【遊戯王】禁止制限無視プールにおける最強デッキについての考察

2019年9月12日

【前書き】

 禁止カードを無制限に使用できるカードプールにおいて、最強のデッキとは果たしてどのようなものを指すのか?

 これについて完全な正解を求めることは事実上不可能と言って差し支えないのですが、それはそれとしてプレイヤーにとっては非常に気にかかる話題であることも確かです。禁止カードの導入以降、世代を超えて過去何度も繰り返されている思考実験であり、結論に違いはあれどまず間違いなく世紀末環境になるという認識においては共通しています。

 この記事では、そんな世紀末環境の実態(※)について、現代遊戯王の視点を踏まえつつ改めて考察していきます。

(※なお、ここでは「氷結界の龍 ブリューナク(エラッタ前)」などのエラッタにより消滅したカードも使用できるものとします)

 

アーキタイプの選定 最適解は展開系デッキ?

 まずは最も重要になるアーキタイプの選定ですが、これに関しては現代遊戯王のセオリーをそのまま流用したものが指標の1つになると考えられます。

 具体的には、

 

①:展開系デッキによる先攻制圧もしくはワンキルのプラン。

 

②:展開系にメタを張った誘発系の中速コントロールのプラン。

 

 大別すればこの2種に分類可能です。もちろん、厳密にはもう少し細かい区分けが存在しますが、ここでは話を簡単にするため便宜上この2種のみにアーキタイプを限定します。

 このうち、環境がインフレを起こすと①が有利になりやすい傾向があるため、インフレの極致にあたる禁止制限無視プールでは展開系デッキの方が強くなるものと一旦仮定して話を進めます。

 ちなみに、禁止制限無視プールにおいては【エクゾディア】【現世と冥界の逆転】などの特殊勝利系デッキも使用可能であり、またかつてはこれらが最強格とされていましたが、現在のカードプールでは実戦レベルではなくなっている可能性が高いです。

 理由についてはいくつかありますが、一言でまとめれば「展開系デッキの実質的な下位互換デッキと化している(※)」ことが主な理由にあたります。

(※詳しくは記事後半部分で言及しています)

 

禁止制限無視プール:メインデッキの考察

 ここまで読み進めている方には必要ないかもしれませんが、念のため展開系デッキのコンセプトについても軽く言及しておきます。

 大雑把に言えば、先攻1ターン目から大量展開を行って強固な制圧布陣を敷き、そのまま反撃を許さずに押し切ることを目的としたアーキタイプ全般を指します。性質上、フリー対戦ではあまり歓迎されない傾向にあるデッキですが、単に勝つという目的においては非常に効率の良いプランです。

 また、後攻スタートのゲームにおいても持ち前のパワーを生かした盤面突破を狙いやすく、デッキによっては後攻ワンキルを標準的に視野に入れることすらできます。とにかく普通のデッキとは出力が桁違いであり、単純にデッキパワーだけを比べるのであれば間違いなく最強のアーキタイプです。

 反面、対策されると比較的脆いタイプのデッキでもあるため、その活躍の度合いは環境ごとに浮き沈みがあり、なおかつメタが煮詰まるにつれて徐々に勢いが落ち着いていくという性質があります。特に相手の妨害が濃くなる後攻時はその傾向が顕著に表れ、何らかの対策を取らなければメタゲームを生き残ることはできません。

 しかし、「対策の対策」にリソースを割きすぎると今度は肝心のデッキパワーが下がってしまうというジレンマがあり、この比重をどうするかが展開系デッキの最も大きな課題であるとも言えます。

 まとめると、メインギミックの大半を大量展開の成立に割いた、非常に攻撃的かつ短期決戦向けのアーキタイプです。

 

