最強の禁止カード「強欲な壺」を無理やり弱く評価してみる

2019年11月9日

【前書き】

 「強欲な壺」というカードがあります。

自分のデッキからカードを2枚ひく。ひいた後で強欲な壺を破壊する。

 遊戯王OCGでもトップクラスの知名度を誇る非常に有名なカードであり、初期のOCG環境のゲーム性を語る上では欠かせない存在でもあります。多くのプレイヤーが口を揃えて「ぶっ壊れカード」と評価するほどであり、世間では永久禁止カードなどと言われて調子に乗っている存在です。

 しかし、実際には「強欲な壺」は言われているほどには強くはなく、むしろ禁止カードの中では弱い部類に入ると言っても過言ではありません。少なくとも「ぶっ壊れ」という評価は明らかに不当であり、たとえ禁止カードから復帰したとしても大した実績は残せないでしょう。

 この記事では、そんな「強欲な壺」を無理やり弱く評価本当の実力について解説していきます。

 

強欲な壺が本当は弱い理由

 「強欲な壺」が弱い理由は全部で5つほど存在します。

 つまり、ただの弱いカードと比べて5倍も弱いということであり、この時点で既に相当弱いことは明らかです。

 1つずつ解説していきます。

 

1アドしか取れないから弱い

 1つ目の理由は、単純に稼げるアドバンテージがカード1枚分にしかならないという弱みです。

 「強欲な壺」が現役であった時代からは想像もできない話ですが、現代の遊戯王ではカード1枚から展開が広がっていくことが半ば常識と化しています。いわゆる「初動1枚から3アド展開」といった形で表現される概念であり、環境デッキはおろかファンデッキですらアドを取るだけなら難しいことではありません。

 一方、「強欲な壺」の効果はシンプルに2枚ドロー、要するにカード1枚を2枚に増やしているだけです。これは確かにカード1枚の価値が極めて重かった過去の環境では反則的な性能ですが、上述の通り今となっては極々あり触れたアドバンテージ生成能力であり、これ以上のアドを取れるギミックはいくらでも存在します。

 つまり、「強欲な壺」は俗に言う「昔は強かったが今は別に強くないカード」の一種に過ぎないということであり、実はあまり強くはないという事実が見えてきます。

 

引けないと役に立たないので弱い

 2つ目の理由は、素引きしなければ役に立たないという弱みです。

 これも現代遊戯王特有の概念となりますが、基本的にデッキのアドバンテージ源は何らかの方法で継続的に使用できることが重視される傾向にあります。

 例えば【閃刀姫】版「強欲な壺」とも言われる「閃刀起動-エンゲージ」の場合、【閃刀姫】の各種サーチ・サルベージギミックによって非常に効果的に取り回すことが可能です。言い換えれば、こうしたドローソースはカテゴリのバックアップを受けることによって初めて真価を発揮する(※)ということであり、むしろ現在ではそれを前提にしたゲームデザインが取られている節すらあります。

(※実際、出張ギミックの「閃刀起動-エンゲージ」は本家ほどには強くありません)

 反面、「強欲な壺」は「閃刀起動-エンゲージ」とは違いサーチやサルベージには全く対応しないため、直接ドローしない限り延々とデッキに眠ったままの状態が続きます。仮にゲーム中に5枚デッキを掘り進めると仮定した場合、初手と合わせても25%の確率でしか素引きできない計算になり、4ゲーム中3ゲームは全く仕事をしないということになってしまうわけです。

 「閃刀起動-エンゲージ」とは天と地ほどの格差であり、なおかつその「閃刀起動-エンゲージ」が禁止カードに指定されていない以上、「強欲な壺」も禁止カードにはふさわしくないと考えるべきでしょう。

 

誰でもデッキに入れられるので弱い

 3つ目の理由は、誰でもデッキに入れられる、つまり入れても相対的には有利になれないという弱みです。

 上記項目の内容とは矛盾するようですが、基本的に「強欲な壺」はどんなデッキに入れても腐ることがまずなく、ほぼ無条件で採用できるタイプのカードです。大して強くはないカードのはずなのに採用するプレイヤーが居るのか? という疑問も浮かびますが、実際手に取ってみると不思議とデッキに入れたくなる性質を持っているため、最終的な使用率は限りなく100%に近付きます。

 しかし、これは逆に言えば相手も「強欲な壺」を使ってくるということであり、相対的に見れば完全にイーブンな状況です。例えば「強欲な壺」のカードパワーを100とすると、自分と相手の両方のデッキパワーが+100されるということになるため、デッキに入れても全く有利になりません。

 つまり、実質的にはお互いに「火の粉」を入れ合っている状況と大差なく、必然的に「強欲な壺」のカードパワーも「火の粉」並という新事実が浮かび上がってきます。

 

