ヴィクトリー・ドラゴン誕生 遊戯王最大の過ち

2018年3月23日

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【前書き】

 【第3期の歴史22 【カオス】が1強時代を築き上げてしまった理由 カードパワーとメタによる支配】の続きになります。ご注意ください。

 【カオス】という狂気的なカードパワーを持つ怪物が現れ、当時の環境は【カオス】の暴力によって支配されることになりました。

 非常に間が悪いことに、制限改訂も2週間前に行われたばかりであり、迅速な対応を期待することもできません。直近の改訂は2ヶ月半後の7月を待つこととなり、それまでは最上級【カオス】6枚体制による常軌を逸したパワーゲームが繰り広げられていました。

 他方では、僅かではありますがカードプールの動きも見られます。5月中に「LIMITED EDITION 5」から6種類、5月22日に「STRUCTURE DECK-遊戯編- Volume.2」から1種類、合計7種類の新規カードが誕生しました(全1625種)。

 増加数こそ大人しいものの、中には「ソウルテイカー」や「ディメンション・マジック」などの優良カードも含まれており、当時においても一定の注目を集めています。それぞれ、時期によっては環境に浮上した経験も持つ密かな実戦級カードです。

 とはいえ、【カオス】全盛期の当時に活躍を期待するのは無理があり、当初はそれなりの評価に落ち着いていました。実際のところ、これらのカード群が参入直後に及ぼした影響は皆無だったと断言してしまっても良いでしょう。

 しかしながら、この時の参入メンバーの中に、とある1体の魔物が紛れ込んでいたことには触れておかなければなりません。見方によっては【カオス】以上の、ひいては遊戯王OCG最大の悪意を孕んだ、恐るべきモンスターが密かに産声を上げていたのです。

 

ヴィクトリードラゴン 生まれてきてはいけなかったもの

 それは「ヴィクトリー・ドラゴン」という1体の最上級モンスターでした。

このカードは特殊召喚できない。自分フィールド上のドラゴン族モンスター3体を生け贄にして生け贄召喚しなければならない。このカードの直接攻撃によって相手ライフを0にした場合、このカードのコントローラーはマッチに勝利する。

 なんと自身の直接攻撃でゲームを決めた場合、そのままマッチにも勝利してしまうという規格外の能力を与えられています。遊戯王OCGのゲームシステムそのものに干渉する効果であり、カード1枚の効果としてはあまりにも異質であると言わざるを得ません。

 代わりに、いかなる方法によっても特殊召喚できず、さらに通常召喚にもドラゴン族モンスター3体の生け贄が要求されるなど、遊戯王全体を見渡しても非常に厳しい召喚条件が設けられているモンスターです。加えて打点も2400と上級ラインに届く程度でしかなく、重さを考慮すればまともに戦力として運用することすらままなりません。

 召喚条件、マッチキルの成立条件ともに取り回しは最悪であり、普通のデッキに採用してもまず事故要員にしかならないでしょう。使うのであれば専用デッキを用意することになりますが、その場合もやはり重さが足を引っ張ってしまいます。

 また、数々の苦労を乗り越えて「ヴィクトリー・ドラゴン」を召喚できたとしても、直接攻撃でライフを0にするという最大の難所が待ち受けています。前述の通り「ヴィクトリー・ドラゴン」そのもののカタログスペックは最上級モンスターとしては最弱クラスでしかなく、下手をすると「このカードを召喚したせいでデュエルに負けた」という話になりかねません。

 このように、当初はその扱いにくさから実用レベルの性能とは思われておらず、有り体に申し上げてファンデッキ向けのカードとして見られている状態でした。

 しかし、カードプールの成長、そしてプレイヤーの試行錯誤により、遂に第4期で【Vドラコントロール】や【MCV】として環境に浮上することになります。

【マッチキル】の脅威 モラルハザード

 【Vドラコントロール】および【MCV】は、デッキ名の通り「ヴィクトリー・ドラゴン」をキーカードに据えたマッチキル系デッキです。それぞれコントロール、コンボの方面に特化しています。

 詳しくは専用記事にまとめる予定ですが、どちらも最終目的は「ヴィクトリー・ドラゴン」の直接攻撃を通すことにありました。違いはその過程に用いるのが「完全ロック」か「即死コンボ」かのどちらであるかということだけです。

 通常、こうした特化デッキはサイド戦では対策を取られやすい弱みを抱えていますが、1戦目で勝負を決められる「ヴィクトリー・ドラゴン」であればいわゆる「逃げ切り」が成立してしまいます。つまりメタカードによる対策を許さないコンボ・コントロールデッキであり、その恐ろしさは従来の類型デッキの比ではありません。

 また、仮に1戦目を落としても2戦目を取り返せば当然マッチ勝利となります。要するに【マッチキル】を相手にする場合は2連勝することを常に要求されるため、手札事故その他の要素を考慮すれば潜在的に大きな不利を抱え込むことになるでしょう。