展開要員:デッキのメインエンジンを担うカード

 上記の前提において、メインギミックとして特に有用性が高いのは魔導サイエンティスト」などの規格外の展開力を持ったカードです。

 これらは実質1枚始動の展開要員となるため、少ないスロットによって先攻展開のギミックを組むことができ、結果的にその補助となるパーツに多くのリソースを割けるようになります。中でも「魔導サイエンティスト」はエクストラに枠を用意できる点で頭1つ抜けており(※)、禁止制限無視プールという世紀末環境においてもこれ以上に優れたカードはそう多くはありません。

(※個人的には、展開要員はサイエンとそれにアクセスするカードだけで良いとすら思っています)

 一方、「魔導サイエンティスト」を呼び込むカードの候補はいくつかありますが、禁止制限無視プール特有の選択としては「クリッター(Vol.6)」「黒き森のウィッチ(Vol.6)」の2種が挙げられます。

 1999年~2000年初頭に【エクゾディア】で猛威を振るった最初期デザインのサーチャーであり、現在のインフレとはまた別方向に壊れているカードです。単純なカードパワーはもちろんですが、何より「苦渋の選択」と組み合わせた時の威力が凄まじく、「魔導サイエンティスト」に限らずどのようなデッキでも採用を検討できるポテンシャルを秘めています。

 

誘発メタ要員:「指名者」+ハンデス系のカード

 一方、ある意味メインギミック以上に重要となるのが誘発メタのスロットです。

 OCG環境でもお馴染みの「墓穴の指名者」「抹殺の指名者」の2種については説明不要ですが、禁止制限無視プールにおいては万能ピーピング・ハンデスカードである「押収」「強引な番兵」を追加で搭載可能です。さらに、これらを疑似的にサーチできる「苦渋の選択」もカウントすれば脅威の15枠となり、ほとんどの状況で誘発を踏み潰して展開を成功させられる突破力(※)が手に入ります。

(※これを期待値で上回るには単純計算で最低15枚以上の手札誘発を積まなければなりません)

 もちろん、相手視点ではその上で「魔導サイエンティスト」を止める必要があるため、「誘発メタの枚数+サイエンの枚数」の合計分の手札誘発を初手に握ることを要求されます。

 これは平均すれば3~4枚であり、実質的にはほぼ不可能な要求です。これにより先攻の勝率が限りなく100%に近付くため、あとはどれだけ効率的に勝てるかを詰める段階に入ります。

 なお、これらの誘発メタは後攻では基本的に役に立たないという欠点もありますが、後述の理由により禁止制限無視プールではそもそも後攻のゲームに勝利すること自体が無意味な環境になる可能性が高いため、実質的にはデッキスロットを圧迫すること以上のデメリットはありません。

 

フィニッシャー:先攻制圧もしくはワンキルを直接狙うカード

 単純に勝つという目的であれば恐らく「ダーク・ダイブ・ボンバー(エラッタ前)」が最善です。

 しかし、下記で触れるサイドプランと絡めて考える場合、総合的には「トポロジック・ガンブラー・ドラゴン」によるハンデスギミックの方がよりデッキコンセプトに合致しているのではないでしょうか。

①:このカードが既にモンスターゾーンに存在する状態で、このカード以外のモンスターがリンクモンスターのリンク先に特殊召喚された場合に発動する。自分は手札を任意の枚数ランダムに捨てる(最大2枚)。その後、捨てた数だけ相手は手札を選んで捨てる。

 OCG環境においても【ドラゴンリンク】などで使用されていたギミックであり、その有用性については折り紙付きです。禁止制限無視プールであってもこれに匹敵するハンデスギミックは中々なく、特に魔導サイエンティスト」型では自然とメインギミックに組み込める強みもあります。

 とはいえ、ハンデス以外にも先攻制圧の手段は多い(※)ため、ここの選択は必ずしも「トポロジック・ガンブラー・ドラゴン」でなければならないというわけではありません。

(※むしろ墓地発動が豊富な相手に対してはハンデスの威力が半減するため、他の型で組んだ方が安定する可能性も高いです)

 