名前が弱い

 4つ目の理由は、名前が弱い、つまりカテゴリサポートを一切受けられないという弱みです。

 上記の「引けないと役に立たないので弱い」の項目とも関係する話ですが、デザイナーズデッキ全盛期の現代においてカード名は直接ゲームに影響を与えるほどに重要な概念に変化しています。

 例えば、「青眼の白龍」などはカタログスペック上は単なる通常モンスターに過ぎませんが、「青き眼の乙女」を筆頭とする各種【青眼】サポートと併用することで通常モンスターとは思えないほどのパフォーマンスを発揮できます。いわゆる「名前が強い」の好例であり、この場合カードパワーの9割以上が青眼の白龍」という名前そのものに集中していると言えるわけです。

 一方、「強欲な壺」が受けられるサポートは「強欲な壺の精霊」や「壺魔神」に対応する程度に過ぎず、率直に言ってほとんど何の役にも立ちません。

 むしろ「壺盗み」に引っかかるという致命的なデメリットすらあり、明らかにカード名の弱さが足を引っ張っています。ただでさえ「火の粉」並に弱いというのに名前すら弱いというのは救いようがなく、もはや「強欲な壺」が完全に弱小カードの領域に足を踏み入れていることは明白でしょう。

 

ブランクが長すぎるので弱い

 5つ目の理由は、禁止カード入りから復帰までのブランクが長すぎるという弱みです。

 カードゲームとしては必然とも言える話ですが、遊戯王OCGにおいては時間経過とともに徐々にカードパワーのインフレが進んでいくのは原則として避けられません。よって長年禁止カード指定を受け続けていたカードが現役復帰を遂げた場合、大抵は目立った実績を残せないままフェードアウト(※)していく運命にあります。

(※代表的なところでは「同族感染ウィルス」などが有名です)

 これに関しては開発側も認識している問題で、上手く世間体を繕うためにエラッタという形で誤魔化しを図るケースも少なくありません。

 実際、「キラー・スネーク(エラッタ前)」などは禁止カードにふさわしい強さがあるかどうかという論点で長年意見が割れていましたが、エラッタによって誰がどう見ても弱いカードに変わったため、上手い具合に結論を迷宮入りにできています。

 一方、「強欲な壺」が禁止カードになったのは2006年3月のことであり、これは上記で例に挙げた「同族感染ウィルス」と同じタイミングです。これにより、「強欲な壺」も「同族感染ウィルス」と同じ未来を辿るという予測が容易に導き出せます。

 というより、そもそも古いものより新しいものが流行するのは当たり前であり、最古参の「強欲な壺」が今更使われるわけがありません。あのキャノン・ソルジャー」のような弱小カードと同じ世代であることからもそれは明らかであり、今となっては到底禁止カードを名乗れる器ではないでしょう。

 

実際には……

 ……と、ここまで長々と世迷言を垂れ流してきましたが、記事タイトルにある通り上記の解説は全て嘘です。可能な限りそれらしく聞こえるように偏向を凝らしましたので、多少は弱そうに見えていると嬉しく思います。

 ここからは各項目のネタばらしに入ります。

 

無条件でアドバンテージを取れる壊れカード

 実際のところ、遊戯王OCGにおいて無条件でアドバンテージを取れるカードは「強欲な壺」ただ1枚だけです。

 この「無条件」というのは文字通り無条件という意味で、他のあらゆるアドカードと違って本当に何の条件も制約もなくただ使うだけでアドバンテージを取れてしまいます。これは単純にアドバンテージを取るというよりも「カードの数を増やす」という感覚に近く、要するに「リストバンドからカードを取り出している(※)」に等しいわけです。

(※上記の25%という確率を例にする場合、「4ゲームに1回はキースの真似をしても反則にならない能力」を全プレイヤーが共有すると考えることもできます)

 通常のアドバンテージの概念からは根本的に次元が違う話であり、そもそもカードパワーという物差しで測ること自体がナンセンスであるほどの異質な存在でしょう。哲学的な話になってしまいますが、個人的には遊戯王カードを強欲な壺」と「それ以外のカード」の2種類にカテゴライズしていいとすら考えています。

 なぜそうなるのかを説明することは非常に難しいのですが、例えば「苦渋の選択」は「強欲な壺」以上に壊れているカードですが、あくまでも「1枚の遊戯王カード」に過ぎません。しかし、強欲な壺」は「1枚の遊戯王カードでありながら実質2枚の遊戯王カードを内包しているカード」であり、根本的に他のカードとは住む世界が違います。

 当然、強いか弱いかで言えば間違いなく最強のカードです。

 

