闇の誘惑 海外オリカと言われたカード

2019年3月11日

【前書き】

 【第6期の歴史10 【レスキューシンクロ】の一時後退と【シンクロアンデット】の台頭】の続きになります。ご注意ください。

 制限改訂によってメタゲームの勢力図が一気に塗り替わり、これ以降は【シンクロアンデット】を頂点とする環境が構築されていくことになりました。以前までのトップメタであった【レスキューシンクロ】は2番手の立ち位置に後退していますが、各種メタカードをメインから取り入れることで抵抗を図るなど、デッキの弱体化を補いつつ環境に適応する動きを見せています。

 複雑に推移するメタゲームが再び大きく動いたのは、それから僅か2週間後の出来事でした。

 

闇の誘惑 発売前から規制されていたカード

 2008年9月13日、「EXTRA PACK」が販売されました。新たに29種類のカードが誕生し、遊戯王OCG全体のカードプールは3402種類に増加しています。

 現在では毎年恒例の「海外出身の新規カードをまとめたエクストラパック」となっていますが、これがその第一弾となる商品です。その特殊な出自ゆえか全体的にユニークな性能のカードが多く、それに伴ってカードパワーが露骨に高いカードも何枚か収録されていました。

 具体的には、【闇属性】関連カードの中でも屈指の有用性を発揮する「ダーク・グレファー」や、【剣闘獣】を大きく強化した「スレイブタイガー」、また将来的に【植物シンクロ】及び【植物リンク】ギミックの中核を務める「ローンファイア・ブロッサム」など、現在でも名を知られるパワーカードが一斉に姿を見せています。

 しかし、そんな中でも当時のプレイヤーから最大の注目を集めていたカードは「闇の誘惑」だったのではないでしょうか。

自分のデッキからカードを2枚ドローし、その後手札から闇属性モンスター1体をゲームから除外する。手札に闇属性モンスターがない場合、手札を全て墓地へ送る。

 「デステニー・ドロー」「トレード・イン」に次ぐ2:2交換のドローソースであり、なおかつそれらとは比較にならないほどの汎用性を持つパワーカードです。

 闇属性モンスターという極めて広い範囲に対応する条件の緩さもさることながら、除外するカードもドローした後から選べるなど、ドローソースとしては破格の利便性を誇ります。デステニー・ドロー」ですら強力なドローソースという扱い(※)を受けていた当時としてはあり得ないほどの性能であり、実際に参入直後から【シンクロアンデット】を筆頭に様々なデッキで3積み候補に持ち上がったほどの逸材です。

(※当時の価値観では2:2交換のドローというだけでも十分に強力と考えられていました)

 ちなみに、実は海外環境では既に「闇の誘惑」が規制されていましたが、恐らくは商業上の都合からか来日直前に規制解除が入り、半ば強引に無制限カードに釈放されています。一応、「次元融合」や「異次元からの帰還」といった帰還カードに対処が入った後だったとはいえ、OCG目線ではかなり思い切った決定(※)だったことは否めません。

(※案の定、この半年後の2009年3月には「闇の誘惑」が早々に規制入りしています)

 そのため、当時は「なぜこれほど条件の緩いドローソースが刷られたのか」とかなり騒がれており、一時期は「海外オリカ」などと揶揄されていたことすらありました。

 現在ではゲームバランスのインフレによって相対的にカードパワーが落ちたため、流石の「闇の誘惑」も無制限カードの立ち位置に落ち着いていますが、なんと制限解除に至ったのは第9期中頃の2016年4月と比較的最近の出来事です。

 逆に言えば、第9期以前までのカードプールでは間違いなく最強クラスのドローソースだったということであり、事実上3世代は時代を先取りしていたパワーカードだったと言えるでしょう。

 

【SDL】(スーパードローライダー)の成立

 とはいえ、そんな「闇の誘惑」も分類上は【闇属性】専用のサポートカードに過ぎない以上、往年の「強欲な壺」のようにどんなデッキでも使えるカードというわけではありません。