禁止制限無視プール:サイドデッキの考察

 一方、サイドに関してはメインとは打って変わり、結論はほぼ1択です。

 ヴィクトリー・ドラゴン」によるマッチキルを狙う、これ以上に効率的なプランは他にないのではないでしょうか。

 倫理的にどうなのかという声が聞こえてくるようですが、これまでの解説の通り禁止制限無視プールでは手札誘発に対する十分なカウンターの用意があるため、敗因として最多を占めるのは同型対決によるものと推測できます。

 具体的には、相手の先攻展開あるいは先攻ワンキルによって何もできずにゲームを落としている可能性が極めて高く、既に1敗した状態から巻き返すのは非常に困難(※)です。

(※仮に2ゲーム目を取ったとしても3ゲーム目では1ゲーム目の焼き直しとなるため、そのまま1-2で敗北します)

 また、こうした「後攻絶対不利の格差」こそが記事の前置き部分で「特殊勝利系デッキは実戦レベルではなくなっている」と述べた最たる理由でもあります。この課題を正攻法で解決するにはデッキ構築段階から後攻のゲームを意識したプランを取らなければならず、メインギミックを歪めずにそれを達成するのは実質的には不可能でしょう。

 よってそもそも3ゲーム目を発生させないことこそが最上の回答であり、このゲームバランスにおいて「ヴィクトリー・ドラゴン」を使わないという選択は到底あり得ません。

 

サンプルレシピ【サイエンノーデンVドラマッチキル】

 これらの考察を踏まえ、暫定的に雛形となるデッキを試作します。

 

サンプルレシピ(禁止制限無し)
モンスターカード(13枚)
×3枚 黒き森のウィッチ(Vol.6)
魔導サイエンティスト
×2枚 クリッター(Vol.6)
×1枚 ヴィクトリー・ドラゴン
原始生命態ニビル
増殖するG
髑髏顔 天道虫
浮幽さくら
魔法カード(27枚)
×3枚 押収
おろかな埋葬
苦渋の選択
強引な番兵
強欲な壺
天使の施し
墓穴の指名者
抹殺の指名者
ワン・フォー・ワン
×2枚  
×1枚  
罠カード(0枚)
×3枚  
×2枚  
×1枚  
エクストラデッキ(15枚)
×3枚 旧神ノーデン
×2枚 暗黒火炎龍
ダイガスタ・エメラル
×1枚 スリーバーストショット・ドラゴン
トポロジック・ガンブラー・ドラゴン
トロイメア・ゴブリン
ファイアウォール・ドラゴン
ミレニアム・アイズ・サクリファイス
ラヴァルバル・チェイン
LANフォリンクス
リンクリボー

 

サイドデッキ(1枚) 
×3枚  
×2枚  
×1枚 アクア・マドール

 

 特筆すべきはヴィクトリー・ドラゴン」のメイン投入です。

 上記のサイド論も決して間違ってはいないのですが、前提として同じカードプールで対戦を行う以上、これと同じプランを取ってくるプレイヤーは確実に一定数存在します。よって仮に1本目を取ったとしても安泰は得られず、結局は「ヴィクトリー・ドラゴン」を巡る戦いに行き着くため、むしろ1本目を取る意味が全くありません。

 従ってメインデッキの段階からマッチキルに狙いを定めてしまう方が無駄がなく、であれば最初から「ヴィクトリー・ドラゴン」ありきの構成に仕上げるべきです。また、必然的に後攻のゲームに勝つ必要がなくなるため、単純に勝率を2倍換算(※)できるメリットも見逃せません。

(※「絶対にジャンケンに勝てる能力」「敗北を1回無かったことにできる能力」の2つが同時に手に入るため、実際の勝率は2倍どころではありません)

