段が限られる以上、モンスターを除去され続けると展開が行き詰まってしまうでしょう。
そのため、除去の多いデッキ、特に【除去ガジェット】を相手にする場合は特殊なプレイングが要求されるデッキでもあります。具体的には、特定の種類の除去を枯らすことを意識してゲームメイクを行わなければなりません。
言葉では分かりにくいですが、例えば相手が「炸裂装甲」「地砕き」「シールドクラッシュ」をそれぞれ2枚ずつ持っていると仮定します。
何も考えずにプレイすれば酷い目に遭うことは明らかですが、こうした状況はプレイングによって回避できます。なぜなら、例えばモンスターの召喚のみを行い、それ以外の行動を取らなければ2回分しか除去を受けずに済むからです。
その後は隙を見て「氷帝メビウス」や「ネフティスの鳳凰神」などを通し、盤面の巻き返しを図ります。一旦打点で超えてしまえば安泰となるため、相手が除去を使い切ったタイミングをしっかりと見極める目が必要です。
もちろん、上記とは逆にセット状態でモンスターを置いていくことも一つの戦略にあたります。どのような行動を選ぶかはその時々の状況と相談することになりますが、このうち攻撃反応罠は比較的ケアしやすいため、ある程度有利な状況になるまで攻撃は控えるべきでしょう。
つまり、相手が除去を使い切るのが先か、こちらのライフが尽きるのが先かという戦いであり、ターボデッキの名に反して「耐え忍ぶ戦い方」を求められる受け身的なデッキです。サイド後は「王宮のお触れ」や「大寒波」などが使えるため、また話も変わってくるのですが、そちらはそちらで別のテクニックが要求されることになります。
時には「カオス・ソーサラー」を捨て駒にするなど、思い切った行動に出なければならないことも少なくありません。派手な外見とは裏腹に、プレイヤー側には繊細なプレイングが求められる面白いデッキでもあったのではないでしょうか。
【後編に続く】
「貪欲な壺」参入当時の出来事については以上です。
同じくトップレアである「ハイドロゲドン」と比べて扱いは難しめですが、誕生当初から専用デッキを2つも生み出したポテンシャルの高さは並ではありません。正しく使いこなした時の爆発力はこちらが上であり、それは当時の規制状況にも表れています。
とはいえ、どちらも負けず劣らずの優良カードであることは明らかです。もちろん、それらを輩出した当パックも同じく優良商品として見られていたのではないでしょうか。
しかしながら、そんな優良パックであるはずの「ELEMENTAL ENERGY」の中に、とある危険な存在が潜んでいたことには触れておかなければなりません。
後編に続きます。
ここまで目を通していただき、ありがとうございます。
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