 「闇の誘惑」の採用先として挙げられるのは元々闇属性モンスターを多数含むデッキ、もしくは何らかの方法でコンスタントに闇属性モンスターをサーチできるデッキに限られます。例えば、上記で触れた通り【シンクロアンデット】には無理なく入るカードですが、【レスキューシンクロ】には基本的に入らないケースがほとんど(※)でしょう。

(※ただし、調整の仕方によっては十分に採用圏内に入るため、誘惑採用型【レスキューシンクロ】が結果を出すこともありました)

 いずれにしても、この時期に「闇の誘惑」が多くのデッキで使用感を試されていたことは間違いなく、これによるドロー加速を土台にしたデッキとして【スーパードローライダー】が新たに考案されることになります。

 名前から見て取れるように【ライダー】系の一種であり、アーキタイプそのものはビートダウンに属しているデッキです。しかし、デッキコンセプトは「制圧系モンスターによる盤面封殺」に完全特化しており、採用カードについても大半がその召喚の補助を担うカードで占められていたため、本質的にはコンボデッキに近い振る舞いをするデッキとも言えます。

 デッキの動きとしては、基本的には1ターン目に「光と闇の竜」もしくは「虚無魔人」の召喚を狙い、召喚権を消費している場合には「D-HERO Bloo-D」の特殊召喚を狙うというのが定石とされていました。その無茶なコンセプトを支えるエンジンこそが「闇の誘惑」「デステニー・ドロー」「トレード・イン」のドロー三種の神器であり、ある意味ではドローソース9枚体制によるスーパードロー加速こそがデッキコンセプトの屋台骨だったと言っても過言ではないでしょう。

 さらに、軸をずらした攻め手として「ゾンビキャリア」を採用することにより、6シンクロもしくは8シンクロによる幅広い盤面解決能力を持ち合わせていたことも強みの一つに数えられます。

 しかし、この時期の【スーパードローライダー】はシンクロ召喚のギミックは添え物程度であることが多かったため、ゾンビキャリア」はピン挿しにとどまるケースが主流でした。むしろ生け贄要員としては「闇・道化師のペーテン」の方が扱いやすく、「D-HERO ディアボリックガイ」の水増し要員のような感覚でこちらが優先的に採用されていたのではないでしょうか。

 もっとも、以前の記事でも少し触れたように【スーパードローライダー】はそれほど長生きはせず、やがては添え物だったはずの【シンクロ召喚】ギミックに逆にコンセプトを乗っ取られていく(※)という結末を辿ることになります。

(※まず召喚権が競合しやすい「虚無魔人」がデッキから抜け、次に重さの割に「ゴヨウ・ガーディアン(エラッタ前)」などで簡単に戦闘破壊される「D-HERO Bloo-D」が抜け、それにより撃ちにくくなった「トレード・イン」が抜け、そして最後には「光と闇の竜」すら抜けてしまったというのが大まかな事の推移です)

 その後は現在で言うところの【シンクロダーク】に姿を変えてトーナメントシーンで猛威を振るっており、むしろこの形態になってからが【スーパードローライダー】の全盛期だったと言っても過言ではありません。もちろん、デッキ成立のきっかけとなった「闇の誘惑」は何事もなかったかのように必須カード枠に収まっており、「光と闇の竜」にとってはある意味裏切られたような状況です。

 しかも、当初はまだ【シンクロダーク】という名称があまり広まっておらず、もっぱら【スーパードローライダー】という呼び名で通っていたため、「ライダーなのにライダーが入っていないデッキ」などと頻繁にネタにされていました。

 色々な意味で不遇な扱いと言うほかなく、今となっては名前を知る人すら少ない歴史に埋もれたアーキタイプです。

 

【まとめ】

 「闇の誘惑」についての話は以上となります。

 当時のドローソースの水準を大きく上回るパワーカードとして注目を集め、実際に参入直後からトーナメントレベルで多用されていたカードです。さらに、既存のデッキだけでなく新アーキタイプである【スーパードローライダー】を間接的に成立させるなど、多方面に渡ってその影響力を発揮していました。

 ここまで目を通していただき、ありがとうございます。