 その他、もう1つ触れておくべき点として「髑髏顔 天道虫」の採用があります。

このカードが墓地に送られた時、自分は1000ライフポイント回復する。

 あまり良いカードではないと個人的には思います。

 しかし、ライフゲイン手段を用いずにマッチキルの準備を整える方法を見つけることができず、妥協の末に採用という結論に至りました。当然、他に良い手段があればそちらを優先した方がデッキの完成度は上がります。

 

展開ルート及びデッキの回し方について

 デッキの回し方については「サイエンが通れば終わり」以外に表現のしようがありません。

 一応もう少し噛み砕いて言えば、各種ハンデスカードによって前方確認を終えた後、「おろかな埋葬」「ワン・フォー・ワン」といったカードから「魔導サイエンティスト」にアクセスし、すみやかにマッチキルに向かうという流れです。

 具体的な展開ルートについては下記の通りとなります。

 

①:「魔導サイエンティスト」を召喚する。

 

②:「魔導サイエンティスト」で「ミレニアム・アイズ・サクリファイス」を特殊召喚し、それを素材に「リンクリボー」をリンク召喚する。

 

③:「魔導サイエンティスト」で「暗黒火炎龍」を特殊召喚する。

 

④:「暗黒火炎龍」「リンクリボー」の2体で「LANフォリンクス」(※)をリンク召喚する。(※別の下リンクで代用可)

 

⑤:「魔導サイエンティスト」で「旧神ノーデン」「暗黒火炎龍」をそれぞれ特殊召喚する。(※この時点で4000LP消費)

 

⑥:「旧神ノーデン」「暗黒火炎龍」の2体で「ラヴァルバル・チェイン」をエクシーズ召喚し、効果で「髑髏顔 天道虫」を墓地に送る。

 

⑦:「髑髏顔 天道虫」の効果で1000LP回復する。

 

⑧:「魔導サイエンティスト」で「旧神ノーデン」を特殊召喚し、「旧神ノーデン」で「髑髏顔 天道虫」を蘇生する。(※サイエンのライフコストがライフゲインで相殺されるため、無限ノーデン成立。以下ライフゲイン処理省略)

 

⑨:「旧神ノーデン」「髑髏顔 天道虫」の2体で「ダイガスタ・エメラル」をエクシーズ召喚し、効果で「旧神ノーデン」2体と「暗黒火炎龍」1体の計3体をエクストラデッキに戻し、1ドローする。

 

⑩:「ラヴァルバル・チェイン」「ダイガスタ・エメラル」の2体で「トロイメア・ゴブリン」をリンク召喚(※)する。(※効果を使用する必要はないが、「髑髏顔 天道虫」が手札に来ている場合はここで墓地に落とす)

 

⑪:「魔導サイエンティスト」で「旧神ノーデン」を特殊召喚し、「旧神ノーデン」で「髑髏顔 天道虫」を蘇生する。

 

⑫:「旧神ノーデン」「髑髏顔 天道虫」の2体で「ダイガスタ・エメラル」をエクシーズ召喚し、効果で「旧神ノーデン」「暗黒火炎龍」「ダイガスタ・エメラル」の計3体をエクストラデッキに戻し、1ドローする。

 

⑬:「LANフォリンクス」「ダイガスタ・エメラル」の2体で「スリーバーストショット・ドラゴン」(※)をリンク召喚する。(※ドラゴン族リンク3で代用可)

 

⑭:「魔導サイエンティスト」で「旧神ノーデン」を特殊召喚し、「旧神ノーデン」で「髑髏顔 天道虫」を蘇生する。

 

⑮:「旧神ノーデン」「髑髏顔 天道虫」の2体で「ダイガスタ・エメラル」をエクシーズ召喚し、効果で「旧神ノーデン」「LANフォリンクス」「ダイガスタ・エメラル」の計3体をエクストラデッキに戻し、1ドローする。

 

⑯:「スリーバーストショット・ドラゴン」「ダイガスタ・エメラル」の2体で「ファイアウォール・ドラゴン」をリンク召喚(※)する。(※効果を使用する必要はない)