汎用カードは「引くだけで有利になれる」から汎用と言われる

 極めて根本的な話ですが、そもそもほとんどのカードは引かなければ役に立ちません。

 つまり、ドローしなければ使えないことを理由に弱いと評価する場合、汎用カードというだけで条件に当てはまってしまうことになります。この理屈ではおろかな埋葬」などのパワーカードも同様に全て弱いということになってしまい、明らかに荒唐無稽です。

 とはいえ、上記で解説した「カテゴリのバックアップを受けることによる強さ」の理論に関しては間違いではありません。

 実際、「特定のカテゴリの特定のサポートカード」が部分的に「強欲な壺」以上の強さを発揮することは決して珍しいことではなく、上記の【閃刀姫】でも「閃刀起動-エンゲージ」の方が有用なケースがほとんどです。

 もちろん、これはそのカテゴリ内に限っての話に過ぎないため、現存するカードプール全てに対応する「強欲な壺」とは海と井戸ほどに違いがあります。

 

壺が入っていないデッキは「デッキではない」と言われた時代

 わざわざ言葉にするまでもないことですが、「どんなデッキにも入るカード」という概念はカードゲームにおいて明らかに癌です。

 例えばOCGには「汎用的に利用可能な特定のカード群」を総称して「出張」と呼ぶ風潮があります。古くは「苦渋の選択」+「キラー・スネーク(エラッタ前)」のセットなどから始まった考え方であり、これなくして遊戯王を語ることはできません。

 とはいえ、流石に無条件でデッキに入るような出張ギミックはまず存在しないため、こうした概念がデッキ構築の固定化を招くことは現代遊戯王では到底考えられない話です。稀に「出張が強すぎてそれを使えるデッキにしか生存権がない」という状況(※)が成立してしまうケースもありますが、その場合も出張に適応したデッキが環境上位を占めたため、結果的に使用率が高く見えている」だけであり、出張ギミックそのものの使用率が100%になっているわけではありません。

(※【十二獣】などが有名です)

 ところが、恐ろしいことに「強欲な壺」にこの法則は一切当てはまりません。

 上述の通り、「強欲な壺」は遊戯王OCGでもトップクラスに凶悪なカードですが、そうした強さ以前に「使わない理由がそもそもない」という常軌を逸した性質を持っています。よく言われるのは「デッキ枚数が事実上39枚で固定される」という表現ですが、むしろ40枚のデッキにそのまま入れて41枚にしても構わないため、文字通りの意味で「無条件で採用できる消費1枠の出張ギミック」と言い換えることができるわけです。

 実際、過去の環境においてはどのような環境であっても採用率100%という異次元の使用率を叩き出していたほどであり、この記録は「苦渋の選択」を始めとする極悪カードですら達成できていません。【ジャマキャン】【Vドラコントロール】など、「強欲な壺」が不採用になり得るデッキも一応は存在しましたが、そうしたデッキですら実際には「壺は必須」という意見が主流だったほどです。

 「壺が入っていないデッキはデッキではない」とすら言われるに至った実績は伊達ではなく、まさに未来永劫禁止カードに指定しておかなければならないカードです。

 

名前と実力はそもそも無関係

 実を言うと、「強欲な壺」の「名前が弱い」ことは一応は事実ではあります。

 しかし、はっきり言って「だからどうした」というレベルの話であり、これを弱点に数えること自体に相当無理があったことは否めません。むしろ書かない方が偏向しやすかったのではないかとも思いましたが、折角書いた文章を消すのも勿体ないと思い、無理やり記事に入れました。

 

最初期に永久禁止カード入りを果たして以来そのままという狂気

 これに関しては完全に数合わせのネタ項目です。

 ブランクの長さがカードの強さに関係するのであれば「苦渋の選択」なども弱いということになってしまうため、明らかに道理に合いません。

 ただし、「突然変異」のように完全に開発側からも忘れ去られたカードなども存在するため、部分的には正しいと言えなくもない理屈ではあります。

 

【まとめ】

 「強欲な壺」についての話は以上です。

 前半部分では「強欲な壺」を無理やり酷評した結果、思いのほか噴飯ものの文章に仕上がってしまい、推敲中は読んでいて恥ずかしくなってくるほどでした。恐らくは記事途中で離脱される方も少なからずいらっしゃると思いますので、その場合は強欲な壺」を弱いと思い込んでいる賢者と誤解されたままになってしまうのではないかという危惧もあり、プレイヤーの端くれとしては少々冷や汗が出る思いです。

 ちなみに、記事冒頭で「ぶっ壊れは不当な評価」なる表現を用いていますが、実際その通りであり、「強欲な壺」はそもそも印刷されたのが間違いというレベルのカードです。誕生時期を鑑みれば仕方がない話ではあるのですが、遊戯王というカードゲームのシステム上存在してはならないカードであり、また今後生まれることも絶対にあってはならないと言える存在でしょう。

 ここまで目を通していただき、ありがとうございます。