 また、結果はどうあれ必然的に3戦目は消滅することになるなど、とにかく遊戯王のゲームシステムを狂わせてしまうことで悪名を轟かせたデッキです。【エクゾディア】(第1期)【現世と冥界の逆転】(第2期)、そして【サイエンカタパ】など、これまでにもゲームバランスの崩壊を招いた極悪デッキは存在していましたが、この【マッチキル】の脅威は明らかにそれらとは一線を画しています。

 しかしながら、「ヴィクトリー・ドラゴン」がもたらした最大の問題はこうしたゲーム上のものではなく、プレイヤーの反則行為を誘発する可能性があったという事実に他なりませんでした。

デッキ崩しは本当に流行していたのか?

 カードゲームとしては異例のことですが、遊戯王OCGには厳密にはサレンダーを認めるルールが存在しません。暗黙の了解として投了を認める文化はあるものの、ルール上は相手のサレンダーを拒否することも可能です。

 そもそも「ヴィクトリー・ドラゴン」自体がそのルールを前提にデザインされたカードであり、サレンダーのシステムが標準搭載されている他のカードゲームで同型カードが存在しない理由でもあります。その事実からも「ヴィクトリー・ドラゴン」の異質さが浮かび上がってくるようですが、案の定このカードの存在が大きな問題を引き起こしてしまうことになりました。

 つまり、ルール上サレンダーが認められないことから「故意にデッキを崩す」などの反則行為を行い、失格扱いとなることでマッチ敗北を回避するプレイヤーが現れ始めたのです。もちろんマナーとしては最悪の行為であることは言うまでもありません。

 しかし、実際問題こうした行為を完全に防ぐことはできず、問題解決手段はプレイヤーのモラルやジャッジの判断に依存するところがありました。ゲームとしては完全に欠陥システムであり、ひいては「ヴィクトリー・ドラゴン」の誕生も遊戯王最大の過ちだったと言っても過言ではありません。

 「八汰烏」や「処刑人-マキュラ」、そして【カオス】など、初期の遊戯王OCGを象徴する凶悪カードは数知れませんが、これに関しては「生まれてきてはいけなかったカード」です。当然現在では禁止カードに指定されており、今後も現役復帰することは未来永劫ないでしょう。

 このように、遊戯王OCGでも比類なき悪名を轟かせる「ヴィクトリー・ドラゴン」ではありますが……実際のところ、私個人の記憶としましてはこうした反則行為現場に出くわした経験は一度たりともない、という事実をここに明示させていただきます。

 厳密には、噂話としては聞き飽きるほど見知っていましたが、実際にどこの誰が反則を働いたという具体的な話となるとほとんど耳にしたことがありません。というより、そもそもそんなことをしてしまえばショップに出入りできなくなると思うのですが、その辺りの事情は当時から有耶無耶になっていたようにも感じられます。

 あるいは、大会参加のみを目的として来店するプレイヤーにとっては、あまり良い言葉ではありませんが「知ったことではない」のかもしれませんが、流石にそれが多数派の考えであるということはないでしょう。率直に申し上げて噂が一人歩きしている印象は強く、巷で騒がれるように当時のトーナメントシーンで反則行為が横行していたとする通説の真偽には疑問が残る部分もあります。

 もっとも、火のないところに煙は立たないのも事実です。世の中には色々なプレイヤーがいる以上、一部の地域では日常的にデッキ崩しが行われていたケースもあったのかもしれません。

 補足となりますが、この「ヴィクトリー・ドラゴン」は基本的にシングル戦がメインとなるカジュアル環境ではほとんど問題を起こさなかったモンスターでもあります。マッチ戦を行わない場合、「ヴィクトリー・ドラゴン」は単に重いだけのモンスターに過ぎず、あえて採用するようなカードではないからです。

 単純なカードパワーとは全く別の領域で狂気を振り撒いたカードであり、遊戯王OCGというカードゲームそのものに大きな傷跡を残した戦犯とも言えるでしょう。

 

【まとめ】

 「ヴィクトリー・ドラゴン」に関する話は以上となります。

 あらゆる意味でカードゲームの常識から外れていると言わざるを得ず、実際に第4期環境では多くのプレイヤーに被害を及ぼしたカードです。通常のゲームバランスを超えた場所で問題を引き起こした事例は数少なく、遊戯王最大の過ちとの評価を下すことに不足はありません。

 ちなみに、一部の非公認大会ではいわゆるお遊びとして、禁止カードの使用が許されるノーリミットデュエルが開催されることもあるのですが、店舗によってはそのルール下ですら使用禁止とされることもあります。こうした例外的な対応もまた、このカードが別格の存在として恐れられていることを窺わせるエピソードと言えるでしょう。

 ここまで目を通していただき、ありがとうございます。

 

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