 

⑰:「魔導サイエンティスト」で「旧神ノーデン」を特殊召喚し、「旧神ノーデン」で「髑髏顔 天道虫」を蘇生する。

 

⑱:「旧神ノーデン」「髑髏顔 天道虫」の2体で「ダイガスタ・エメラル」をエクシーズ召喚し、効果で「旧神ノーデン」「スリーバーストショット・ドラゴン」「ダイガスタ・エメラル」の計3体をエクストラデッキに戻し、1ドローする。

 

⑲:「ファイアウォール・ドラゴン」「ダイガスタ・エメラル」の2体で「LANフォリンクス」をリンク召喚する。

 

⑳:⑪に戻る。(※手順⑫の「ダイガスタ・エメラル」で回収するカードは「暗黒火炎龍」→「ファイアウォール・ドラゴン」に変更)

 

 この時点で無限ドロー及び無限サルベージが成立するため、後はマッチキルに必要なカードを適宜回収していきます。フルハンデスだけであれば相手の手札が3枚以下になっていれば達成可能ですが、速攻魔法などのスペルスピード2以上のカードはあらかじめ落としておく必要があるため、相手の手札内容を把握できていない場合はループ突入は必須です。

 また、墓地発動系のカードは言うまでもなく墓地に残してはならないため、その場合はここで「強引な番兵」や「墓穴の指名者」を引き込むことで解決します。なお、この段階では「ヴィクトリー・ドラゴン」を手札に引き込む必要はありません。

 その後、十分なカードが集まった後はいよいよ制圧盤面の作成に向かうことになります。

 しかし、それに至るまでの手順が優に100を超えてしまうため、ここでは詳細なルートは記載しません。結論だけを言えば先攻展開の過程で「トポロジック・ガンブラー・ドラゴン」による2ハンデスを決め、最終的には相手ドローフェイズに「リンクリボー」蘇生から更なる2ハンデスを決めるという流れに向かいます。

 返しのターンでは無限ドロー及び無限サルベージを駆使して「ヴィクトリー・ドラゴン」着地の準備を整え、そのままマッチキルを成立させます。事実上の先攻1ターン目マッチキルであり、諸々の対人問題から目を逸らせば最も勝率の高いプランと言って差し支えないのではないでしょうか。

 

各種手札誘発ケアについて

 デッキの回し方に関連することとして、各種手札誘発のケアについても触れておきます。

 上述の通り、大量に搭載された誘発メタの前にはケアに割くべき意識は限定的ですが、運が絡む以上は何らかの誘発を撃ち漏らすことはあり、そのケアを知っておくことは重要です。ケアが難しいカードについてもハンデスで優先的に落とすべきという指標にはなるため、この知識の有無が勝敗を分けることも少なからずあるでしょう。

 とはいえ、これに関しては恐らく相手視点から見た方が理解しやすいと思われるため、ここでは例外的に切り口を変えて解説します。

エフェクト・ヴェーラー【微妙】

 まずは手札誘発の代表とも言える「エフェクト・ヴェーラー」系統の無効化誘発ですが、結論から言ってこれらはあまり信頼できません。

 なぜなら、「魔導サイエンティスト」は効果を無効にしてもライフコストで自滅されてしまい、そのまま2ゲーム目に逃げられてしまうからです。

 「2ゲーム目に逃げられる」というのはあまり聞きなれない言葉ですが、【Vドラ】系列のデッキは「ヴィクトリー・ドラゴン」さえ通せればマッチに勝利できるため、わざとデュエルに負けて先攻をキープしたまま次のゲームに突入し、改めてマッチキルを狙うという戦術が成立します。よって下手にデュエルに勝利してしまうとむしろ危険であり、こうした相手の自滅を防げないカードは少々苦しい評価を付けざるを得ません。

 そのため、刺し切りを狙うのであれば「魔導サイエンティスト」は放置して展開途中を止めるしかありませんが、展開中盤以降は「ダイガスタ・エメラル」の相互ループ+「ファイアウォール・ドラゴン」の無限サルベージ体制が整ってしまう以上、序盤~エメラルFWDループの間に誘発を切ることを強要されます。

 具体的には、ラヴァルバル・チェイン」によって「髑髏顔 天道虫」を墓地に落とすタイミングであり、展開ルート過程においてはここが最も脆い部分であると言えるでしょう。むしろここを逃すとどうしようもなくなるため、このタイミングまでに当てる先がない誘発は評価にすら値しません。

 しかし、その場合も黒き森のウィッチ(Vol.6)」が墓地に落ちていればサーチからの「トロイメア・ゴブリン」によってルートが繋がってしまうため、2ゲーム目に逃げられるどころかそのままマッチキルを決められてしまいます。

 よって「エフェクト・ヴェーラー」系統の無効化誘発は不利を理解しつつも「魔導サイエンティスト」に投げるしかない微妙カードとなり、基本的にはあまり刺さらないと考えておくべきでしょう。

灰流うらら【ほぼ死に札】

 次は現環境を代表する強力な手札誘発「灰流うらら」ですが、これは大抵の場合「エフェクト・ヴェーラー」以下の仕事しかできません。

 単純な話、サーチカードを2枚以上持たれている場合ほぼ無力であり、確率的にはかなり不安定なカードです。よって「魔導サイエンティスト」へのアクセスを防ぐカードとしては使えず、上記で解説した「ラヴァルバル・チェイン」のタイミングで投げるしかないということになります。

 しかし、既に述べた通り「黒き森のウィッチ(Vol.6)」が墓地に落ちている場合はルートが繋がってしまうため、実質的には黒き森のウィッチ(Vol.6)」を見た瞬間に投げることを強要されるカードでもあります。「おろかな埋葬」などの墓地肥やしカードに対しても同様であり、実際のゲームではサーチカードに即投げするしかないケースがほとんどです。

 つまるところ、相手の初動札が1枚、なおかつハンデスも指名者もないという事故ハンドの場合にしか威力を発揮しないということで、これ単体ではほぼ死に札に近いカードです。

ドロール&ロックバード【場合によっては有効】

 次はインフレ環境で輝くと噂の「ドロール&ロックバード」ですが、評価としては「場合によっては有効」レベルにとどまります。

 まずは有効なケースについてですが、これは当然「強欲な壺」などのドローソースから動いてくる場合、もしくは「苦渋の選択」による間接サーチ(※)を挿んでくる場合などが該当します。

(※チェーンの逆順処理により「黒き森のウィッチ(Vol.6)」のサーチ効果に割り込めます)

 しかし、サーチを封印されていてもファイアウォール・ドラゴン」のサルベージを絡めれば8体分の融合モンスターを確保できるため、「魔導サイエンティスト」のサーチを許した時点で2ゲーム目に逃げられることは避けられません。よって実質的には「エフェクト・ヴェーラー」と同等の働きにしかならないケースも多く、見た目ほど信頼できる誘発ではないということが分かります。

ニビルうさぎ【非常に有効】

 以上により、このデッキの対策としては「魔導サイエンティスト」の効果をそもそも発動させないこと、つまり魔導サイエンティスト」を直接除去できるカードこそが有効であると言えます。

 具体例としては「原始生命態ニビル」や「幽鬼うさぎ」、あるいは「PSYフレームギア・γ」といった面々であり、特に「原始生命態ニビル」は「墓穴の指名者」に引っかからない点が優秀です。それでもハンデスで落とされてしまえば無力ですが、少なくとも2ゲーム目に逃がさずに仕留められる可能性があるという点では大いに評価できます。

 しかし、「ワン・フォー・ワン」によって2体目の「魔導サイエンティスト」を置かれてしまう危険もあり、これ1枚で勝てるとは言い切れないので注意が必要です。

浮幽さくら【致命的】

 恐らく最も有効な手札誘発です。

 これに関しては説明不要と思われますが、旧神ノーデン」さえ除外してしまえば2枚目以降も含めて「魔導サイエンティスト」を完全に無力化できるため、デッキコンセプトをこれ1枚で否定できます。手札誘発としては最高峰の働きであり、上記で取り上げた面々とは比較にならないほど優秀なカードです。

 もちろん、非公開情報が絡む以上は指定すべきカードを外してしまう危険性もないとは言えませんが、「魔導サイエンティスト」を採用しておいて「旧神ノーデン」を使わないということはまずあり得ないため、実質的にはほぼ無視できるリスクでしょう。

 ……と、ここまで散々に持ち上げましたが、そもそもの話として15枠の手札誘発メタを乗り越えなければならない以上、浮幽さくら」ですら十中八九は無慈悲に叩き落とされるカードに過ぎないということは理解しておかなければなりません。

 身も蓋もない言い方ですが、現実問題として「ヴィクトリー・ドラゴン」の存在を考慮すると根本的に手札誘発は無力であり、辛うじて刺さり得るのが「浮幽さくら」であるという話でしかないのです。

増殖するG【最有力】

 そのため、総合的には「増殖するG」が最有力の手札誘発となるでしょう。

 決まった時の威力では「浮幽さくら」に劣りますが、性質上ハンデスによって無力化されないため、誘発メタを15枠から6枠にまで削ることができます。その時点で他の手札誘発とは一線を画す有用性を持っており、誘発を採用するのであれば最優先で積むべき手札誘発です。

 また、OCG環境ではデメリットとなる「デッキデスによる自滅のリスク」に関してもVドラ環境では「デュエルに負けることができる」というメリットに転じるため、条件付きながら先手後手を入れ替える札として機能する強みも侮れません。

 もっとも、既に何度も解説した通り禁止制限無視プールでは手札誘発という役割のカード自体があまり信頼できないため、悪く言えば「弱いカードの中では最有力」ということになり、要するに弱いカードです。

 

結論:複雑なジャンケン

 以上により、個人的な見解としてはこの【サイエンノーデンVドラマッチキル】こそが禁止制限無視プールにおける最強デッキにあたるのではないかと考えています。少なくとも私個人の発想力ではこのデッキに五分以上を取れるデッキは全く想像すらできないため、これ以上の考察は不可能というのが最終的な結論です。

 唯一の問題があるとすれば、それは他のプレイヤーも上記と似たような結論に至る可能性が極めて高いという事実でしょう。

 実際のところ、「ヴィクトリー・ドラゴン」は非常に頭のおかしいカードです。数ある禁止カードの中でも飛び抜けて狂ったカードであり、この禁止制限無視プール環境においても間違いなく最凶のパワーを秘めています。

 さらに、この狂気は「ヴィクトリー・ドラゴン」の使用者が増えるにつれて加速度的に増大していきます。これについては上記で語ったこと全てが理由の根拠となりますが、そもそもの話として2本先取のゲームのはずが相手だけ1勝で勝ちになる(※)というシンプルに大きすぎるハンデを抱えることになるため、最終的には誰もが「ヴィクトリー・ドラゴン」を使わざるを得ないという結論に行き着いてしまうことは避けられない未来でしょう。

(※例えば先攻勝率9割、後攻勝率4割の場合、総合的な勝率は36%~16%となってしまい、【Vドラ】系列のデッキには遠く及びません)

 つまり、過程や手段に差異はあれど「先攻1ターン目にマッチキルを決める」という共通のコンセプトに辿り着くことになります。加えて、相手の「ヴィクトリー・ドラゴン」をケアするために何らかの自滅ギミックを用意する必要も出てくるため、単純に展開力に優れているだけのデッキを土台にするのも危険です。

 手段に関してはいくつかありますが、やはりメインギミックをほぼそのまま流用できる「魔導サイエンティスト」こそが最もスマートな選択となるでしょう。

 もちろん内部のギミックについては当記事のものにこだわる必要はありませんが、どのようなチューンナップを行おうとデッキ名にすると【サイエンノーデンVドラマッチキル】ということになってしまうため、実質的にはミラーマッチと大差ありません。そして上記のデッキでミラーを行えばどうなるかは火を見るよりも明らか(※)です。

(※いわゆる「複雑なジャンケン」状態に陥ります)

 

メタデッキ草案【サイエンノーデンVドラマッチキル】

 もっとも、一応これとは別種のプランとして、手札誘発を30枚以上積むなどの極端な構成を取った後攻特化デッキが浮上する可能性もあるにはあります。

 

サンプルレシピ(禁止制限無し)
モンスターカード(5枚)
×3枚 魔導サイエンティスト
×2枚  
×1枚 ヴィクトリー・ドラゴン
髑髏顔 天道虫
魔法カード(3枚)
×3枚 ワン・フォー・ワン
×2枚  
×1枚  
罠カード(0枚)
×3枚  
×2枚  
×1枚  
手札誘発カード(32枚)
×3枚 (※任意の手札誘発)
×2枚  
×1枚  
エクストラデッキ(15枚)
×3枚 (※省略)  
×2枚    
×1枚    

 

 上記が【サイエンノーデンVドラマッチキル】に対するメタデッキの草案となります。デッキ名は【サイエンノーデンVドラマッチキル】です。

 デッキコンセプトは【サイエンノーデンVドラマッチキル】の項目で解説したためここでは省きますが、ざっくり言えばマッチキル成立のタイミングを後攻に移した【サイエンノーデンVドラマッチキル】と考えて差し支えないでしょう。

 とはいえ、見ての通り確率的にはかなり不安定な狙いです。

 ひとまず期待値の上では4枚の誘発を確保できる見込みがありますが、現実的には相手のハンデス+指名者によって強い順から狙い撃ちにされていくため、「浮幽さくら」などのキラーカードを残せる可能性は恐らくほとんどありません。

 加えて自分に勝利手段がない場合、つまり「魔導サイエンティスト」を握れていない場合は相手が自害せずにそのゲーム中でのマッチキルを再度狙ってくる可能性が高く、これを防ぐには自分も「魔導サイエンティスト」を初手に引いておく(※)必要があります。

(※もしくは通常ドローで「魔導サイエンティスト」を確実にドローする能力を習得する手もあります)

 これらを踏まえて考えると、【サイエンノーデンVドラマッチキル】相手に後攻勝利を狙うには「手札誘発4枚+サイエン」という非常に都合の良い初手を握ることを2ゲーム連続で成功させるという奇跡を願わなければならず、流石にこれをメイン戦略に組み込むのは現実的ではないと言わざるを得ません。

 また、当然のことながら先攻時の安定性を捨てることになるため、やはり差し引きでは明らかにマイナスです。

 

【まとめ】

 つまるところ、禁止制限無視プールにおける環境は「先攻1ターン目マッチキルを先に決めた方が勝つ」という終着点に行き着くことが分かります。

 率直に言って地獄です。

 実際にプレイしてみれば嫌というほど体感できますが、本当にジャンケンの結果だけで全てが終わってしまうため、遊んでいて何も楽しくありません。辛うじてゲーム性のようなものが生まれるとすれば、メインギミックの負担にならない範囲で誘発を用意し、奇跡的にそれが刺さることを祈る程度ですが、いずれにしてもプレイヤースキルが介在する余地は皆無です。

 一言確実に言えることがあるとすれば、とりあえずヴィクトリー・ドラゴン」は存在するだけで世界の法則が乱れるため、たとえノーリミットルールでも絶対に使用不可カードに指定しておくべきです。

 ここまで目を通していただき、ありがとうございます。